【御主人様のお気に召すまま-004】



「結婚式はいつにするの?」

初夏の光眩しい6月、サロンで紅茶を煎れていたイワンは首を傾げた。


「結婚式・・・・・とは、どなたのでしょうか?」

「勿論イワンとお父様のよ?」

「?!」


投下された爆弾発言に、その場に居た者は絶句した。

レッドとセルバンテスだけはゲラゲラ笑っているが。


「サ、サニー様・・・・・それは一体何の冗談・・・・・・・・」


可哀想な常識人イワン。

まさか恋仲になってしまった主の娘にそんな事を言われる日が来るとは夢にも思わなかった。

だがこの少女は父に誠心誠意仕えるこの優しい人が大好きだったので、これっぽっちも恨みや怒りを向けはしない。

それどころかキラキラした瞳で問うてくるのだ。


「だって六月の花嫁は憧れですもの。今月中に式を挙げましょう?ドレスは私に任せてね!」


ポンポンポーンと言い切って走り去ってしまったサニーを引き止める事も出来ず、イワンは茫然と立ち竦んだ。

しかしはっと我に返るとさぁっと青ざめる。


「サ、サニー様!お待ちを!」


慌てて追い掛けるイワンに、レッドとセルバンテスは笑い死に寸前だ。

渦中のもう一人は平然と紅茶を飲んでいる。


「君は異論はないのかい?」


滲んだ涙を拭いながら聞いてくるセルバンテスに、アルベルトはふんと鼻を鳴らした。


「どうせイワンがどうにかこうにかして止める」

「おや、残念なのか?」


レッドが揶揄うと、アルベルトは彼をじろりと睨んだ。

レッドはにやにやしながら肩を竦めてみせる。


「ならいいではないか。私が紋付袴で貰い受けに行ってやる」


その言葉に、樊端が我に返る。

常識人その2は今までフリーズしていたのだ。


「・・・・・お前達とイワンは・・・・・・・一体どういう関係なのだ?」


その問い掛けに、アルベルト、セルバンテス、レッドの視線が瞬時に樊端を捉える。


「・・・・・主従」

「素直じゃないなぁ。ちゃんと恋人って言ったらどうだい?」

「だからこんな奴から私が貰い受けてやろうというのだ」


バラバラだが何となく関係が分かる答えに、樊端はこめかみに指を当てた。

イワンの苦労を思うと哀れになってくる。


「取り敢えず・・・・式は思いとどまるよう諭しておこう」


その言葉にセルバンテスとレッドはつまらなそうにするが、知った事ではない。

さすが混世魔王。

と言いたかったが。

サニーに甘いこのおっさん、うるうるおめめでお願いされて、譲歩しやがったのだ。

「ドレスは着せてもいい」と。





「うぅ・・・・・・・・」

当日イワンは胃が痛かった。

もはやどうあっても逃げられない状況まで来ている。

「白くて細い綺麗な脚だけれど、ガーターは殿方の夢だから!」とイイ笑顔で言われ、ストッキングは勿論下着まで女性物を穿かされているのだ。

真っ白な下着を渡された時は倒れそうになった。

ヴェールまで掛けられ白いヒールを履かされて、サニーに手を引かれる。

途中すれ違ったローザが立ち竦んだのを見た時は泣きそうになった。

まぁ彼女が驚いたのは、女性程華奢ではないにしろ綺麗なラインの身体にフィットしたウエディングドレスの清楚かつ甘い色気だったが。


「ほらほら、早く!」

「サ、サニー様、やはり・・・・・・」


及び腰になるイワンににこっと笑い掛け、サニーはサロンの扉を開けた。


「皆様、出来ましたわ!」


嬉しそうなサニーに連れられて、深く俯いたイワンが入ってくる。

下を向き過ぎて、ヴェールからちょこんと鼻先だけが出ていた。


「花嫁の顔が見えんな」


レッドの心底意地の悪い言葉に、びくりと竦む肩。

いっそ泣きたいが「お化粧が崩れるから泣かないでね?」と言われているので泣くに泣けない。

化粧の崩れた顔はこの世のものでないと言うから、イワンは必死で堪えた。


「・・・・イワンが泣きそうなんだが・・・・」


幽鬼の声に、我に返る。

このままではサニーに悲しい思いをさせてしまう・・・・・!


