【 御主人様のお気に召すまま-114 】
イワンは大変な恥ずかしがりである。
快楽攻めにもかなり頑張るから陥落させるのはなかなか骨を折る。
が、その強情なのが堕ちる瞬間の快感は何とも言えない。
絶望と恍惚に蕩けた顔で、徐々に理性を崩壊させる。
熟れきった身体は可憐さが淫らがましさに成り替わり、それはそれでいつもと違った味で楽しめる。
話は変わるが、男性向けのエロ本は純情可憐か変態娘である場合が割と多い。
普遍的なものは現実で求めれば良いとばかりに男の願望丸出しの乙女や痴女が闊歩する。
そして昨今はえげつないほどに欲しがって乱れるのが結構受けているらしい。
今までの話を総合するとつまり、イワンにえげつない言葉でねだらせたいと思っているという事だ。
誰が。
十傑と策士と答えたいが、異常性癖者揃いの十傑を舐めてはいけない。
残月を例に取れば、あの男は目の前でストリップをさせる方が興奮する性質だ。
脱ぎ捨てられていく衣服に激しく興奮するらしい。
裸体と衣服どちらに手をのばすべきか3秒は迷う。
樊瑞であれば、卑猥なおねだりより卑猥なものを見せつける方が良い。
怒鬼はおねだりより入浴禁止させたい願望に満ち満ちている。
反対にレッドはと言えば、そんな事をさせるより甘やかして優しくして、二人で抱き合っていたいわけで。
つまり、先の話に当てはまるのは衝撃のアルベルトというほんの少し普通だがやはり異常という男に他ならない。
そして思いついたら即行動の男は、イワンを部屋に呼びつけた。
今、イワンはアルベルトの傍に寄り添って命令を待っている。
抱き寄せると、抵抗はしないがやはり恥ずかしがった。
可愛い。
それは可愛い。
だが、今日は理性を突き崩してやると決めている。
顎を掬って唇を合わせる。
「ん・・・・・・っ」
鼻にかかった甘ったるい吐息。
唇を吸われるのに幸福感を感じるらしい。
確かに、欲望の処理なら唇を合わせる必要はない。
肉の穴があればいいのだから。
だが、それをイワンに求めてはいない。
イワンが欲しいのだ。
快楽が欲しいなら女を買えば良い。
狂おしく求めている。
そしていつだって、求めさせたいと思っている。
自分に犬のようについてくる男が逃げ出す可能性は皆無に等しい。
だが、求めたり甘えてくれる事もほぼないとみていい。
苛々する事実だが、その気質を含めてイワンなのだから仕方がない。
いつかきっと躾直してやるつもりだが、強硬にやるものではない。
唇を割合強く吸っては舐める。
口内に下唇だけを含んでべろべろ舐めてやると、抱いた身体がぴくんと反応した。
もじもじするのに気を良くして、今度は上唇を。
無意識か、舌で押し返そうとしている。
丁度良い、と舌をからめ取って甘噛みしてやると、苦しいのか鼻で息を吸う。
「はふ・・・・・・・っ」
唇の隙間から、たった今吸い込んだ吐息が漏れる。
動物のような可愛さに、思わず唇が笑んだ。
身体をさすって、だんだんとその気にさせていく。
手に触れる肌があたたかさを増すと、アルベルトはイワンをベッドに運んだ。
大人しくしながら戸惑いを隠せないでいるイワンにもう一度口づけて、服を脱がせた。
仄かな色に染まった裸体を眺めまわすと、もじもじして脚を閉じようとする。
それを掴んで開かせ、まじまじ見詰めた。
泣きだす前に、胸に唇をつける。
尖りの周りをつっと舌でなぞると、敏感な身体が大仰に跳ねた。
意地悪く白い部分ぎりぎりを舐めていると、控え目な呼吸が弾んでくる。
もどかしげに震える体を撫でさすりながら、じっくりと焦らしていく。
呼吸が不規則になってくるのが聞こえて、一度唇を離した。
「どうされたいのだ・・・・・」
