【 大晦企画 】




「BF様の御意志です」

言い切った策士孔明。

機器類を準備するブラック博士。

栄養ドリンクをスタンバイするローザ。

不安としか言い様のない状況。

十傑はみな逃走をはかった。

窓枠に脚を掛け、ドアに走り。

しかし。

十傑が逃げれば一番に捕獲されるのは言わずもがな。


「一名様ご案内でーす」


ローザの声で一斉に振り返る。

藻掻くのはオロシャのイワン。

椅子に縛り付けられていく。


「まあ、そう怖いことは致しませんよ」


掻い摘んで説明するとこうである。

BF団の全裸ニート・・・・いや、最高指導者が縁起を担ぎたいと言い出した。

みくじや何かならまだなんとかしようものを、初夢と。

直ぐに万能人間ブラック博士に連絡し、新年まで32時間を切った今し方、そのための機器が完成したのだ。

接続したものとの夢を混ぜ合わせる機械。

BF様は一富士二鷹三茄子を御所望らしいので、取り敢えず富士の樹海の枝と鷹の羽、茄子のへたをつなぐ予定だ。

ぶっちゃけ正月まで付き合っていられない。

さて。

現実味ないものでも成立させるのがBF団。

被害は被りたくないが結果は見たいと居残る十傑。

その中からわざわざそれに近づいたものが一人。

マスクザレッド。

彼はあろうことかコードを自らに接続しはじめた。

おや、と言う顔をする孔明に、にい、と笑う。


「夢が混線するのだ。しかし所詮夢は夢」


何をしても構うまい?

