【 004. 】



「(お前は・・・・俺を殺す気だろう・・・・・・)」

ぐったりと布団に身を投げだし、小太郎は悪態を吐いた。

はふっと煙草の煙を吐き、煙管の灰を手に落とした。


「お前がいつまでもおとなしくならないから、無理強いじみた事になるんだろう?」

「(屁理屈を・・・・・)」


手の灰を火種に、もう一服つける。

は艶やかに笑った。


「嫌なら口淫でも覚えてきたらどうだ?」

「(食い千切ってくれる)」

「言われてもな。まぁどうせ一生無いだろう」


その流し目が色気と共に侮りを含んでいる気がして、小太郎は何となく腹が立つのであった。





「・・・・・・・で、何で俺様かな」

小太郎に連行された佐助がにやにやしながら聞く。

だが小太郎を甘く見てはいけない。


「(群を抜いて見境が無さそうだった)」

「あははー・・・・・酷い言われ様だな・・・・・」

「(違うのか)」


さも当然のように言われて、佐助の口元が引きつる。

が、気を取り直して風魔に向き直る。

顔はへらへらしているが内心は笑いを堪え、佐助はしこたま適当な事を教えた。

小太郎はおとなしく聞いている。


「・・・・・・と、こんな感じ?」

「(・・・・・分かった)」


軽く顎を引き、小太郎は去って行った。

嘘を見破れなかったのは佐助の技量もあるが、余程切羽詰まっているのだろう。

小太郎を見送って、佐助はにやにや笑っていた。


「頑張れよー」


無責任なエールは万人かちんとくるものだ。

小太郎に聞こえたかは定かでないが、引き返してこなかったところを見ると聞こえなかったのであろう・・・・・・。





「お?」

布団の上に正座して睨んでくる小太郎に、が目を瞬かせる。

小太郎はさっさと座れとばかりに布団を叩いた。


「どうした?とうとうおとなしく抱かれる・・・・・」

「(煩い)」


さっさと終わらせようと小太郎はの着流しの裾をめくった。

一応言っておくが小太郎は従順になった訳でも諦めた訳でもない。

己が力でも早さでも適わない。

どこに居てもお構いなしにその場で始める。

腰を痛めると仕事に支障をきたす。

尻が守れるならプライドもクソもない忍の自分、もはや手段は選ぶまい。

と、言うことである。

小太郎はまだ力ないの雄を掴んだ。

熱い。

小太郎は佐助の言葉を思い出していた。


『先ずはそうだな、頬摺りでもして煽ってやれよ。起たなきゃ話にならないし、始めから口に入れるのは奉仕が長引く』

「(・・・・・・・・・)」


すり・・・・・・。

柔らかな頬が触れる。

女のように溶け崩れそうな程柔いわけではないが、中々心地がいい。


「ふぅん・・・・・面白いな」


にぃと笑う鬼を、小太郎は忌々しく思ったが、顔には出さない。

それどころか薄く口を笑ませさえした。

伝説の忍、侮っていればいい。

俺(の尻)が無事なら良いのだ!