耳元で囁かれて、酷く感じた。
男の色気に掠れた声が、耳に絡みついて離れない。
だが、やはりねだるのは恥ずかしい。
言わないと機嫌を損ねる、言ったらきっと喜んでもらえる。
結果だけを考えれば言いたいと言うのが本音だ。
はしたない言葉で求めて、煽りたい。
そういう男としての願望を満たしてあげたい。
なのに、どうしても出来ない。
恥ずかしくて、出来ない。
自分なんて二の次で良い、ただただ主に気分よくあってほしいのに。
うまく出来ない自分が悔しい。
追い詰める手間を掛けさせないと上手く言えない。
きゅっと唇を噛んで、唾を飲む。
何とか、頑張ろうと思った。
「さ、触ってください・・・・・」
「どこをだ」
「お、おっぱ、ぃ・・・・・・」
「こうか」
「んんっ」
胸を手の平で揉みしだかれる。
確かに、おっぱいを触ってもらっているけれど。
もっと言わないと、主のやりたい遊びに届かない。
「さ、先、の・・・・色の、ついたところ、です・・・・・」
「ここか」
「ひ、っ・・・・・」
先を、本当に先端の先だけを指先で擦られて腰がびくついた。
先だけ擦られるととても痛い。
「い、痛い、です」
「ではどうしろと言うのだ」
「っ・・・・・・・」
べろで、舐めてください・・・・・。
耳まで真っ赤にして涙ぐみ、呟くように。
腰が疼くのを感じながら、アルベルトはゆっくりと尖りに唇をつけた。
「ふっ、ふくっ、ん・・・・・・!」
堪えた喘ぎで、シーツを掴む恋人。
恥ずかしさは相当らしく、身体がピンクがかっている。
そろりと手を滑らせ、後孔を探った。
ひくっと跳ねた腰を押さえたりはせず、蕾をこする。
「ひっ、ひくっ、ぅぅ、く」
胸と蕾を同時に攻められ、感じやすいイワンは既に先走りを垂らしていた。
雄は何とも良い色になってそそり立ち、何とも言えぬ濃い匂いのカウパーを垂らしていた。
勿論イワンの鼻にもその匂いは届いていて、羞恥に拍車をかける。
涙が益々滲み、視界が暈ける。
しゃくりがでると、益々蕾をこすられた。
「ふぅぁ・・・・あっ」
ぴくぴくしながら甘く喘ぐのに気を良くし、がっつかぬように追い詰める。
ひくひくし始めた蕾は赤くなっているし、胸の尖りは尖りきっている。
開いた口は僅かに舌を見せながら、だらしなく涎を垂らし。
相当感じて焦れている事が伺える。
「もっと擦られたいか?」
耳を甘く噛んでやると、イワンが縋ってくる。
目にいっぱいに涙をため、羞恥をぎりぎり上回る欲望を口にした。
「指、を・・・・・入れてください・・・・・」
だが、アルベルトがその程度で許すはずがない。
わざと反対の指を唇に這わせる。
イワンは益々泣きそうな顔で首を振った。
「おしり・・・・おしりのあなに、入れて・・・・・」
「尻の穴に指を入れられたいのか」
「は・・・・ぃ・・・・・・」
ぽろ、と零れた涙を唇で拭い、ゆっくりと指をさし入れる。
指は乾いていたが、袋の裏までドロドロになるほどの先走りが潤滑になった。
「んぅぅ・・・・・・・」
男の太い指に後孔を犯される苦しさに、顎が上がる。
軽く反った体を眺めながら、半端なところで指を止めた。
焦れた体は激しく指を締め上げるが、収縮だけでいけるはずがない。
唇を戦慄かせ、イワンは目を閉じた。
「中を、弄って、くだ、さぃ・・・・・・」
「弄るとは曖昧だな」
「奥に、入れて欲しいです・・・・・・」
絞り出すような苦しげな懇願。
希望通り奥に差し入れてやる。
「それで?」
「掻き混ぜて、抜いたり、差し入れた、り・・・・・・ふぁっ」
ずるる、と引き抜かれて、身悶える。
指一本のもどかしい注挿。
理性の砦が、崩れ始める。
腰が揺れ、手が伸びる。
