【 004. 】



「着てよ着てよ着てよ〜〜〜!!!」

「うっせえ!着ねぇって言ってるだろうが!いい加減にしねぇと刀ブッ刺すぞ!!!」

「・・・・まだやってんのか」


うああああん!と、まるで子供のように手足をばたつかせる

青筋立ててそれを怒鳴りつける小十郎。

呆れた様子で見守る(でも決して止めない)政宗。

一体何が原因かと言うと、それぞれの状況の原因は、たった一つのアイテムである。

・・・そう、と政宗が前回買ってきた破廉恥な革服の所為だ。

はそれを小十郎に着てくれとせがみ、小十郎は「着れるか馬鹿野郎!」と切れている。

今にも宣言どおり刀をブッ刺しそうな勢いだ。


「着てくれなきゃ死ぬ!絶対死ぬ!死んでやる!」

「ああそうか!じゃあ死ね!今すぐにだ!」

「・・・・分かった」


スッと立ち上がり、小十郎に歩み寄る。

そして彼の刀をスラリと抜き、腹に当てる。


「・・・・さよなら、小十郎」

「脅しなんぞ通用・・・」


ブシャァァッ!


勢い良く噴出した血が、小十郎の頬に散った。

まさか本当にやると思わなかった小十郎と政宗が、慌てて止める。


「馬鹿野郎!やめねぇか!死ぬぞ!」

「おい!!やめろ!」


二人の大声に、部屋の前はあっという間に人だかり。

それを押しのけながら、何事かと幸村と佐助が走ってきた。

勢い良く襖を開け放つと、室内は明智光秀が泣いて喜びそうな状態だった。

血は勿論、臓腑の欠片が飛び散り、とても正視できたものではない。

顔を背けそうになるのを必死で堪え、幸村と佐助は室内に入る。

中では必死で制止の声をかけている小十郎、政宗と、刀で己の身をこれでもかと切り裂く血まみれの

は佐助の姿を認めると、ゆっくりと笑った。

ひどく虚ろで、恍惚としたその笑みに、ぞっとする。


「・・・佐助・・・小十郎が」


言葉と一緒に、血液を吐く。


「俺が選んだ服、着ないって言うんだ」


くすくす笑い始めたに、いよいよヤバイ気配を感じ取り、佐助は小十郎を揺さぶった。


「片倉の旦那!何でこんなことになるまで駄々こねるんだよ!」


言葉に詰まった小十郎の耳元に、小さく囁く。


「・・・もう、は助からない。はらわたがあれだけやられちまってるんだ。・・・片倉の旦那にも分かるだろ?!嘘でも良い、着てやるって・・・」


佐助の言葉に、小十郎は苦い顔をした。

忍びである佐助でなくても、あの状態ではもう死を待つしかないと分かる。

に目をやると、とうとう片膝をついて大量の血を吐いたのが目に入る。


「旦那!」

「・・・。着てやるから刀を放せ・・・」


刀をよこせと手を差し出す小十郎に、は首を振る。


「嫌、だ・・・小十郎、嘘ついてる・・・」

「嘘じゃねえ。この右腕、賭けてもいい」


小十郎の言葉に、は小さく頷いた。

そして、すっくと立ち上がる。


「ハー、痛かった。久しぶりに目の前に火花が散ったわ」

「「あ?」」


腹に刺さっていた刀を勢い良く抜き、小十郎に差し出す。

と、同時に、部屋中に飛び散っていた血液が、さらさらと砂塵のように床に落ち始める。

佐助が片膝をつき、それを指先にとってまじまじと眺めた。


「・・・灰だ」

「あったりー」


の傷からは、ぶくぶくと泡が立っている。

泡が治まったところには、綺麗な皮膚がついていた。


「吸血鬼の傷は大体こうやって治っちゃうんだよね。死に至る傷しか体に残らない」


体についた灰をぱっぱと落とし、は呆然としている小十郎の顎を掴む。

背が同じくらいなので上から見ることは出来なかったが。


「じゃ、楽しみにしてるから。・・・今夜」


・・・・やられた!