「わ、私は大丈夫です!」


思わず顔を上げると、皆の動きが止まった。

しんとした室内。

やはり酷い顔だったのだと思い、イワンは慌てて俯いた。

そこにカワラザキの声がかかる。


「馬子にも衣装程度にはなるかと思っていたが、いやはや、思った以上に美人に化けたのう」


はっはっはと楽しげに笑うカワラザキに、残月も口を挟む。


「トレードマークの鼻も愛敬があって良い。目の傷痕を隠してしまうと意外と整った顔ではないか」


無理にと言う風にでもなく褒められて、イワンは複雑だった。

嬉しくなくはないが手放しで嬉しいのとも違う。

俯いた床にふっと影が差して、イワンは少しだけ顔を上げた。

その顎に手が掛かり、クイと上向かせられる。

ヒィッツだった。

怒鬼も一緒で隣からまじまじと覗き込んでくる。


「あ、あの・・・・・・・」

「ふむ・・・・・・これは中々・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


まじまじと顔を覗き込まれて赤面した顔もまた愛らしい。

二人が眺めていると、後ろから押し退けられた。


「貴様等より私の方が先に目を付けたのだからな」


・・・・・言わずもがな、レッドである。

紋付袴で迎えに行く、と言っていたのもあながち冗談ではなさそうな勢いだ。


「下はガーターか?」


突然そんな事を聞かれ、イワンは「はあ」と曖昧に頷いた。

レッドがにたりと哂う。


「と言う事は・・・・下着は女物だな?」

「っ!!」


かぁっと頬を染めたイワンに、皆が驚いた顔をする。

だがレッドは上機嫌だ。


「ふっ・・・・・・脱がせるのが楽しみだ」

「レ、レッド様!」


思わずドレスを抑えたイワンは、恥じらう様子がまた堪らなくイイ。

サニーがレッドを見上げた。

悪戯っぽく笑う。


「駄目ですわ、レッド様。イワンはお父様のものですもの」

「衝撃のはそう興味を示していない。私が貰っても・・・・・・・」


言い掛けたレッドの脇を擦り抜ける影。


「あ・・・・・アルベルト様」


思わず足を退いたイワンを引き寄せ、ひょいと抱き上げる。

そして一言も何も言わずにさっさとサロンを出て行ってしまった。

残月が紫煙を吐き出して笑う。


「衝撃のも案外気が短いな」





「・・・・・・・足が痛むのか」

アルベルトの部屋、ふんわりとしたベッドの上に降ろされ、イワンは主の言葉に目を瞬かせた。


「え・・・・・あ、はい。少々痛みますが・・・・何故それを・・・・・」

「歩き方が不自然だ」


言いながらイワンの白いヒールをそっと脱がせる。

三ヶ所ほど赤黒く変色していた。


「お手を煩わせしてしまって・・・・直ぐに着替えて参ります」


裸足でベッドから降りようとする従者を柔らかく縫い止め、アルベルトはスッと目を細めた。

ぐじゃりと髪を乱すと、途端ワイルドさが増す。

イワンの鼓動が跳ねた。


「ん・・・・・・・」


口づけられ、小さく息が漏れる。

何度も角度を変えて唇を食まれ、薄ピンクのルージュがすっかり剥げてしまうまで続いた。


「貴様は逐一男を煽る真似をする」


憮然とした顔で言い、ドレスの上から鎖骨をついばむ。

甘い震えが背筋を駆け上がり、ぎゅっとシーツを掴んだ。

だがアルベルトの手がドレスのスカートに掛かると、慌ててそれを押さえた。


「あ、あの」

「手を離せ」


ぴしゃりと言われて怖ず怖ずと手を離す。

そしてぎゅっと目を閉じてしまった。

スカートが捲り上げられる度に身体が強張る。

そして上まで捲られてしまうと、イワンは顔を真っ赤にして涙ぐんでいた。


「ぁっ」


純白のパンティの上から雄を撫でられ、イワンは小さく声を上げた。

