【 御主人様のお気に召すまま-160 】
自室から庭を眺めていたアルベルトは、気が向いたので従者を伴い庭に出た。
薔薇が美しい季節で、蜂が忙しく飛び回っている。
そう危険な種が見当たらないのは、手入れが行き届いている証拠だ。
大輪の赤い薔薇の隣、白い小ぶりな薔薇。
何となく従者に目をやると、その首筋には薄赤の花弁。
そういえばこの間つけたのだった。
2、3日盟友と出ていて抱いていないから、少し消え始めている。
視線に気づいた従者が首を傾げて微笑むのが、昼下がりの花園で酷く曖昧に見えた。
色の白い恋人が赤や白、黄色の薔薇の中にいると、ピントが暈けるように霞む。
その霞んだ姿が、酷く愛らしい。
いつもとは違う、ぼんやりとした幻想のような。
どちらが好きと選ぶ事も無いし、選べない。
もっと言えば、イワンならどんな姿も好きだ。
眠っていても、笑っていても、それは自分にとって大きな意味を持つ存在。
手を伸ばして首筋に触れると、イワンは目を瞬かせた。
「アルベルト様?」
「・・・・・・・・・印をつけ直さんとな」
拘束の証、主人がいる犬の証、自分のものという証、自分の愛を一身に受ける証明。
そっと唇を寄せ、強く吸いつく。
痛みを伴う甘い感覚に、イワンが身を竦ませた。
「あ、あの」
「・・・・・・・・」
唇に触れる甘い皮膚を、舌先で辿る。
一度離し、ひっ立てるように連れて行ったのは、屋敷の端、厨房の辺り。
中からは何も音がしておらず、ここは配管と換気扇がある割に、衛生面からゴミ置き場が別の場所だ。
入り組んでいるのに一部開けた、人に見えにくい隙間に。
イワンを押しこみ、口づける。
庭からも近くの部屋からもアルベルトは丸見えだが、イワンは殆ど見えない。
万一人目があっても従者が目に触れぬようにし、アルベルトは急性にイワンの服を剥ぎ取った。
「アルベルト様、おやめ下さい・・・・!」
押し殺した制止だが、強い口調の割に顔は今にも泣かんばかりだ。
恥ずかしがりで常識人のイワンからすれば、外で服を脱ぐなんて以ての外だし、曲がり間違えばここで始めそうな主に憤死しそうだ。
音をたてぬようにしつつの抵抗はいつに無く頑固で、しかし今日は機嫌が良いアルベルト。
余裕で、割合滑らかな煉瓦壁に押し付けたイワンの項をがりりと噛んだ。
「ぅんっ」
「ふっ・・・・・痛めば覆っておいて構わんぞ?」
「え・・・・・?」
項をガードするより体を隠す方が当然先のイワンだが、主の指が胸元に這うのに顔を赤らめた。
「貴様のここは過敏すぎるからな。煉瓦に擦り付けては痛もうが」
「で、ですからおやめ下さいとっ・・・・・」
そう言うならやめて欲しいと訴えるが、アルベルトは笑うばかり。
大きな手に胸を包まれ、平らなそこをゆっくりと揉みしだかれる。
柔らかい愛撫に、女性でもないのに腰がびくついてしまう。
「あ、あるべるとさま・・・・っ」
「何だ、こうか?」
「っ、ぁ・・・・・ち、違いますっ・・・・・」
尖りを摘ままれ、軽く引っ張られる。
微妙な痛みに腰をもじつかせていると、左右それぞれ人差し指と親指で捏ねられる。
「ぁっ、ぁっ・・・・・・・・」
「どうした、いつものように鳴いて構わんぞ」
「そ、そんなっ・・・・・」
泣きそうな顔で嫌がられ、益々興奮してしまう。
執拗に乳首に構い、しかし指だけ。
人差し指だけでくりくりと弄ってやると、膝が笑い始める。
「あ、あ・・・・・・」
「やれやれ・・・・・強情に楽しまん癖に、すっかり腰砕けか」
前から手を入れ、袋を手に包み、指先を蟻の戸渡りから孔のすぐ手前までの部分に置く。
そのまま子供を抱きかかえるように支え、壁に縋る従者の腰が落ちぬようにした。
背中に何枚もの花弁を残しながら、舐めしゃぶった指で最奥を探る。
硬く窄んでいても、与えられる激しい興奮でひくついている柔らかな孔。
厭らしい動きを押し当てた指先で楽しみ、ゆっくりと揉みほぐす。
筋肉はずっと同じ緊張を保つ事が出来ないから、緩んだ一瞬に指を差し入れた。
「ぅんっ!」
「・・・・・・・・・きついな」
どこか嬉しそうに言い、アルベルトはもう少し指を押し込んだ。
いつまでたっても締まりの良い恋人の後孔は確かに嬉しいが、正直に言えばもう少し緩くても良いと思う。
