【 御主人様のお気に召すまま-122 】
前々回は従者が、その前は主が。
キレた。
手にかけようとした主、泣きじゃくって叫んで気絶した従者。
何とも痛々しいが、二人はれっきとした恋人同士。
主従になって十年以上。
相性最悪で、とんでもなく惹かれあっている。
何とも可哀想な話だが、何とかやっていけるだけ、かなりの努力はしているだろう。
主に従者だが、主の方も色々考えてはいるらしい。
そうして、何とか二人落ち着きを取り戻し、いつもの通り朝食を摂っていた。
給仕をするイワンがいつも一緒に食べてくれないのがやや不服だ。
良く考えれば、基本的に従者が食事をしているのを見た事はない。
任務で仕方がないならともかく、イワンはアルベルトの前でちゃんと姿勢を正していようとする。
食事はもとより、くしゃみすら論外と言っていい。
酷く寂しいが、無理に直させようとは思わない。
自然に治れば良い、そうしてやろうといつも思って。
寂しさを、有耶無耶に。
そして今日も、従者に給仕をさせながら、ゆっくりと朝食を摂る。
いつも朝は殆ど同じメニューだ。
流石のアルベルトも朝から動物性蛋白質をがっつりはいけない。
卵とウインナぐらいで良いし、サラダは欲しいが、パンは2個3個程度で良い。
主のそういう思いをきちんと把握し、体調もしっかり見ているイワンは毎日適量の朝食を出す。
セルバンテスに初めてそれを言った時は意味が分からないと言う顔をされた。
何で無理に食べるの、残せばいいじゃない。
意味が分からないと意味の分からない事を言ってくるから暫く話していると、双方の行き違いにようやく気付いた。
元々料理がてんで駄目な妻を持っていたアルベルトは、若い頃は外食、妻ともモーニングからディナーまで完全に外食だった。
台所は料理人より掃除の為の人間が出入りしていた。
焦げたフライパンが山を築く、焦げ臭い台所。
物が散乱し、卵や物体Xが落ちている。
ヘタというかセンスが無い、しかし料理好きな妻が調理するとそれだから、外食になっていたのだ。
一方セルバンテスは出掛けるのは好きだが『待つ』という事が嫌いだ。
じっとしていられない、黙っていられない。
だから、注文した料理を待っていられない。
何回かに一回は待ち飽きて、金だけ払って出て行ってしまう男だ。
だから、自分が何かしている間に作っておくようにと料理人を雇っていた。
それでも、お腹がすいていない時に出されて残す事は多々ある。
食べ足りない時は菓子に手を出し、腹が一杯の時は残す。
それが普通の彼は、その日に食べたい量を調節して出してくれるなんて言う素晴らしい事を思いつかなかったのだ。
羨ましがる盟友に、アルベルトは些か得意だった。
だが、いくら出しても良いから譲って欲しいと言われ、即断わった。
男、それも5つ下なだけでしょ?
