【 底無き夜天の底なりや 】



新月の晩は、明かりを燈して事に及ぶ。

二人とも夜目は利くが、色々と煩わしい。

純白のろうそくが幽玄の様に照らす中、は魏延の身体を愛撫していた。

髪を梳き、額の傷に口づけて。

瞼に唇を落とし、耳を噛む。

唇を吸えば、魏延が小さく鼻を鳴らした。


「ン・・・・・・・・」


くちゅくちゅと音をたてて、舌を絡め取られる。

甘い疼きが身体を走り抜けて、魏延は敷布を握り締めた。


・・・・・」


躊躇う様な視線の先には、が持って来た縄と目隠し用の布。

抵抗などしないと分かっていても反射で動く体を戒めたいのだと言っていたのを思い出す。


「いいだろう・・・・な?」

「・・・・・・・・・・」


小さく頷くと、がチュッと軽く接吻してくれた。

それだけで何でも許す気になってしまうこの体が恨めしい。


「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ざらっとした荒縄が、魏延の身体に食い込む。

きつく縛られて振り返ろうとすると、視界が黒い布で覆われた。

もう見えない、自分から触れることも出来ない。

魏延はゆっくりと身体の力を抜いた。

の手が胸に触れる。

心臓の辺りを緩やかに撫でて、胸筋を揉み込む。

やわらかな愛撫に、じれったさは募り、の言った通り身体は捩られた。

だが今日は荒縄の戒めによって自由は利かず、皮膚が擦れる微痛がしただけだった。

胸の尖りを吸われて、思わず身体が跳ねかかる。

見えない分いつぞやが言ったように残った五感は鋭かった。

次は何をされるのか。

はどんな顔をしているのか。

分らないままに行為は進んでいく。


「ゥ・・・・・・」


臍を舐められて、魏延は呻いた。

の舌は蛭の様に這い回って、魏延の臍に唾液が溜まる。

ぬるい液が次第に冷えゆくのを感じていると、今度は脚を持ち上げられた。

大きく開かされて、折られる。

自分の格好を想像して頬が熱を孕んだが、身動きは取れない。

は今日に限ってくすりと微笑も零さないし、魏延に与えられる情報は限りなく少なかった。

時折ヂヂッと蝋燭の鳴く音と、荒縄の軋む音だけだ。


「ァアッ!」


半端に立ち上がった雄を除けて蟻の戸渡りに吸いつかれる。

女性であれば膣があるこの部分を嬲られるのは、酷く気持ちが良かった。


「アッア、アァ、ウ!」


舐めねぶり、きつく吸って痕を残す。

魏延は狂ったように暴れたが、荒縄が軋み歌うばかりだった。


・・・、モウ、其処ハ・・・・・・!」

「ならば次はどうされたい?」


此処か?

つーっと蜜を垂らした男根をなぞられて、魏延は喉の奥で鳴いた。

確かにそこを弄られれば気持ちが良いだろう。

だが満たされはしない。

と一緒に上り詰めたい。

そう思って、口を開きかける。

だが出てきかけたのは余りにも卑猥すぎる言葉で、魏延は躊躇い一旦口を閉じた。

他の言葉を探して逡巡している合間、は大した邪魔はせずに腹や首筋を撫でていた。


「ヒトツ、ナリタイ」


ぽつりと言うと、が笑う気配がした。

そして微かな音がして、最奥に冷たくヌルつく感触がする。


「ンッ・・・・・・・」


しなやかな指が入ってくる感触がする。

目隠しで見えない其処に感じる指は、いつもより淫らに動く気がした。


「ヤァ、ハ、ン・・・・・・!」


内壁をくにくにと押されて、甘い声が漏れる。

魏延の中は熱くぬるりと絡んで、を誘った。

だがまだ十分でない。

指を二本に増やして探ると、魏延がもどかしげに身を捩る。


「ンァ、ハァッ」


ぐちゅぐちゅと内部を掻き回す音がして、魏延の頬は益々赤らんだ。

恥ずかしい。


「ァンッ!」

「声を控えようなどとするなよ」


見透かされていた。

は三本の指で魏延の中を弄りながら、左耳をかじりと噛んだ。

魏延の身体がぶるっと震える。


・・・!」

「何だ、もう我慢出来んか」

「ウ・・・・・・・」


魏延の黒い目隠しの一部が闇色に染まった。

涙が滲んだのだと理解して、は苦笑する。


「分かった分かった。お前の好物をやるから泣くな」

「ンッ・・・・・アァアアッ!」


押し当てるが早いが差し込まれる男根の歳に似合わぬ立派さに、魏延は苦しんだ。

だが襲ってくる快楽の甘美さはまたとなく、その二つが拮抗してまた彼を苦しめる。

魏延が苦しみから逃れられたのは、苦痛が麻痺して被虐的な快楽に変わった瞬間からだった。


「アッア、ンン、ン」

「好い声だ。もっと鳴け」


魏延の呼吸までも奪うように口づけ、激しく腰を打ち付ける。

がつがつとの骨が当たる音と、パチン、と魏延の肌が鳴る音がした。


「ア・・・・・ッ!」


びくっと魏延の身体が跳ねて、の腹に熱い飛末が掛かる。

は達しそうになるのを堪えてやり過ごすと、未だ衰えぬ剛直で魏延の中を掻き回した。

射精直後の過敏な身体に与えられる過剰な愛撫に、魏延が涙声で鳴く。

が、嗤った。


「夜にしか鳴かぬお前は俺だけの夜鶯だ。魏延・・・・・」





***後書***

エロが書きたかったんです。

【夜鶯→ナイチンゲール】

題名にしてもいいかなって思ったんですけど、このフレーズ好きなんです。

キルケか誰かの言葉だったかな?(ウロかよw)

荒縄ネタはナナシ様より頂きました、ご協力謝々!