自分の指も差し入れようとするが、手を取られて阻まれた。
声も出せずに嫌々と首を振るが、男は笑うばかり。
「欲しいなら、立たせろ」
指を引き抜かれ、立たせろと言う割に完勃ちのものを突きつけられる。
頭を上げるが、咥えようとすると引かれてしまう。
仰向けのまま、自分を股越す主を見上げるが、意図が分からなかった。
「どうしたいのだ」
「ぁ・・・・・・・」
恥ずかしい。
でも、我慢できない。
弄られていた場所がじんじんして、中が寂しくて。
瓦解を始めた理性に加速がつく。
突きつけられたものの鼻を突く蜜の匂い。
息が弾んで、唾液が溢れて。
必死で飲み下した。
「お、おちんちん、舐めさせて、ください」
「何故だ」
顎を掴まれ口を閉じさせられ、唇に汁を塗りつけられる。
突然、線が切れた。
主を振り切って突きつけられたものを掴み、懇願する。
「な、舐め、た、い・・・・おちんちん、舐めたいっ」
「ふん・・・・・まぁ良かろう」
「んっ、んぐ、んむっ」
男根にむしゃぶりつく恋人を眺め、アルベルトはにぃと笑った。
ちゅぶちゅぶと音を立てて唾液の溜まった口内で舐めまわすのに夢中な恋人がたとえようなく愛しかった。
愛らしい、淫乱な恋人。
悦に入った表情でしゃぶっている顔は完全に理性が崩れている。
いつもより大胆に口から出し入れし、涎を口の端から垂らしながら口内の先走りを飲み下す。
腰を緩く揺らすと、奥まで咥えて咽頭を引絞ってきた。
勢いよく引き抜き、根元を締める。
イワンが縋った。
「いや、いや、おちんちんもっと口に入れてっ」
「精子を飲み下すのか?」
「何でも飲む、飲むからぁっ!早く口に入れて、口にいっぱい精子出してっ」
完全に壊れてしまったイワンは、もう恥も外聞もなくただ求めた。
口に差し込まれる硬い男根をもぐもぐと揉み、袋をさする。
「っ・・・・・・・」
「んぐっ・・・・ん、ぐっ・・・・・・」
苦しそうな音をさせながら精液を飲みこんでいくのを見届け、ゆっくりと引き抜いた。
「嬉しいか」
「は、ぃ・・・・・せ、えき・・・・・おいしか、た、です・・・・・」
虚ろに蕩けた目で、舌なめずりするのが何ともいやらしい。
もう一度後孔に指を差し入れながら、目の前で扱いて立たせていく。
指先の肉が熱くなるごとに、イワンの目からぽろぽろ涙がこぼれていく。
正気ならもっと泣くはずだ。
快楽に焦れている涙に気を良くし、アルベルトはイワンに問うた。
「どうされたい」
「ぁ・・・・ぁ・・・・・・」
くちゅん、くちゅん、と優しい指での抜き差しが繰り返される。
「お、おし、り、に、入れて・・・・・」
「何を」
「おしりのあなにおちんちん入れて・・・・っ」
取りすがってわんわん泣きながらねだり始めたイワンを抱き返すが、イワンの暴走は止まらない。
普段まじめで我慢強い分、いったん切れると激しいのだ。
「おしりのあな、虐めて、おちんちんでいっぱい弄って、中にいっぱい精子入れてっ、痛くなるまでしてぇっ」
泣きじゃくって痛いほどに爪を立ててねだる姿に興奮する。
求めていた以上で、想像を遥かに超える愛らしさだった。
「くくく・・・・・望みをかなえてやるか!」
「んはぁぁっ」
ずにゅ、と亀頭を差し入れると、掴んだ腰が激しく痙攣した。
よがり狂って腰を振りたてる姿にあきれるどころか興奮し、アルベルトも腰を使う。
「あぁっ、あっ、もっと、もっとしてっ」
「っは・・・・・元気のいい事だな!」
「ひぐぅっ」
奥をごりごり突き上げられ、イワンが悶絶する。
肉孔は激しく締まって絡みつき、がちがちになっている男根を激しく刺激した。
「あっあっ、あつ、い・・・・・!」
「っ・・・・・く・・・・・・」