禿頭、鷲鼻、だったらいいじゃない。
幾らでも綺麗で気の利いたのあげるから。
私の召使に気にいるのがいなければ、どれでも雇って渡すから。
そう食いさがっても、全く興味が無かった。
そうしてあの二日酔いの朝に食べたオムレツ。
もっと欲しそうな顔を始めた盟友に溜息が出た。
しまった、面倒な事になった。
だが、セルバンテスも、無理だと分かっていた。
こんなにいいもの、手放す筈がない。
第一、二日酔いなのを考慮して少なめのオムレツは、塩が控え目でスパイスが利いていて。
馬鹿になった舌に余りに心地いい。
そして、もっと食べたかったけれど、お腹はちょうど良いくらいになって。
初めて見た、酒の世話をしただけの男の腹具合をぴたりと、計った様に。
その後もたびたび訪ねて構って、どんなにそれが素敵なもの・・・・否、素敵な人かと思い知った。
駄々をこねて欲しいと言いたかった、でもあの人の前で格好つけたくて出来なかった。
そう言って笑っていたのを今でも覚えている。
自分に何かあればすぐに掻っ攫っていくだろう。
そんな事を考えながら、もぐとスクランブルエッグを噛んで、危うく吹きそうになった。
目の前に、髭の38歳がいる。
いつ入った、何しに来た、そう言いたいが噎せそうで言えない。
さっと差し出された水を飲み、溜息をつく。
「何だ」
「うん?プランを持ってきた」
何のだ。
イワンとセルバンテスのウエディングプランとか言ったら暴れてやる。
そう思っていると、盟友は紙を差し出し説明を始めた。
「まずね、今7時半。8時までに喫茶店に行って、モーニング食べるんだよ。
9時半になるまでゆっくりして、10時にはモール街。お買物ね。
それで、12時に昼食。何でも良いけど、条件としてイワン君の好きなもの、遠慮禁止。
1時半になったら店を出て、水族館。ここは閉館までいるんだ。
それで、水族館って大体6時前に閉まっちゃうから、ぶらぶらしてご飯どこで食べるか決める。
そして、8時過ぎたらモールの大通り9本目を右折したところ。
あそこ、3月14日までバレンタインのライトアップしてるから。並木のとこ、手を繋いで歩くんだ。
その後は、お楽しみかな」
「・・・・・断る」
イワンはワシの傍に居させる。
そういう意味で睨むと、セルバンテスは首を傾げた。
「何で?イワン君とデート一回もしないまま冬が終わっちゃうよ?」
「・・・・・・?」
話が少しずれているようだ。
盟友の話に沿うなら、これは自分と従者のデートの計画らしい。
だが、買物に付き合い水族館に行き、手を繋いで歩く?
嫌でない、むしろそうしたい、が、気恥かしい。
どうせ従者も嫌がるだろうと思って断れば、セルバンテスは呆れ切った顔で紙を置いて出て行った。
従者を見やると、苦笑している。
「お気を使わせてしまったようですね・・・・・」
そう言って、笑うのが少し気丈を心掛けている気がして。
少し寂しそうな、目。
つい、手が出た。
白い指を掴んで、引き寄せる。
戸惑う従者を、見つめて問う。
「行きたいのか?」
「い、いえ、そんなお手間は・・・・・」
「ワシの話はしておらん。貴様がどうしたいのかと聞いている」
まっすぐ目を見て言えば、イワンは恥ずかしそうに俯いた。
「元々、デートなどと縁遠かったので。憧れはありますが・・・・・・」
少年期は恥ずかしくて女の子と遊ぶなんて出来なくて。
青年期に入ってからは、勝手な女に振り回されて。
アルベルトの世話が忙しくなり、段々女っ気も無くなって。
デートした事は、無い。
あるとすれば、ローザとの買い物で。
でも、そんなのは友人の付き合いで。
苦笑して『単なる憧れです』と言って引こうとするから。
手を強く握って、椅子を立つ。
ドアに向かって歩く主に、片付けがと言うと、綺麗に無視された。
そのまま本部内のモール街に引き摺って行かれ、喫茶店に。
モーニングを注文するから、足りなかったのかと申し訳なく思う。
が、運ばれてきたそれを押しやられ、主を見て首を傾げてしまった。
「食わんか」
9時半には、出るからな。
