【 王天君と反骨 - 彼は野良犬か 】
蜀は魏、呉、共に傘下に収め、残るは呂布軍と南方の蛮族となっていた。
だがここにきて『黄巾族』に次ぐ『蒼狼党』が現れ、それの掲げる絵空事に民衆は縋りつつある。
その上その軍師は切れ者で、孔明や司馬懿の策でも中々落ちない。
ある戦で蒼狼党に打撃を与えた後、孔明は将軍を集めた。
「お疲れとは思いますが・・・・・・・もう『気紛れな神風』を待ってはいられないのです」
「・・・・諸葛亮殿の言う男は本当にここにいるのだろうか・・・・・」
将軍達を各所に散らせ、孔明は『美しい男を捕えろ』と言った。
色で迫られても決して屈してはならぬと。
趙雲は主要な街道に陣取っていた。
こんなあからさまな所を通るのかとも思ったが、万が一と言うこともある。
現に今も・・・・
「待たれよ」
ぼろ布を纏って杖を突いた男が歩いていた。
覚束ない足取りは盲目なのか。
「すまないが顔を・・・・・っ!」
「何ですかぇ?」
「いや・・・・・・・・行っていい」
上げられた顔は右半分が髪で覆われていたが、酷く醜かった。
おそらくは何かの傷跡だろうが・・・・・・・・。
ふらふらと杖を頼りに歩き去る姿を見送る趙雲は知る由もない。
これこそが神風の正体だと・・・・・・・・
その頃魏延は図らずして趙雲の後方にいた。
互いを認識できるほど近くはなかったが。
「・・・・・・待テ」
ふらふらと歩く男を呼び止め、魏延は一度馬から降りた。
「顔・・・・・見セロ・・・・・・・・・・」
「ぁい」
趙雲も見た、醜い顔。
魏延は暫くそれを見ると、口を開いた。
「反対・・・・・・・見セロ」
「!」
男は一瞬驚いたようだった。
何しろ瞼も剥げ落ちて目を見開いたのかすらわからないが。
次いで、けたけたと笑いだす。
「まさか反骨に捕まるとはなぁ!」
「?」
「まぁ俺を連れて本陣に戻ってみろよ。そうすりゃァ分かるさ」
そう言って男は右半分を覆った髪を上げ、逆に左半分を下ろした。
出来上がったのは、世にも美しい貌の男。
「行こうか?反骨」
「誰も捕まえられませんでしたか・・・・・・・・・」
落胆する孔明。
ホウ統も首を振っている。
そこに駆け込んでくる、馬。
「魏延!天幕の中まで馬で駆け込むとは・・・・・・!」
「カリカリすんな孔明。お前の癇癪は見ていて気が滅入る」
涼やかな声と共に、長い蒼銀髪が舞い、一人の男が馬から降りた。
「「!」」
ホウ統と孔明の声が重なる。
男はどうやらと言うらしい。
「お前の毛嫌いする反骨は中々面白い事を言うな」
「魏延が?」
眉を潜めた孔明に、が可笑しそうに笑う。
「趙将軍など俺の左半顔を見ただけで行っていいと言ったのだがなぁ。この反骨はもう半分を見せろと言いやがった。
面白いから此処迄付いてきたのだがな。お前の事だから此処は俺が色で切り抜けると思っただろう?」
「・・・・・・・読まれていましたか」
さらり、と音を立ててが左の髪を除ける。
余りの酷さに、皆息を呑んだ。
「くくっこれ見て嬢ちゃん達が夜廁に行けなくなると思うと面白くてな。やめられん」
「・・・・・・・・」
「昔貌を揶揄かわれてな。精々男に媚を売って策を成せばいい、と。初めて激昂、と言う体験をした。
次の瞬間には額を小刀で切り裂いて皮ひん剥いてな。そいつらの前に叩きつけてやった。
まぁ夏の事で蛆が湧いて大変だったがな。箸で蛆取りながら激昂なんてするものでないと思ったね」
髪を下ろし、は孔明の方を見た。
「それで?用は何だ?」
「・・・・・・貴方が魏や呉を落とす時に裏で動いていたのは知っています」
「それで?」
「だが貴方の『神風』は気紛れ。もうそれでは戦ってゆけぬのです」
「興味ない・・・・・・・・が」
が『興味ない』と言うのはいつもの事だ。
だがそれに『が』がついたと言う事は何らかの条件を提示してくる可能性が高い。
孔明の背が自然伸びた。