瞬間、部屋の温度が二度は上がった。

レッドが床に冊子を放る。


「折角だ。勝負納めといこうではないか」


ぱらん、と開いた冊子のページタイトルは「ひめはじめにむけての四十八手講座」だった。


「イワン、後で順位を聞くからな」


目の前で笑う十人の悪魔に、気が遠くなっていく。

眠るのとは違うが、問題は無い。

最後に見た主は、興味なさげに葉巻をふかしていた。





「ふむ、感覚は同じだな」

手を開いたり身体を軽く捩ったりして確かめるレッド。

イワンは布団の上を這いずって逃げた。

だが見渡す限りシーツの海の中でどこに逃げ場があるのだろう。

必死に逃げる。

振り返るとレッドが歩いてくるところ。

今日に限ってわざと泳がせるような真似をする青年は、仮面を投げ捨てた。

きつい目付きの、整った顔。

背中に手が置かれる。


「昇天させてやろう」


後ろから抱き締められる。

スーツの上から身体をさすられ、ひくっと身体が跳ねた。


「レッド様っ」

「何だ」


服の上から左手が胸の尖りを摘み、右手の掌底が袋を圧迫しながら揉み上げる。


「んっ」

「ほら」


巧みな愛撫に身体が熱くなる。

器用な指が布越しにはっきりした幹をなぞり上げ、たまらない。

熱い息を吐くと、耳を噛まれた。


「イワン・・・・・」


尻を揉みしだく手。

ひく、と引きつる尻を円を描いて揉んでいたが、不意に手を離す。


「・・・・・?」


解放してくれるような性格でないのは知っているから見上げると、軽く、ごく軽く尻に触れられた。

すすっと這わされ、背が反る。


「ぁあ、あ・・・・・」


ゾクゾクとした痺れ。

必死に唇を噛むが、我慢が出来ない。


「ふん、反応が悪いと思ったら擽られて感じるタイプか」

「レッド様、駄目、で、ぁあ・・・・・っ」


脇腹を擽られて悶えてしまう。

獣のように項に歯を立てられ、つぅと背筋をたどられた。


「ふぁうっ」


がくがく震えているイワンのベルトのバックルを抜き、スラックスを奪う。

くわえてやってもいいと思ったが、尻だけでどれだけ鳴くのか見たい気もする。

少し考え、レッドはポケットを探った。


「一応所持品は持ち込めるのか」


取り出した軟膏には特に変わった効能はない。

体温で溶けるタイプの咽頭用軟膏だ。

下から入れても問題はない。

少し掬って、塗り付ける。

くりくりと円を描いて塗り込む。

イワンは忍の手管に既に腰砕け状態だが、声を殺して震えていた。

そんなに嫌なら感じにくいようにして苛め倒してやろうと、円から上下の摩擦に変える。


「ひっ・・・・・」


小さく悲鳴を上げ、身体が震え始める。

ざまあ見ろと思っていたら、じわじわと揺れ始める腰。

思わず尋ねてしまう。


「貴様こう擦られる方が好きなのか」

「・・・・・・!」


何故それを、と言う目で見られ、気分の良すぎる呆れを味わう。

この朴念仁がこれだけの身体を持つのが不思議でならない。


「よかろう」

「っあ!」


軟膏を塗り込めながら強く上下に擦ってやる。

藻掻くのも腰を揺らすのも許さず、押さえ付けて摩擦する。


「あぁ、っ」


ひくつく孔に舌なめずりする。

軽く差し込むと食いついてくる。

離すものかと女の執念のように吸い付くそこ。

軽く抜き差ししてずるっと差し込むと、押さえ付けた身体が跳ね上がる。


「ん、っく・・・・っ」


眉をひそめたストイックな表情が堪らない。

ゆっくり抜き差しを繰り返し、指を増やす。

中指の腹で肉壁をなぞると、入り口が強く締まった。


「良いか」

「ぅう、く」

「ほら」

「っあぁっ」


抜き取ると、溶けた軟膏と体液が糸を引く。

白く濁り少し甘いそれを舐め、腰を引き寄せる。

スラックスを緩め、切っ先を突き付ける。


「っあぁっ」


尖ったかりが抉じ開け、割と真直ぐなそれが腸内を突き進む。


「ふっ・・・・思った以上だな・・・・」


汗を滲ませ、腰を揺する。

こんなに具合が良いとは思わなかった。

膝を立たせて数回突き、腰を抱えて上体を起こさせた。

そのまま座り込み、腿の裏を支えてやる。


「乱れ牡丹でいくか・・・・」

「牡丹・・・・?」


かすれた甘い声。

口づけようとして、やめた。

これが本当に手に入った時にとっておこう。

イワンの身体を持ち上げてやる。

抜け出ていく男根に絡み付く肉襞が心地よい。

手の力を抜き一気に落とす。

芯を入れたように反り悶える上体。

衝撃に一拍遅れ、かすれた悲鳴。


「ぅあ、あ、あぁ」


締まる入り口と熱くぬるんだ中を楽しむ。

暫くの律動ののちに、激しい収縮が来た。

水から上げられた魚のように跳ねる身体。


「っぁうぅっ」

「っち・・・・・っ」


舌打ちして歯を食い縛るが、持っていかれた。

中に出してやると、悦楽の吐息。

肩越しに前を覗き込み、目を瞬かせる。


「何だ、ところてんでいけるのか」


相当仕込まれたのだなあと呆れつつ感心し、レッドは身を退いた。





シーツに沈みながら息を整えていると、首筋を撫でられた。

きっと見逃してくれる。

力無く微笑むと、微笑み返してくれた。

手には、縄。

・・・・・・縄?


