【 節分企画 】
「明日は節分らしいんだ」
「まあそうだな」
「そこで、イワン君に」
「恵方巻きか!」
「違います」
話聞いてよ、と困った子だね的な視線を向けるセルバンテス。
レッドが文句をつける。
「恵方巻きでは悪いのか」
「そんな脳内補完妄想より有意義に過ごそうよ、折角のお祭り!」
節分は祭りじゃない。
が、牛追いだろうとトマトだろうと常にヒャッホーで楽しめてしまう男は、毎日がお祭りだ。
「おかあさん、って角が生えてるよね」
私は自分の母親に興味なかったから余り覚えてないけど。
そう言ったセルバンテスに、面々もはて、と考え始める。
「私は両親を知らないのだが」
言った幽鬼は、順々に十傑を指差した。
「爺様は理由有りで余り・・・・十常寺は昔過ぎると思うぞ。魔王は山に篭ったのが随分小さかったらしいし、レッドも私と同じだ。
怒鬼は幼くして引き離されている。ヒィッツは自分で始末しているしな。お前は興味がなかったと今言った。残月は知らん」
で。
「衝撃のは自然発生だしな」
何とも言い難いが事実である。
不動の事実。
衝撃波から発生した様な話を本人から聞いた(余談だが彼が散るシーンでは身体がガラガラ砕け散る)
「まぁ、君達の記憶はどうでもいいんだよね」
つまりさ。
「おかあさんは角が生えている。角と言えば鬼。おかあさんは鬼。鬼のパンツは良いぱんつ♪」
何処でそのネタを仕入れてきたと聞きたいが、その前に残月が紫煙を吐いた。
「・・・・私の出番か」
自分の立場とポジションと役割と仕事をきっちり理解した男である。
セルバンテスは良い笑顔だった。
「と、言うわけで。イワン君に履かせたい『ぱんつ』を各自2月3日までに用意」
残月は、前日に全部ぱんつを盗んでおいてね。
「何で・・・・・」
呆然として、イワンは箪笥の中を見詰めていた。
下着入れが空っぽだ。
代わりに入っている松茸でとてもいい匂いだが、はっきり言ってごんぎつねの間違った解釈だ。
「・・・・・・・・・・」
代わりになりそうなタオルもない。
と言うか、部屋中の布と言う布がないのだ。
カーテンもない。
クッションカバーすらない。
起きたら、全裸だった。
あるのは、ひとそろいのスーツだけ。
イワンは、絶望的な状況で決断した。
もう、このまま出勤するしかない。
「お早うイワン君!」
「お、お早うございます」
笑顔の幻惑にたじろぐイワン。
下着が無いので気持ち悪いし、硬い布に当たって少し痛い。
「じゃあ、御着替え!」
「えっ・・・・」
まさかノーパンで出勤しましたなんて言えない。
真っ青になって逃げ出そうとするイワンだったが、あっさり捕獲された。
もがくが、スラックスを剥ぎ取られる。
が、ノーパンである事に突っ込みは無く、何かが足首に引っかかった。
足を伝う様に上がってくる布に振り返るが、見えない。
「怒鬼も毎回可愛いの選ぶよねぇ」
怪獣パジャマとかもかわいいっちゃあ可愛かったし。
言いながら手を離したセルバンテス。
わたわた逃げ出して、イワンは自分が履かされたものに赤面した。
大きさこそ自分が履けるサイズだが、完全に女児用のくまぱん。
可愛い熊さんが大きくプリントされたはちみつ色のぱんつ。
変な下着でないが、非常に恥ずかしい。
「あ・・・・あ、あの」
「最低10分は履いたままね」
晒しもの宣言に、イワンは泣きそうだった。
十傑の前に立たされ、彼らに尻を突き出すように少し身体を前に倒せと命じられた。
視線が集中するくまぱん。
作りが女児用だから、詰め込まれたものが浮き上がって恥ずかしい。
後ろからも見える袋の膨らみと、少し食い込んだぱんつに皆生唾だ。
10分計るタイマーが鳴った時、やっと解放されると思った。
が、よく考えたら毎回こういう不健全イベントには10種以上のトラップが用意されている。
