【 男子ですから 】



昼時、武将達が鍛練の休憩を取っていると、ふらりとがやってきた。

明るい日の下で彼を見る事は大変珍しい。

往々にして光といえば揺らめく蝋燭が似合うこの青年だ。

新雪のごとき白磁の肌と目の覚める美貌を日光に晒しているのは却って違和感があった。

彼は急ぎもせずに鍛練場を横切り、弓練場に歩いていった。


「あの細っこい白腕で何ぞ弓でも扱うんかのぉ?」

「弓も出来なくはなさそうですが・・・・・・・どうも・・・・」

「何だ子龍、はっきりせんな。気になるなら見てくれば良いだろう。俺は行くぞ」


さっさと立ち上がる馬超。ノリの良い張飛や黄忠もついていく気満々だ。

結局いつものメンバーでわらわら歩いていく。

しかも皆の厭そうな顔が苦手なので人身御供に魏延も連れていった。

戦いに関してはは全く語らなかったから、何を得物とするのかも知らない。

褥を共にする魏延に至っては、は戦えないものだと思っていた。

・・・・が見えてきた。


「あれは・・・・・針・・・?」


が腕を振る度、鋭利な煌きが指先から空を一線する。

僅かな音がして長針は的の真ん中に刺さっていく。

皆が呼吸も忘れて見入っていると、が振り向きもしないで、まるで独り言のように喋った。


「針はいい。羽扇の様な華美もなく、杖のように嵩張りもしない」


何より。


「決殺は難しいが毒や眼狙の小技が利く」


俺が倒す必要はない。

場を凌げれば俺は誰の手柄になろうと構やしないのだよ。

針筒の針も尽きたと見えて、がやっと振り返る。

そしてこんな麗な日に恐ろしく似合わぬ冬の夜明け前のように冷え冷えとした笑みを浮かべた。

それが何を意味するのかは誰も知らない。

唯、雪が美しくとも矢張り氷には違いない事を再確認しただけだった・・・・・・・・・





「オ前、戦エタノカ」

夜に香雪酒を呑んでいると、唐突に魏延が言った。

余程意外だったらしい。


「俺は天幕から外を覗き見て指示を出すのは嫌いでな。然らばそれなりに、な」


薄造の銀盃に満たした酒を一気に呷り、は立て膝に手を組んで、その上に顎を置いた。


「誰かに護ってもらうというのはどうも背筋が寒い」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・こんななりでも男子だからな?」


