【 御主人様のお気に召すまま-108 】
真っ暗な室内に、ごそりと動く影。
常なら音も気配も絶つ男がこうも気を緩めているのは、
壱、厄介な同僚が任務中。
弐、想い人はB級。自分は十傑。
参、その上今日は睡眠薬まで盛ってみた。
死、洗濯物ハンターに不可能は無い。
の4点に尽きる。
勿論4から丸分りだが、不法侵入者は残月であり、ここはイワンの部屋だ。
使用済み洗濯物窃盗中毒者にイワンの警戒が強くなってしまい、最近は収穫が少ない。
だがそんな事で諦めるようならさっさと真っ当な道に戻っている。
その程度で諦めるほどぬるくない変質者Z君(19)
くったりとソファに沈んだイワンに、そっと微笑む。
寝顔を覗き込む残月は今、仮面は無い。
王子様と言って十分なイケメンだが、残念な事に中身は腐ったトマトが原料のケチャップ以下だ。
さて久々にぬくもりたっぷりな生下着を収穫するか、とスラックスからベルトを抜き取る。
ジッパーを下ろそうとした瞬間、手を掴まれた。
顔を上げて、視線が絡む。
自分の片手を両手で掴んで押し止めるのに笑んで、机の上の数冊の本を除け、スタンドをつけた。
局所的な明かりが、部屋全体を薄く照らす。
「狸寝入りか・・・・差し入れは口に合わなかったかね?」
「ええ・・・・・少し薬の味がきつくて」
無味の筈のそれを見破ったのは、単に十傑に構われ鍛えられた勘だろう。
イワンの視線につられるように視線を流せば、ほんの僅かにかけたクッキー。
十分な薬の量の筈だが、欠けた部分は噛み跡でなさそうだ。
「成程。私の失態だな。では、どこに突き出す?国警は残業の中条くらいしかいないと思うが?」
それとも今ここで下着を脱ぎ捨てて私の手に握らせてくれるかね?
からかうように言った残月は、イワンの不思議そうな視線に言葉を続けるのをやめた。
「何故、使用済みの下着などお求めになるのですか?」
言っている意味が分からなくて首を傾げる。
洗濯物の魅力と言うなら4時間ほど軽く初級編を講義してもいいが。
「どういう意味だね」
「ただの下着・・・・少し体臭の移った布切れでしょう?」
「・・・・・ただの、ね・・・・・」
お前のだから欲しいのだと言ったって分かりはすまい。
すまいと思えど一言言いたくて口を開くが。
イワンの方が、早かった。
「私は、下着に劣りますか・・・・・?」
こて、と首を傾げる小鹿。
なんにもわかっちゃあいない。
「中身より、ラッピングに興味を示されると、少し・・・・・」
ちょっと拗ねたように言う姿に首を傾げ、脳の大事な部分に電気信号が行くまで数秒。
伝達が終了した途端、頬が緩んでしまう。
「可愛い事を言うな・・・・・私は洗濯物が好きなだけでないのに」
「他にも、ご趣味が・・・・・?」
見上げてくる小鹿を見て、理解する。
アルベルトと両想いと言うより、刷り込まれ騙されているというものに近いようだ。
色々と変態的な情交も強いられているようだし、何とかなるかもしれない。
「では、こんなものはどうだね?」
「え・・・・・や、や・・・・っ」
顔を背けるイワンの頬は薄ら赤い。
残月がイワンの目の前に突きつけているのは、持ち歩いている泡だてきだった。
「恥ずかしがる、と言う事は、これで何をされるか分かっているのだな」
「え・・・・・あっ・・・・・」
勝手な妄想・・・・恐らく正解だろうが、それを恥ずかしがってイワンは顔を隠した。
残月は泡だてきを放り出し、イワンを抱き起こした。
「ゆでたまごを、作ってくれないか」
真性変態と、変態的なセックスに強制的に慣らされた可哀想なひと。
イワンは恥ずかしそうに俯き、小さく頷いた。
鍋でゆでたまごを作る間ずっと背後からセクハラを繰り返した残月。
回した手で弄り倒してすっかり蜜塗れの雄を軽く握ったまま、焦らす。
イワンは腰砕けになりそうになりながら、残月の言うままにゆでたまごの殻をむいていた。
温かいゆでたまごを5個持つと、抱きあげられてベッドに運ばれた。
もじもじしていると、脚を開かされる。