くまぱんが怒鬼。
では次は・・・・・。
「よし、私だ!」
進み出たレッドは最近割と大人しいが、お祭り騒ぎになると調子に乗ってしまう子なので注意が必要だ。
その手にある布に、イワンは首を傾げた。
身慣れない形状の長い白布。
「褌だ」
「・・・・レッド様のですか?」
「私は褌など履かんわ」
言い切った。
自分が履かないものを何故着せるのか。
「ふっ・・・・・着れないなら着せてやろう」
「い、いえ・・・・自分で何とかします・・・・」
既に服従姿勢でイベントに参加してしまっているイワン。
だが、褌などはいた事は無い。
直ぐにレッドに取り押さえられ、ぐいぐい褌を履かされる。
「あ、あの・・・・・」
「きつめが解けにくいからな」
言いつつ尻の割れ目にググッと引き上げられ、イワンの尻がぴくんと震える。
食い込み過ぎている感触にもじもじしていると、またさっきと同じポーズを取れと言う血も涙もない命令。
泣くなくやると、後ろから粗い息遣いが聞こえてくる。
非常に怖いし気持ちが悪いが、我慢。
タイマーが鳴って直ぐに姿勢を崩した。
「では私だな」
うきうきと進み出るヒィッツも、そうレッドと発想は変わらない。
完全に趣味が分かる黒のTバック。
受け取ってどんよりしながら履いたが、きっとまた押さえつけられるのだろう。
そして満足いくよう履かされ、尻を突き出した格好で10分間・・・・。
辞表を提出したい現状。
だが、ヒィッツはイワンを眺めて頷くと命令した。
「歩きまわれ」
「えっ」
「10分間この室内を歩くんだ」
「はあ・・・・?」
曖昧に頷いて歩き始める。
30歩を超えぬうちに、分かった。
歩くと段々食い込んでくる。
直そうとしたら怒られてしまった。
歩く後ろをついてくる気配に振り返る事すら出来ない。
夜道を歩く女性の気持ちが分かった気がした。
ぴぴぴ・・・・
鳴った瞬間にすぐさま脱ぎ捨てようとする。
が、先に両端をぱちんと切られて足元に落ちた。
回収されていく下着の行く末は絶対に知りたくない。
「次は私か・・・・・」
進み出る幽鬼の手には、ドピンクの下着。
履かされたが、変哲ない男もののボクサーだった。
尻を突き出したポーズをとると、ぐびっと唾を呑む音が大きく響く。
イワンは知らないのだ。
尻の部分に『come in!』と印刷されている事を。
入れろというお誘いを前面に押し出した下着は何とも興奮する。
荒い息遣いが響く部屋で、イワンは前屈みの十傑なんて誰にも見せられないと思った。
部下に示しが全くつかない。
タイマーが鳴って顔を上げたイワンは硬直した。
出た。
キングオブ下着泥棒、白昼の残月!
何とも言えない嫌な予感に後ずさるが、残月は見た目だけ好青年風に笑って下着を差し出した。
「この間拝借してからだいぶいい感じに熟成しているよ」
「熟せ・・・・ひぃっ」
自分の部屋から消えた下着のうちの一枚。
しかも夢精してしまったから洗おうと思っていたものだ。
履いたら病気になる勢いの青カビ群生モノ。
ペニシリンどころの騒ぎじゃない。
「それ、は・・・・」
「なんだね?」
見た目だけ好青年の洗濯物ハンターは、爽やかに首を傾げた。
イワンが怯えて首を振る。
すると、あっさり方向を変えた。
「では、こちらではどうだね」
差し出されるのはパンティストッキング。
パンティとついていても、これは下着の上から履くものだ。
どう考えても変態としか思えない格好。
悩もうとしたが、元々残月はこちら推しだったらしい。
捕獲されて履かされた。
余りに可哀想な自分の姿に呆然としていた10分は短く感じた。
呆然としていると、目の前に突きつけられるぱんつ。
差し出された布は余りに薄かった。
向こうが透けている。
履いたら破れそうな勢いの薄さ。
「履くがよし」
十常寺推薦、透けぱん。
