【 持ち物はお前だけ 】



「俺これ嫌いなんだよ・・・・・・・・」

朝食時、瓜の魚醤漬けの皿を避けながらが眠そうに言う。

気だるげな顔は左半分を隠したいつものスタイルで、壮絶なる美貌を醸し、朝日にきらきらと眩しく映えていた。


「ちゃんと食べなきゃ駄目だよ?」


ホウ統の言葉にもは嫌そうに目をやるだけだ。

そして一度ゆっくり瞬くと、向かいに座る魏延の顔を下から覗き込んだ。


「魏延が食わせてくれたら、食う」


にやりと笑う顔も色気に・・・・・というか、普段から色気たっぷりなのだが・・・・まぁ溢れていて、魏延はたじろぎ・・・・はしなかった。

ちょっと・・・・というかかなり鈍感な彼は直接的な言葉にしないと色々伝わらないのだ。

小首を傾げ、箸で摘んだ瓜漬けをの口元に持っていく。


「・・・・・・・・ん」


むぐむぐと口を動かすに孔明は固まっていた。

昔から嫌なものは絶対に受け付けなかったが・・・・・・・


「いいなぁ。周瑜様はあんまりあーん、させてくれないのに」


小喬が羨ましそうに言う。

周瑜は苦笑だ。

が軽く笑った。


「俺ァ先が短ィから甘えていいんだよ」

16のガキが何を言う」


それを鼻で笑った夏候惇に、孔明とホウ統の咎めるような視線が向けられる。

皆が不思議に思っていると、魏延が心持ち暗く呟いた。


・・・・・・・心ノ臓、病アル」

「ま、平たく言えば二十歳まで生きられんのだ。医者には十八迄と言われている」

「「「なっ・・・・・・・・」」」


あっけらかんと自分の死期を告げるに、皆暫し呆然とした。

だがは魏延に瓜を食べさせてもらいながら楽しげに笑うのだ。


「だから呑む打つ吸うはやるし姦淫にも耽る。策も立てる。そして魏延が死んだら死ぬ」

「魏延が?」

「あぁ」


怪訝な顔をした孔明に、がにやりと笑う。


「俺の唯一の持ち物だ。地獄の果てまで持っていく」


その含みを持ちつつも綺麗な笑みに、孔明は溜息を吐いた。

こんなに無邪気に笑ったは見た事が無い。

余程この限られた「今」が幸せなのだろうと思うと、渋い顔も出来なかった。

幾ら生意気でも孔明とてこの弟弟子が可愛くて仕方がないのだ。

ついつい甘くなってしまう。

でも一応。


「相手が定まったのなら、せめて無闇やたらな淫行はやめてくださいね?」


釘を差してしまうのだった。





「ある学生が戯れに小さな蛇を捕らえて飼っていたところ、大変大きくなった。それでも学生はその蛇を担いで歩いた。

 皆はそれを担生と呼んだと言う・・・・。遂に担ぐ事が出来なくなった蛇を学生は大沼沢に放してやった。

 それから四十年、蛇は大いに育ち沼沢地を通る人を呑むようになってしまった・・・・。そこにかつての学生が通りかかる。

 彼は老いていたが、襲ってきた蛇を覚えていた。そこで「担生」と呼ぶと、蛇は頭を垂れて立ち去った・・・・・・。

 噂を聞いた役人は大いに怪しみ、老いた学生を捕らえて処刑しようとした。

 牢の中で学生が嘆いていると、その夜、一晩で一県まるまる陥没し、湖の底となった。だが学生の居た牢だけは無事だったという」


清流のような声が語る物語に、魏延は耳を傾けていた。

は魏延の胡坐枕でゴロゴロしながら色んな話をしてくれる。

魏延はそれが好きだった。

澄んだ水の様な声が鼓膜を打ち、染み入っていく。

伽噺でも説話でも、は魏延に合わせて難しい事は言わない。

そんなが、魏延は好きなのだ。

・・・・・自覚は多少薄いが。


「水害起コル、担生ガ暴レルノカ?」

「ふふ、実際は過ぎた雨の恵みや何かさ。だがもしかしたら・・・・・・担生が学生を恋しがって慟哭しているのかもな」