「怒、鬼、様・・・・?」


見上げる泣きそうな目に、微笑み頷いてくれた。

任せろ、と。

ああ、違う、そうじゃない。

言いたくても言えなかった。

何というか、正しいと信じて疑わない彼を注意できない雰囲気。

未だ熱の冷めぬ身体を眺める視線に身が竦む。

何とか身を起こして座り込み、小さくなる。

すると脚を掴まれ開かされ、白濁まみれの下腹部を眺められる。

燻っていた火種が、勢いを取り戻し始める。

恥ずかしい。

見ないで欲しい。

気持ちがいい。

見てほしい。

余りにはしたない自分に涙ぐむ。

夢の中なのだから気分の浮つきは仕方ないのに、イワンは悲しくて仕方がなかった。

怒鬼は首を傾げ、イワンの手首を縄で結わえた。

反対を自分の首に緩く結ぶ。

長さはないから、仰向けになる怒鬼に引かれて上に倒れる。

すると、片手で取り出した自身を軽く扱きながら反対で腰を上げさせられる。

両手で腰を掴まれ、屹立した男根の上に腰を下ろさせられる。

濡れた孔に触れた熱い切っ先に腰を上げようとすると、強く下ろされた。


「ぁうううっ」


ぎゅぷぷ、と入ってくるものはかりと幹のバランスよく揃い、腰が痺れた。

震えていると、手が離れる。

少し胸を押されて身体が反り、怒鬼の首に結わえた縄でバランスをとることになった。

形のよい唇が、やぶさめ、と動く。


「流鏑馬・・・・・?」


頷かれた。

腰を揺らされ、息を詰める。

唾を飲んで、揺れそうな腰を堪えた。

だが、時折くる緩い突き上げに、理性が侵されていく。


「ぁう、く」


縄を引きバランスを取りながら、腰を揺らす。

気持ちが良くて、おかしくなりそうだった。

上で踊る艶めかしい身体を存分に楽しみ、怒鬼は熱を放った。

元々競争に興味は然程ない。

このひとの中に注ぎ込めれば。


「ふぁ、あ」


長めの吐精により流し込まれるものに酷く感じた。

噴き零れる、白濁。

優しい手つきで横たえられて、抜け出る感覚に息を吐いた。





「大丈夫か?」

額に浮いた汗を拭われ、薄く目を開く。


「ヒィッツカラルド様・・・・・」

「そんな甘くかすれた声で呼んでくれるな」


優しく出来なくなるだろう?

伊達男の笑みで紡がれた言葉に、目を閉じる。

夢は、夢。

主は止めはしなかった。


「・・・・・・・・」


気怠げな仕草は年かさの娼婦の手管のような妖艶さだ。

悪くはないが、もっと。

取り出したジャックナイフで纏うワイシャツを切り裂いてやる。

僅かに過った怯えの色に、笑む。


「指の方が早いのだがな」


生憎こちらは今からこう・・・・・。

ゆっくりと体内に沈み込んでくる指に、喉が引きつった。

手入れの行き届いた、しかし鳴らし続けて関節の太くなった。

ゆび、が。


「ひっあ」


ごりっと腸壁を押されて腰を捩る。

また雄に血が集まるのを感じた。

腰を押さえられてはいない。

いっそ押さえつけてくれれば好きなだけ身を捩っても抜け落ちないのに。


「そんな物欲しげな顔をするな」


白い目が、笑みに歪む。

ゆっくりと腰を押さえる手。


「これが望みか?」

「違っ・・・・・っううっ!」


ぐちゅぐちゅと抜き差しされ、腰を激しく揺すってしまう。

もっと、もっと、もっと!


「あぁあっ」

「おっと」


私を置いていかないでくれ、と笑う。

ジッパーを下ろす音がした。

俯せに返され、腰を横向きにされて脚を開かされた。


「娼婦は暗がりで抱くのがルールだ。それは出来ぬからせめて」


顔を見ないでやろう。

言葉と共に突き入れられる硬い肉。

奥に刺さる硬すぎるそれ。

激しく痙攣する腰に、何度も打ち付けられる。


「ぁあ、あっ、く」

「っ・・・・締まるな・・・・」


嬉しげに言って注挿を早める。

激しく絡み付く、肉。


「ぁうぅっ」


どぷどぷと流し込まれる熱液に、イワンは白濁を迸らせた。


「その身を全て」


手に入れたいものだ。

男は軽く耳に口づけた。


「燕返しは、どうだった?」





「・・・・・・・・・・・・・」

ぐったりしてシーツに沈む白い裸体。

なんとも艶めかしい。

足の甲に触れると、目を開けた。


「幽鬼様・・・・・」


身を起こそうとするのを押し止める。

つらそうだ。

やめてやるべきだ。

絶対にやめた方がいいに決まっている。

だが、男の欲望とはとても素直だ。

ちょっと。

ちょっとだけ。

ちょっとだから!