「何ですか?」
「これを寄越せ」
の指の先には、魏延。
「この反骨は面白い。暫く遊べそうだ」
「・・・・・・・」
困ったような顔の孔明。
だが彼が答えるよりも早く、魏延が首を振った。
「我・・・・・ノ物二・・・ナル・・・・・・」
「魏延・・・・・・・」
孔明が何とも言えない微妙な顔をする。
だがは唇に人差し指を当てて悪戯っぽく笑うと、目を細めた。
「どうせ言葉もままならぬこの反骨だ。書簡も満足に書けはすまい?俺が代わりに二人分働こう。その代わり俺の趣味嗜好には口を出すな」
そう言われては何も言い返せない。
仕方なく頷き、取引は決してしまったのだった。
蒼狼党討伐は何と三日で片が付いた。
但し率いる無名の軍勢が討った、と言うことになっている。
理由は簡単、の策には仁も義もないからだ。
ひたすら無慈悲に、残虐に策を遂行する。
水鏡は孔明を臥龍、ホウ統を鳳雛、を王天君と評したという。
王天君とは天才軍師であり仙人の太公望に痛打を与え尚且つ無傷だったという軍師だ。
だがその策は見事ながら仁義に欠け、とても正視出来たものではない。
確かには天才だが、正に王天君であった。
さて、城に帰った後。
皆書類整理に追われる中、は魏延と向かい合って書簡に筆を滑らせていた。
これは魏延の分の書簡なのだ。
「・・・・・ん、こんなもんか」
基本的に少ない方の魏延の書簡を驚異的なスピードで終わらせ、は伸びの一つもせずに今度は自分の書簡を開いた。
そして髪を纏めて括り、左目から薄い何かを外す。
魏延がじっとそれを見ていることに気付くと、は軽く笑った。
「最初に会った時に、杖をついていただろう?」
「・・・アァ。眼モ・・・・濁ッテ、イタ・・・・・」
「瞼が無いと目が乾いて痛む。大魚の鱗を入れてある」
そう言うと、は自分の書簡を片付け始めた。
魏延の時の比ではない。
魏延は唯唯、に言われるまま、終わった書簡を各将や軍師に届けるばかりだった。
「あー・・・・・・つっかれた」
夜の宴に、は少し遅れて間に入った。
「書簡、届きましたよ。相変わらず綺麗な字ですね」
「世辞はいいから酒くれ」
孔明に此処まではっきり言える人間はもはや何処にも居ないだろう。
は渡された酒を手酌で注ぐと、一気に干した。
その呑みっぷりに張飛が口笛を吹くが、孔明は渋い顔、ホウ統は苦笑だ。
「あんまり呑むと身体に障るよ?」
「酔ったことはない。程度も弁えてるさ」
の言葉に、孔明が困ったように溜息を吐く。
姜維は首を傾げた。
「殿は一体お幾つなのですか?丞相よりは年上に見えますが」
「だとよ。孔明?」
「は私と六つ違いです」
「では・・・・・・」
「但し六つ下の16ですがね」
「「「?!」」」
これには皆驚いた。
同じ年になる陸遜でさえも信じられなかった。
大人びた美しい美貌に、落ち着いた不遜な態度。
何よりその完成された策。
皆が息を呑む中、は杯をあけて艶然と微笑んだ。
「魏延、お前は俺をどう思った?」
突然の問いに、魏延は少したじろいだ。
だが、少し考えて答えを返す。
「、野良犬・・・・・・・違ウ」
不思議な答えに皆ぽかんとする中、がけらけらと笑いだす。
笑い過ぎで滲んだ涙を拭って、は魏延に向き直った。
「お前聡いなぁ!あれが俺の歌だって分かったのか!」
「・・・・・・・・アァ」
「歌、ですか?」
聞き返した孔明に、が側の侍女から琵琶を受け取る。
そして美しく掻き鳴らし始めた。
両目ひらく朝靄と
辺り響く太陽の音
ただ駈けろと囁く時は
野良犬の足と土埃
吹き抜けるは南風
耳かすめるのは誰の声
疑いなどなくひた走る
時々は何か追いかけながら
瞳映りただ流れ去って行く百千の街並みは
ずっと遠く生まれる前に夢で見た世界に似ている
駈けて、望みはただ胸の中、 手も伸ばせない景色に目が眩む
青く浮く空となら
どこまでも走れる気がしていた...
