【 恋日企画 】




「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

気まずいのはまあ仕方ないが、赤面して俯くこいびとを眺めるのは楽しい。

思わずにやにやしてしまう。

このひとと付き合うまでは中々派手に遊んだものだ。

甘さと激しさの調整は得意だと自負している。

慣れない初いこいびとは、いつもあっぷあっぷしながら縋りついてくれて。

その可愛さに今度は自分が溺れてしまう。

いつか二人で溺れ死ぬかも知れんな、と呟く。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「貴方様となら構いません・・・・ヒィッツカラルド様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

盗み見たひとは、とても純情だ。

鈍いところのある自分と違い、多感。

きっと泣きそうなくらい恥ずかしいのだろうと思う。

TVを消しても良いが、それよりも。

後ろから抱き込んで目を覆ってやる。

口下手な自分は行動に移した方が早い。

夜も、今も。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「恥ずかしいです・・・・怒鬼様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

甘い声。

踊る肢体。

複雑だ。

気まずさもあるが、こんなに甘いのが普通なのだろうか。

然程経験が豊富という訳ではないのはお互い様だと思うが、もしや足りないのではないか。

柔肉に押し包まれる自分程快楽は得ていないのでないか。

聞くような事でもないが、大事な事だ。

悩んでいると、精神感応出来ないのに敏感なひと。

そろっと視線を上げ、また落とした。

口を開きかける。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「もう少しだけ激しく・・・・幽鬼様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

煙管を撫でながら、口元を緩ませる。

消そうかと問うと、大丈夫ですと蚊の鳴くような声。

苦笑して紫煙を吐く。

実際こんなに落ち着いてもいられないものだ。

若年寄りだとか鋼鉄の理性だとか好き勝手言われているが、実際自分はそう落ち着いてもいない。

若い衝動に任せて貪り、このひとを泣かせる事がしばし・・・・・かなりある。

理性が利かなくてな、なんて言い訳してみる。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「理性などお捨てになってください・・・・残月様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

過ぎる程に恥ずかしがりのこいびとには割と強い刺激なのかもしれないが。

黙りこくって涙ぐんでしまっているひとに近づかずに毛布をかけてやる。

もぐってしまったのに苦笑を禁じ得ない。

甘い嬌声があがるたびにもぞ、と身を縮めるひと。

そのまま続けたら丸い小さな飴玉になるような気がする。

恥ずかしがりの、甘いこいびと。

小さく笑うと、聞こえたようで目だけ覗かせた。

恥ずかしがりだのぅ、とからかう。

飴玉になるぞとも言ってみる。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「その時はお召し上がりになってください・・・・カワラザキ様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

まあ大概長く生きてきた自分には気まずさはあっても羞恥は薄い。

年若いこいびとは些か過敏。

バランスが良いような、悪いような。

茶を啜って眺める。

勿論TVではなく、こいびとを。

生真面目な彼は余り女性とも付き合わなかったらしい。

告白されて、断って、押し切られて。

振り回されて、捨てられて、傷ついて。

仕事と結婚すれば、とか。

貴方、つまらない、とか。

勝手な理想を抱いて、このやさしいひとを傷つけた。

事実だからと笑うこのひとは、強く、脆く。

自分が守らねばと思うのに、いつの間にか庇われていて。

腑甲斐無し、と呟く。

辛き、楽しき、何時も共にとも。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「どこまでもお供します・・・・十常寺様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

微妙な気分。

手を出そうなどと不埒な事を考えていたが、これでは到底無理だ。

溜息を吐き、苦笑する。

隣にいると僅かに香る、清純でありながら甘く芳しい香り。

香料でなく、石鹸と混じり合うこのひとの香り。

心地よいそれをゆっくりと楽しむ。

だがいつまで経っても俯くこいびとに、意地悪をしたくもなる訳で。

同じ事を、せんか。

益々赤くなるだろうと思った。

実際頬の赤みは増した。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「お心のままに・・・・樊瑞様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

別に何も感じない。

気になんてならない。

こんなおままごとなど。

だが、矢張り気になってぼそりと問うた。

このように優しくされたいものなのか。

自分は多々抜け落ちた感情や感覚がある。

今までに抱いた女は優しさでなく快楽を求めた。

だが、このひとはそういうタイプではない。

泣きながら快楽に耐え、快楽に溺れはしない。

もしかしたら、もしかしたら。

甘く、優しく、愛されたいのではないか。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「貴方様らしければそれが一番です・・・・レッド様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

可愛いなあ。

人前でのキスも泣きそうになって許しを請うこいびと。

手をつなぐのだって誰もいないところでないと嫌がる素振りを見せる。

けれど、深く深く愛してくれていて。

我儘には基本的には付き合ってくれる。

夜に無理を強いても受け入れてくれる。

この人が先のスキンシップを嫌がるのは、それが人前だから。

君を自慢したい、見せびらかしたいとねだったが、それだけは首を縦には振らなかった。

わかっている。

それはひとえに自分の為。

彼ではなく、自分の。

立場とか、噂とか。

悪いものが起こらぬよう。

それでも聞かずにたまにやった。

今はしない。

彼が一人になってしまったのだと気付いたから。

嘲笑と侮蔑を受けながら、黙っていた。

気付いた時には遅かった。

傷つき、ひとりぼっち。

可哀想な事をした。

浅はかな事をした。

悔やんでも遅い。

謝ったところでこのひとを苦しめる。

ずっと一緒にいると言っても、このひとは曖昧に微笑み礼を言うだけだ。

だから。

私は。

捨てないでおくれよ、と言う。

こいびとは、恥ずかしげに俯き、呟くように答えてくれた。


「貴方様が求める限りお側に・・・・セルバンテス様・・・・」





「あぁっ、あんっ」

然程遅くと言う訳でもない時間のドラマ。

並んで見ていたら始まってしまったベッドシーン。

妙に、気まずい。

恋人を盗み見ると、可哀想なくらい真っ赤になって俯いてしまっていて。

画面で繰り返される甘い愛撫。

当たり前だが全年齢のこの時間のドラマは然程きつい表現ではない。

退屈な、三文芝居。

回りくどい、やり方。

いっそ笑える、陳腐な言葉。

愛しているよ。

男の言葉に、こいびとの肩が僅かに揺れた。

悲しげに床を這う視線。

言葉を欲しがるなど愚かだ。

ワシを失望させるな。

勝手な言葉が渦巻いて。

不安に押し潰されそうになって震えるのを慰められもしない。

伸ばした手が触れる寸前。

こいびとは、俯き、呟くように言った。


「愛しています・・・・アルベルト様・・・・」





夢だと途中から分かっていた。

だが、余りにも幸せな。

優しく甘く、寂しさ残る、夢。





***後書***

今回のルール…ドラマのHなシーンで気まずくなっちゃう恋人。章の末尾…「〜…○○様…」

恋人達の日に合わせてみたが、おっさんに力入れ過ぎた。十常寺とバンテスが異様にウエイト占めてるやん。

分かってると思いますが全員夢オチです。だって他の9人は兎も角、アル様はドラマなんか見ないって。