そっと胸元に口づけてみる。

柔らかで温かな、瑞々しい肌。

ぺろり、と舐めてみる。


「ん・・・・・ゅ、き、様」


軽く、吸い付いた。


「ぁ・・・・・」


艶めかしい、吐息。

もっと聴きたい。

口づけを繰り返す。


「ん」


擽ったそうに身を竦める。

偶然を装って、淡い尖りをやわく吸った。


「ふぁ、あ・・・・・」


ぞくんとした刺激に、濡れた唇がわななく。

かり、と噛むと、目が泣きそうに歪んだ。


「痛、い」


たった一言だ。

いたい、と。

苦痛を訴えただけだ。

いたい、と。

なのに。

例えようのない昂揚。


「ならば」


凶器を取出し、身体を俯せに返す。


「こちらは」


押し当てる。


「どう痛い?」


ぐいと孔を裂くものは、細身だが酷く長く。

いくら飲み込んでも終わりはこない。

苦しさにむせぶ。


「ゅ、ぅき、さ、ま」


かすれた声が呼ぶのが心地よい。

進まなくなったのを、腰を掴んでねじ込んだ。


「ぁぐ・・・・・っ!」


激しく絡み付く肉。

激しく震える身体を抱き締めた。


「鵯越え」

「ひよ、どり・・・・・?」


振り返ろうとする耳を噛み、ゆっくりと突き上げ始める。


「はぁ、は、はあっ」


獣のように番いながら、快楽を貪る。

絡んでくる肉の動きと熱さを見れば、感じていることは明白だ。

薄く笑み、落ちてきた髪をかきあげる。

舌なめずりして、強く腰を引き寄せた。


「・・・・・っ」

「っは・・・・・ぁっ」


吐息を絞りだして堪えるひとの中にたっぷりと流し込み、引き抜く。

長すぎるそれが抜け落ちると、イワンはくたんとシーツに沈んだ。





「おや、大分参っているな」

目を開けるのさえ億劫だ。

漂う煙草の薫りでそれが彼なのだとすぐ分かる。

何とか目を開ける。

だが、イワンは驚いて目を瞬かせた。


「ぇ・・・・」


緩くウェーブした短髪に、涼しげな目元。


「かめ、ん」

「今は要らないからな」


男が笑う。

イワンは目を瞬かせた。


「ざんげつさま・・・・・?」

「ん?」

「もう、ゆるして・・・・」


かすれた声で請われ、残月は綺麗に微笑んだ。


「それは無理な相談というものだ」

「もう、できない・・・・」


僅かに首を振り縋るイワンの頬を撫でようとして、手を引く。

口で手袋を外して、触れた。


「イワン・・・・・」

「いや、いや・・・・」


唇を指で辿り、喉を撫でる。


「ぁ・・・・・」


目を眇めて喉を反らせたひと。

晒された白い喉に唇を当てる。


「んっ・・・・」


軽く吸い上げる。

何度も繰り返して徐々に強めていく。


「残月さ、ま」

「ん?」

「痛くしな、で・・・・・」


懇願に近い声音に、見えない位置で笑む。


「善処しよう」


相も変わらず喉を愛撫する。

たっぷり構っておかねば。

この喉からあの甘い声が紡がれるのだから。

十分に下拵えを、スパイスを。


「あ、ぁあ」


割と肉のやわらな胸部を揉んでやる。

強さを色々試したが、優しめが特に良いようだ。


「ぁ、あっ」


尖りを摘み上げると、びくんと震えた。

くりくりと弄るよりねっとりと押し潰してやる方があからさまに反応がいい。


「感じ易いのだな」


立ち上がる雄の袋の裏から先端につうと人差し指を滑らせ、付着した蜜を舐める。


「縋れるか」


スラックスを緩め、抱き上げて膝に置く。

従順に首に手を回してくるのが可愛い。


「そのまま腰を」


首筋に埋められた頭が振られる。

横に、振られる。


「イワン」

「お許しくださ・・・・・」

「酷くされたいか?」