陰をつくる黒雲と
頭上に響く烏の声
まだ駈けろと囁く時は
野良犬の足と
うちつけるは俄雨
流れ落ちるのは誰の涙
震え凍えてもひた走る
時々は何かに追いかけられながら
瞳こらせばただ広がるこの道の先の暗闇は
いつか確かに聞いたはずのお伽噺の帰結に似ている
駈けて、思いはただ胸の中、認められない言葉 喉を殺す
高く浮く空の途切れる場所を見たような気がしていた...
どうか雨雲はらい明日は明るく日の光で照らし給え、
孤独を見てしまった野良犬のこの先の旅路に幸多かれと
淋しさも悲しみも腕の中、聴くことも出来ぬ歌 胸に沁みる。
疲れ果てた身体休めるより潰れるまで走る方がいい
駈けて、望みはただ胸の中、手も伸ばせない景色に目が眩む
青く浮く空となら
どこまでも走れる気がしていた
(作詞作曲編曲:ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP 唄:KAITO、MEIKO)
歌が終わっても、誰も何も言わなかった。
は唯静かに酒を呑んでいる。
哀しい野良犬を癒すものは一体何なのだろう?
それは武でしか己を語れぬ反骨と、流暢な策で己を語る王天君の話の始まりの唄。
「おいで」
に手招かれ、魏延は戸惑いながら寝台に近づいた。
が蜀に来て一月。
彼は「一週間先の仕事まで仕上げたら魏延を仕込むから休暇を寄越せ」と孔明に言っていた。
魏延は何を「仕込む」のか分からなかったが、自分を敵視する孔明の哀れみの視線に、何か悪い事なのだろうな、と予想は付いた。
だがが伴うのは寝台だ。
一体何をするというのだろう?
「魏延」
優しげでいて絶対の命令に、魏延は一歩、また一歩と寝台に近づいた。
寝台の脇に立つと、手を引かれて寝台に沈められる。
「魏延はさぁ・・・・女、抱いた事あるかぃ?」
「・・・・・・アァ」
「じゃあさ・・・・・・」
男に抱かれた事は?
の問いに魏延は首を振った。
「無イ・・・・・・」
「でも知識としては知ってるんだな」
魏延の迷うような瞳を覗き込みながら問う。
確かに魏延は軍に身を置く者として、そういう同性間の行為があることを知っていた。
だが具体的にどうするのかは知らない。
はその迷いを汲み取ってくすりと笑うと、魏延の瞳を覗き込んだ。
「これから魏延を『抱く』。けど魏延は俺と約束したな?俺のものになる、と。だから抵抗は許さない。いいな?」
の視線に射られ、魏延は口元を強ばらせて頷いた。
その口から、たった一つ、願いが零れる。
「仮面、ハ」
「・・・・・・分かった、外さない」
それでいいね?
