【御主人様のお気に召すまま-003】



情事後の淫美な空気の籠もった部屋、ベッドの上でイワンはもぞりとみじろいだ。

起き上がろうとすると、腰に力が入って中の残滓が溢れる。

兎に角自室に戻らなければとそっと主の腕から抜け出そうとする・・・・が。

しっかりとした腕が頑強に絡み付いてまったく外れない。

主を起こさぬようにしつつじたばたと藻掻いていると、唐突にグイと抱き締められた。


「煩いぞ」

「も、申し訳ございません・・・・あの、自室に・・・・・」


遠回しに放してほしいと訴えてみるが、聞いてくれない。

それどころか、後ろから抱き締めていたのをひっくり返し、自分の胸に顔を向けさせて抱き締めてしまう。


『わ・・・・・・』


途端に深く香る主の香り。

厚く逞しい胸板は温かく、緩やかな呼吸がイワンを落ち着かせる。

少し顔を上げると見える髪を乱した主の顔に見惚れた。

男の色気、とでも言おうか。

ありきたりに言えばダンディなのが常の主がこうやって髪を崩して抱いてくれるのが、とても幸せで。


「・・・・眠れんのか」

「あ・・・・・いえ、そういう訳では」


小さく身じろいでイワンを抱き直すアルベルトは眠たげだ。

イワンはそっと目を閉じた。


『少しだけ・・・・』


ゆっくりと身体の力を抜く。

主の腕が触れるのが心地好かった。

三時間も経ったらイワンはそっと起きるだろう。

主が一番深く眠っている隙に、その腕から抜け出す。

夜も明け切らぬ廊下を足音を忍ばせて歩き、自室へと戻ってしまうのだ。

アルベルトはそれを咎めないし、イワンもそれに何の疑問も持っていない。

咎めないアルベルトがどう思っているのかは分からないが。



「・・・・・だから君達ってどうしてそうもどかしい人達なのかな」



イワンから(無理矢理)話を聞いたセルバンテスが言ったとか言わなかったとか。

どうせなら朝まで睦みあいたいタイプのセルバンテスには、まったく理解できない主従だった。





***後書***

短っ・・・・。リク下さいとお願いに行ってこの短さって。切腹もの!

日向みずき様より【事後の主従】のリクでした。一応事後だけど甘くない・・・。

思ったより短かっ・・・・すいません(反省)

「take2逝きまーす」と思ったらどうぞ仰って下さい。頑張ってみます。