【 御主人様のお気に召すまま-158 】
同僚のマフラーは自分の従者兼恋人の手作りだ。
この間作っているのを見たから知っている。
・・・・・別に構わない、嫉妬するほど子供で無い。
別に構わない、自分が一番だと知っている。
別に構わない!絶対に羨ましくはない!
別に・・・・別に構わない!
そういう悔しいオーラが滲み出ているアルベルト。
その時は何とか収めていた気持ちが、時折むらむらっと顔を出す。
自分が恋人にとって一番で無いと気が済まない男は、それ以外ではとても大人なのにこういう部分で子供だ。
まず、古いマフラーをぐっと堪えて焼却処分した。
十年以上溜めた十本以上のマフラー。
一番新しいのを残して暖炉にくべ、箪笥を開放してアピールする作戦。
そのまま出勤して3時間後、イワンは主の部屋でその惨状を発見した。
何が言いたいのかは薄々分かる。
だがそんな筈は無いと思い、願い、信じ、そっと箪笥を閉めておいた。
それから5日ほど待ったアルベルト、しかしマフラーの気配は無し。
それでもうひと押しと最後の一本を暖炉にくべる。
イワンの目の前で。
しかし、素直に新しいのが欲しいというのが出来ない。
飽きた、と言ってみると、イワンは目を瞬かせ、黙って退室した。
それから更に5日待った。
恋人は訪ねてこないから、きっと今頃マフラーを編んで・・・・・いると思うアルベルトも大概甘い。
心を込めたマフラーの焼却、更に目の前で暖炉にぽい、駄目押しに飽きたときた。
イワンは出ていってしまっていた。
部屋はもぬけのから、現在辞表の処理待ち、広い本部の中行方は知れず、携帯のGPSは解除されている。
連絡は携帯につくが、発信源が分からない。
話し方はやや穏やかだが、疲れている様子。
焦った孔明が団を抜ける事は許さないと言ったものだから、益々事態は悪化した。
場所を知られたくないイワンはカードも通帳も使えない。
残された道は身を切り売りする事だけ。
BF団花街の路地裏でじっと座り込んでいるが、踏ん切りもつかない。
怪我ならまだしも余りの状況に怖くて震えていると、声をかけられた。
愛らしい双子の少女・・・・・いや、童顔だが娘か。
顔を見合わせ、近づいてイワンを良く確認し、とても嬉しそうに笑う。
「わぁ、イワンさん発見!」
「今日お仕事?遊び?」
「うちにきなよ、遊ぼうよ!」
「えっ・・・・あの・・・・・・」
逃げようにも逃げる先の無いイワンは、手を引かれるままに歩いて行った。
着いた先は、一度来た娼館。
若返った主に奉仕した場所で、セルバンテスの行きつけだ。
「ねぇねぇっ、大収穫っ!」
「双子も歩けばイワンさん拾いっ!」
大声でただいまの合図をするものだから、午前9時、就寝中の娘らは大迷惑・・・・・だが、ばたばた駆け降りてきた。
「うわぁぁぁっ、本物っ!」
「どしたのっ?!遊ぶ?!遊ぶ?!」
「私私!」
「駄目私が先っ!!」
そう大きくない娼館だから、10人程度で全員らしい。
その代わり相当な美人ばっかりで委縮してしまう。
おろおろしていると、雑魚寝中の大部屋に引っ張り込まれてしまった。
楼主の美人年増まで出てきて、女の甘い体臭の籠もるほの明るい部屋、男はイワン一人。
普段の彼なら怯える勢いだが、今彼はとても疲れていた。
まだ客はついていないが、覚悟をして夜の道に立つ事の恐ろしさ。
男娼、それも自分のような見目では、扱いは分かりきっている。
何だか悲しくなってしまって、あの日主の部屋の山盛の灰を掻いた時から一度も零さなかった涙が零れた。
顔を歪めもせずに、静かに涙が落ちていく。
本人はぼんやりとした表情のまま、僅かに唇を戦慄かせていた。
「・・・・・どうしたの?」
愛らしい面立ちの娘に聞かれ、イワンは茫然としたまま全てを話した。
主の体面がなんて考えが回らないほどに、消耗していた。
娘達は初めとても怒ったが、徐々に考え始める。
セルバンテスさんの友達を20年もやっている人。
・・・・変な人。
・・・・・・我儘そう。
・・・・・・・・・新しいマフラーが欲しかったんじゃないかな・・・・・。
顔を見合わせれば、隣も同じことを考えている顔。
でも、下手に掻きまわすとこじれると知っている。
どうせもうすぐ旦那様も飛んでくるだろうし、ここはひとつ。
来るまで遊んじゃおう!!