甘く優しい声で、意地悪く囁く。

回された腕が強く絡んだ。


「ふ、ぁ」


下ろされる腰。

先から熱くぴたと押し包む柔い肉。

腰から手を離しても大丈夫なのを確認し、後ろ手をついて腰を揺らしてやる。


「あ、っ残、月、様」


腰が酷く震えている。

膝が軋んでいる。

涙が、肩口に染みる感触。


「もう、だ、め・・・・・」


がくん、と腰が落ちた。


「っ!」

「あぅうううっ」


搾りだすような悲鳴。

激しく痙攣する身体。

痙攣に合わせて収縮する肉に、堪らず腰を突き上げる。


「はぁ、っあ、ぅう」


突き上げの惰性で浮き上がり、落ちたところを下から突かれて深く填まる。

悶える白い身体。


「抱き地蔵、という割に、この地蔵は軽すぎる、なっ」


奥まではめ込んで勢い良く注ぎ入れる。

若さに見合って勢いの良いそれ。

入った分押し出すように、イワンの雄も熱液を溢れさせた。


「次は、現実で」


指を取り口づけた男は、既に片手に仮面を持っていた。





「・・・・・・?」

頬に触れる冷たい感触。

薄く目を開けると、冷茶のボトルが当てられていた。


「多少の物品持ち込みが可能と聞いたゆえ」


飲まれよ。

身を起こそうとすると、手伝ってくれた。

声の上げ過ぎで痛み始めた喉。

ボトルを受け取り、頭を下げる。

少量をそっと口に含み、喉に流し込む。

それでも少し咳き込み、背中までさすってもらった。


「お手数を・・・・・」


弱々しく笑うと、頬を撫でられた。

絡む視線。

隈取りで愛敬がある目は、それだけ見ると恐ろしく動物的だ。

欲望渦巻く、め。

ゆっくりと、押し倒される。

ボトルが転がり、布団が濡れていく。


「十常寺様」

「喉は使わぬ事を推奨する」


アヒル座りのまま倒されて腰が反る。

割合身体の柔らかいイワンだが、内腿や背中が緊張するのは否めない。

しゅる、と衣擦れの音がし、思わず視線を下げようとした。

が、先に乗り上げられてしまう。


「っん、あ」


堅く締まった孔に擦り付けられる熱いもの。

じわりと押し開かれる。

先の丸めなものは入りづらく、直径を過ぎるまでかなり苦しい。

先から太いためにかりはそうきつくない。

だが十分に熱いもの。

入り口は喜んでひくひくしていた。


「じゅ、じょ、じ、さま」

「如何に」

「ぁあ、あ」


蠢く白い腰を掴み、骨を辿り。

徐々に、狂わせ。

理性を壊す。

ゆるりと腰を使うと、甘ったるい悲鳴。


「ふぅあ、あ、はあっ」

「かように腰を振っては」


衝撃に仕置き受くと思わしき事。

主の名を出され、とうとう精神は決壊した。


「ぁあ、ぁあ、アルベルト様ぁっ」


泣いて暴れるが、この体勢では手を振り回す程度だ。

それも腰の負担から言って激しくは出来ない。


「それが、千鳥」


泣き叫ぶ度締まる中に出してやる。

それでも感じる身体は白濁を溢していた。





「ひっく、ひくっ」

いっそ鼻水が出ればもう少し楽に泣けるのに、緊張で喉も鼻も乾いてしまって。

ひたすらに瞳を濡らし、啜り泣く。


「アルベルト様・・・・・」


布団を踏み締める音は主でない。

承知している。

泣き濡れ、赤らんだ瞳が、次の凌辱者を見上げる。


「カワラザキ様・・・・」


この男は、優しくない。

いや、優しいのだ。

だがそれ以上に。

どうもうな、けもの。

かつて十傑を率いた男。

今尚十傑を担う男。

怖い。

恐い。

こわい。

身体の震えを抑えられない。

歯の根が合わない。

優しい目が、狂暴な色で見つめている。


「たすけて・・・・・」


誰か、誰か、誰か!