そう尋ねられ、魏延はこくりと頷いた。
の美麗な指が、魏延の衣を脱がせる。
一糸纏わぬ姿にすると、は感嘆の溜息を吐いた。
「美しいな・・・・・・」
歴戦で傷だらけの身体を美しいと言うのは魏延には理解出来なかった。
だがその視線の孕んだ熱に、思わず身体を竦めた。
「何故隠す。恥ずかしいのか?」
「オ前、目付キ・・・・・飢エタ狼ミタイダ」
魏延の言葉に、が噴き出す。
そして魏延の仮面の額に自分の額を当てた。
「あぁ・・・・餓えている。魏延が喰いたい」
両の眼が、魏延の瞳を捉える。
皮の剥がれた恐ろしげな顔でも、魏延は嫌いではなかった。
「ワカッタ・・・・・・」
こくりと唾を飲み、魏延はの衣に手を掛けた。
するのなら、脱がせるべきだと思ったからだ。
現れた美しい身体に、魏延は小さく息をのんだ。
「ん、良く出来たな」
が魏延の頭を撫で、スッと顔を近付ける。
そして悪戯っぽく笑った。
「接吻するが、噛み付くなよ」
「ァ、アァ」
そっと、の柔らかな唇が触れてくる。
その滑らかさに驚いて口を少し開くと、ぬるりとした舌が入ってくる。
思わず噛みそうになったが、の言葉を思い出してとどまった。
「ン、ンゥ・・・・・・ハァッ・・・・・・・・」
深く舌を絡められ、魏延が小さく呻く。
舌を引き出されて吸われるたび、心臓が煩く喚いた。
は16の癖に手慣れた様子で、息も乱さず魏延の舌を舐っている。
肉厚な舌を軽く噛んでちゅっと吸うと、魏延の身体が震えた。
「ン、ンゥ」
軽く胸を押されて唇を離すと、魏延が軽く咳き込んでいた。
どうやら呼吸の間合いが取れなかったらしい。
「ハ・・・・・・ハッ・・・・・・・・・ケホッ」
「苦しかったか」
「苦シイ・・・・・・」
見上げてくる魏延の濡れた瞳にふっと笑って、は魏延の身体に唇を落とした。
初めは手を取って指先に、徐々に腕、肩、胸と辿る。
鵄色をした尖りに吸い付くと、魏延の身体がぴくんと跳ねた。
「ァッ・・・・・ャッ・・・・・・・!」
「駄ァ目」
ぢゅるぢゅると音を立てて吸い、軽く歯で扱く。
ピリッとした痛みとぞくぞくする快感に、魏延は嫌がって身を捩る。
だが思いの外力の強いに押さえ付けられ、身動きが取れない。
第一頭の中は初めての感覚にパニックだし、腰にも力が入っていない。
「ンァ、ハ・・・・・・」
「ふふ、可愛い紅色になった」
真っ赤に色付いた尖りに目を細め、は魏延の脚を開かせた。
間に身体を入れ、むちりと引き締まった脚の内腿に口づける。
「ンッ・・・・・・・・」
「んー、いい弾力」
軽いリップ音を立てて吸っていたのが、段々キツくなる。
赤い鬱血の花弁を散らすと、は立ち上がって震えている魏延の雄に顔を近付けた。
ふっと息を掛けると、ぴくんと動く。
「ウァッ!」
ちゅる、と先端の膨らみを含まれ、魏延の身体が跳ねる。
割れ目を舌先で開かれて、腰が重く疼いた。
「ゥンッ・・・・・・」
「ぁは、味濃いな。処理してなかったのか?」
は魏延の先走りを舐めながら笑うと、喉の奥まで雄を含んだ。
柔らかな咽頭に先端が当たって、魏延は身体を震わせた。
「ンッ・・・・・・・」
ぢゅぷっと音を立てて吸い上げられ、魏延の腿がの頭を挟み込む。
何度も唇で扱かれて達しそうになったところで、は唇を離した。
「ァッ・・・・・・・」
未練がましい声が洩れ、魏延は自分の声に赤面した。
は軽く口元を拭うと、魏延の頬に口づけて囁いた。
「暴れるなよ」