「ソウカ」


の指が魏延の顔の傷をなぞる。

魏延もの左半顔を覆う髪を退けて傷跡をなぞった。

二人きりの時に隠し立てするものは何もない。

瞼の無い目がぎょろりと魏延を捉える。

それが鱗で濁っているのが残念だと思っていると、がふわりと笑う。

そして見透かしたように鱗を外して置いた。


「眼が痛い」


言われ、魏延は身を屈めての眼をひと舐めした。

が楽しげに笑う。


「魏延」


が身を起こし、魏延の唇をついばむ。

厚い唇を上下交互に含んで吸うと、魏延の身体が震えた。


・・・・ッ・・・・・・」


首の筋を軽く噛まれ、喉仏を舐められる。

甘い痛みに、魏延が喉を鳴らした。

それに気を良くし、は魏延の衣に指を引っ掛けた。

するするっと脱がせていくと、引き締まりながらもたっぷりと筋肉の付いた身体が露になる。


「ァッ」


鵄色の尖りをちゅっと吸うと、魏延の身体がぶるりと震える。

逃げる様に退いた身体を引き寄せて、堪え難い水音を立てて舐めしゃぶる。

魏延の頬がかぁっと染まった。


ッ・・・・モゥ、ヤ、メ・・・・・」


胸から這い上がるぞくぞくした快感に、魏延は立ち上がってしまった雄を押さえた。

だが血の集まった淫肉は押さえて鎮まるようなものでもない。

魏延の大きな手指の間からはみ出てしまっている。


「淫靡だな」


チュッと可愛いリップ音を立てて、の唇が魏延の頬に触れる。

そのまま唇に口づけられて、魏延は反射的に唇を開いた。


「ン・・・・・・・・」


ちゅく、と濡れた音がして舌を絡められる。魏延はこれが苦手だった。

上手く息ができなくなる。

もそれを分かっているからキツく絡め取りはしないし、緩く愛撫してくれる。

心地好い快楽の接吻に魏延が酔っていると、がそっと魏延の手を退けて雄に触れてきた。


「ンァ・・・・・・・!」


キュッと握り込まれ、思わず腰が浮く。

カリをなぶるように扱かれて、魏延は胸を喘がせた。


「ア、ア・・・・・・ア!」


何しろ座ったままの事なので、魏延には自分が何をされてどう反応しているのか見えてしまう。

それが恥ずかしくて、魏延はぎゅっと目を閉じた。


「見ないのか?魏延の此処が涎垂らしてるトコ」

「ッ・・・・・・・・」


耳の中に舌を入れられ、肌が粟立つ。

出来れば耳も塞ぎたかったがそれでは身体が崩れてしまう。

だがは何でも見透かしてくるのだ。


「ほら、横ンなれ。そうすりゃァ耳も塞げよう?」

「ウ・・・・・・・・」


言われるまま、横になった魏延が耳を塞ぐ。

だが・・・・・・・。


「アァッ?!」


途端強くなる快感。

勿論が攻め手を強くしたのもあるのだが、彼は思わず耳から手を離した魏延に甘く嘯いた。


「人は五感を断てば残りの感覚が鋭くなる。お前は今、目と耳を塞いだろぅ?」

「ン・・・・・・・・」


急激な快楽に滲んでいる涙を拭ってやれば、魏延が素直に頷く。


「今のような体験が嫌なら俺を見ていろ。俺の声を聞け」

「ワカッタ・・・・・」


純朴なというか鈍感な彼は、それを素直に信じて頷いた。

が満足気に笑って傷の走る額に口づけをくれた。


「ァ・・・・・・・・!」


にちゃにちゃと立つ音に目を向ければ、己の雄がの手を蜜塗れにしてそそり立っている。

恥ずかしさに顔から火が出そうだった。


「ほら、此処」

「アゥッ」


の指が鈴口の割れ目を割り開く。

蜜が湧きだす穴が見えた。


「桃色でさァ・・・・可愛いよな・・・・・・」

「ン、ンン・・・・・」


にゅりにゅりと敏感な粘膜を擦られ、魏延は肩を震わせた。