「出来た?」

「…まだだ」

「着方分かってる?」

「…分かってたまるか!」


押し殺した怒りの声に、は肩をすくめて嬉しそうに笑った。


「来なよ。着せたげるからさ」

「…チッ」


渋々といった様子で、隣の部屋にいた小十郎が戻ってくる。


「はいはい、そんな顔してないで、脱いだ脱いだ」


小十郎が掴んでいた革服を受け取り、チェーンを外す。

下帯だけになった小十郎に「それも取って」と言い、は革服を広げた。


「ここに右足通して。…でこっちに左手」


小十郎の体に絡み付くようにして、革服が着せられていく。

黒くぬめるような光沢の革は、ガタイのいい小十郎に随分と映えた。


「…出来た。…うん、やっぱりいいね。思った通りだ」


舐めるような眼で小十郎を眺め、はいやらしく笑った。

小十郎の首には黒く固い革の首輪。

そこから出た鎖が、袖がなく胸部までしかない上着に繋がり、その裾から出た鎖が、スリットを繋ぐジグザクの鎖に繋がっている。

ちなみにズボンの長さはももの上三分の一ぐらいだ。

の視線に、小十郎が心底嫌そうな顔をする。


「もういいだろうが」


さっさと脱いでしまおうと服に手をかけた小十郎。

その手を取り、は申し訳なさそうな顔をした。


「…そんなに嫌だった?」

「当たり前だ」

「そっか…でも、もちょっと我慢ね!」


がちゃ。


「…てめぇ」


手錠がかかった己の手を見つめ、小十郎は額に青筋を浮かべた。

そして、へらへら笑うに向かって、絡んだ両手で一発お見舞いする。

腹に決まったそれはしかし、小十郎の手に鋼を殴ったような痛みを与えただけだった。


「クソ!化け物が!」

「いやぁ、それって最高の誉め言葉」


ニッと笑い、は小十郎に足払いをかけた。

手が繋がれていて受け身がとれず、小十郎はもんどりうって倒れる。


「畳に倒れるエロい格好のお兄さん。いいねぇ」


立ったまま小十郎を見下ろすを、小十郎はギッと睨みつけた。


「調子乗ってんじゃねえぞ」

「…あくまでもそういう態度を崩さないわけだ」


スッと目を細め、は片足を小十郎の胸に乗せた。

ぐいと体を傾けると体重がかかり、小十郎の胸を圧迫する。


「く…」


息苦しそうな様子を見せる小十郎に冷たい笑みを見せて、は足を移動させた。


「腹筋もよく鍛えられてる…」


足先でぐにぐにと腹筋を押す。

その妙に妖しい触り方に、段々おかしな気分になってくるのを感じ、小十郎は苦虫を噛み潰すような顔をした。


「やめ…ねえか!」


色をおびているのをけどられぬよう、押し殺した声で怒鳴る。

しかしはしっかりとその色を聞き取り、妖しく笑った。


「やめても、いいの?」


つつっと足が動き、ぴっちりした革に包まれている小十郎の雄を踏む。

痛いか痛くないかの微妙な力で踏まれ、小十郎は奥歯を噛み締めた。


「やめろっつってんだろうが!」


吠える。

は少し驚いたようだったが、すぐに顔に笑みを張り付け、小十郎をなぶり続ける。

刺激に反応し、存在を主張し始める雄。

小十郎は何とか逃れようとあがくが、中心を踏まれていてはどうにもならない。

鎖付きの手での足を殴りつけるが、赤くも青くもならなかった。


「くそっ!」

「…いい加減おとなしくしなよ」


嘲笑うように囁き、は足先を器用に使って射精を促す。

革製の服をこれでもかと押し上げて益々大きく育つそこに、は忍び笑いを洩らした。

潮時を感じ、先端のふくらみをキュゥと踏むと、小十郎の体がビクンと跳ねる。


「くっ・・・・!」


青い香が、鼻先を掠めた。


「ふふ・・・雄ってイキモノは、射精しないと生きていけない哀しい生き物なのさ」


含めるように言って、は足を滑らせる。

にちゃ、と粘着質な音を立ててずれる革の下の、生暖かい液体の温度を感じながら。


「可愛い可愛い小十郎。可哀想な小十郎。鬼に気に入られたばっかりに、いらぬ辱めを受けて」

「・・・・っは、っ・・・・の、クソ野郎・・・・」


