【 御主人様のお気に召すまま-137 】
「・・・・・イメプが、したい」
「・・・・・あの?」
側に控えていたイワンは、主の唐突な要求に首を傾げた。
熱でもあるのだろうか。
「・・・・・悪い男役がやりたい」
「・・・・・はあ」
いつもと何が違うのか。
仕事で悪の結社の幹部、個人的にも夜は悪の帝王と化して恋人に過激な性折檻を敷いているのに。
だが、折檻される自覚がないイワンは何とか頑張ろうなんて思ってしまった。
他に男を知らないがゆえに不憫な彼は、何とかしますと言ってしまったのだ。
そして、部屋を出て。
一応安全牌のえっち講師、ローザのもとへ。
彼女を発見し、取り敢えず話を聞いて欲しいと頼む。
お茶を飲むよりイワンのタルトが良いという娘に頷いて、部屋に。
タルト生地を焼き、クリームを泡立てる。
荒熱が取れたタルトにクリームを詰め、ベリーを。
ゼラチンで固めてしまって、切り分ける。
作業はかなり早い。
お茶を入れて、先生に受講料提出。
そして、ぱくつく彼女が落ち着くまで待って。
お茶をすするのを見ながら、一言。
「アルベルト様が、悪い男役をやりたいらしい」
「・・・・・・・あんた・・・・いや、アルベルト様大丈夫?」
イワンと同じ発想のローザに、溜息をついて説明。
イメプがしたいと言いだしたのだと打ち明ける。
ローザは意外そうな顔をした。
「へー、アルベルト様にも凌辱願望あったんだ」
「願望は良いが、凌辱って・・・・・」
「そうじゃない」
好きな人を無理やり穢す、力ずくで従わせる。
「それに対する欲求・・・・・これ以上あんたを従わせてどうするのかしら?」
心底不思議そうなローザ。
彼女は苺を刺したフォークをイワンに突きつけた。
大人しく食べると、またタルトを食べ始める。
彼女は時折無意識にイワンに餌付けするのだ。
「じゃあ、例えば。あんたはどうなの?」
「どう、って・・・・・?」
「レイプされる時、どうされたら嫌?」
レイプされる時なんか想像しない。
して欲しくないから考えたくもない。
第一、自分はこんな容姿の男だ。
そんな考えがもろに出ていたイワンに、ローザがフォークをふりふりする。
「あんたね、アルベルト様はあんたが泣いて嫌がる顔が見たいのよ」
「・・・・・・・」
頻繁にそういう事がある気がするが。
そう思ったが、タルトをかじるに留めておいた。
ワンホールのたったひとかけを未練がましく見つめる娘に苦笑し、昨日ので良かったら後ふた切れあると言う。
自分のタルトをこよなく愛する娘は可愛いものだ。
もぐもぐしながら嬉しそうなのが可愛い。
「ん、おいし。でね、話の続きだけど」
「ああ」
盛り上げるには、あんたが誰かを想ってるってのが重要なの。
「泣き叫んで『セルバンテス様ぁっ!』て叫べばいいわよ。それやっとけば後泣くだけで良いわ。好きにさせときなさい」
「はぁ・・・・・・そんなので大丈夫なのか?」
「演技下手なあんたに出来そうなのはこれね。娼婦ごっこの方が向いてるんじゃない?」
調子に乗っている娘のデコをコツンと叩き、冷蔵庫からタルトを出した。
部屋でシャワーを浴び、準備万端。
主に、今から部屋に行くから好きに暴行して欲しいと願った。
暴行と躊躇なく言った従者に、アルベルトの心が折れそうになったのは言うまでもない、折れなかったのも。
ドアの前に立ち、深呼吸。
そっと押しあけると、引きずり込まれ床に引き倒された。
アルベルトもいろいろ考えたのだ。
ちょっと悪い方が格好良いなんて盟友に言われてその気になったのは誰にも言っていない。
半端ない極悪人を素で行く自分であることには気づいてさえいない。
犯る気の威圧感は半端なく、心臓が竦む恐ろしさだ。
アルベルトの極悪っぷりに慣れてはいても、元々が小市民のイワン。
思わず四つん這いで逃げ出してしまう。
が、背中を踏まれて潰れる。
もがくが、ぎゅうぎゅう踏まれてしまった。
「地獄を見せてやろう・・・・・」
既に悪い男でなく処刑人の雰囲気を醸している。
イワンは呼吸で肺が口から出そうなくらい怯えていた。
どう考えても、リアル過ぎてイメプでない。
本気の折檻開始にしか見えないが、今から始めるのはレイプごっこだ。