粗相してしまいそうな快感に、知らず手を握り締める。


・・・・・・・・」


訴えるように目で見ると、がくすりと笑って口づけてくれた。

ひそりと息を吐いて力を抜くと、が蜜に濡れた指をゆっくりと差し入れてくる。


「ンッ・・・・・・・・・」


膝が曲がって強張る。

それを軽く撫でながら、は中を探った。

魏延の好い所は深くの前面にある。


「アッ!」


魏延の手が虚空を掴む。

屈強な武将に掴まれればかなり痛むだろうに、はその手を己の肩に回させる事を厭わない。

魏延も初めの内は戸惑ったが、今はそれに縋っている。


「ンッ、ンンッ!」


脚をひくつかせて胎内を擦られる感覚に耐えていると、が指を増やすのが分かった。

巧みな指運びに痛みは少なく、仕込まれた魏延の身体はその愛撫に悦んだ。


「ァッ、ハァッ・・・・・・」


潤んだ瞳がを捉える。


「我・・・・モウ、我慢出来ヌ・・・・・!」


切ない懇願もは軽く笑って流してしまう。

今にも達してしまいそうな男根をいきり立たせ、魏延は過度の羞恥から震えた声で哀願した。


「我ノ中・・・・欲シイ・・・・ノ・・・・・・・男、根・・・入レテ欲シイ・・・・・・」


ぽたり、と魏延の右目から涙が落ちる。

決定打が与えられないもどかしさと、屈辱寸前の羞恥から。

は満足気に笑うと、ゆっくりと衣を脱いだ。

魏延の目が瞬く。

この美しい身体を見るのが、魏延は好きだった。


「いいか?」

「ン・・・・・・・・」


脚を肩に掛けられ、魏延は小さく頷いた。

ゆるゆると男根が押し入ってくる。

腸壁を擦られる圧迫感に喘いでいると、深いところに到った時、ビリッと腰が痺れた。


「ァッ、アッ」

「お前本当此処好きだなぁ」


苦笑しながら言うと、魏延が少しパニックを起こしながら口を開く。


「ヤッ、ナ、何ダ」

「感じるトコロ。お前は此処」


ゆっくり亀頭で擦ってやると、魏延の菊座がぎゅぅっと締まる。

痛みを感じる程の締め付けにも、は緩く笑うばかりだ。


「今日はゆっくり達ってみるか?」


魏延の肌に、の額から汗が落ちる。

それが何故だか嬉しい、と魏延は思った。


「アッ・・・・・ァッ・・・・・ンンッ・・・・・」


くちゅ、ぐぷ、と濡れた音を立てての男根が出入りする。

魏延の菊座は粘膜が真っ赤に充血して熟れていた。


、早ク・・・・中・・・・・」

「あぁ、お前は種付けされぬと達けぬのだったな?」


仕込んだ本人がぬけぬけと言い、は奥深くで子種をぶちまけた。

たっぷりと種付けされ、魏延の背が綺麗に反る。


「ァッ、アッァッ・・・・・!」


びちゃりと飛末を飛ばして射精した魏延は、長く甘い責め苦にぐったりと身体を寝台に投げ出した。

半顔を敷布に埋めた気怠げな横顔は悩ましく、の頬が緩む。


「今日はもう止めとくか?」


余りにも魏延が怠そうなのでそう問えば、


「良イ・・・・・ノ気ガ済ム迄、シテ・・・・・・・・・」


と返ってくる。

これには参った。

可愛すぎる。


「そう言われちゃ加減はせんぞ?」

「ン・・・・・・・・・・」


素直に頷いて腕を回してくる魏延の可愛さにくつくつと笑いながら、は魏延に口づけた。

甘い夜はまだまだ長い・・・・・・・・・・・。





***後書***

魏延夢第二弾ー!正直続けられるほどフラストレーション溜ってると思ってなかった。

魏延受けの少なさにそんなにキレていたんだな、私よ。頑張って自家発電してくれ。

相変わらず魏延のむちむちしたフトモモにむしゃぶりつきたい私です。

やったらたぶん瞬殺だろうなぁ・・・・・・・・。