言われ、頬が熱くなった。
きっと真っ赤になってしまっている。
デートしてもらえるのが嬉しくて思わず笑って頷いた。
主がぽかんとし、咳払いしてそっぽを向く。
顔が赤いのが気になったが、そういうところをつつくと主は機嫌を損ねると知っている。
大事なければいいなと思いながら、主に礼を言って手をつける。
この喫茶店はモーニングがキッシュだ。
ふわふわで塩と砂糖がうまく組み合わさった味。
急いでも良かったが、ちょっと甘えてゆっくり目に食べてしまう。
喫茶店に座っている主が、凄く格好良くて。
もう少し、見ていたかったから。
喫茶店を出てショップ街に歩いていく。
10時を少し過ぎたあたりで、着いた。
見回せば、随分騒がしい。
だが、不思議と嫌ではない。
人込みが嫌いな自分は、買物が好きで色んなところに頭を突っ込みたがる三娘と良く喧嘩したものだ。
それが今、全く腹が立たない。
年を取ったからかとも思ったが、それも違う気がする。
従者が自分に気を使うのを感じ、12時迄はここに留まると言った。
すると、苦笑いして頷く。
好きなように行けばついて言ってやると言えば、おずおず歩き出す。
入ったのは、キッチン小物を扱う店。
シリコンの鍋敷きを買っている。
手にとって見てみると、耐熱も良く、瓶の蓋開け対応。
開けられない瓶が無い十傑ならまだしも、イワンはそう腕力があるわけで無い。
こういうものを使うのかと感心しつつ、レジで支払い中の従者に問う。
「瓶くらい、開けてやろうに」
「は・・・・・あ、有難うございます」
ぽかんとしつつ一応礼を述べるイワンに、レジの少女が茶化した。
「おにーさん、そこはほっぺたピンクにしてよ。開かない蓋開けて貰うのって、お嫁さんの憧れよ?」
言われ、目を瞬かせ。
硬直するイワンに二人して疑問符を浮かべていれば、ぼふっと音がしそうな勢いで赤面する。
「あ、あの、わ、わた、わたしは・・・・・・」
「うわぁ、凄い純情っぷり」
きゃっきゃとはしゃぐ少女に溜息をつき、イワンを促し外に出る。
荷物を持っていたら、我に返った従者が慌てて手を出す。
いいと言えば、とても申し訳なさそうだ。
が、気分が良いので放っておいた。
その内気にしても仕方ないと諦めた従者を伴い、飲食街へ。
12時を少し過ぎていたから、一番多い時期ではないらしい。
何が良いのだと問う。
「あの、アルべ」
「貴様の話をしているのだ」
「ぅ・・・・・で、では、その・・・・リゾット、が・・・・・」
「よし」
スタスタ歩く主に連れていかれた先は、はっきり言って財布に大打撃の店。
リゾットが前菜扱いの可能性さえある。
食べる前から胃が痛くなりそうだったが、今月は倹約と心がけて覚悟を決める。
入ってみれば、やはりというか。
大食漢で無いイワンにはかなり厳しい、リゾット、パスタ系が前菜扱いの店。
ここまで来たらもう余り金額を気にする気もないが、量的に厳しい。
元々作る方のイワンは、残すのも嫌いなのだ。
考えて、リゾットとホワイトシチューに。
一式食べてしまう主は矢張り肉体派なのだなぁと思った。
ぽーっと見ていると、主が首を傾げる。
でも、認識できなかった。
アルベルトも、従者が見詰めている先が己なのに首を傾げた。
食事を放り出し、自分のに興味があるわけでなく。
恋する乙女のように、自分を・・・・・・。
「っ・・・・・・」
考えて、赤面してしまう。
慣れない事をしているせいか、それとも盟友が『デート』と定義づけたのを意識しているのか。
何だか、気恥かしい。
無意識に好き好きオーラ全開で見つめてくる恋人だって、もの凄く愛らしい。
何とか食事を続けて名を呼べば、はっとしたように食事に戻った。
やれやれと苦笑し、食後の珈琲を。
矢張り、従者の淹れたのの方が好みだと思った。
1時半になって店を出て、海際の方にある水族館に。
用事もないし、そう遠くもない。
腹ごなしに歩いていく。
少し開いた距離が、心地よく、そしてもどかしい。
水族館の中でも、距離は変わらなくて。
魚を見ている姿を見詰めていると、色んな事に気づく。