自分は今の加減で最高に気持ちが良いが、恋人は解す時にかなり苦しいだろう。
何度か唾液を絡め直して差し入れ、たっぷり柔らかくしていく。
入口を中から圧迫して緩めつつ、奥も刺激する。
指を増やしてからは、揃えて差し入れ、開く事で慣らす。
人差し指と中指を差し入れてぐっと開くと、かなり抵抗が強い。
そのままぐりっと回転させると、イワンが掠れた悲鳴を上げた。
がくがくしている腰を強く抱き、手首に添って立っている雄を見てみる。
甘そうな色になっていて、何とも興奮した。
何度も指を突き込んで執拗に慣らすと、薔薇の香りばかりの中に、生々しくも甘やかな香りがし始める。
匂い立つ恋人に頬を緩め、取り出した凶器を宛がった。
ぐっと押しつけると、ちゅぷっと先を飲み込む孔。
完全に騙されている可愛い身体に苦笑し、奥の奥まで押し込んだ。
手を放して、軽くイワンの腰に添える。
壁に縋る手と、差し入れられた男根だけで支えられた身体は、しどけなく色っぽい。
少し腰を突きだすようにすると、尻を突き出すような崩れた姿勢のイワンが引き寄せやすい。
軽く引いてイワンの尻を自分に腰に打ち付けるようにすると、甘ったるい悲鳴が上がる。
慌てて口を抑えるのが可愛くて、何度も繰り返す。
軽い引きでも、張りのある尻が打ちつけられれば、硬い男の腰から跳ねかえるような力が当然発生する。
引く動作だけで注挿出来るが、動きは少ない。
その代わり、かなり早く激しい注挿が可能だ。
ちゅぼちゅぼと激しく出し入れされ、イワンが唇を戦慄かせる。
声を我慢しても、熱い吐息と涙が我慢できない。
痺れるような熱さを感じながら、感覚はどんどん研ぎ澄まされていく。
快感が鋭い刃となって身体中を蝕み、頭がぐらぐらして何も考えられない。
中で糸を引く主の先走りにさえ興奮してしまって、勝手に締めつけてしまう。
中に精子を迸らされ、身体が震えるのを抑えられなかった。
締まらない口からとろりと唾液が垂れ落ち、身体が激しく痙攣する。
そのまま自身も射精し、イワンは瞼を震わせた。
「あ・・・・・は・・・・・・」
「可愛いねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・・・えっ?!」
頭の上から降ってきた声に顔を上げると、窓が全開。
とてもいい笑顔の、セルバンテス。
「いやぁ、アルベルトとチェスでもと思ったんだけど居なかったから。何か作っちゃおうかなって台所にね」
「・・・・・・・・台所をどうする気だ」
「やだなぁ、別に火事にはしないよ。・・・・・あ、どうぞ続けて」
「ああ」
「えっ、あ、あるべ・・・・・っあぁっ!」
早くも勢いを取り戻した男根で中を激しく掻き回され、イワンが壁に縋って泣く。
視線が恥ずかしくて顔を上げられないでいると、後ろからアルベルトが顎を取り、セルバンテスの方を向かせる。
「顔を見せてやれ」
「い、嫌ですっ、やめ、やめてくださ・・・・・」
ぢゅっと突き込まれ、抵抗は嬌声に溶けた。
達したばかりの身体に、過剰な羞恥と快楽の責め苦。
目の前には、上司で主の盟友の男性が笑っていて、死にそうなほどに恥ずかしい。
「あ、あっ、みないで、みないで・・・・・!」
「大丈夫、誰かに言ったりしないから」
「いやぁっ・・・・・・」
中に吐き出される多量の精子。
直ぐにアルベルトはイワンを抱き起こし、中に種付けされて射精する姿を盟友に見せてやった。
直接触れられず、中出しの刺激で白い粘液を噴き出している雄。
イワンは声を殺しながら激しく泣いていたが、射精が終わるとそのまま昏倒してしまった。
当然だが、盟友組はそれはそれは怒られた。
止めない上に眺めていたセルバンテスは勿論、主犯のアルベルトはそれはもう怒られた。
執行猶予なしの実刑判決で、禁欲一週間。
これなら3日服役した方がましだと思う。
有耶無耶にして手を出そうとしたら、全くの無表情で『お好きにどうぞ』と言われて肝が冷えた。
だが、大人しく我慢すれば、アルベルトに甘いイワンは当然御褒美をくれる。
ちゃんと8日目の夜に部屋を訪ねてきて、恥ずかしそうにしながら。
そうぞお気に召すままに、と言ってくれた。
***後書***
あんまり甘やかすと駄目なおっさんが益々調子に乗りますよ。