【 御主人様のお気に召すまま-154 】



イワンは純情な精神構造からは想像が出来ないほど、性戯が上手い。

まあ、牝としての役割やフェラチオの話で、キスや縋り方はいまいちだが。

遊び倒したアルベルトでさえ夢中になる技術。

少し高めの可愛い喘ぎ声。

厭らしい腰のくねり。

全てが男を夢中にさせる。

今日も今日とて事に及ぼうとするアルベルトだが、イワンはその姿を見て少し微笑ましかった。

当たり前と言えば当たり前なのだが、スラックスを落とした主はボクサーパンツ一枚。

それは立派な砲身が完全に勃起して浮き上がり、今にも布を突き破りそうな勢いだ。

ちょっと汁も滲んでいて、何だか可愛い。

思わず微笑んだのを、アルベルトは見逃さなかった。


「どうした」

「えっ・・・・・い、いえ、なにも」


慌てて首を振る姿に首を傾げ、見下ろしてみる。

別段いつもと同じだが、何か面白かったのか。

考えたが分からないし、脱がずに圧し掛かってみた。

布地ごと脚に擦り付けてやる。

途端今まで微笑んでいたのが嘘のように、恥ずかしがって半泣きになる。

一体何歳なのかと思う純情さだ。

だが、愛らしいから構わないだろう。

どうせ、自分以外には渡してやらないのだから。

鼻先をべろりと舐めてやると、目を瞬かせて耳を赤くする。

ちゅっちゅと軽く吸うと、抱いた身体がぴくんと震える。

嬉しくなって咥えてやると、まるで雄をしゃぶられているかのような感じっぷりだ。

腰をもじもじさせている姿は何ともいやらしく、可愛い。

ごりごりと勃起した男根を擦り付けてやると、それだけで興奮して勃起してしまったのを恥じて涙ぐむ。

相手が興奮露わだと分かれば普通興奮するものだと思うが、触られていないのにと恥ずかしがるのが堪らなく良い。

ぺろっと口端を舐め、脚を開かせる。

大きく開脚させて、少し濡れた先端部分の布地を窄みにこすりつける。


「あ、ああ、やぁっ」


びくびく腰を跳ねさせて悶える感じっぷりは相も変わらず大したものだ。

そんなに気持ちが良いとは思えないし、女のそこを使った時だって、そう感じる者はいなかったように思う。

が、恋人はすっかり目を潤ませて、手でぎゅうぎゅうシーツを握り締めている。


「ふぅ、ぅ、ぅあ、ぅ」


とろ、と先走りを零している恋人に堪らない興奮を覚え、アルベルトは下着を脱いだ。

ねちゃっと糸が引いたが、途切れたそれの端が落ちかかる度に、イワンの身体はぴくぴくと震えている。

こんなに感じ易い身体では日常生活に支障をきたすように思うが、実際そう不便は無いらしい。

うわごとを呟くように小さく開閉する口に目が行き、アルベルトはイワンの頭を跨いだ。

イワンの身体の方向を向いて跨いで、ゆっくりと差し入れる。

心得ている恋人は、必死に喉を開いて奥に迎え入れてくれる。

通常の方向より、勃起した男根が喉に入りやすい体勢だ。

突き易さは劣るが、奥には入る。

ずるずると差し入れると、こりっとした咽頭に先が当たる。

それの様子を見ながら通してしまうと、激しく喉が締まる。

相当な嘔吐感を堪え、喉を絞めるイワン。

ディープスロートも良いが、今日はイマラチオがしたいアルベルト。

すこし強く引き抜くと、イワンの顔面にぼってりと乗っている大きな陰嚢が顔の上をごろごろする。

それすら気持ち良くなってしまっているイワンは、うっとりとイマラチオをされていた。

ぐぽっぐぽっと音を立てて喉の奥を突かれても、苦しさを覆うほどの幸福感がある。

恋慕っている主の男根を口に差し入れられて、性戯を受けていると思うと堪らなく気持ちが良い。

アルベルトは、そんなイワンをまじまじ見ていた。

今日は表情は見えないが、脚は引きつっても嫌悪ではなさそうだ。

雄は立ってぴくぴくし、あまつさえ汁を零している。

こんな行為に感じるのが不思議で、同時に有頂天になる。

可愛い恋人はこんなに厭らしい身体になっていると思うと、そうしたのが自分だと思うと、調子に乗ってしまう。

顔面に陰嚢を擦り付けながら何度も繰り返していると、イワンの脚がもぞもぞとシーツを蹴る。

苦しいのかとも思ったが、もう少ししたい。

理性のあるつもりで夢中で咽頭を突いていると、イワンが一層もじもじし始める。

つい気が緩んで思い切り突き上げてしまい、ごぼっと変な音がした。

慌てて引き抜くが、イワンは痙攣しているだけで動かなかった。

口から声は上がらず、先走りと唾液の混合物をどろっと吐き出し、震えている。

虚ろな目に些か慌てたが、鼻先を掠めた匂いに顔を上げる。

思わず、絶句した。

悪い意味ではけしてないが、目を疑う。

まじまじと見て、指で掬い、舐める。

恋人は確かに射精していた。

喉の奥を激しく突き上げられ、愛撫らしい愛撫ですらない拷問を受けて。

ぴくぴくと身体を震わせて悦に入る姿は、興奮を煽るどころの騒ぎではない。

堪らない興奮を覚えて、イワンを掻き抱いて口づける。

自分の味がしたが、どうだっていい。

この可愛らしい恋人を愛したい。

濡れた唇にしゃぶりついて吸い、何度も接吻を繰り返す。

暫くの後に虚ろだった意識が戻り始めたイワンは、幸せそうに唇を吸われていた。

身体をさすりながら後孔を弄り、指を入れて解す。

その間もキスは止まず、勃起した雄同士を擦り合わせる。

イワンは無意識に腰を揺らして応えていたが、やり方は拙い。

それが堪らなく愛おしくて、急性に差し入れた。

イワンが顔を歪めて腰を捩るが、止められない。

苦しがっていても、やめてやれない。

息を弾ませて腰を使い、獣のように交わる。

慣れ始めると、イワンはすっかり気持ち良さそうに揺さぶられていた。

激しい喘ぎと言うより掠れた甘い声をあげ、脚でしっかり腰を挟んでくる。

掻き抱いて奥の奥に種付けし、やっと人心地がつく。

唾を呑んで息を調えながらイワンを見ると、ぶるぶる震えていた。

強過ぎる快感に変に力が入って、上手くいけなかったらしく、まだ身体は絶頂近いまま放り出されている。

ぽろぽろ涙を流して必死に手を伸ばしてくる姿が、庇護欲を誘った。

口はずっと自分の名前ばかりを繰り返し、助けを求めていた。

頬を撫でて、咥えてやる。

優しく舐めてやっただけで、直ぐに口の中を蜜が満たした。

2度に分けて飲み下すと、イワンの呼吸が落ち着きを見せ始める。

口許を拭って恋人の隣に転がり、鼻頭を擦り合わせた。

イワンはくたくたになったまま、半ば意識を手放したままに、アルベルトに縋りついた。

動物のように身を擦り寄せ、うとうとし始める。

愛らしさに溜息をつき、アルベルトはイワンを抱いて目を閉じた。

春の宵は、音もない霧雨が降るばかりで、静かだった。

互いの心音と呼吸、筋肉と骨の軋みを聞きながら。

暖めあうようにして、静かに。

眠った。





***後書***

特技の欄に『容赦ないイマラチオ』と書ける主従。容赦なくやる主と、やられる従者。最早曲芸じみた特技ですらある。