【 御主人様のお気に召すまま-139 】



アルベルトの屋敷の一室に入ったセルバンテスは、素敵なものを発見した。

低い棚に頭を突っ込んでいるイワン。

上着は脱いでいて、ワイシャツは当然スラックスに入っている。

つまり、目の前には大相素敵な。

黒い布に包まれた、桃尻。

セルバンテスが来たことにも気付かず、何か探しているようだ。

ふりふりされる可愛いお尻。

思わず突っつきたくなるが、我慢。

偶然入ってきた盟友に静かにするよう仕草すれば、不審そうにしながらも従う。

程なく気づいて、二人目の前の可愛い尻がぷりぷりしているのを眺める。

が、やはり。

突っついてみたい。

でも怒るかなぁ、と横目で見やれば、盟友の悪い遊び、GOサイン。

喜び勇んで膝を付き、まずは人差し指でちょん。


「?」


動きが止まり、気の所為かとちょっと尻を振った。

その仕草に調子に乗って、もう一度つんつん。


「え・・・・あ、申し訳ありませんっ」


来ている事に気づいて慌てて頭を抜こうとすると、アルベルトが葉巻に火をつけた。


「頭を抜くな」

「はあ・・・・?」


不思議そうな返事に悪く笑って、葉巻を齧る。

セルバンテスの指が、脚の付け根をつついた。


「ひゃっ、あの、せ、セルバンテス様ですか?」

「あれ、よく分かったね」


嬉しいなぁ。


「お礼にもっとつっついてあげよう!」

「ええっ?!」


焦るイワンだが、主がいる以上酷い事にはならないはずだ。

諦めて大人しくするが、何だかちょっと気恥ずかしい。

主の目の前で悪戯されているのが、何だか・・・・。


「あ、あっ、ちょ・・・・・ひゃうっ」

「イワン君のお尻って、柔らかいけどこう、むっちりしてるよね」

「は、はあ」

「こういうお尻ってさ」


悪戯な指が、軽く触れたまますすすっと滑る。


「ひゃんっ!」

「そうそう、擽ると感じちゃうんだよねぇ」


可愛いなぁ、と笑いながら、セルバンテスは目の前の尻をたっぷり楽しんでいた。

ブルーベリーより目に効くのはこの桃尻だ。


「あ、あ、んっ」

「あれ、此処弱い?」

「そ、そんな・・・・・ふくっ」


尾てい骨を何度もなぞると、尻がびくびく引きつる。

孔明だったら早速叩きまくる様な良い尻だ。


「こんな大きな桃だったら、食べでがあるよねぇ」

「あ・・・・っ」


両手でやんわり揉みしだいてやると、腰が自然に捩られる。

何とも性的でいやらしい動きだ、純情な表情が見えないと益々淫らがましさが増す。


「だ、駄目ですっ」

「どうして?」

「どうしてって・・・・・・」


そう言われると困る。

女性でないからセクハラとも言い難いが、尻を揉まれているのは事実。

もみもみされながら考えるが、ちょっと分からなかった。


「ええと・・・・・せ、セルバンテス様っ?!」

「ん?」


揉んでいた手は離れたが、腿を掴まれ尻に感じる感触。

頬ずりされていると察知し、イワンが恥ずかしがって嫌がる。


「お、おやめくださいっ」

「やだ」


アルベルトが良いって言ったもん、と頬ずりを続行され、イワンは益々弱ってしまった。

このまま続ければ、主はその内にやおら機嫌を損ねてしまう。

一番良いのは、主に助けを求める事。

でも、どうやって?