這って逃げようとすると、脚を掴まれ引き戻された。


「いや、いや、いやっ!」


暴れても、押さえ付けられて。

脚を、開かされ。

いっそ黙って犯せば良いのに。

耳元で。


「おとなしくせんか・・・・悪童には灸を据えるぞ・・・・?」


身体が、動かなくなる。

絶対的な強さの前に。

言うことを聞くから。


「酷く、しな、で」

「ああ」


優しく、笑う。

どこかで気付いている。

これは罠。

甘さと酷さを混ぜて懐柔する、手管。

それでも、夢の中で無闇やたらに、際限無く増幅する恐怖に耐え切れず。

震えながら身を差し出す、白兎。

背の上部で身体を支えさせ、腰を腿の上に引き上げる。

支えた腰は、念動力なしでも十分に事足りるほどの、軽さ。


「イワン」

「ひ、っ」

「返事をせんか」

「は、はっ、ぃ、カワラ、ザキ、さ、っひあぁっ!」


押し入ってくる剛直は、かりが広がっていて飲み込みにくく。

腰が逃げを打ちくねる。

男はそれを押さえ付け深みに突き立てた。


「ひぐっ!」


動かされると、かりが中をこさいで堪らなく気持ちがいい。

知らず振りたてられる腰に、男が笑む。


「悪い子じゃのう」

「ひっ、あ、んあぁ」


中に注ぎ込まれ悶えるひとには、聞こえていないようだった。


「浮き橋も悪くないのぉ」





茫然と仰向けで転がるイワンを見た時に、矢張りなぁと思った。

人外魔境の十傑衆の欲望を一身に受け止めれば放心もしよう。

下腹は白濁にまみれ、尻の谷間も精液でどろどろだ。

ひくつく小さな孔からはとめどなく精液を溢れさせ、身体は小さく痙攣し。

濡れた瞳、唾液の伝う口端。

やめてやればいいのだ。

勝負など馬鹿な意地の張り合いだ。

だが。

それらと違いどうしても求めてしまうのは。

この。

しろい。

からだ。

抱きたい。

犯したい。

現実では決して叶わぬ。

人の道を外れる。

だが、今は。


「全ては夢、か」


ゆるりとのしかかり、目の前に縄を垂らす。

目が瞬き、喉が鳴り。

這って逃げを打ち始めるのを、後ろ手に縛り上げた。

そして仰向けに返し、腿にふくらはぎをつけて縛ってやる。

肩が軋む音がした。


「腹一杯飲まされたようだな」


恐怖に締まった孔からは白濁は漏れていない。

眺め、笑う。


「淫らな身体だ」


ひく、と孔が動いた。


「そんなに男根で刺し貫かれるのが好きか?」


首を振り否定する。

孔はひくつき肯定する。


「これだけ犯されてもまだかように締まりの良さを残しているのか・・・・・」


浅く入れた指を抜き、腿に昂りを押し当てる。


「儂も楽しまねばな」


太い、男根。

軽く扱くと益々太さを増す。

縛り付けた脚を揃えたたんで上げさせ、挿入する。


「っあああ!」


無理矢理に開かれる管。

悶え苦しみのた打つ上半身。

慣れた形と違うもの。


「ぁあっ、あぁっ」


抜き差しすると、血を吐くような悲鳴。

締まる孔による劇的な快楽と、視覚聴覚からの刺激。

益々膨れる、男根。

敷き込んだ身体が、激しく捩られる。


「あっ、あ、は、く」


目をきつく閉じ、眉をよせ。

シーツに頬を擦りつけて、はんずいさま、と呼ぶ。

甘く擦れたそれに、一気に熱が高まる。


「あ、あ、ぁ」


流し込まれる熱液に腰をびくつかせる。

出し切って縄を外した。

腕の縄を外す折、抱き締めながら耳を噛み、一言。


「理非知らず、と言うそうだ」





「ありゃ、これは酷いねぇ」

樊瑞が見た惨状+もう一人分の精汁+縄の跡。

イワンはもう虫の息だ。


「ん、頑張ったね」


抱き上げ、まだ汚れていないシーツに寝かせてやる。

伝う涙を指で拭う。


「お腹痛い?」


半端でない量の精液を流し込まれた腹をさすってやる。

イワンは小さく首を振った。


「痛、ぃで、す・・・・・」

「入り口もだろうけど、中も痛いね?」

「は、い」


かすれた甘い声の誘惑は甘美だ。

だがそれ以上にこれは利用価値があるのだ。


『皆馬鹿なんだよ』


我慢して我慢していい人を演じてばかりいるからこんな時に暴発する。

もっと考えて立ち回らないと。

馬鹿なふりをして、過度のスキンシップを度々繰り返して。

小出しにガス抜き。

そうすれば、こういう時に。


「ねぇイワン君、私は優しいんだよ?」


言い聞かせ、刷り込む。

私だけが、優しい。

君に、優しい。


「掻き出してあげようね」


あぁ、腫れてるね。

痛いけれど我慢するんだよ?

薄ら寒い、優しさ。

薄ら寒い、微笑み。

ゆっくり差し入れた指に絡み付く、熱く濡れた肉。

奥に、入れて、掻き回す。


「力を抜いて」

「あ・・・・ぁ、駄目、で、す」

「出していいから、ね」


掻き出すのを阻む、奥床しさ。

顔を覗き込み、微笑み。

優しく、キスを。


「お腹に力を入れてごらん」

「そん、な、事、したら」

「痛くなくしよう?」


くちゅくちゅと掻き混ぜて精液の排出を誘う。

もじもじする腰。

丸くなる爪先。


「いいんだよ」


可愛い姿、見せて?