とても純で綺麗で、悲しい泣き方をしている男性。
33歳禿頭鷲鼻、でもこんなに可愛い。
皆で慰めて、笑って欲しいとおねだり。
優しいイワンは頑張って笑ってくれた。
そこで皆で取り囲み、にゃんにゃん身体を擦り付けまくる。
「あ、あの、ちょっ・・・・・・」
「ねぇねぇ、おっぱい触ってみようよ!」
「あ、私太腿!」
「じゃ、お尻いただきっ!」
まるで築地市場の競り状態で、イワンの顔面も手も大きな乳が乗っている。
少し見える耳は真っ赤で、くぐもった声は制止らしい。
が、関係無い。
服をひん剥いてしまえば、なんとも厭らしい身体付き。
完全に男性の身体だが、胸の盛りもたっぷり、脚もむちぶり。
尻ももりっとしているし、肌は赤子のよう、おまけに白い。
「うわぁー・・・・・すっごい」
「これは良い!」
「ほらほらっ、乳首可愛いっ!」
顔面に乗る乳で現状把握できないのはある意味良かったと言えよう。
ピンクとは言わないが甘鳶色で小さく、可愛い尖り。
ちょんと突っついただけで、びくっと脚が曲がった。
「あっ、分かるんだー、可愛いっ!」
「此処あんまり使って無いっぽい。十代みたい」
皆で雄を見てみるが、標準で余り使われていないとしか言いようがない。
「じゃ、こっちは?」
「うわー、凄いどきどきするっ!」
ぐいと脚を開かせ、御開帳。
晒しものにされる、可愛いぴんくの窄まり。
「あれ?意外と使って無い・・・・・?」
「でも、セルバンテスさんは毎日みたいな事言って悔しがってなかった?」
「そうだよね・・・・・・?」
試しにローションたっぷりの指でつついてみると、ひくんと動いてぎゅうっと窄まってしまった。
吃驚するほどの締まりの良さだ。
名器は天然ものなんて殆ど無いし、娼婦は結構訓練している。
信号待ちとか、カップ麺を作っている間とか、お尻の孔をきゅっきゅっと窄めるのだ。
膣の筋肉はつながっているから、これで締まりが鍛えられる。
筋肉を鍛えておけば開きも締まりも良くなるから、お尻の方もプレイでも便秘でも痔になりにくい。
が、このひとがそんな事をするようには思えない。
もう一度突っついてみても、まるでアナルプレイ専門のAVを見ているようなもの。
厭らしい締まりとヒクつき、むぐむぐと動くのは少しあそこが熱くなるくらい。
「わわ、流石」
「いいなぁ、これは極上!」
「指入れてみよっか」
「うんうん、いいね!」
イワンは何が起こっているのか分からずにもぞもぞしているが、相変わらず巨大乳で視界はゼロ。
皆が好き勝手喋るから結局何も聞き取れない。
が、突然差し入れられて声が出た。
くぐもっていたが十分甘く厭らしい声に、益々部屋の温度が上がる。
乳を乗っけている娘が少し口許に隙間を開けると、可愛らしい喘ぎ声。
「あ、ああ、ゆび、ゆび、やだ・・・・・・」
「何コレ可愛いっ!」
「もっとしたいよね!」
「あ、あ・・・・・ひぐっ!」
何かふにゃっとした固いものを入れられ、悲鳴を上げる。
娘の一人が満面の笑みで手にしているのは、拡張ポンプ。
少しずつ空気を入れてゴム部分を膨らませ、内部から圧迫する。
「ぅあ、は・・・・・ぅ」
「すごーい、拡張ポンプだけで先走ってる・・・・」
「そんなにお尻って気持ち良かったかな?」
「男の人は前立腺があるけど・・・・・これはちょっと位置が違うよね?」
会議しつつ、ぐいぐい膨らませていく。
アルベルトのものよりは小さいが、娘達にしてみれば驚異的だ。
身体の柔らかな女がフィストをされるのでもかなり解さないと切れるのに、それに近い状態を指で少し弄られてすぐにやっている。
他のもやってみようと手元で空気を抜くと、イワンの身体が悶える。
突然吐精したのに驚いていると、少し年上の娘が笑う。
「おやぁ、中だしで萎えるのがお好きかい・・・・・」
「うっわ、エロっ!」
「そっかそっかぁ、すっかりそんな身体にね・・・・・」
もう可愛くて仕方が無くって、皆で肌を撫でまわす。
射精直後の敏感な身体は激しく震えたが、それがまたそそる。