荒い息をつきながら、小十郎はを睨むことをやめない。

その男としての誇り高さに、その誇りを圧し折って叩き落す事にゾクゾクしながら、は屈み込んだ。

濡れそぼるズボンを丁寧に、それも半分まで脱がせる。

半分なのは、蹴りを繰り出す脚を封じるのも目的のひとつだが、の趣味による所が大きい。

ズボンが絡んで上手く動けなくなった脚をひょいと上げさせ、赤子のおしめを換えるようなポーズを取らせる。

流石の小十郎も、あまりの格好だと思ったのだろう。

情けなさに顔を青くした後、羞恥に顔を薄く赤らめた。


「いい加減に、しとけ・・・マジで、殺すぞ・・・!」

「こんなカワイコちゃんの上で腹上死も、悪かないね」


小十郎の顔にずいと顔を近づけ、熱く囁く。

しかしその顔は直ぐに離れ、口づけなんぞしてきたら舌を噛み千切ってやろうと思っていた小十郎の安堵もつかの間。

晒された最奥にかかる生暖かい息に、小十郎は一瞬にして己の危機を感じ取り、狂ったように暴れだした。


「触るんじゃねえ!」

「ッチ・・・!」


大の男、しかもかなり屈強+武将に本気で暴れられては、分が悪い。

は自分の着流しの帯を素早く抜き取り、小十郎の手錠と足首を合わせて括った。


「・・・油断も隙もないねぇ・・・」

「・・・・っ」


呟いて、小十郎に蹴られた腹をさする。

その肌蹴た着物から覗く裸体の美しさに、小十郎は思わず息を呑んだ。


「・・・あ?もしかして見とれてる?」


からかうような声も、小十郎の耳には届かない。

綺麗な形の小さな胸が、が喋る度ふるふると震えた。


「じゃあ、ちょっとサービスしましょうかね」


妖しく笑って、立ち上がる

肌蹴た服の下をちらちらと見せながら、妖艶に踊る。

所詮やっていることはストリッパーと同じなのだが、飛び抜けて綺麗な顔が、卑しさを感じさせないのだ。

自分の胸をすくい上げて悩ましげな溜息をつくと、小十郎の喉が鳴るのが聞こえた。

雄は隆々と立ち上がっている。

はくすりと笑って小十郎の傍に屈んだ。


「・・・サービスは此処まで。これ以上は金取るよ?」

「・・・・っ」


はっとしたように瞬きする小十郎に笑いかけ、は小十郎の最奥に舌を這わせた。

意識が飛んでいた小十郎の抵抗が、遅れる。


「・・・・っう・・・・・」


こじ開けるように舌先でえぐると、小十郎が息を詰める。

唇全体で唾液を流し込んでやると、小十郎の足先がビクッと跳ねた。


「・・・気持ち悪ィ・・・・」

「今はね」


呟くように言う小十郎の太腿を撫で、指を咥える。

唾液をたっぷりと絡めて、流し込まれた唾液をひくつきながら零している最奥にあてがう。


「う・・・っ・・・」


ずるりと指が入り込み、小十郎は体を震わせた。

悪寒と吐き気がこみ上げてくる。


「ちょっと我慢ねー・・・」


指先に神経を集中させ、そろりそろりと指を動かす。

小十郎の好い所は、案外簡単に見つかった。


「っあ!」

「・・・ここか」


入り口に近い所をぐるりと撫でると、小十郎の口から極々小さな溜息が漏れた。

見つけてしまえばこちらの物と、は遠慮なしに中を擦る。

女を抱くのとは違う、中から湧き出してくるような快感に、小十郎の体が揺れた。


「は・・・っ・・・・くぅ・・・・」

「押し殺してても辛いだけだよ?」


何もかも手放しちゃいなよ、と囁かれ、小十郎はを見た。

睨むには蕩け過ぎた眼で。

快感に霞む目を必死に瞬かせ、の目を見つめる。


『・・・本当に手放してしまえたら、どれほど楽になるか』


震える唇に苛立つことすら忘れ、小十郎は天井を見上げた。

心が、折れていく。


「・・・・っん!」


増やされた指に、体が竦む。

それを優しく宥めて、は小十郎の最奥を解していく。

十分に馴染んだのを見計らい、は指を引き抜いた。


「ふ・・・・・」


溜息のような声を漏らす小十郎の髪を撫でる。

今や小十郎は借りてきた猫のように大人しい。