お尻を揉まれているので助けてください、なんて言いにくい。

どうすればいいのか考えつつ、お尻を触られて10分。

幻惑が満足するのより、イワンが踏み切るより、アルベルトが切れる方が早かった。


「セルバンテス、代われ」

「あれ、我慢できなくなった?」

「ああ、半分は貸しておいてやろう」


じゃあ今度君の好きな葉巻を贈るよ、お礼に。

主の馬鹿高い葉巻と自分の尻(ハーフ)が釣り合うのか甚だ疑問だが、彼らにはそういうものらしい。

だが、それ以前にこれはまずいのでなかろうか。

二人も後ろに座りこまれてしまえば、自分が後退する事は不可能。

つまり、尻は無防備極まりない揉み放題サービス中。

気づいたが、遅かった。


「ひゃぅあああっ」


珍しく大声の悲鳴は、それでも可愛いまま。

声質が可愛いのもあろうが、男の声でこう愛らしいのはかなり心理的部分もあると思う。

尻を揉む二種の手は、慣れているのといないのと。

日々セクハラしてくる手には慣れているが、もう片方はいつも夢中で記憶が曖昧だ。

初めて明瞭に感じる、主の手つき。

尻を振っても逃がしてもらえず、最終的にはごりごり頬ずりまでされ。

たまたま来た樊瑞にぎょっとされてカチンときた二人が攻撃態勢に入るまでそれは続いた。





変質者とて棚から突き出た尻に無言で頬ずりしまくる38歳髭が二人も目の前にいれば吃驚もする。

ぼろぼろの樊瑞と言い訳要員の幻惑を孔明に押し付けてしまい、イワンの待つ部屋へ引き上げたアルベルト。

部屋に入れば、大騒動で棚から出る折に頭を打って気絶してしまった従者。

相当慌てたのだろうが、怪我をしなくて良かった。

うつ伏せでベッドに沈む脇に座り、耳を撫でる。

規則正しい寝息が愛らしい。

口づけようとして、ふと見やった尻。

スラックスに包まれた尻は、時折ぴくりと震えていた。

まだ緊張しているらしい。

敏感だと頬を緩めつつ、葉巻を取り出す。

いつもは衝撃波で先を飛ばして発火させるが、今日はふと思いついてナイフを取った。

シガーカッター部分に差し入れて切り落とし、なんとなくナイフ部分の刃を見つめ。

ちょっと、悪い事を思いつく。

そろりと尻に手を伸ばし、スラックスに、穴を。

黒い布地に開けられた穴から覗く、ピンクの孔。

うん、何だかいい感じだ。

乳首もやってもいいなと思ったが、取り敢えず今はピンクの孔に興味津々。

指をたっぷり舐め濡らし、そろりと差し入れて見る。


「んっ・・・・・・」


ぎゅぐ、と押し込んでも、イワンは目を覚ます気配が薄い。

入口を関節が通れば然程衝撃は無いはずだから、ゆっくりねじ込んで根元まで埋める。

目覚めていないのを確認して、指先を動かしてみる。


「ん・・・・・ぁん・・・・・」


指に絡みつく淫肉はさざめいている。

腰ももじもじ揺れているし、感じているようだ。

だが、きつく勃起するほどではないらしい。

少し熱くなってはいるかもしれないが。

気持ち良さそうな溜息をつく従者に唾を呑み、何度もいじる。

そして、そのまま。

くたりと弛緩している身体に、差し入れてしまった。

睡姦なんてどれだけ鬼なのかという話だが、このまま気付かれなければ大丈夫!

そろそろと持ち上げ、座った自分の膝に抱く。

お膝に抱っこされた姿が可愛いと思っていたのも束の間。


「イワン君ーっ」

「馬鹿者、大声を・・・・・!」

「ん・・・・・」


眠そうに目を瞬かせたイワンは、目の前のセルバンテスを見て首を傾げた。

身体の中に感覚があるから、まだ夜明け前・・・・・。


「えっ?!」


慌てて立ち上がろうとしたが、大事なところに大事な部分を差し込まれていては立ち上がれるはずが無い。

着衣だからばれてはいないようだが、でも、人の前で、そんな・・・・!


「どうしたの?」


微笑む幻惑は完全に何が起こっているか察知している。

が、楽しんでいる。

アルベルトは後で相当叱られる事を覚悟して、楽しむ事に決めた。


「イワン、セルバンテスは貴様に用があるらしいぞ」

「えっ・・・・?」

「うん、ちょっとねぇ」


にこにこしながら、2,3言葉をかわし、セルバンテスは出て行ってしまった。

これ以上居座ると後でシバかれる。

アルベルトは静かになった自室の中、膝の上の恋人の耳を噛んだ。


「セルバンテスに見られて感じたか」

「そ、そんなっ」

「良い具合に締まっていたぞ」


イワンの頬がかぁっと染まる。

口をぱくぱくさせて涙ぐんでいるが、その内に泣き出してしまった。

羞恥が余りに強かったのだろう。

だが、しゃくりあげる度に堪らない加減で締まる孔。

堪らず四つに這わせて突きあげれば、着衣のまま泣き叫んで感じる恋人。

興奮のままに腰を使い、我慢もせずに注ぎ入れる。


「ふぅ、ぁ・・・・・・・」


口端から唾液を伝わせて震えながら、スラックスの中に精液を零していく恋人。

そっとこめかみに口づけ、抱きしめた。





が、当然こんな事をすれば叱られてしまうわけだ。

幻惑は2日間おやつがお煎餅に。

煎餅も大作君とよく食べたセルバンテスだが、今日は本当はフロランタンだったと思うと泣いてしまう勢いだ。

そしてアルベルト。

おやつが2日間果物に。

それの事でも考えていてくださいませと半泣きで拗ねてしまった恋人は、どうやらブルードネージュを作ってくれないらしい。

瑞々しい桃を食べつつ、溜息。


「あの桃の方が、良い」


懲りるという行動が期待できない38歳(ヤモメ)であった。





***後書***

白桃より桃尻が好き。桃尻よりエロ尻が好き(?)