可愛い可愛いと騒ぎながら、今度はあなるパール。
大玉を6個詰め込んで、そろそろと紐を引っ張る。
「うぅ、ぅんんっ」
「あ、嫌だって」
「これ、上手く出来ないとちょっと痛いもんね」
「はい、お腹に力入れてねー・・・・・」
イワンを抱き起こし、手をそれぞれ一人ずつ、脚は二人ずつで押さえる。
後ろから抱いているのは割と背の高い娘、肩に顎を乗せて観察中。
勿論正面には紐を引っ張っている娘がいて、その隣は楼主の女性。
まるで公開の出産のような状態だ。
イワンは顔を真っ赤にして嫌と訴えているが、後ろの娘に乳首を弄られて腰が跳ねてしまう。
身体は正直だし、第一イワンは主に捨てられたと思っているのだ。
身体は不能になる前に激しい混乱を起こしているし、連日の緊張から解放されては反応しない筈がない。
お腹をさすられて、紐を引かれる。
ゆっくり引っ張り出されて、目の前が白く飛ぶ。
「うあ、ぁぁ・・・・・・」
「うっわ・・・・・厭らしい・・・・・・」
ぬろっと大玉を吐き出す後孔は、柔らかさも締まりも申し分無い。
一個二個と引き出し、3個目からはずるるっと強く引く。
「ぅんんんっ!」
とろっと引いた透明な糸。
体液もたっぷり目らしいから、これは男だったら気持ちが良いだろう。
自分についていないのを残念に思うが、無いものは無い。
気を取り直し、さて今度は・・・・・と思ったら、楼主が待ったをかけた。
「おいでだよ」
「えっ・・・・・・」
「「「「あっ」」」」
ドアを開けて完全に硬直しているアルベルト。
その盟友は隣で娘らに手を振っている。
「わ、私いち抜けっ!」
「わたしもっ!」
「お部屋代は要りませんのでっ!」
だだだっと部屋から駆けだす娘ら。
最後に楼主がごゆっくりと残し、場に残ったのは主従と幻惑。
イワンが息を整えながら、服を纏い始める。
すると、セルバンテスがアルベルトを小突いた。
「ほら、どうするの。どこか行っちゃったらそう簡単に見つからないよ?」
「い、イワン!」
「・・・・・・・・・・・・はい・・・・?」
とても清楚で控えめな微笑。
完全に自分から離れるつもりだ。
言葉足らずなのは自分、今回ばかりはやつあたりも出来ない。
セルバンテスが出て行って暫くの後、少し俯き、白状する。
「・・・・・・・・・・・・・マフラーが欲しかった」
「・・・・・・・・・・え・・・・・・・・?」
「常に一番特別でありたい」
まるで子供のような事を言い出した主に、イワンは目を丸くした。
十年仕えて初めて、こんな子供っぽい事を言うのを見た。
「・・・・・・・嫌なら、忘れて構わん。だが、何処にも行くな」
「あ・・・・・・・・・」
黙って俯いたままの主に、イワンは心の中が温かくなるのを感じた。
自分に、知らなかった面を見せてくれた。
独占欲でも無い、性的な欲求でもない、ただ、特別でいたいのだと。
イワンは座り込んだままに、主に微笑んだ。
「・・・・・帰ったら、マフラーをお編みしますね」
「・・・・・・・・・・・・・・・ああ」
無事に帰ってきたイワン。
やっと安心して眠る事が出来たアルベルト、数日後に、恋人はとても綺麗なマフラーをくれた。
・・・・・とても綺麗な、桃色の。
いや、嬉しい。
嬉しいが、こんな派手なものは自分のイメージではない。
特別と言ったのが端的に出てしまったのだろうか?
それとも仕返しなのか。
悩んでいると、偶然来た娘に薄手のそれを強請られた。
どうやらイワンが作ったとは知らぬようだが、梅雨の冷える日のストール代わりにしたいと言う。
イワンを見れば、あげて欲しいと言う目。
それで譲ったついでに、今度は黒を希望してみた。
イワンはきょとんとしていたが、素直に黒で編んでくれた。
何とも温かな黒のマフラー。
とても暖かで、保湿性に優れ、手触り良く。
嬉しくて暫くは机の上に置いておき、暫くの後にそれは従者の手によって空っぽの箪笥に仕舞われた。
***後書***
さて、出番は何ヶ月後かな。