【 御主人様のお気に召すまま-138 】



「おじさまっ、日本では昔、怖い事があったんですって!」

可愛いサニー嬢は、おじさまのお膝に座らされて、大人しくしながらも話しかけていた。

今日も孔明とちゃんと勉強したのだと報告している。

少女は、一生懸命お話ししてくれた。


「昔は、信じる神様が違うと酷い事をされたんですって」

「ん?ああ、そうだねぇ」

「それで、日本で『ふみえ』という怖い事があったのです」

「ああ、あれかぁ・・・・・」


セルバンテスが首を傾げる。


「まぁ、民俗性もあるよね。日本人って、怖いくらい潔いところがあるし。切腹とか、殉教もね」

「ええ・・・・最初は、痛くて怖いのに、どうしてそんなに我慢するのか分からなかったのですが・・・・」


孔明様に、分かりやすく教えて頂きました。





「踏んで」

「・・・・・で、できません・・・・・」

既に水責めで濡れ鼠になりながら、イワンは力なく首を振った。

目の前には、敬愛するアルベルトの顔が彫られた銅板。。

踏めと強要されているが、まさかそんな事は出来ない。

自分にとって絶対の、唯一無二の存在。

それを足の下に敷くなんて。

だが、2日前から交代した異端審問官は、自分に執拗にそれを要求した。

泣いて嫌がっても、許してもらえない。

水責めはおろか、絶食に、果ては浣腸までされた身体は完全にエネルギー源が無く、吊るされつま先立ちの脚もがくがくしている。

が、水は与えられていた。

飲めなくてえづいても飲まされ、膨らんだ腹。

男が、無邪気に笑って問うてくる。


「ね、下括られてお水飲まされてると、苦しいでしょ?」


我慢なんてやめて、踏んじゃおうよ。

そうすれば、こんな苦しい事お終いだよ?

