【 002. 】
宴もたけなわ、盛り上がっている広間から、は佐助を伴って抜け出した。
佐助の顔は、暗い。
そりゃあもう、暗い。
「そんな顔されると」
先を歩くが口許を手で覆う。
助かるかも!と、佐助は一層顔を陰らせた。
が。
「火がつく」
「げっ」
にや、と笑うに、佐助は後退り。
しかし、腕を捕まれて阻まれてしまう。
「約束だろ…?」
耳元で熱く囁かれ、ざわざわとしたものが、背筋を駆け上る。
肩を抱かれて部屋に入ると、いよいよ己の浅はかな賭けが恨めしくなる。
「…さっさと終わらせろよ」
この際多少の痛い目は我慢しよう。
忍としての訓練を積んだ自分が、我を忘れて感じ入るなんて事は無いから、この行為は苦痛でしかない。
だから早く終らせてくれ、と、佐助は潔く服を脱いだ。
下帯に手をかけた時は、一瞬迷ったが、ぐっと腹に力を入れ、取り去る。
露になった佐助の体に、は溜め息をついた。
「なんて、綺麗」
アンタの方がよっぽど綺麗だろ、なんて皮肉を飲み込んで、佐助はを軽く睨んだ。
はテキパキと布団を敷き、佐助を手招いた。
「ここに…床の上もいいけど、明日仕事あるかもしれないしね」
片目をつぶって見せるから目をそらし、佐助は布団の上に座った。
がゆったりと微笑み、口づけを落とす。
頬に、額に、鼻頭に。唇のきわに、端に。擽るような優しい感触に、佐助は軽く目を閉じた。
すると、今まで避けていた唇に、濃厚な口づけがきた。
「ん…ふ、ぅ」
今までにない、巧みな口づけ。
舌を掬い取られ、甘く咬まれて、佐助は身震いした。
「ん…ん…ぷはっ!」
荒い息をつく佐助の体は、ほんのり桜色に染まっていた。
このままじゃヤバいと、服をひっ掴んで逃げようとした佐助を、は布団に押し倒して縫い止めた。
「俺を感じて?ね…」
首筋に顔を埋められ、佐助は体をよじった。
熱い舌が頚動脈の上を這う。
時折冷たい歯が当たると、身がすくむ。
「佐助…」
熱い吐息と声が、耳に届いた。
の顔は上気している。
何故?と心の中で問うた佐助の心を読んだかのように、は答えた。
「俺に乱される佐助に、感じてるんだ」
チュ…と口づけて、は佐助の胸元に手を這わせた。
胸の突起を優しく暖めるように手で包み、胸全体を揉む。
女のように感じることはないが、心地良いことにはかわりがない。
「…ね、あったかい?」
甘えるように言われて、佐助は少し戸惑った。
行為はリードしている癖に、こんな甘えた声を出すなんて。
「あったかい、かな」
考えるように言うと、が小さく笑うのが分かった。
「俺もあったかいよ。あったかい佐助を触ってるから」
ペロリと佐助の耳たぶを舐め、は暖めていた胸の突起を指先で触った。
転がすように触り、優しく揉み込む。
「ん…」
くすぐったくて、佐助は思わず吐息を洩らした。
…しまった。演習ではこんな失敗した事がないのに。
思わず手で口を塞いだ佐助に、は残念そうな顔をした。
「あ、塞いじゃうの?…もっと聴きたいのに」
「…野郎のあえぎ声なんて聞いて何が楽しいのさ」
ちろりと睨んでくる佐助に、は楽しげに笑った。
「男らしい男の方が、あえぎ声は可愛いモンさ」
その言葉に、佐助はうんざりした顔をした。
「やっぱアンタ、変態だ」
「嬉しいね」
全く悪びれないも、ここまでくると大したものだ。
佐助は溜め息をつき、体の力を抜いた。
止まっていたの手が、再び動き出す。
「佐助は柔らかいね」
胸を揉み、脇腹を撫で上げながら、話しかける。
佐助は声を噛み殺しながら答えた。
「女の子に比べたら相当固いと思うけど?」
その言葉に、はまあねと苦笑した。
「女の子は柔らか過ぎるよ。溶けちゃいそうだ。佐助は女の子より固いけど、男よりは柔らかいよ。
…この体で、何人の男をたらしこんだの?」
黒い瞳が、一瞬にして紅く染まる。
その化け物じみた顔に、佐助は思わず喉を鳴らした。
恐ろしい。
答えなければ食い殺されそうだ。
だが…。
「答えたく、ない」
やっとの事で絞り出すと、はスゥと目を細めた。
なんて、恐ろしい。
戦場とはまた違った、冷静な恐怖が襲ってくる。
「言わせるよ…?」
そう言って、は佐助の胸に唇を落とした。
唾液をたっぷりまぶした舌先で胸の突起を転がし、擽る。
佐助は少し頬を染めているものの、無表情に近い。
…忍の意地があるのだろう。
は胸から唇を離し、まだ殆ど反応していない佐助自身に唇を寄せた。
そろりと口に含み、人間のものより長いその舌を絡ませる。
裏筋を押すように舐めあげ、鈴口をえぐるようにかきまわすと、佐助は小さく吐息を洩らした。
愛撫に反応した佐助自身が、頭をもたげる。じゅるじゅると音を立ててしゃぶると、益々元気になった。
「澄まして見せても、これは隠せないね」
