【 御主人様のお気に召すまま-161 】
幻惑に抱きつかれたイワン。
丁度虫の居所が悪くて盟友への制裁がやや強かったアルベルト。
流石にそれは痛そうと咄嗟によけたセルバンテス。
引かれてふらついたイワン。
慌てて引こうとしたが、威力が弱くなっただけの手。
かなりの衝撃音。
たんこぶ作って倒れてしまったイワン。
盟友組は一気に青ざめ、ダッシュで彼を医務室に搬送した。
「イワン」
「は、はい」
「・・・・・・・・・・・茶を」
「あ・・・・・た、只今っ」
アルベルトに仕え始めて間もない頃まで記憶が退行してしまったイワン。
茶を淹れる手つきもたどたどしいし、接し方もぎこちない。
思えばあの頃は怒鳴るわふらっといなくなるわ、イワンに可哀想な事ばかりしていた気がする。
今、恋人になってからとは違う、だが違うが故の怖さ。
手を伸ばして頬を撫でると、びくりと震える。
怯えるような、戸惑いの瞳。
何だか切なくなってしまう。
そしてそれ以上に可愛い。
苦笑にも似た笑みを零す主に、イワンは跳ねる胸の鼓動を抑えようと必死だった。
何を考えているのか、この方は男性で、奥方を亡くされている。
御子女もいらっしゃる、素敵な方。
年若い姿を見ていたのに、突然10年先に来てしまったような気がする。
実際は自分が記憶をなくしているだけと教えられたが、十年傍に置いてもらえたというだけで酷く幸福だ。
頑なに目を逸らして瞼を震わせる姿に、アルベルトは溜息をついた。
10年若ければ惚れさせる自信もあったが、気持ちがはたち過ぎの従者に38歳の自分では無理そうだ。
四捨五入で20歳も年上の、それも男には惚れまい。
早く記憶が戻ればいいと思いながら、4日。
早くも。
アルベルトはお預けを出来なくなっていた。
だったら女遊びでもと思ったが、夜這いをかけかねないのが10人いるのだ。
戦々恐々でそんな事は出来ない。
純な心と慣れた身体が快楽で落とされればそれこそ事だ、顔が良い若いのも中にはいるのだから。
葉巻の吸い口を噛み潰して苛々していると、酒のピッチが速くなる。
そして、案の定酔ってしまい。
べろんべろんのまま、従者の部屋に押し入った。
「あ、あの?」
「・・・・・・・・・・・・・・良い顔だな。まだワシに恐怖を感じている頃か」
まだ主の思考を読めない頃の、不安そうな顔。
流石にベッドの上に起きたが、どうしていいのか、何をするつもりかも分からない顔。
戸惑うイワンの身体を引き倒し、腕を後ろ手に、肘に反対の手の手のひらがくるようネクタイで括る。
身体が柔らかいから何とかなる拘束だが、痛みが無くともその手慣れた拘束の仕方に恐怖は倍増する。
「アルベルト様?」
「・・・・・・・・・・・・・・・男に脚を開いた事はあるか」
「えっ」
反射のように首を振って否定するのに嘘はみられない。
満足感を感じ、唇が歪む。
「良い機会だ、作法を教えてやろう」
「作法・・・・・・・・?」
パジャマのズボンを奪い取られ、イワンが目を見開いた。
「お、おやめ下さいっ!どうか、どうかご自愛を!」
この期に及んで自分の事を気遣うのが、好ましくも悔しい。
助けを叫ぶより先に、自分などに手を出さないで欲しいと願うなんて。
弾力のある良い尻を揉み、柔く吸いつく。
なめらかな肌が、引きつるように震えている。
「本当に、おやめ下さい!」
「・・・・・・・・・命じても良いのだぞ」
「そんなっ」
泣きそうに歪んだ瞳。
羞恥に色づく頬と眦。
引きつる美味そうな肉は、純に震えながら快楽を知っている。
「ふん、かまととぶるな」
「え・・・・・っいや、いやだっ!!」
尻を押し開いてまじまじと眺めてやる。