恥ずかしくて閉じようとすると、止めはしない。
だが、目が合って意地悪く笑まれた。
泣きそうになって、脚を大きく開く。
「どうした、恥ずかしいなら隠して構わないが?」
「は、恥ずかしいです・・・・・でも、っ・・・・・」
見られると、気持ちが良いのです・・・・・。
濡れた目はすっかり残月と同類だった。
変態に犯されたがる変態だが、これは余りに可愛らしい。
くつりと笑って視線を戻せば、視姦される喜びに蜜を垂らすはしたない雄。
だが、これが限界と弁えている。
自分で慣らせとか乗れとかは言っても出来ない恥ずかしがりだ。
露出の趣味に走っているのだって、気付けば途端恥ずかしがるのだろう。
たっぷり視姦し、形から色までたっぷり実況してやる。
その度に蜜を零して感じまくる姿は圧巻だ。
若い残月が暴走しないのは、自分で太腿に針を刺しているからだ。
ひくつくピンクの窄まりを眺め、指で押し広げる。
手袋を嵌めたまま軽く擦ると、甘ったるい吐息。
「んふ、ぅ・・・・・・・」
「心地がいいか」
「ん・・・・ざらざら、して・・・・・きもちい・・・・」
素直な言葉は、主の不在に疼く体が暴走しかけているからだ。
残月の方が堪えられずに手袋を投げ捨てるのに時間はかからなかった。
息を荒げながら窄みのしわを擦り、ぐいと押し広げる。
引っ張られた皮膚が、微妙に粘膜の境をさらした。
「ああ・・・・・堪らんな」
「ざんげつさま・・・・・・」
熱い息を吐いて腰を揺らすのに唾を呑む。
舌をつけると、白い身体が激しくうねった。
「あぁ、舐めるのは、だ、め、です、っ」
「何故かね?こんなに厭らしい味なのに」
中に舌をねじ込むと絡んでくる甘い蜜。
女の酸い蜜とは根本違う。
殺菌でなく保護の為だけの、とろりと甘い汁だ。
堪らず舌を押し込んで中を舐めまわす。
「あ、ぁは、あ・・・・ん」
「こんな場所を舐められて感じるのか」
「言わな、いで・・・・・!」
涙声で言うくせに、腰は嬉しそうに震えている。
指を一本差し入れて、少し浅くなったしわをべちゃべちゃ舐める。
イワンが悶え狂うのを楽しみながら、指と舌でたっぷり可愛がった。
弾む息を整えるイワンは、いつの間にか手の中からゆでたまごが消えているのに気付かなかった。
押し当てられたつるっとしたものに、初めて気づく。
「あ・・・・・・」
ほんの少し、僅かに笑んだ口元。
余りの厭らしさに眩暈がしそうな顔だった。
ご期待に添おうとばかりにゆでたまごを押し込むと、すっかり柔らかくなった入口が大きく開いて飲み込んでいく。
ぴんくの肉孔が開いて白い卵を飲み込む姿の淫猥さは口で言っても到底分らない。
含んでも入口にとどまって少し膨らんだ蕾。
そこにちゅっと口づけると、肉管が収縮し、少し奥に入る。
そこに、二個めを。
「あぁ、はぁん・・・・・・ふ、ぁ・・・・・」
ぬるん、と入ってくるゆでたまごにすっかり気持ち良くなってしまっているイワン。
指で奥に詰め込まれても、文句をいうどころか気持良さそうな溜息。
5個目がかなり厳しかったが、ぐぐっと奥に押し込んでしまう。
一番初めのが肉管の曲がったところを通り抜けてしまい、その激しい快楽の刺激にイワンは悶絶した。
「んふぁあっ・・・・!」
びくっびくっと痙攣する身体。
下肢を派手に汚していく精液。
白いそれが噴き零れ終わると、間髪入れずに小水まで漏らした。
余程烈しい悦楽だったらしい。
すっかりイってしまっているイワンの脚を大きく開いて折らせ、残月は取り出した自身を埋め始めた。
5個目を押し込んだら、1個目が奥に抜けた。
当然だが、こんな長いものを押し込めば少なくとも3個は奥に抜ける。
「ふぅぁあああっ!!!」
「・・・・・・っそんなに喜んでもらえると私も嬉しいな」
「あはぁ、っあんぁ!!!」
ごぶっと奥に抜けるたびに悶え狂ってよがるイワンにしっかり差し込んで、残月が笑う。
煮えているとはいえ卵を崩さぬように優しく注挿し、5個とも奥まで入れてしまう。