だが、顔を覗き込むと、彼は意外な行動に出た。


「・・・っ」

「・・・・やったね?」

「・・・俺はてめえに従う気はねえ」


頬に吐きかけられた唾を親指で拭う。

しかしは、小十郎の屈服を拒む瞳に満足げに笑った。


「・・・それでこそ俺が目をつけた男だよ。でもね」


ここからは、容赦ナシ。そう囁かれて、小十郎は奥歯をかみ締めた。

絶対に、抵抗してやる。

滾る瞳にそう宣言され、はついと踵を返した。

そして、部屋の隅の袋をごそごそして、戻ってくる。

手には、この間貿易港で購入した、ガラスの張り型。

そのおぞましさに、小十郎は顔を歪めた。

がふっと笑う。


「・・・ま、怒ってようが睨んでようが、此処まできたら THE END ってヤツだ」


言いながら、は小十郎の脚を高く上げさせた。

勿論小十郎は暴れるのだが、帯や鎖、革服で、思いのほか動けない。

の少し冷たい手が、熱く蕩けている最奥に、張り型を押し当てる。


「・・・・っあ゛!!!」


ズブリと差し込まれたその冷たさと痛みに、体がしなる。

先の太い部分を飲み込んでもまだ続くごつごつした突起に、小十郎の目の端を涙が這う。

全部差し込まれた頃には、その涙は一筋、頬を伝うようになっていた。


「は、はっ・・・・ぅあ゛!」


息を整える間も無く抜き差しされ、小十郎の体がビクンと跳ねる。

それを見つめるの瞳が、鼠をいたぶる猫のそれと重なって、小十郎はその冷たさに喉を鳴らした。


「っん、は・・・あぅ゛!」


ずぷずぷと抜き差しされる物は、小十郎の体温で温まっている。

だから同じかそれより低い温度しかないはずなのに、酷く熱く感じて、小十郎は目が潤むのをとめられなかった。

手が自由だったら、酷く乱暴に拭ってしまっていただろう。


「っ、やめろ、もう・・・やめ・・・」


うわ言の様に繰り返す小十郎の頬に唇を落とし、は手にした物を益々深く埋める。

痙攣する小十郎の体を見つめながら、何度も抜き差しを繰り返す。


「・・・っ、は、ァ・・・!」


ぎくぎくっと体を強張らせ、小十郎は白濁を吐き出した。

己の腹に飛び散った生ぬるいそれを、呆然と見つめる。


「・・・こんなにいっぱい出して・・・後ろだけなのにそんなに感じた?」

「あ・・・・」


揶揄するような言葉にも、反論できない。

悪態もつけない。

頭が回らないのだ。


「ふふ・・・・随分と傷ついた顔してるよ?」


満足そうに目を閉じた後、小十郎の体を拭き清めながら、は言う。

そうさせたのは自分であるのに気づかないかのような声だ。


「・・・・殺したいほど憎いと思ったら、いつでもかかっておいで。闇討ちでも寝首を掻いても良い」


の言葉に、停止気味の頭で考える。

辱められた。

誇りを傷つけられた。

慰み者にされたも同然。

・・・しかし何故だろう。

憎いは憎いが、殺したいと思えない。

いや、殺したいほど憎いには違いないのだ。

ただ、それ以上に「こいつの行く末を見てみたい」と思ってやまない。

因果応報、惨い死に方をするのか?

人間を食らって生き続けるのか?

意外とあっさり戦場で死んでしまうのか?

・・・気になる。

こいつは俺が殺したいほど憎めないと悟った上で「殺したいほど」と限定しているのだろうか?

本人にしか分からないし、訊いても茶化すだろうから聞かないが。

音を立てて外された手錠に、痣のついた手首を擦り合わせながら。


「・・・・明日の朝日は拝めねぇと思え」


一応啖呵を切ってしまうのだった。





*余談*

「・・・片倉の旦那・・・これ」

「何だ猿飛」

「何も言わずに受け取ってくれ。捨てても良い。・・・俺が渡したいだけだから」

「・・・・・これは」


腕章。

赤い布に、白い糸で刺繍がしてある。

・・・『に喰われない方法を考える連盟』と。


「・・・・猿飛」

「・・・何」

「・・・対策会議も、開いたほうが良いと思うぞ・・・」





***跡吐き***

今回の犠牲者は小十郎でした。