シーツを掴んだ手がぶるぶると震えている。


「アルベルト様・・・・・・っ」


とうとう羞恥に耐えかねて、見ないで欲しいと言外に訴える。

アルベルトはイワンの脚を撫でると、ガーターに指を引っ掛けた。

パチン、と音を立てて、ガーターが外される。

ストッキングをするりと脱がせると、白い脚が露になった。

膝の内側に吸い付いて痕を残すと、イワンの脚がぴくっと跳ねる。


「あ・・・・・・・」


小さく声を上げたイワンの太腿をゆったりと撫でると、細い肩がぴくりと震える。

そのままパンティの上から雄を揉み込むと、イワンの細腰が跳ねた。


「はぁ・・・・・ん・・・・・・・」


立ち上がる雄は純白のパンティを押し上げるが、如何せん女性物だ。

膨らんだ雄できつくなり、逆に後ろが食い込む。

それが落ち着かなくてもじもじと腰を動かしていると、主の手がきついパンティを脱がせる。

高まる羞恥心に震えていると、大きな手が雄を包み込んだ。

緩く上下に扱かれて、甘い悲鳴が迸る。


「あっ、あ、く、ふぅ・・・・ん・・・・・・」


先端の割れ目を開いて擦ると、大仰に体を跳ねさせて喘ぐ。

滴るぬめりに頃合いかと見計らってサイドボードのオイルを取れば、潤んだ瞳で見上げてくる。

その口が自分ですると言い出す前にオイルを指に絡めた。

固く口を閉ざした最奥に指を滑らせ、呼吸を計って差し入れる。

相変わらずのキツさが、不義は働いていないと主張する。


「ぁ・・・・・ふ・・・・・・・」


ぬるぬると抜き差しをして中の柔らかい肉壁を擦れば、何とも言えない淫らな動きで媚肉が絡み付いてくる。

男にしてみれば生唾もののその動きは、アルベルトをも煽り付けて先を誘う。

指を二本三本と増やして、奥を探る。

弾力のある筋と柔い肉壁が、指に心地よい。

熱い媚肉は体液をまとわり付かせて指を食み、続きを促した。


「・・・・・・いくぞ」


指を抜き取り服を脱ぐと、イワンの脚を持ち上げる。

ドレスの裾がふわりと舞った。


「あ、ぁ、んく、ぅ」


入ってくる男根は立派過ぎて、イワンを苦しめる。

だがアルベルトにしてみれば狭くキツい胎内は格別で、気遣いながらも動きは止まらない。

全てを収めると、従者の左目の傷に口づけ、ゆるゆると動かし始める。

抜こうとすると嫌がるように絡み付き、差し入れる時には抵抗するように窄まろうとする。

その淫らな身体に反して、涙をいっぱいに溜めて声を抑える姿。

アルベルトは従者を抱き直すと強く腰を使い始めた。

細い悲鳴が上がり、華奢な腰がくねる。

その色っぽい様子を堪能しながら、アルベルトは腰を打ち付けた。

従者の口から高い声が上がり、腹に温かい飛末が掛かる。

次の瞬間きたとろけるような締め付けに、反射的に歯を食い縛る。

が、思い直してそれを解くと、中に熱い粘液を放った。

糸を引いて滴るその感覚に、イワンはぶるりと身体を震わせた。

その気怠げな表情に、アルベルトの男根がまた熱を持つ。

何か言う前に、従順な従者は照れたように可愛らしく笑ってみせるのだ。


「どうぞ、お気の済むまで・・・・・・」





「ごめんなさい、私知らなくて・・・・」

「?」

涙ぐんで謝る少女に、ハンカチで顔を拭いてやりながらどうしたのかと尋ねる。


「おじさまにお聞きしたのです」


結婚式を挙げて最初の夜、およめさんは痛くて血が出る事をされるのでしょう?


おじさまがセルバンテスか樊瑞かははかりかねたが、どちらにしろこんな小さな女の子に何を教えているのだろう。

本当に悪い環境下で育つ少女も主と同様ずれた常識を身につけるのだろうなと思いながら、イワンは泣きそうになっていた。





***後書***

久々更新がGロボ。

暫く更新して無くって申し訳ナス。

今忙しいんです(言い訳)