耳たぶを舐めると、こぷりと小さな音がした。


「ぁ、あ、駄目、駄目」


こぷり。

こぷり。

小さな孔から次々溢れる精。

汚いとは思わないよ。

だって皆イワン君を愛したんだろう?

私だって同じ穴のむじなだ。


「ぁあ、ぁあ」


シーツを握り締めて、目を堅く閉ざして。

私の前で擬似排泄をする、可愛いひと。

恥ずかしさの赤面を通り越して、愕然とした蒼白。

なんて、愛らしい。


「気持ちいい?」


排出を助けるように掻き混ぜる。

粗方出し終えた時には、身体を汗ばませてぐったりしていた。


「ぁは、あ・・・・」

「ん、偉いねぇ」


ご褒美のキス。

身を離そうとすると、震える手が髪の端を掴む。


「連れていって・・・・・」


置いていかないで。

ここから出して。

縋るものを間違えた、可愛いひと。

縋るものを間違えた、可哀想なひと。

優しく、優しく、キスを。


「私を引き留めたい?」


囁くと、瞳が濡れた。

胡坐をかき、スラックスを緩める。

突き出た肉槍を軽く扱くと、強迫観念に囚われたひとはスーツを握り締めて膝に乗った。

熱くぬめる柔らかな肉に包まれていく自身。


「ふぁ、は・・・・」

「そのまま掴まっておくんだよ」

「え・・・・っく、ぁ・・・・っ」


足首を掴み、肩に掛ける。

スーツを掴む手が震えるから、背を支えた。

苦しい体勢に締まる孔。

差し込まれた肉槍。

それが互いから見える体勢。


「帆かけ茶臼とか言うらしいけど」


反りのきついものに腹側の壁を圧迫され、孔が益々締まる。

立ち上がった雄は、直接触れられていないのに蜜を滴らせていた。


「痛くない?」

「ぅ、あ、は」


ぶるぶる震えながら何度も頷くひと。

少しだけ腰を使い、緩く攻めた。

この人をいたわる振りをして、少しでも長く味わうために。


「はぁっ、は、ぁあ」

「一緒にいけそう?」

「は、い・・・・・」


少し強い突き上げを繰り返すと、肉襞が例えようない動きで絡みうねり。

歯を食い縛り、放つ。

首筋に額を擦り付けてくるひと。

絡む肉の動きで達したのだと知る。


「セルバンテス様・・・・・」


縋る手から逃れて消えていく男も、やはり助けてはくれなかった。





シーツの海を這いずり続ける。

もう嫌だ。

もう無理だ。

行けども果て無き白い海。

打ち拉がれて泣いていると、抱き締められた。

誰?誰?だれ?

葉巻の香りはしない。

スーツの色が違う。

回された手の形が違う。

今何人目?

このひとは、だれ?