茶化すように言うが、当たっていたらしく魏延は気まずげだ。

はその鼻をぎぅと摘んで、にっこり笑った。


「寝台に上がれ」


男子たる証拠を見せよう。

魏延が素直に寝台に上がると、は蝋燭の明かりの中でゆっくりと衣を脱いだ。

白く滑らかな身体。

それはの言う『男』と言うよりは、まだ幼い柔らかさの神の執事が如く中性的で。

嘘が苦手な魏延は返答に窮してしまった。


「魏延?」


一方は自分の体が『男』だと信じているらしく、訝しげな顔をする。

取り敢えず何か言わねばと、魏延は地雷を踏んだ。


「・・・・美人、ト言ウモノダト思ウ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


これがいけなかった。

美形ならまだしも美人。

まるで女のようだと言われたようだと思う。

だがはこの年でホウ統と同じくらい人生を達観している。

この程度で怒りはしない。

だが利用しない手はないわけで、はわざと拗ねたように顔を背けてちらと魏延を見た。


「女のようだと言うのか」

「チ、違ウ」

「信じられんな。何か誠意をもって表してもらいたいものだ」

「ウ・・・・ナ、何デモ言ウ事聞ク!」

「ほーぉ?」


思案するような仕草をする。

そして魏延の顔を覗き込んで意地悪く笑った。


「では酒を盃に一杯、身体の中に入れて貰おうか。勿論口から飲んだり無理して鼻から呑むなよ?」

「・・・・・・・・マサ、カ」

「出来るな?」

「ウゥ・・・・・・・・」


呻くように返事をして、魏延は俯いた。

可哀想に耳まで真っ赤にして、羞恥に震えている。

だがは杯になみなみとこの火酒を注ぐのだ。

魏延は最初の一週間でに大概躾けられてしまっている。

のろのろと服を脱ぐと、から杯を受け取る。

傍に置いて、脚を開いた。

幾ら躾けられたとて慣れたのとは違う。

恥ずかしくても抵抗があってもするようになってしまった、ということだ。

魏延は酒に指を浸し、最奥に擦りつけた。

熱い。

それでもこのとろみのある香雪酒は指の動きを助け、魏延の武骨な指が一本、硬い窄まりの中に入り込む。


「ン・・・ッ・・・・」


身体は期待し、直ぐに男に飢える。

柔らかくなっていく孔に指を増やして、2本の指でまさぐった。

恥ずかしいから言わないが、やはりの手でされたかった。

自分の手は気持ちが悪い。

そう思いながら、指に力を入れて開き、孔の口を開けさせる。

そこに例の香雪酒を盃から垂らすと、中が焼けただれるように熱かった。

注ぎ終わって物の数分しない内にへたりと寝台に臥せってしまう。

ぐらぐら揺れる視界。

音の小さくなった世界。

煩い心臓。

助けを求めるようにを見ると、彼はにたりと笑った。


「粘膜摂取すると薬物は早く強く回る。お前は今ぐでんぐでんに酔っ払っているのさ」

「我・・・・酔ゥ・・・・・?」

「あぁ、自分じゃどう聞こえてるかわかりもしないが、もう呂律も回ってない甘ったれた喋りだ」


そう言って、は魏延に覆いかぶさった。

熱くなった肌を確かめるように触って、魏延の厚くまた熱い唇を吸う。

魏延は普段よりも積極的に口を開いて舌を絡めてくる。

案外理性と羞恥があるだけでそれらを奪えば好きものなのか、と笑ってしまう。

嬉しいではないか。

可愛い恋人の意外な一面を発見するなど。


「ン・・・・・」

「ん?どした」


銀糸の名残を繋いで唇が離れると、魏延が寂しげな声を上げた。


「モット・・・・沢山、接吻・・・・・」

「ふふっ、お前本当に可愛いね」


それから何度も角度を変えて口づけをした。

何度も、唇が紅く色づいて熱を持つまで、飽きもせず。

舌を絡めたまま胸の尖りをいじると、魏延の体がヒクヒク跳ねる。

石榴の様に色づいた小さな粒をねろりと舐めると、魏延の舌が震える。

いつまでたっても初いその反応に、は苦笑を禁じ得ない。

あれだけ仕込んで時間さえあればいつだって抱いているのに、いつまで経ってもどこかぎこちないのだ。

まぁ人によって慣れる慣れない受け入れられないがあるだろうが、魏延は受け入れつつも慣れない様子で。

慣れた妖艶な男妾にするのも楽しいが、そこまでの経緯も楽しいものだ。

立派に男妾に仕立ててから死にたいもんだな、と思いながら、は魏延の足を持ち上げた。

黄忠は「細っこい白腕」と言ったが、良く考えれば魏延を抱えるくらいは何とかやってのけるのだ。

弓くらい扱えるのだろう。

十分に慣らそうと指を添えると、魏延がその手を取った。

そしてそのむっちりと引き締まった足での腰を絡める。


「モ・・・・イイ・・・・」

「痛むぞ」

「痛イノ・・・慣レテル・・・・・・」


そう言われれば遠慮はしない。

一応緩めてあるから怪我はしないだろう。

腰に絡んだ魏延の脚を深く折って、猛った雄を押し当てる。

強い抵抗に遭いながら刺し貫いていく。


「ァ、アッア、アゥアァッ」


いつもより素直に声を出しているのは矢張り酔いが回って大胆になっているのか。

独特な髪の毛を寝台に乱して擦りつけながら、肩を捩って痛みと快楽に耐える。

魏延が涙の滲んだ目でを見た。

責める様に、詰る様に。


「オ前、前ヨリ大キクナッタ・・・・我、辛イ・・・・・」

「そりゃまだ16だからな。育ちもするさ」

「此処・・・・・」


ぬけぬけと言い放ったを見詰め、魏延が己の腹に手を置く。


「オ前ノデ、一杯。苦シイ・・・・・・」

「お前ね・・・・そういう」


淫らな面を昼間はおくびも出さないって凄いな。

そう言って、は入りづらい残り一寸を押し込み、魏延の体が衝撃から立ち直るのを待った。

そして、ゆっくりと抜き差しを始める。


「ンッ、ンンッ、ァ、ヒァ!」

「もっと声出せ」

「嫌、ダ・・・・!」

「ならばやめてしまうぞ?」


が動きを止める。

魏延は内壁が疼くのを抑えきれず、に縋りついた。


「声、我慢、シナイ。ダカラ・・・・!」

「ふふ、良い子だ」

「アッアァアァ!」


再び激しい律動が開始されて、魏延は悲鳴じみた嬌声を上げた。

それは女の様な甲高な耳障りさはなく、落ち着いた大人の男の声だ。

だが甘く芳しい。

絡んだ魏延の脚がの柳腰を締め上げる。

その引き寄せにひかれるままに腰を打ちつけると、魏延が掴んでいたの左肩に爪を食い込ませた。

小さく声をあげて、己の腹に精液を散らす。

一方は食い込んだ爪でブツブツっと血が球になって落ちたが、気にしない。

具合の良い魏延の中にたっぷりと性を注いでご機嫌なのだ。

酔いと快楽でふわふわしている魏延に口づけ、そっと笑う。


「なぁ。『男』だったろう?」





***後書***

ギエン夢三弾キター!

最近 【雀・三国無双】 買いまして。

二徹夜→三時間寝る→二徹夜 みたいなことを繰り返してます。

食事はソイジョイかゼリー。水はボトルに入れて(自分の部屋にいるので)。

歯磨きは風呂で。

・・・・・・まだぶっ壊れてくれるな、俺の身体。