【 御主人様のお気に召すまま-118 】



レッド御所望の旗付き炒飯。

可愛い旗まで御手製のそれで。

十傑ガチ勝負。





それを巡って、で無く、それで、勝負。

即ち、脆い炒飯の山で山崩しだ。

十傑がスプーン持ってピリピリしている姿というのは言うまでもなく大変異様だ、しかしいつも通りだ。

イワンが大皿で炒飯を持ってくる。

勝負は、レッドから右回り。


「「「いざ、勝負!!」」」


まず、レッドはかなり大きく取った。

保身だけで無く攻撃もせねばならぬのだ。


「ふっ・・・・お前の為なら私はいくらでも危険を冒す」


掬った炒飯もぐもぐやりながら格好つけているのに、やっぱり格好良い。

顔が良いと言うのは得だ。


「ふ・・・・・」


笑うのは幽鬼。

彼はさほど大きくはとらなかった。

が、倒れやすい方向を削った。

罠を張ったらしい。


「お前の為なら人の分などどうでも良い・・・・・」


子供か。

スプーンも軽く舐める癖があるらしい幽鬼はゆっくり炒飯を食べていた。


「私はそう情熱的にはなれんな。恋多き男で居たい」


だが。


「伊達男の本気は意外としつこいのだが・・・・?」


にっと笑って炒飯を掬い、口に運ぶヒィッツ。

可もなく不可もないが、具の多いところを取った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


無言の怒鬼は、イワンをちらと見やり、微笑んだ。

レッドとはまた違った美丈夫。

それの思い切り格好つけた笑顔は結構な威力だ。

黙っているから益々爽やかさを増す。

増すが、炒飯を食べる前に匂いを嗅ぐのは多少幻滅する。


「柚子胡椒がいいのう。まぁ、お前さんのピリリとした叱りの方が、好みじゃが」


さっくり匙を入れ、かなりの冒険を犯したカワラザキ。

具と飯のバランスが良い部分を取ったが、絶対ズルしたと全員が思った。

あんな形でスプーンに乗る筈がない。


「中華出汁の味も良し。露特工の出汁には敵わぬが」


その上大きな海老をごっそり獲っていった十常寺。

旗が不安だが、言っている事も不安だ。

いつ飲んだ、いや、やっぱり聞きたくない。


「和洋折衷というか、多国籍な十傑に十分対応するのは大したものだ。身体も対応していると嬉しいが」


言っている残月はスプーンこそ普遍的に動いたが、膝の上にはタオル。

ナプキン代わりらしいが、彼は食いこぼすような人間ではない。

炒飯も掬う量を考えている。

それはひとえにタオルを汚さぬため。

イワンは見て見ぬふりをした。

昨日替えたトイレの手拭きタオルと同じ柄なのは偶然だ!


「身体的な話はセクハラだぞ。そっと握らせるくらいの紳士的な事に留められんのか」


炒飯をごっそり獲っていくスプーン。

豪快にもぐりとやっている。

味は気に召したようで、うむと頷いていた。

取り敢えずどの辺が紳士的に留めたのか全力でお問い合わせしたいが、きっと魔王的には露出して見せびらかしたいのだ。

そう思いながらイワンが平静でいられるのは、半分頭が別の事を考えているから。

ややお子様向けの炒飯の計画。


「君達ねぇ・・・・お汁美味しいとか握らせるとか、イワン君可哀想でしょ。盗撮で良いじゃない」


言いつつ、炒飯を掬うセルバンテス。

彼は民族性では肉食だが、性格から雑食性だ。

職業柄鍛えられたのもあるが、元々『おなか痛くなったらなった時』という考え方だ。

正露丸が好きでよく持ち歩いている。

効果は疑問だが、怒鬼が嗅ぎまくって臭い抜きしてくれた期限が来ていないもの・・・・つまり臭わない正露丸を携帯。

なら糖衣のにすればいいのに、彼はあのラッパのマークの為に普通の物を買っている。


「盗撮も握らせるのもセクハラです。貴方達を叩いても面白くないですから、責任はオロシャのイワンに取らせます」


言いながら炒飯をごっそり掬った策士。

旗が倒れた・・・・のでなく旗ごと持って行った。

旗は倒れなかった、炒飯は無くなった。

スプーン構えて黙っているアルベルトの前には、からの大皿。


「・・・・・イワン」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「イワンっ!」

「はははははいっ!」


考え事から覚めて主を見ると、皿が空。

だが、イワンは何も見ていなかったのだ。

可愛い笑顔で、にこにこしている。


「残さず食べて頂けて、嬉しいです」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ・・・・」


何とも言い難いが、可愛いので許そう。

その代わり、今夜は見せびらかし握らせ視姦して汁を飲んでやるからな!

そう思ってもう一度見やれば、彼はお出かけ準備中。


「あの、ディック牧に炒飯をねだられまして」


瞬間飛びこんでくる、影丸。

国警最速(直線は戴宗、障害物は影丸)の男はイワンを抱き上げ二ィと笑った。


「今夜は、馳走だ」


意味が何通りかあって判別しにくい。

十傑が席を立った時には、影丸は消えていた。

出陣準備する十傑。

最近、仕事が増えた気がする。

否、敵が増えただけか・・・・・。





***後書***

炒飯の話に殺し文句を組み込みセクハラにチェンジし最終で攫われていく。二転三転して目的が分からない!