甘い誘惑に、イワンは屈しなかった。

顔を背ける。

男は、イワンをぶたなかった。

ぶたれる方がまだ楽な、じわじわとした苦痛。


「やれやれ・・・・ま、膀胱破裂したら死んじゃうしねぇ」

「や、やめっ・・・・・」


食い込んだ紐が、切られてしまう。

激しく首を振って拒否を示すが、強制的にせき止められていた小水はもう止まらない。


「や・・・・ぁ・・・・!」


ぱちゃぱちゃと跳ねる滴は、床を広範囲にわたって濡らしていく。

冷たい牢獄で、湯気を立てる水たまり。

人前で漏らした罪悪感と羞恥に泣いていると、男が笑う気配がする。


「ね、私だってこんな事したくないんだよ」


早く、踏んで。

イワンは力なく首を振った。

どんなに苦しい思いをしたって、出来ないものは出来ない。

男が目を細める。


「じゃあ、仕方ないねぇ・・・・・・」


目の前で揺らされる、浣腸器。

何度も繰り返された苦痛の行為を思い出し、青褪めながら頭を振る。

身体はもう殆ど動かなかった。

僅かに身を捩ったが、男の手によって尻を割られ、注入口を差し込まれ。

もう一度、同じ問い。

それを拒否すると、容赦なく注入された。


「ふぅあぁ、ぁっ」


しみるような痛みが広がり、脚が引きつった。

我慢できない排出への欲。

だが、男は玩具で栓までしてしまう。

かなり痛むそこに何かを入れられた事は今までなかったから、小さめのそれでも酷く吃驚した。

が、変わった形状のそれは力んでも抜け落ちない。

腹がくるると鳴り、耐え難い痛みを引き起こす。


「ぅ、く・・・・・」


冷や汗をかいて我慢していると、男が目の前の椅子に座る。


「ねぇ、セルバンテス様、って呼んでくれるかい?」

「ぅ・・・・・?」

「セルバンテス、私の名前だよ」


言われ、苦痛と長い拷問でぼやけ始めた頭で頷いた。


「せるばんてすさま・・・・・・」

「うん、そう」


じゃあ、私の好きなものを教えてあげるから、言ってみて。

嫌いなもの、好きな花、嫌いな色。

益々霞んだ頭で繰り返しながら、不意に。


「ねえ、これを踏んで」


差し出された銅板に、頭の中の僅かな部分が反応する。


「いや・・・・・・できない・・・・・」


強情なイワンに苦笑するセルバンテス。

此処まで手を変え品を変えやっても落ちないのは珍しい。

三人匙を投げ、自分に回ってきたが、これ程とは。

溜息をつき、立ち上がる。

玩具を引き抜いていくと、嫌がって尻を振った。

軽く叩いて、引き抜き。

汚物さえ含まぬ純粋なグリセリン溶液が噴き出す孔に指を入れ、掻き回す。


「あぁ、ぅああぅあ、あ」

「いいよ、全部出して」

「やだぁっ」


泣きながら排出する姿が何だか可愛い。

何も出てこないのに、そんなに恥ずかしがって。

愛らしさに微笑み、汗の伝う滑らかな背中に口づけを。


「卵は、好きかい?」


背中に縄を通し、下肢の見える傾斜、開脚の仰向けで吊し上げられる。

度重なる浣腸責めと拷問に疲れ切った身体は、最早ぴくりとも動かなかった。

静かに涙を零す顔を覗き込み、無邪気に微笑む。


「これなんだ」


手には、数個の鶉の卵。

茹で卵で、からは剥いてある。

怪訝に見ていると、男は頬を撫でて笑う。


「君、純情だねぇ。何にも知らないんだもの」


押し当てられ、はっとする。


「鶏卵より苦しいよ」


にゅる、と入りこんだものに、身体の中が拒絶を示す。

だが、小さいがために上手く排出できず、力むばかり。

力んで開きかけた肉管に、次々詰め込まれる鶉の卵。

容赦ない拷問に、頭がおかしくなりそうだった。


「さて、と」


最後にもう一度だけ、聞いてあげよう。


「踏む?踏まない?」


イワンは一瞬も迷わずに首を横に振った。

セルバンテスが溜息をつく。


「じゃあ、食べちゃおうか」


犯されてアルベルト様のもとに行けなくなっても、今あのお方を裏切る真似は出来ない。

そう考えたイワンは、矢張りセルバンテスの言ったとおり純情だったのだ。

膝をつくのをぼんやり見ていると、押し当てられる唇。

はっとしたが、遅かった。


「ひぁっ!」

「・・・・・ん」


吸いだされた、たまご。

もぐもぐと口を動かしているのが理解できない。

セルバンテスが、笑う。


「あったかい卵って、おいしいよねぇ」


とうとう堪えられず、イワンは踏むと泣いた。

だが、男は残酷に宣告する。


「言ったよね、さっき『最後』って。もう、駄目だよ」


取り出される凶器は、硬く反っていた。

蜜まで滲ませた凶器は大き過ぎて、恐怖で目の前に青光が弾ける。

首を振って嫌がっても、男は許してはくれない。


「さあ、君の信じるアルベルト様に助けを求めると良い」

「あ、あ、や・・・・アルベルト様っ・・・・・」


たすけて、と言いかけた唇が、獣のように激しく戦慄く。

執拗に拷問された後孔に、熱い肉槍が入ってくる。

痛い、苦しい。

怖い。

もがく事も出来なくて、目の前で自分の身体と男の身体がつながっていく。

填め込まれて、腹の中が疼いた。


「やめ、やめて・・・・・」

「どうして?気持ちいいでしょ?」


ごりごりと前立腺を刺激され、息を呑む。

だが、我慢できないでもない。

歯を噛みしめて堪えていると、セルバンテスが苦笑する。


「じゃあ、私が良いようにさせて貰うよ」


奥に入れられ、思わず喘ぐ。

零れ落ちた甘い声に、セルバンテスは酷く驚いたようだった。


「君、前立腺より奥が感じるんだ」

「は、ぁふ・・・・・ぁ・・・・・」

「ふーん・・・・・」


予想と違うけれど。

予想よりずっといいねぇ。

力強い突き上げは、イワンの身体を快楽の炎に巻いた。

我慢できない快感と、肌への甘い刺激。

優しい口づけが肌に這う度に、涙が出てしまう。


「あ、あ、あ・・・・・・」

「っふ・・・・・・!」


初めての交わりの中、射精は後孔を犯されての異常性交で。

拷問された末に、穢された。

もう、あの方のもとへは。

行けなくなって、しまった。

差し出された銅板に、白い足が、乗った。





「・・・・・サニーちゃん、孔明の授業だったよね?」

「はい」

そのあと残月様のお部屋に行って、このお話をしたら。


「私にも分かりやすいお話にしてあげよう、って」

「残んんん月ぅぅぅぅぅっ!!」


カトラス持って走っていくおじさま。

イワンにとってアルベルトが絶対というところしか正しく理解していないサニーはきょとんとしていたが、自然な動きでイワンの膝に乗った。

彼は話の途中で倒れたため、アルベルトのソファの隣の長ソファに座った形で置かれている。

恋人の膝に普通によじ登る娘に嫉妬は感じないが、この娘が天然で従者に鬼畜羞恥プレイを敷いているのが何ともいい難い。

単に無邪気なのだが、もう少し大きくなったら正しいエロ本の教育をしないと、何を言っているのか知らずにいるのは不憫だ。

溜息をつき、茶を含む。

香り高いイングリッシュブレックファーストは、やや冷めかけだった。





***後書***

拷問担当は決まっていないが、浣腸になるとスカ将軍の出番。