薄い上品な桃色のそれに包まれた桃尻は、本物の桃の様だ。
少し上半身を倒しただけで勢いよく伝線した。
慌てて身を起こそうとするが、怒られてしまう。
涙が滲んでくるのを我慢していると、タイマーが鳴る。
身を起こすと益々裂け、脱ぐ前に足元に落ちた。
「では、これを頼むかのぉ」
カワラザキが差し出したのは、単なるハイレグだった。
もうハイレグに『単なる』が付くくらい変なものばかりで疲れていたイワンはありがたいという錯覚すら起こす。
これは前から観賞され、膨らんだ部分を視線が這いまわる。
視姦と言えば段々濡れたり勃起するのがセオリーだが、余りの薄気味悪さに引いているイワンはその気配がない。
まぁ、自分が興奮すればいいか、という十傑。
なんて上司に恵まれなかったんだろうか。
残った男は全員発想が危ない人間だ。
ハイレグを脱ぎつつ、イワンは近づいてくる満面の笑みのセルバンテスを見た。
差し出される下着は一見普通のピンクと白のドットだが、広げてぎょっとした。
「せ、セルバンテス様・・・・」
「あれ?一応知ってはいるんだ?」
イワンの手の下着の中央は裂け目の様に縫製されている。
AVでお馴染みのエロ下着、穴開きぱんつだ。
だが、履いてしまえばそう目立つ物でもない。
そう踏んで、また尻を突き出したポーズ。
だが、イワンは気づいていなかった。
幻惑が既製品なんか寄越す筈がない。
イワンの身体にミラクルフィットのそれは特注。
前屈みになると布が割れて、ピンクの蕾が丸見えだ。
異様に静かな後ろに、怒られても恥ずかしい思いをいなくて済むならいいと思っているイワン。
彼は今自分が大事な場所を晒している事に気づいていない。
そして知らぬが仏である。
知ったら純情恥ずかしがりな彼はきっと心臓が止まる。
タイマーが鳴って脱いだイワン。
十傑は口々にいい色だと言いあっている。
何の話だろう。
続いてのそっと出たのは樊瑞。
渡されたのは、皮の拘束具。
「?」
「?」
何ですか?というイワンと、何故履かん?という樊瑞。
樊瑞はこれを下着と言い張る様だ。
革で作られた、雄を拘束する輪っか。
袋を包む様な黒革の袋、幹は3か所拘束で、鈴口を開かせるように二つのバンドを掛けるようになっていた。
履く様子がないイワンに履き方が分からないのだと勘違いした男は、彼を拘束して履かせにかかった。
驚き暴れる尻をぴしゃっと叩き、満足いく仕上がりに履かせる。
興奮していないのでぴったりくらいだが、コントラストで十分目に楽しい。
恥ずかしがって泣き出したイワンをひっ立たせて、10分。
タイマーの音とともに席を立ったアルベルトに涙を拭われ、見上げる。
拘束具を脱がされて、雄を掴まれた。
包まれる感触。
安心したのが間違いと気付いたのは根元を軽く締められたからだ。
恐る恐る視線を下げて行く。
ピンクの兎の、小さな。
「巾着とか発想が違うよねぇ」
イワンはもう何も言えなくなって口をはくはくさせるばかりだ。
こんな姿、変態以外の何者でもない。
必死に許しを請うが『煩い』さえなく、無視。
完全にお人形さんだ。
えぐえぐ泣いていると、また涙を拭われた。
目を開けると、やれやれといった表情の孔明。
「貴方方は遊び過ぎです」
がちゃん。
「えっ・・・・」
履かされたのは貞操帯。
ご丁寧に鍵まで掛けられ、どうしようもない。
「今溜めこんでいる書類を一番早く片付けた方に鍵を差し上げますぞ」
そう言って悠々去って行く孔明に呆然としていたが、我に返った十傑は鬼の様な早さで仕事を片付け始めた。
そう、サロンにまで書類を溜めこむ程に仕事を溜めていたのだ。
貞操帯を履かされたイワンは、流石に今日は茶を入れる気にも手伝う気にもなれず、その場に座り込んだ。
「もう、疲れた・・・・・」
彼に安息の日は、来ない。
***後書***
鬼のぱんつは良いぱんつ♪