ドクドクと注がれる精液に狂い悶えるのに煽られ、抜かずの第二ラウンド。
朝までイワンを貪り倒し、昏倒に近い形で漸く行為が終わった。
少し膨らんだ腹に栓よろしく萎えた男根は挿入されたまま。
30分しないうちにイワンは耐え難い腹痛に飛び起きた。
一瞬何が起こったか分からなかったが、徐々に復旧されていく昨夜の醜態の記憶。
なんて恐ろしく恥知らずな真似をしたのか。
一気に血の気が引いて、身体が震え始めた。
完全にグロッキーで寝ている主の下から這い出て、ベッドから落ちるように降りる。
痛みと熱さの残る後孔からドロドロと精液が落ちているのが分かった。
これでは部屋に戻れない。
主の部屋の浴室を勝手に借りるなんてとても出来なかったし、始末したくても身体がうまく動かない。
腹は痛んで精液を排出しようと躍起になっていて、酷く苦しかった。
我慢して、落ちている自分の服のポケットからハンカチを取り出す。
角の部分からうまく丸めて、ひりひりする後孔に詰めた。
腰が立たぬから這いずって何とか主の体に毛布を掛け、だがそこで力尽きた。
くたりと床にうずくまり、気も失えぬまま腹痛含めて身体の痛みに耐え忍ぶ。
変な音を立てている腹を抱くように身を丸め、ぼんやりと主の背中を見ていた。
身体がとても苦しいし、罪悪感と嫌悪感の混じった自責もある。
だが、なんだか嬉しかった。
そんなに疲れるまで貪ってもらえた。
喜んでもらえた。
夜明け前の一番冷え込む時間に床に転がる身体が冷え切っていく。
それでも、やっぱり嬉しい。
自分は普遍的で何も持たないから、こうして何か喜んでもらえるのが。
嬉しい。
耳につく音に、アルベルトは目を覚ました。
夜はまだ明けていない。
身体も完全にグロッキーで、どうも寝た気がしない。
時計を見れば、何で目が覚めたのか不思議なくらいしか時間がたっていなかった。
無意識に恋人を抱こうとして、居ない事に気づく。
今日も部屋に戻ったのかと溜息をついて寝がえりを打ち、飛び起きた。
「・・・・・まだ、夜明けまで時間がありますよ・・・・・」
掠れた声で言って微笑む恋人は、何故か床に転がっていた。
冷え切った肌が真っ白で、吐息も僅かに白い。
腹を抱いているが、痛々しい音がしていた。
慌てて抱き起して、ソファに座らせる。
暖炉に火をおこし、ソファをさらに近づけた。
「あの、お眠りになってください・・・・私は、大丈夫ですから・・・・・」
「・・・・・ワシを馬鹿にしているのか」
ぎろりと睨み、顎を掴む。
だが、急に悲しくなって、手を離した。
「甘やかされたいわけではない。貴様も男なら分からんか」
アルベルトの言葉に、イワンは小さく頷いた。
「申し訳ありません・・・・・・・」
「謝れと言っているのではない」
「ですが、アルベルト様はそれを許してくださるのでしょう?」
イワンが微笑んだ。
優しく、優しく、幸せそうに。
「私の我儘を、許してくださるのでしょう?」
思わず、詰まる。
舌打ちして、暖炉の火に視線を移した。
「・・・・・許してやる。だが、次はないぞ」
「はい」
恋人を抱きかかえ、自分がソファに座って膝に乗せる。
胸に寄りかからせ、目元を覆った。
「寝ろ。4時間したら起こしてやる」
「はい・・・・・・」
そう時間をおかずに呼吸が落ち着き、くたりと胸に重みがかかる。
そろりと手を伸ばしてハンカチを引き抜く。
とろりと腿に落ちてくる自身の精液も、一度恋人の中に入っていたのだと思うとそこまで鬱陶しくはない。
黙ってイワンを抱いて、アルベルトは眼を閉じた。
次はないぞと言いながら、また次も許すのだろうと思いながら。
***後書***
裸で火の傍にいてもあんまり暖かくないと思うよ。