「オロシャのイワン」

「何で・・・・」

「私が参加してはいけませんでしたか?」


策士、孔明。

信じられなくて、信じたくなくて。

策で戦う男の力が何故こんなにも強いのか。

抱かれたまま、持ち上げられて。

膝に下ろされ。

ジッパーの音が、耳について。

腰を引き寄せられて。

すっかり柔らかい孔に、突き刺される。

余りに滑らかに、騙すようにされて。

小さな喘ぎしか、でない。

手が離れ、身体を撫で回す。

脇腹をさすり、腕を解し。

力が抜けていく。背に感じる布の感触。

いけない、と、身を起こそうとする。

胸を押さえて引き戻された。


「感じていなさい」

「ぁ・・・・・」


袋を揉まれ、幹がぴくりと反応した。

触ってほしくて無意識に腰が揺れる。

だが、意地悪な手は袋は巧みに愛撫しても、幹や孔には刺激をくれない。

焦れて、収縮する括約筋。


「あぁ、中々良いですな」


淫らがましい動きで締められ、思わず呻く。

くいと、胸の尖りを摘み上げた。


「ぁ、ぁ、あ」


きりっと捻られるのを待ち侘び、フライング気味にひくつく孔。

堪らなく心地いい。

舌なめずりし、指先に力を込めた。

ぎゅぅっ。


「ひぁぁあっ」


激しく身を震わせて吐精したイワンを抱き締め、たっぷり流し入れる。

弛緩した身体を、俯せに横たえて抜き取った。


「しぼり芙蓉は如何でしたか?」





シーツに埋もれ、茫然と上を見上げる。

あの方に、会いたい。

一目、見たい。


「アルベルト様・・・・・」


流れ落ちる涙。


「アルベルト様っ・・・・・」


貴方にならこのくらい平気なのに。

貴方でないというだけでこんなにも辛い。


「アルベルト、様っ」

「泣く程なら」


最初から素直に助けを求めんか。

葉巻の香り。

黒いスーツ。

大好きな手。


「・・・・・っ」


手を伸ばし、縋る。

泣いて、泣いて。

必死に口づけた。

情を恋慕を、狂おしい愛を込めて。

主は満足気に笑い、口づけに応えてくれた。

ゆっくりと押し倒される。

遠ざかる身体を必死に引き寄せ、口づける。

そうしたら、ネクタイの端を首にまわされて。

縄よりはるかに短いそれは到底足りず、殆ど密着した状態。

愛撫しようとする手を振り払い、腰に脚を絡め。

近過ぎる顔を必死で引き寄せて唇を食む。

主は口端を歪め、笑った。


「そうやって求める事を忘れるな」


足首を掴まれて、脚を開かされた。

唇を貪りながら感じる、慣れた形の、到底慣れない質量。

離したく無い唇が、離れてしまう。

こえが、おさえられない。


「ひあぁぁっ」


十人の肉槍の洗礼を受けた孔は、やわらかく主を包んで締め付けた。

悶える白い身体を目で楽しみながら、ゆっくり注挿する。

たっぷりと、可愛がってやる。


「ぁあ、あ、アルベ、ルっひぃんっ」


長い注挿中にずぷぷっと深みに突き入れられて、白濁を噴き溢す。

むしゃぶりついた肉槍から中にほとばしる、熱い精液。


「ぁあ、あ」


焦がれ求めた主に至福と悦楽を与えられ、無意識に恍惚の笑みを浮かべる従者に喉奥で笑い、男は優しく接吻した。


「首引き恋慕といったか・・・・・悪くないな」





「普通なら死んでると思うのよね」

体力以前に精神面で。

そうは言いながら、悪夢から覚め指一本動かす気力の無いイワンに栄養剤の蓋を開けてやるローザ。


「まぁ、夢だけでもっていうのが情熱的っていうか、夢でしかってのが虚しいっていうか・・・・・」


ぽろりと零す娘が不敬罪でシバかれないのは、ひとえに十傑の機嫌を体を張ってとった男がいるからだ。

レッドが片眉を上げる。


「初夢とはそれに向かい一年の精進をする為の指標だぞ?」


初めて見た夢で無くとも目標に出来そうなものなら、二日や三日でも構わんのだ。

妙なところで知識を披露したレッドに、固まる主従。

こいつらが全員本気で精進したら手に負えない。

忍者はまぁいつも通りだ。

天然ボケの男は何をするか分からない。

伊達男は手管で落しかねない。

引き籠りは暴走すると危ない。

若年寄りは若さで迫る気らしい。

やたら滅多等黒い爺様2人は言うに及ばず相当に質が悪い。

ロリコン魔王はサニーに甘いくせにイワンにはサドっ気全開だ。

幻惑は普段から色んな方向の危なさを複合させて変態街道を爆走中。

策士は名の通り策でオトすだろう。

来年も多難だ、とうなだれるアルベルト。

今年手に入れた恋人を守るには世界を敵に回すしかないらしい。

毎年と変わらない、と早々に諦めたイワン。

十年前から胃薬を握りしめて生きている。

まぁ、双方それでもなお幸せなのだが。


「飲まないの?」

「・・・・今飲んだら、多分吐く」


辛そうに言うイワンに首を傾げたローザは、栄養剤を一口含み。

苦労性な友人をぐいと上向かせ。


ちゅうぅぅっ!


「「「っ?!」」」


飲み込ませて、よしよしと鼻先を擽って、イイ笑顔。


「飲んだ?」


それじゃ良いお年を。

新年まで、あと23時間59分。





***後書***

姫初とか初夢の話をしていた筈が、いつの間にか大晦日の方に走ってしまった。

爺様二人暴走だ。幻惑は普段チャラけた分企画では一番危ない男設定。

でも意外と残月兄さん活躍したな。幽鬼も中々・・・・やんちゃじゃないか(←)