割と動きの無い海星や、ふわふわしている海月に興味を示す。
目で追いながら、段々上を向いていき、水槽の端から途切れるとまた下に戻す。
子供みたいで、可愛らしい。
水生生物に触れる小さな水槽に興味を示したから、伴って行ってみた。
イワンは基本的に好奇心旺盛だ。
白色人種が不得意とする軟体にも躊躇なく触る。
赤い海鼠を掴んで不思議そうに観察するのが可愛い。
可愛いが、ちょっと卑猥だ。
黙って見ていると、海鼠が腸を出した。
ねばねばする、白い、海鼠の、腸。
分かっていながら、頭の中は18禁だ。
まじまじ見ていると、イワンはそれを水槽に戻し次の海鼠を取った。
どうやら気に入っているらしいが、楽しそうにそんなものを持っていると堪らなく興奮する。
が、平常心を心がけ、可愛いイワンを堪能。
戻ってきたからもういいのかと聞けば、嬉しそうに頷いた。
こんなに屈託なく笑うのは珍しい。
純粋に楽しんでいるのが嬉しい。
余り海獣ショーに興味はないらしく、海亀や甲殻類を見ていた。
薄ぼんやりした青い光に浮かぶ恋人は、矢張り整った容姿ではない。
だが、どうにも愛らしい。
その滑らかな頬を撫でて、薄く笑い。
閉館の放送を聞いていた。
5時半で閉まった水族館から出て、街に戻る。
歩きながら色々見て回っていると、気になる店。
飲食店だが、それにしたって何故パフェがバケツに入っているのだろう。
洗っていよう、パフォーマンスだろう、でも、何故。
同僚の写真が飾られているのか。
ヤンキーのような目つきで匙を加えるレッドの前にはクリームが付着したからのバケツ。
イワンが隣で苦笑する。
「この辺りの甘味店は大抵レッド様の襲撃に遭っていますから」
タイムアタックで巨大パフェを筆頭に、ケーキワンホール30分。
プリン20個30分に、団子100本2時間以内。
次々語られる内容に呆れる。
が、最後の一言が興味を引いた。
「ここのバケツパフェはカップルで食べると長続きすると言うジンクスがあって、タイムアタックで無くても人気なのです」
「・・・・・・やるぞ」
主の言葉に、イワンは目を丸くした。
「あの、かなり甘めですが・・・・・」
「構わん。やるといったらやる」
「そ、その、店内は女性やカップルばかりですし・・・・・」
「ワシとでは不服か」
そう言われ、首を振って否定する。
ずれた所のある主は、恥ずかしがったりそうでなかったりもかなりずれがある。
こんなファンシーな店内で、しかも33の男である自分とパフェを食べようなんて気がしれない。
アルベルトの気質とイワンの我慢強い献身を薄々知っている多くの同僚は、アルベルトが突飛な事をしても変な顔はしない。
お前愛しさか、愛されてるなと笑うだけだ。
だが、もし変な目で見られたら。
自分は良い、主がそんな目で見られたら嫌だ。
どうにか思いとどまって欲しかったが、思い空しく入店。
注文したパフェは血糖値が直角で上がりそうな勢いだ。
糖尿どころか砂糖が出そうな。
が、食べ始めた主につられて食べる。
店内の視線は二人に釘付けだ。
何で、という囁きが聞こえて泣きそうだが、口にクリームをつけつつ食べて行く。
いつの間にか店内は元の様に戻り、二人を気にしなくなっていた。
女性はさといものだ。
イワンが口端にクリームつけている顔に視線を這わせているアルベルトにピンと来たらしい。
絶対この我儘そうな男に連れて来られたんだ。
甘いものお腹に一杯詰めたら最後はホテルに連れ込まれて美味しく頂かれちゃうのね。
店内にいる男は元々、彼女のオトモが多い。
恋に目が眩んで目の前のお姫様しか見えていない。
そういうわけで、段々平常心を取り戻したイワン。
が、アルベルトは元々甘味がそう好きで無い。
そろそろやめよう、食べたのは食べたし。
そう思って匙を置くと、イワンが泣きそうになりながらパフェを口に押し込んでいた。
「・・・・・・無理をせんでも良かろうが」
「あ・・・・・・そ、の・・・・・」
「?」
言い淀むイワンに、通りかかったウエイトレスの少女が笑う。