痙攣して涎を垂らしているイワンの中にたっぷり出して、残月はゆっくりと男根を引き抜いた。
こぽこぽと溢れる精液を眺めていると、イワンが腰を捻った。
「あ、あ、そんな、だめ・・・・・」
「おや、下がって来たかね?」
自分で塞ごうとする指を捕まえて口づけると、イワンは泣き出してしまった。
そのしゃくりで、益々下るゆでたまごに勢いがつく。
「あ、あっ」
「出てきたな」
「見ないで・・・・・!」
ピンクのしわが寄った入口を押し広げて顔を出すゆでたまご。
必死で力を入れているのか、一度引っ込んだ。
だが、執拗に刺激された入口はもう限界だ。
ひくひくして卵を吐きだしにかかる。
「んうぅっ」
ぽこん、ぽこん、と排出されていく卵。
擬似的な産卵にひどく興奮した。
奥まで詰められていたものを吐き出す気持ちよさに射精するのを眺めながら、蜜塗れになって湯気を立てるゆでたまごを口に運ぶ。
「ふふ、甘い卵も悪くないな」
「・・・・・あの、サニーちゃん」
「はい、何ですか。おじさま」
恐る恐る手を上げたセルバンテスに、サニーは愛らしく微笑んだ。
樊瑞など魂吐いているし、アルベルトは風化しかけ。
余談だがイワンは既にロープを引きずってはしごに上り始めている。
「それ、意味分かってる?」
「意味?ご、ごめんなさい、分かりません」
ただ、残月様の本棚の一角にあった本が、可愛いピンク色の背表紙だったので。
残月の蔵書量は半端ないので、サニーも彼のいる時はたまに訪ねて読書をさせてもらっている。
だが、これは恐らく本ではなく作文シリーズだ。
きっと印刷所に出したに違いない。
「でも、残月様はとても優しく微笑んでいらっしゃいました!」
純愛小説だって。
「えぇ?!あの男本気で言ってるの?!」
だとしたら可哀想過ぎる(頭が)
危険すぎる(頭の中身が)
不安すぎる(頭の作動状況が)
残月行け行け面白い、な奴らは放り出し、おじさま3人は久しぶりに本気の出陣をするのだった。
が、その前にやることがある。
「イワン君、はしごに上っちゃだめだ!」
「ロープを離せ!」
梯子から降ろされ、ロープを奪われるイワン。
セルバンテスが、優しく言い聞かせた。
「とりあえず、ゆでたまご作って欲しいんだ」
鬼上司にもう何も言う事は無い。
頷いている主にも何を言っても無駄だ。
こういう場合は。
ぴっ・・・・ぴっぴっ・・・・・とぅるるるる。
「あ・・・・韓信様ですか?」
『あぁ、イワン君か。どうしたね』
「逃げ場にするのは卑怯だと分かっておりますが・・・・その・・・・」
『いやいや、私の言葉を覚えていてくれたんだろう?会えるなら理由は問わないと』
「韓信様・・・・・・」
『では、迎えに行くよ』
次の瞬間窓を突き破って入ってくる、韓信筆頭の国警イワン狙いチーム最速、影丸。
レッドが追うが、蟲に阻まれてしまった。
幽鬼が出るが、今度は木刀が飛んでくる。
イワンさんが言ったんだもん、とばかりに容赦なく攫った正義の味方のはずだが怪しい奴ら。
悪の秘密結社の結束が高まる。
「あの根暗忍者!」
「・・・・・クソ餓鬼が・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「刻むか」
「早くすべし」
「本気で行かせてもらうかのぉ」
「帰ったら仕置きだ」
「あのね、悪いのはイワン君じゃないよ」
「あぁ、少女の無邪気さが招いたな」
「早くしなさい、樊瑞殿」
「う、うむ、行くぞ!」
策士含め『11人』が出撃した。
見送るサニーは、不思議そうに首を傾げた。
「残月様、お話の途中はいなかったのに」
イワンが攫われたら、直ぐに来ちゃった。
大人気の、母公認『おかあさん』は、サニーの自慢。
残月の部屋から借りてきたもう一冊を開き、サニーは皆の帰りを待つことにした。
本の題名は『学校の水道が上に上がるのを最大限に活用するためには』である・・・・・。
***後書***
どこまで残月を変態にするかって言う話から、イワンさんが痴女じみた話に。