魏延の膝を曲げ、大きく開かせる。
思わず脚を閉じかけた魏延をひと睨みすると、その冷たさに魏延の身は竦んだ。
「ウァッ?!」
後孔に触れた熱く柔らかな感触に、魏延は悲鳴を上げた。
ぬるぬると這い回るそれがの舌だと認識して、魏延はあまりの衝撃に思わず暴れた。
瞬間、今まで舌が這っていた場所に痛みが走る。
思わず見れば、がじっと見ていた。
「魏延・・・・・・・・?」
「ッ・・・・スマナ、イ・・・・・・・・」
謝って、身体の力を抜く。
気持ち悪さに身体がおののくが、はそんな事は気にしない。
指一本を浅く出し入れして入り口を解し、柔らかくなってきたら二本目を掛けて入り口を拡げる。
そこから舌を差し込んで唾液を流し込み、潤わせる。
十分に濡れたら顔を離し、ゆっくりと指でなぶった。
「ゥ、ン・・・・・・ァ・・・・・・・ッ」
「ここか?」
前面の深いところをなぞると、魏延が堪えきれない声を上げる。
はぺろりと舌なめずりをすると、魏延の脚を肩に引っ掛けた。
その時垣間見たの雄に、魏延は身体を硬直させた。
太い・・・・し、異様に長い。
あんなものが入るのだろうかと疑問だったが、自分はと約束した。
押し寄せる恐怖にぎゅっと目をつぶると、唇に優しい熱が触れる。
の、唇。
「大丈夫だから・・・・な?」
その言葉を信じるしか魏延にはすべがない。
力を抜くと、熱い楔が押し当てられた。
「アッ、ゥアッ・・・・・アァッ!」
入ってくる熱い塊は、魏延に酷い痛みを与えた。
だが半分程飲み込まされた時に、腰が痺れるような快感が走った。
「ァッ」
「ん?この辺だったか?」
「アァッ!」
背中の毛がぴりぴりと逆立つような快感に、魏延は強く敷布を握った。
立ち上がった雄からポタポタと蜜が落ちる。
「駄目ダ・・・・・我、何モ・・・・・出来ヌ・・・・・・!」
「うん、いいよ。魏延が頑張るのはもうちょっと後な」
「ンァ・・・・・!」
ズズッと押し込まれて、内腑が押し上げられる苦しさに魏延が呻いた。
はすべてを収めきって、ふ、と笑った。
この反骨、酷く具合がいい。
趣味から幾多の男女を抱いてきたが、こんな名器は初めてだ。
良い拾い物をした。
そう思いながら、は目を閉じて震えている魏延の頭を撫で、腰を動かし始めた。
魏延は衝撃と快楽に声も出せずに身体を跳ねさせている。
その様子もいいが、やはり声が聞きたい。
は魏延が一番感じる前面の奥の壁を強く突いた。
「ウァゥッ!」
途端に強く締まる後孔。
の腹に擦れる魏延の雄が熱い粘液を吐き出した。
は強く締まった後孔に深く押し入ると、欲の証を注ぎ込んだ。
荒い息を吐く魏延に軽く口づけると、彼はにこりと笑った。
「これから一週間、魏延が後ろだけでイけるように『仕込む』。覚悟しとけ」
自分の身体をつくり変えられるのは怖かったが、自分に拒否権はない。
魏延は唯黙って、頷いた。
「孤独を知った野良犬のー・・・・・」
は夜に目を覚ますといつもこの歌を口ずさんでいる。
窓辺に座った物憂げな顔は美しく、恐ろしく、そして何より空虚だった。
魏延はいつも思う。
何をそんなに儚むのかと。
そしてその空虚が知りたいと。
この部屋に来て六日目の夜に、魏延はまた、そう思った。
「そうだねぇ…あの子とお前さんは似ているのかもしれないねぇ・・・・・」
魏延の話を聞くと、ホウ統は寂しげに笑った。
そして遠くの景色を見ながら魏延にも分かるように話をする。