「おにぃさん、ジンクス気にしてるの?」
「い、いえ、その・・・・・・」
「大丈夫よ、結構食べれない人いるけれど、3カ月はもつから」
笑って隣のテーブルを片付けている少女に、嫌な予感がした。
詳しく聞くと、驚愕の事実判明。
「残すと、破局するの」
それも、寝盗られ系の終わり。
実際は食べれないパフェの押し付け合いから亀裂が発生するらしいが、それを慰めてくれる異性と・・・・という事が多いと言う。
もの凄く不安を感じた。
既におしつけかけてしまっている。
寝盗る気満々の男には残念ながら当てがあり過ぎる。
3か月は、という事は遅くなっても可能性大。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目の前のパフェは未だ5分の1程度しか制覇していない。
匙で掻きわけると、アイスクリームはパイント単位で入っているようだ。
フルーツも盛りだくさん。
シリアルは一体何箱分か。
ポッキー何本突っ込んだ。
非常に不味い事になったが、アルベルトは昼食で腹のキャパシティが大きい事を見せている。
頑張れば、いける。
いけると思うしか、ない。
無言で匙を突っ込みながら、従者を見やる。
半泣きでアイスを掬っているが、唇が紫。
アイスクリームは食ってやるからポッキーを始末しろと言うと、素直にポリポリし始める。
可愛いと思いながら、気付いた。
思わず匙が止まる。
必死に食べている、つまり、ジンクスを無効にしたい。
自分と、別れたくない。
一気に機嫌が良くなって、アイスクリームもなんのその。
ぺろっとひとバケツ平らげ、ちょっと寒そうなイワンに温かい紅茶を注文。
自分は、口の中にもう味のついたものを入れたくないと言う思いから炭酸水を。
少し休んでいたら、さっきの娘が来た。
レッドがやったのはシングルトライアル。
カップルトライアルとトリオトライアルもあるらしい。
アルベルトとイワンは、34分で食べきった。
これはカップル最短記録更新。
たかれるフラッシュ。
理解した時には、娘はポラロイドのそれを壁に張りつけていた。
『現在カップルトライアル1位!』
恥ずかしくてやめてくれと言ったが、娘は笑って引っ込んでしまった。
主は、どことなく嬉しそうで。
ちょっと頬が熱かったが、黙って紅茶を飲んだ。
8時を回り、外はもう暗い。
モールの大通りを歩き、9本目を右折。
ライトアップされた並木に目を奪われていると、指に絡む暖かみ。
驚いて見れば、主が指を絡めてくれていて。
光に照らされた横顔が凄く格好良くて。
手をそっと、握り返す。
それは主の気に召したようで、でも自分がそうしたいと思ったからで。
ただ、手を繋いで歩いた。
ライトアップが、途切れる。
手は離れなかった。
引かれるままに、歩いて。
ロビーやフロントでは、寄り添って袖で隠して、でも離さないで。
最上階の夜景も見ぬままに、指を強く絡めたままの、キス。
蕩けそうな甘い接吻に、目を閉じた。
離れている方の手で、主の胸を軽く押す。
は、と離れたその唇に、唇を押し当てた。
舌で絡めるのは上手く出来ない、でも、思いを伝えたい。
擦り付けるように押し当てて、離してはまた。
好き、好き、大好き。
恋慕を内包した目で何度もキスしてくる従者が愛らしくて、今度はもう一度自分から口づけた。
舌を絡めて引き出し、軽く吸いあげる。
急に離れたが、拒絶で無い。
へたり込みそうになっているのを片腕で支えてやると恥ずかしそうに頬を染めた。
片腕で抱き上げ、胸に縋らせてベッドに運ぶ。
大人しく運ばれるのに気を良くして、ベッドに下ろしてもう一度甘いキスを。
蕩けるように甘い口づけに互いを酔わせながら、絡めた指を強く握る。
片手で服を乱し、自分の服も。
半端に引っかかっていたが、手を離したくなかった。
何度も口づけを繰り返しながら、身体を柔くさする。
肌がふわっと粟立ち、指先を楽しませる。
胸から腹になぞると、足先がシーツを掻く音がした。
もじもじしている身体はもうかなり仕込んでいる。
だが、いつまで経っても純で初心だ。