ただ単に、の技術が忍のそれを遥かにしのいでいるだけなのだが。
そう言いかけたが、口を開けるとあえいでしまいそうで、佐助は口を閉ざした。
「声、我慢してると余計感じちゃうよ?」
クスクス笑いながら、溢れてきた佐助の蜜を舌先で掬い取る。
「…佐助は甘いね。全身お菓子みたいだ」
何度も蜜を喉に運び、は佐助のモノから唇を離した。
そそり立って震えているそれを指先で弾き、また溢れる透明な雫を塗り込めるようにする。
佐助の顔はかなり上気していて、呼吸も荒い。
それを満足そうに見遣り、は佐助の最奥に手をのばした。
何度もそういう任務に就いている筈なのに、佐助のソコは型崩れもしていなくて、綺麗にすぼまっていた。
「可愛い」
クスリと笑って、はそこに舌をのばした。
ゆっくりと円を描くように舐め、佐助の緊張をほぐす。
「ヤるんなら…早くヤってくんない?…遊ばれるのは…ゴメン、だ!」
絞り出す様に言う佐助に、は目を細め、その耳元に唇を寄せた。
「何人相手にしたか言うなら、手早く済ませたげるよ」
意地悪く言うと、佐助は小さく叫ぶように言った。
「そんなの、もう覚えてないに決まってるだろ!」
怒ったように言われて、は苦笑した。
少し意地悪が過ぎたらしい。
「怒るなって。…ま、怒った顔もいいけどね」
謝るように佐助の頬に口づけて、は行為を再開した。
唾液を絡めた指を、佐助の最奥に触れさせる。
「力抜いてね…」
まず中指を侵入させる。
佐助の中は狭く、熱い。
ぐるりとかきまぜると、佐助の内股がぶるりと震えた。
「ん…っ」
「ここ?」
佐助が反応した場所を中心に、円を描くようにして攻めていく。
巧みなタイミングで指を増やし、痛みを感じさせないように事を進めていくと、佐助は嫌そうな顔をした。
「そんなに手慣れて…っアンタこそ、何人の男を毒牙にかけたのさ…!」
吐き出す様に言い捨てた佐助に、は頬を膨らませた。
「毒牙とは心外だな。生きながらにして天国かいま見れるなんて最高だろ…?」
三本の指をバラバラに動かして、佐助の中をかきまわす。
佐助は、辛そうに眉を寄せ、上気した顔を腕で覆った。
「…入れるんなら、早くしてくれ」
まさか相手が達する前にイッてしまうなんていう醜態だけは避けたい。
そう思っての言葉だったが、はかりりと頬を掻いた。
「あー…ま、そうしたいのは山々なんだけどね。…今日はやめとくわ」
…まさか入れる逸物がありませんとは言えない。
…事は全然ないのだが、今は言わないでいた方が後々楽しそうだ。
「だから佐助、色々考えてないで、いつでもイッていいから」
中のコリコリした筋を押すと、佐助の体がびくびく跳ねる。
水から揚げられた魚のようなその姿に、はうっとりと囁いた。
「佐助、凄く可愛い」
きちゅ…と濡れた音を立てて出入りする指に、追い縋るように絡み付く内壁。
その感触を存分に楽しみながら、は佐助の唇を吸った。
甘ったるい唾液をすすり、歯列をぞろりと舐め上げる。
「ん…は、ァ…っ!」
口を離した瞬間、不意打ちのように中を強く擦られ、佐助の目が見開かれる。
が待ち望んでいたその瞬間は、案外短く、また佐助にとってはコマ送りのように時が流れる、最悪の時間だった。
その絶望にも似た表情と、僅かに宙を舞った塩辛い涙に、は目を細めた。
張っていた緊張と意地の糸が切れて半ば放心している佐助の、赤茶けた髪を優しく撫で、は佐助の上から退いた。
傍らの手拭いを取り、佐助が放ったものの残滓を拭う。
と、佐助がのろのろと身を起こした。
「…自分でするから」
一般ピープルにイかされた事に、忍のプライドが相当傷付いたらしい。
呆然と無然が混じった顔で、佐助はの手を退けた。
それを見て、は苦笑をこぼす。
「そんな顔しないでいいよ?俺たち吸血鬼族は血液をいただく時、歯を立てる。
その痛みに感づかれないよう快感の強い性行為の中でそっと貰う。
だから遺伝的にも後天的にも、性技に長けてるんだよ。…忍なんてメじゃない」
だからそんな顔するなよ、と頭を撫でる。
すると佐助はちらりとに視線を寄越した。
「…確かに、忍じゃ敵わないかもね」
だけど!と佐助はに人指し指をつきつけた。
「俺様は真田忍隊の長!絶対このままじゃ済まさないからな!」
覚えとけよ!と言い、佐助は服をひっつかんで天井裏へと消えた。
…天井裏で着るんだろうか?
あ…下帯忘れてる。
貰っとこう、飾っとこう。
しかし「覚えとけ!」って事は…
「今度は俺が抱かれちゃうのかな?」
…ま、そんなことさせないけどね。
宴会場の声が、遠く聞こえた夜だった。
***跡吐き***
とうとうやっちゃう佐助受けエロ。
でも主人公はけして男ではありません♪
ただ人よりちょっとエロくてシモな感じで色々と上手なだけですから!