「た・・・・たすけ、て・・・・・」
セルバンテス様・・・・・。
びくびくしながらローザのお勧めを口にすると、アルベルトの片眉が上がった。
従者にしては、中々良い行動だ。
イメプと分かっているから怒りは無いが、こうされればアクションは起こしやすい。
「・・・・・セルバンテスに操立てか」
今から、穢してやると言うのに。
背筋云々飛び越えて卒倒しそうな恐ろしさ。
男の色気が80pあっても、恐怖が8000pあれば結果は恐怖体験だ。
怯えるイワンの身体から服を引きむしり、もがくのを押さえつけて触りまくる。
嫌がる身体を撫でさすると、かなり興奮する。
半泣きでしゃくりあげた呼吸をしているのも可愛い。
ちょっと考え、ジッパーを下ろして男根を取り出した。
仰向けのイワンの顎を掴み、口に差し入れ。
様子を見たのは、最初の二回。
3突き目からは、容赦ない嘔吐を誘うイマラチオ。
変な音を立てているが、傷つけはしないよう加減はしている。
鼻から先走りと唾液の混合液を逆流させて死にそうなイワンが余りに可愛かった。
一度喉奥に発射し、引き抜く。
「ごほ、けほ、ぅぁ、は・・・・ぅぇ・・・・・」
吐き戻さないのが驚異的だが、引き抜いてもイワンは咳き込んで汁を少し零しただけだった。
汁で汚れて泣きじゃくる顔にときめきつつ、もう一度。
はっきり言って拷問だし、普通の神経なら死んだ方がましだと思う行為。
だが、イワンは苦しくても我慢している。
主がしたいのを叶えてあげたいのだ。
でも泣くのは我慢できず、身体も逃げを打ってしまう。
それを押さえつけられ、喉奥を突きあげられる。
喉を開いておかないと、死ぬと思った。
一度は飲み下した精液だが、2回目のは顔にかけられた。
男の匂いのする温かい粘液を引っ掛けられ、思わず助けを求めた。
が、アルベルトを煽るだけだ。
尻を割られ、唇をつけられる。
嫌と絶叫すると、舌を入れられた。
中を舐められて悶絶する。
気持ちが良い、怖い、何も考えられない。
入口を執拗に舐められて腰を引くと、ぢゅうと吸いつかれた。
泣き叫んで許しを請うが、指で広げられて視姦される。
ひくひくしているそこは、指を差し入れて引き抜くと、僅かな時間ぽかりと口を開ける。
小さくだが、興奮は十分だ。
いつも男根をうずめる、肉孔。
それを眺めるのが楽しくないわけがない。
興奮を抑えきれず、また舌を伸ばす。
犬の様に舐めていると、唐突にイワンが手足を放り出した。
「・・・・・・・・・・」
ぼんやりと天井を見つめるから心配になって覗き込むと、脚で胴を挟まれ引き倒された。
従者は足技が得意だ。
自分の上に乗り上げた従者が、艶めかしい目つきでぺろりと舌舐めずりした。
「・・・・・・アルベルト様」
愛らしい唇が、己の名を紡ぐ。
どきどきしていると、イワンがアルベルトの顎を掴んだ。
「私も、していいはずですね」
・・・・・・ちょっと不味いかもしれない。
前は、可愛い女王様だったが、今回はちょっと壊れてしまった女王様。
乱心女王はぺにぱんでなくとも自前のがある。
完全に凌辱されましたスタイルでのしかかる女王様のお色気と悪さは生半可ではない。
尻の危機を感じてもがくと、髭を容赦なく引かれた。
「・・・・・大丈夫、精悍なお顔は変わりませんし」
にこ、と笑う天使だが、精液まみれの顔だと怒りの天使に見える。
内心怯えるアルベルトだが、助けは期待できそうにない。
イワンが、アルベルトのネクタイを引く。
「・・・・・何を弱腰になっておいでです・・・・?」
パァン!
炸裂した平手打ち。
昏倒はしないが、相当痛い。
従者の凶行に睨んでやろうと見やり、口が開いてしまう。
悦にいった表情で身体をぞくぞくさせている従者が輝いて見える。
何故、こんなに生き生きしているのか。
いつもはいつも、これはこれ。
楽しんでも良いかもしれない!
「ふ、ふん・・・・・弱腰でないわ。若い時分は女を・・・・」
パァン!
「・・・・・私の前で女性の話をなさるのはおやめくださいね」
「・・・・・わ、悪かっ・・・・」
パァン!
「悪かった・・・・・?」
「す、すまん」
パァン!