柔らかい肌を辿り、そっと唇を当てた。
「ぁっ・・・・・・」
もぞ、と身体がずる。
気持ちが悪いのならもっと反射的だ。
我慢出来ない、気持ち良さ。
ちゅ、ちゅ、と柔らかく吸いあげて行く。
痕も残らぬ柔い吸いに、身体が薄く色づいていく。
えも言われぬ艶めかしさ。
震える肌に漂う色気。
潤む眼差しに含んだ愛らしさ。
我慢出来ず、目の前の淡い尖りに吸いついた。
「んんっ」
ぴくんと震える身体を宥めるように撫でながら、唇は離さない。
ちゅくちゅくと吸いねぶると、身体に力が入って押し付けるような形になってくる。
奥ゆかしい従者の無意識は酷くいやらしい。
ちゅむっと少し強く吸いつくと、身体を捩ってよがる。
胸だけでいかせても良かったが、今日は早く、しかし沢山甘やかして一つになりたかった。
一度口づけを与え、脚を開かせる。
そそり立ってぴくぴくしている雄は、一滴の蜜を溜めていた。
目の前でとろりと伝い落ちるから、思わず舐めとる。
激しく跳ねる腰を押さえてちゅぐちゅぐと舐めしゃぶると、益々甘ったるい蜜が漏れ出てきた。
パフェなど比べ物にならない甘露だ。
夢中で舐め取って飲み込んでいると、内腿が痙攣し始める。
もっと濃厚な蜜の気配に、奥まで咥えて出し入れする。
「あぁっ、あぁっ、だ、だめ、で、す・・・・・・・っあ・・・・!」
ぢゅるる、と吸いこまれて、制止空しく陥落してしまう。
断続的に精液を排出する悦楽と、主の口を汚す後ろめたさ。
唇で扱く様に絞られ、涙が出た。
顔を上げて口元を拭う主は嬉しそうだ。
項垂れて残りを零す鈴口に口づけられ、筒の中身を吸いとられる。
吸われる悦楽に身を震わせていると、脚を開かされてしまう。
当てられる舌に腰を捩ると、やんわり押さえつけられて舌を入れられる。
軟体の様なそれが這いまわるのは気持ちが悪い。
だが、同時に快感を感じる。
くすぐったいような、もじつくような。
腰が重くなる快楽に恥ずかしくて頬が熱い。
オイルを持っていればよかったと心底思った。
そこの滑りを良くすると、アルベルトは指も濡らしてゆっくり差し入れた。
柔らかく熱い媚肉が絡みついて指でもかなり気持ちが良い。
腰が疼いてくる。
イワンの痴態に煽られていたそれは、既にスラックスをぐいぐい押し上げていた。
指でまさぐる様に解し、時折悪戯に奥をつついて煽る。
ぴくんと跳ねる腰を押さえず、しかし抜け落ちぬようにしながら、ゆっくりほぐした。
下着に濡れた感触がし始めたのでジッパーを下ろして取り出す。
先走りがにちゃっと糸を引き、切れた。
あてがい、少し力を入れて突き込む。
かりを通すと、イワンは一瞬遅れて身体を捻った。
「ん、んく、ふ・・・・・」
「っ・・・・・痛むのなら堪えずに爪を立てろ。締めても構わん」
言いながら、奥まで差し込んでいく。
がくがくしている腰を片手で掴んで押し入ると、絡めた指に力が入り、縋る指が肩に食い込んでくる。
愛おしさを感じながら、奥の奥まで填める。
ぴったりと押し包んで絡んでくる熱い柔肉。
堪らず腰を揺らせば、合わせて腰を振ってくる。
「あ、あ、あ、だ、め、もう、あぁ、あ・・・・・」
「構わん、ワシもそう長くは持たん・・・・・・っ」
すっかり溺れながらうわ言のように限界を訴える従者の指を強く握る。
反対の手は、肉が沈む程脚を掴んでいた。
「んくっ・・・・・・ぁ・・・・」
「っ・・・・・・・・・・・・・・!」
びゅっびゅっと中に吐き出される熱い精液。
断続的に後孔が締まり、それを促進する。
イワンの雄からはとろとろと精液が吹き零れていた。
どちらともなく目を合わせ、手を伸ばして引き寄せ合い、口づけを。
絡めたままの指が、少し痛かった。
屋敷に帰ったのは、明け方だった。
今日も執務はあるし、イワンも従者だけやっているわけではない。
明け方の、薄明るい街を。
眠っている恋人を抱いて。
歩いて、帰った。
***後書***
最近御乱心話ばっかりだったという事でフォロー。アルイワです、この連載はアルイワが基盤です(もうオボロゲになりつつある設定)