「お前さんは口下手だ。武で己を語るね?」
「・・・・・アァ」
「あの子は策でしか己を語れない。頭は大人で心が子供のまんまなのさ。だからいつも孤独なんだよ」
あの子は早く大人になりすぎたんだ。
そう言って、ホウ統は魏延を見た。
彼は何か考えているようだったが、ホウ統の顔を見て確りと告げる。
「我、ノ空虚・・・・・・埋メタイ」
その真剣な声に、ホウ統の頬が弛む。
孤独を知るこの男なら或いは・・・・
「お前さん、に惚れたね?」
「惚レ、ル?」
「ふふ、気付いてないってのも可愛いねぇ」
が毎晩魏延に何をしているか知らぬ輩は居ない。
だがそれでもの孤独を埋めたいという魏延の言動は、まさに恋する乙女そのものだ。
「それをそのまんま告げちゃああの子は必ず反発する。・・・・・そうさねぇ・・・・・・・」
その夜、交わって気絶した後、夜半に目を覚ました魏延は、窓辺で唄うに近づいた。
「ん、起こしたか・・・・・・・っ」
魏延は腕を伸ばし、を抱き締めた。
ホウ統はそのまま告げるなと言った。
だが気持ちを素直に伝えろとも。
「好キ、ダ」
「!」
「我、・・・・好キ・・・・・」
魏延の素直な告白に、の身体が硬直する。
「こんな・・・・醜い貌でもか?」
「顔、関係ナイ」
が魏延を見上げる。
魏延は己の仮面に手を掛けた。
情事でも晒さなかった顔が露になる。
「魏延・・・・・・・・」
魏延の額から右目の下にかけては、大きな切り傷の痕があった。
が手を伸ばし、それに触れる。
「それでもお前は、美しいよ」
「我・・・・・醜イ」
の言葉に魏延が首を振る。
だがはそのまま言葉を続けた。
「その傷はお前が自身を武で語った時のものだろう?俺のは違う。癇癪を起こして自分で傷つけた。愚者の証だ」
が吐き捨てるように言うと、魏延はを抱き上げて膝に乗せ、窓辺に座った。
軍師でありまだ16の青年の身体は軽かった。
ぎこちない手が、長い蒼銀糸を梳く。
「子供、癇癪起コスモノ」
「俺はガキじゃ・・・・・・・」
「、マダ我ノ半分モ生キヌ・・・・・・」
魏延はもう37になる。
の倍に五歳も足す。
は黙って横顔を魏延の胸に埋めた。
そしてしばらくして、ぼそりと呟く。
「武で己を語るのは一向に構わない。・・・・・だが、俺より先に死ぬな」
年齢差を考え、それは無理だ、と言おうとした唇を、の柔らかな唇が塞ぐ。
ちゅ、と小さく音がした。
「俺は心の臓に病がある。長くは生きられん・・・・・・・・」
「!」
「お前が死んだら俺も死ぬ。俺が死ぬ時はお前を連れていく」
それは捻くれた子供の精一杯の告白。
魏延はゆっくりと頷いた。
互いの目が合い、自然唇が触れ合う。
「お前は、俺のものだ」
「・・・・・ワカッテイル」
野良犬は伴侶を得た。
飼い犬になれなくとも構わない。
飼い犬が必ずしも幸せとは限らないのだ。
今は唯、この短命の華を咲き誇らせるだけ・・・・・・・・。
***後書***
来ました魏延夢ー!魏延ってあのエロイ格好で戦場駆けるとか駄目ですよね?(死ね)
だって足とかモロ★見え、DETH−YO?!
いけません旦那様って感じですよ。
新たな目ざめだ・・・・魏延のエロい一週間生活とか書きたい(無理でしょ、体力的に)。
4エンパをもっかいやってたら魏延が登用されてそこから魏延でプレイ。
でもパンチラとか太腿に目が行って死ぬ死ぬ(ダメじゃん)。
魏延の太腿にかぶりつきたいです。。。(病院行け)