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
「宜しい」
頬笑みが素敵過ぎる女王様。
もう既に頬は腫れて鼻血も出ているが、そんな事どうでもいい。
苛められるのは興味ないが、この溌剌とした表情は見たい。
「い、イワン・・・・・さん」
「はい?」
「その、だ、抱いても、良いか・・・・?」
「・・・・・・そうですね」
10分、我慢できたらいいですよ。
天使の微笑みにやる気満々だが、アルベルトはここから地獄を見た。
根元を縛られ、可愛いお口がぱくり。
光景もさることながら、奥まで吸い込んでむしゃぶりついてくる技術が凄すぎる。
「んぶっ、んぐ、むぐっ」
「イ、イワンっ・・・・・」
ぢゅるっぢゅるっとしゃぶりながら、舌は裏筋に這わせて滑らせる。
一度出す時にはゆっくりと唇で絞りながら、見せびらかすように口の外へ。
たっぷり唾液がまぶされた男根は限界を訴えているのが分かる。
が、女王様は完全無視。
イワンに仕置きと称して強いた行為が如何に残酷かを思い知る10分間。
が、さらに暴走は続く。
「胸まで飛ばしてくださいね」
「それ、は・・・・・・」
技術や持続は上がった、大きさは変わらないだろう。
反りも硬さも膨張もだ、だが、発射の勢いは流石に40目前。
厳しいと、思う。
だが、出来なかったら何をされる事か。
気合を入れてみたが、やはり。
腹上部で、墜落。
イワンが愛らしく微笑んだ。
何も言わないのがますます怖い。
謝ってみたが、首を振る。
「お仕置きしてくださいは・・・・?」
「な・・・・・」
お仕置き。
何を願えば良いのか。
「・・・・・打て・・・・・い、いや、ぶってください!」
「嫌です」
にっこり笑った女王様、洗面台から剃刀を取ってきた。
「・・・・・・去勢か?」
「まさか」
そう言われては、道は一つしかない。
だが、だが。
この年で、タチのSである自分がパイパンだと?!
そんなの絶対に嫌だ。
逃走を図ろうとイワンをどけてドアにダッシュする、が、ドアを開ける前に立ち止まるほかなかった。
投げナイフも得意な従者の方向から目の前の壁に突き立った剃刀もそうだが、一番の原因は音。
すすり泣く、余りに可哀想な悲痛な泣き声。
演技でないから余計にたちが悪いのだ。
「・・・・・・い、イワ、ン・・・・・」
「ひっぅ、ぅ・・・・・」
覚悟を決め、イワンの傍へ。
「・・・・・剃毛してくれ」
「嫌です」
「っな?!」
押し倒され、見上げた先。
満面の笑みの従者の手には、ガムテープ。
流石に血の気がひいた。
「待て待て待て、陰毛ガムテの刑は流石にづぁ!!」
「ふふっ、いっぱいとれた」
嬉しそうにガムテを貼りまくられ、もうどうしようもない。
引き剥がされるたびに悶絶するが、イワンはとうとうそこを綺麗につるつるに。
満足げにパイパンち●こを見やるなんて、普段の彼とは絶対違う。
夢かと思ったが、夢なら局部ガムテープの拷問で醒めているはずだ。
「綺麗にした、御褒美・・・・・」
「・・・・・・」
膝に乗ってきたイワンに、どぎまぎしてしまう。
ごくっと唾を呑むと、従者が眉を寄せて腰を擦り付ける。
さっき舐めまくって弄り倒した、可愛い窄み。
柔らかく開いて飲み込まれるのに息を詰める。
「ぁ・・・・・・」
とろっと甘い声を出しながら、イワンがアルベルトの首筋を愛撫する。
こんな積極的なの初めてだ。
腰を揺らそうとしたが、乳首を引き千切る勢いで引かれて停止。
結局、女王様のペースで朝まで可愛がられてしまった。
「・・・・・・・喧嘩したの?」
次の日顔をボコボコに腫らして出勤したアルベルト。
サロンの中は空気が凍っている。
「いや・・・・・顔より肌の痒みと刺激がな」
「毛でも剃ったの?」
「ガムテープ」
盟友の手からカップが落ちる。
次いで、頭が心配なくらい笑いだした。
「なにそれ、やっぱりとうとう怒られたんじゃない!最高、傑作!」
他の十傑も同じような顔で笑っているが、アルベルトは冷静だった。
いつでもどこにでも持って行っておかずに出来る、自室監視カメラ。
スクリーンの内容は最初、レイプ。
しかし、転じて女王様プレイ。
ヒィッツも感心しているが、そんな事はどうだっていい。
「イワンには、素質がある」
天性の女王だ、この世に君臨できる!
確かにそうだが、悪の帝王が言うと御妃を自慢しているようにしか聞こえない。
一応殴ってやり、縄持って梯子を登るどころか、自分の暴挙に卒倒しているイワンをお膝にだっこ。
「セルバンテス様助けて、って燃えるなぁ」
今度音声ダビングしてもらってオカズにしよっと。
***後書***
イワンさん御乱心。聖水は自重。