【 君が為惜しからざりし命さへ 】



北方の戦で横腹を斬り付けられた魏延は、軍医である華陀の所で手当てを受けていた。

酷い傷ではないからと断ったのだが、他の手当てが済んでしまっていたので華陀が直々にお出ましになったのだ。


「傷は浅いが広いね」

「・・・・・痛ミ、少ナイ」

「それでも殿が見たら顔を顰めるさ」


その言葉に、魏延はの顔を思い出した。

戦の時はの事を思い出さない。

ただ戦いにのみその命を賭けてきた。

だが・・・・・


「華陀医」

「んん?」

「我、心ノ臓傷無キママ死ンダラ・・・・ノ心ノ臓ト」

「・・・・・・取り換えるってのかい?」


華陀が渋い顔をする。


「出来ヌカ」

「出来なきゃあないけどね。本人に訊いてみな」


手当てを終えた華陀が魏延の後ろに視線をやる。

振り返ると、が立っていた。

だがその顔は恐ろしく冷たい無表情で、瞳だけは怒りに燃えている。

は定期検診に来たのも放棄して、魏延の腕を掴んだ。


「来い」

、我、唯・・・・・」

「黙れ」


引っ立てられて、の部屋まで連れて行かれる。

途中擦違った者は皆一様にの焼け付く様な怒りの瞳に気圧されて立ち竦んでいた。


「ウ、ッ・・・・・・」


寝台に放り捨てられて、魏延は低く呻いた。

傷に響いたのだ。

だがは寝台に上がるとその白い足で魏延の傷口を包帯の上から踏みつけた。


「ゥグ」

「馬鹿にするな・・・・・誰がお前の心の臓を奪ってまで生き永らえたいと言った」

「違・・・・我、ニ生キテ欲シイ・・・・!」

「其れが要らぬ世話だと言うんだ!!!」


ヒステリックに叫んで、は膝をついて魏延から包帯を毟り取った。

縫われた傷口を爪で抉る。


「ッ!」

「死がどんなものか疑似体験するがいい。俺が教えてやる」


憎悪を込めた目でねめつけて、は魏延の身体をうつ伏せに引っ繰り返した。

傷が開いて震える体を好き勝手に動かして腰を上げさせると、は己の衣を肌蹴た。

極度の怒りという高揚に立ち上がった男根を軽く扱いて起たせると、魏延の濡れてさえいない最奥に押し当てる。


「先ずは序章だ」

「ヒッ、ア、アアアアアアアアアアアアッ!」


体が裂けていく激痛に、流石の魏延も悲鳴を上げる。

が仮面を取り上げて投げ捨てると、見開いた眼から涙が流れ落ちるのがよく分かった。

ブチブチと皮膚が裂けていくのが分かったが、は最後まで収めるまで動きを止めなかった。


「ゥ・・・・ゥ・・・・・・・・ッ」


息も絶え絶えの魏延は、ぐったりと横たわってと繋がっている。

結合部からはとめどなく血が流れ落ち、敷布を赤く染めていた。


「そら、第二章」

「アグゥッ!」


痛みの収まらぬ内にが律動を開始する。

揺さぶられて、魏延の横腹から血が散った。

腿を伝う赤い流れは酷くなり、強い鉄錆の匂いが鼻腔を刺激する。


「アッアッ、アァ!」

「こんなやり方でも鳴けるとはな」


の嘲り通り、魏延の身体は反応し始めていた。

だがそれは純粋な快楽からではない。

過ぎた痛みから感覚が麻痺し、身体が快楽だけを拾う謂わば自己防衛だ。


「ははっ、お前、まるで盛のついた雌犬だね。畜生には畜生らしくしてやろぅ」


さらに高く腰を上げさせ、犬の交わるような格好で突き上げる。

魏延は涙が流れ落ちるのを止めようと舌先を噛んだが、熱い雫はとめどなかった。

どうして分かってくれない?

どうしてこんな行為を強要する、それで痛みを測れなどしないのに?

どうしてそんな言葉の刃を投げつける、唯愛しいだけなのに?

声を殺して泣きながら、魏延は快楽から気を逸らそうとした。

だがは何度も魏延の前立腺を突き上げ、射精を促す。

堪え切れるものではなく、魏延は吐き出す液に色が無くなるまで責め立てられた。

その間最奥に突き刺さった男根での傷付けるような愛撫以外は一切無く、は一度も達しはしなかった。

魏延が意識を失いかけながらそうならなかったのは、単に身体と心の痛みからだった。

魏延が寝台に崩れ落ち、声も出せずに唯掠れた呼吸を繰り返していると、が雄を引き抜いた。

そして魏延を仰向けに引っ張って、その泣き濡れて赤くなった眼を睨みつける。


「俺はもう決めてあるのだよ」

「何、ォ・・・・・・・・・」

「俺はお前より先に死ぬ。だから死ぬと感じたらお前を殺す」


こんな風に。

の手が魏延の首に掛かる。

ぐっと締めあげられて、魏延は思わず手を首元にやった。

酸素が欠乏してくると、無意識にの手を引っ掻く。

だが力無いそれはただ蚯蚓腫れを残す程度だった。

の手がふっと離れる。

魏延は激しく咳き込んだ。


「ゲホッ、ケホ、カフッ」

「お前を喪ってまで生きたくない」

「・・・・・・・・・・・・・

「分かってくれ」


魏延は初めて理解した。

これは子供の我儘なのだ。

魏延の気持ちを理解した上で、そうした方が有意義な事を知った上で、我を通しているのだ。


「・・・・・・ワカッタ」


それを最期に、魏延はもうを生き永らえさせようとするのをやめた。

独り生を歩むより共に死にたいと謂うのならそれを叶えよう。

それをが望むなら。

それを叶えるのが魏延の望みになるのだから・・・・。





***後書***

今回はちょっと無理矢理系なので酷い所は割愛w

短め強姦チックですが、二人は一緒に死ぬ位絆強いです。いや本当。

ネタはナナシ様から頂きました。

もっと長くしても良かったんだけど無理矢理は好き嫌い別れるからなぁ・・・・。