益々熱く脈打って硬くなってきたモノを、見せ付けるように口に含む。

初めて知ったその味は、あまり歓迎できないものだった。

獣臭く塩っぱく甘苦い。

だが今まで口に入れたものワースト3!に入るとか言う事も無いため、小太郎は黙って奥までくわえた。

咽頭が押されて苦しいが、口に入るだけ押し込む。

余った部分は手で扱き、小太郎は奉仕に没頭した。


「ん、中々だな」


口から顎に飲みきれなかった唾液との先走りが混じった物が垂れていく。

小太郎は一度口を離してそれを拭った。

もう一度顔を近づけ、今度は幹に吸い付く。

やわやわと吸って粘液を舐め取ると、雄がぴくぴく動いた。


「ふふ、悪くない。上の口から飲むか?」


小太郎の唇が僅かに笑む。

鋭い顔立ちと相まって毒を内包した色気が香った。

先端をちゅうと吸って唇を離す。

の端正な眉が僅かにひそめられる。

ぱたぱたっ、ぽた・・・・・・・・・。

小太郎の頬や唇を白濁した粘液が濡らす。

男の欲望に顔を汚されたまま、小太郎はを見上げた。


「ふふっ」

「(何が可笑しい)」


さも可笑しそうに笑われては、小太郎もむっとする。

達したくせに手管が甘いというのならお門違いだ。


「お前騙されているよ」

「?」

「誰に教わったかは大体分かるが、実地にしちゃあ甘い。かと思えば流石は伝説の忍、中々良い線を行く舌技だ。だが危ない橋を渡っているのに気付いていない」

「!」


腕を掴まれ布団に沈められる。

驚いて見上げた先には息を呑む美貌が悠然と笑っていた。

鬼の頭目と言うに相応しい王者の風格。

掴んでいる小太郎の腕を持ち上げると、彼はしなやかだが男であり忍であると主張する指を、ちろりと舐めた。


「良く見ておけ」


ぴちゃぴちゃ音を立てて、舌が手指を這う。

小太郎はじっと見ていた。

指の股をなぞり、節を甘く噛む。

爪を噛んで軽く引っ張り、指先を含んできつく吸う。

じんと痺れた指先を慰めるように紅い舌が指紋をなぞりあげる・・・・・・。


「(・・・・・分かった)」


手を退いて、小太郎はその指を眺めてみた。

唾液に濡れ光る手は妙に淫らだ。

ぱたりと手を落として起き上がろうとすると、肩を押さえ付けられて顔を覗き込まれた。


「お前の身体にもう一つ」


教えてやろう。

そう言って、はぐいと小太郎の脚を開かせた。

下半身だけ晒され、下帯を奪われる。

は躊躇いなく小太郎の最奥に唇を寄せた。


「!」


小太郎が暴れる。

蟻の戸渡りをぢゅっと吸うと、螺旋が飛んだ玩具の様に動きがぴたりと止まるのが面白い。


「(やめろ!)」

「聞こえぬな」


いけ好かないすかした笑みで言うのが腹が立つ。


「(っ!)」


硬い感触が入ってくる。

指だ。

僅かに痛みが走るが、開かされた入り口ぎりぎりの薄い粘膜を舐められて、小太郎は片目を眇めた。

脚が勝手に引きつる。

眉間の辺りが痙攣する。


「(色狂いがっ)」

「自虐的だな」

「(お前に言っている!)」


噛み付くような剣幕で言われてもはどこ吹く風だ。


「ほらもう一本」

「!」


にゅぐり、とキツい入り口を抉じ開けて中指が入ってくる。

震えてしまう内腿が歯痒い。


「(っ)」


中の筋をなぞられ、脚が跳ね上がる。

最奥が甘えるように締まって、の指を締め付けた。


「心地が良いか?」


小太郎は横顔を布団に埋めて無視を決め込んだ。

が笑う。


「お前はここが好きだったな」

「!」


ぐいと奥を突かれて、小太郎の腰がしなる。

鍛えられた胸筋を噛めば、心地好い弾力が歯に感じられた。


「好きだろう?」


小太郎の唇が意味を紡がずに開閉し、ひゅうと喉が鳴る。

指先で奥を弄り回せば、小太郎の喉を抜ける空気が震えた。


「・・・・・・・!」


ずるりと指が抜けていき、代わりに焼けた楔があてがわれる。

怪我をしないように、腰に負担を掛けないように、小太郎は強ばる体をゆっくりと弛緩させた。


「!」


ぐぷり、と先端が埋まる。

ぐっと拡げられてかなり痛い。

だが胸クソ悪い事にこの巧みな手管でもなければ恐らく裂傷は免れない。

おとなしく身を任せながら、小太郎は痛みに耐えていた。

幹の凹凸が引っ掛かって痛い。

がペロリと舌なめずりした。


「(・・・・・っ!)」


ずるぅ、と引き抜かれ、ぎちゅりと差し込まれる。

痛みが徐々に消えて、代わりに身体に絡み付いてくる快感。

自分を律したところで鬼が許すはずも無い事を知っている小太郎は、黙って身体を預けていた。

己の雄が立ち上がるのを感じる。


「背に手を回せ」

「(っ願い下げだ!)」


胸を軽くあえがせながら、小太郎は敷布を握り締めた。

は呆れたように笑って、小太郎の腰を掴んだ。


「!!」


激しい攻めに、今まで手加減されていたことを知る。

ギシギシ軋む腰、打ち付けられて痛む肌。

気が狂いそうな快楽に息を詰まらせながら、小太郎はを見上げた。

気力だけで薄ら笑うと、ギュウと最奥を引き絞る。


「ふ・・・・・児戯だな」

「!」


にやり笑って、奥をかき回される。

小太郎は身を強ばらせて射精した。

同時に腹の中に流し込まれた熱い濁流。

それを感じながら、小太郎は悪魔と呼ばれる自分も鬼にとっては赤子同然かと溜息を吐いたのだった。

そしてふと思い出す。


「(お前は何を教えた)」


もう一つ教えてやろう、と言った。

はにぃと笑うと、小太郎の耳を噛んだ。


「お前がいかに尻を掻き回されるのが好きかという事さ」

「・・・・・・・・・」


小太郎の膝がの鳩尾を捉えたが、鈍い音がしただけだった。


「(化け物が!)」

「おや、知らなかったか?」


甘い蜜言ではないが、は嬉しそうだった。

それがまた小太郎の怒りを煽り、その様子がを煽る。


「タチの悪い円環だ」


言う割に嬉しそうに笑って、はまた小太郎をまさぐり始めるのだった。





***後書***

私の書く小太郎はどうも頑固で扱いにくい。