泣き始めたイワンを無視して、じっくり眺めた。
ひくりと蠢くピンクの窄まり。
愛らしい色、厭らしい皺。
欲望を刺激する動き方でヒクつかれ、鼻先を寄せる。
僅かな空気の動きで嗅がれていると初めて気づき、イワンが絶叫した。
「いやだっ!!」
「くく・・・・・・そう暴れるな」
鼻先を擦り寄せれば、触れる刺激に腰が跳ねあがる。
激しく蠢く孔に唇を笑ませ、舌をつけずに唇で吸いつく。
「ぅあ、あ、あ、あ」
軽く吸いついて、舌を這わせる。
身体ががくがく震えている従者は、既に顔を涙で汚していた。
必死に腰を捩るから、軽く臀部を叩いてやる。
ぱんっと良い音がしたので、そのままもう二回叩いておいた。
「ぁ・・・・あ・・・・・そんな・・・・・嘘・・・・」
後孔に唇をつけられている事実が受け入れられなくて、頭を打ち振る。
弄るように触れる柔らかな唇、甘い吸いつき、悪戯につつく舌。
背中が焼け爛れていくような快楽と苦痛に、涙が溢れて止まらない。
「やめ、おやめくだ、さ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「うあっ」
捩じ込まれる舌。
柔らかで温い、ぬめる肉。
それを押し包む、弾力があって熱く、たっぷり濡れた肉管。
舌を抜き差しされて、中に唾液が伝い落ちてくる。
泣きながら許しを請うが、主は聞いてくれない。
激しい水音を立てて舐められ、恥ずかしさで頭が可笑しくなりそうだった。
腰が落ちかけると、笑う気配がする。
「腰を落としたら、孔が捲れるまで吸引してやるからな」
「ひっ、ぅ・・・・・・」
泣きながら、必死で腰を上げる。
上半身が崩れて尻を突きだす体勢のまま、舐められるのに耐える。
「中々良い。次は指だ」
「ぅ、ん、っ・・・・・・・」
中指一本を差し入れるが、途中で止まる。
締めつけが激しく、進まない。
少し動かしても改善されないと感じ、アルベルトはイワンの腰を掴んで強引にねじ込んだ。
「あぐっ、あぁ」
「そう締めると辛いのは貴様だぞ」
「ぅぁは、っ・・・・・」
びくびくと震える肉の管。
硬い男の指に抵抗を示すのが純だ。
嫌がって腰を捩るのを、尻をつねって大人しくさせる。
ひくひくと指を締めるのに舌舐めずりし、ゆっくりと指を抜き差しする。
「いっ、んくっ・・・・・・んっ」
「此処が良かろうが」
「ひっ、ああっ、あんんっ」
奥の辺りを押されて、腹の底が熱い。
必死に飲んでも唾液が零れて、身体が震える。
奥に差し入れられた指。
それが突然、細かく激しい抜き差しを始める
「あ、あっん、んああああ」
「女は潮を噴くが、貴様はどうであろうな」
「ああっ、あんん、んんんっ」
中指しか入っていないから、他の折り曲げた指や手が臀部に当たってぱちゅぱちゅと音がする。
必死に腰を捩っても、その苦しい程の快楽からは逃れられない。
「あううう、あう、うあ」
「尻の孔がそんなに良いか。身体が痙攣しているぞ」
「あ、あ、あ・・・・・・」
びくっと腰が跳ね、落ちる。
ずるっと抜けた指をちろりと舐めると、アルベルトはすっかり臨戦状態の自身を取り出して押し当てた。
「ふ・・・・ぁ・・・・・あ、ああ、っ」
「息を吐け」
「ああああ、っ嫌、嫌っ」
泣きじゃくって嫌がる腰をしっかり掴み、ぐっと根元まで収める。
しゃぶりついた癖に突然それを異物と判断した孔は激しく締まり、嫌がるように蠢く。
その厭らしい動きによる刺激に舌舐めずりし、腰を揺らす。
手でシーツを手繰って逃げようとする動きに気付き、咎めるように腰を打ちつける。
肌が鳴る音がして、イワンの背が綺麗に反った。
「あああああっ」
「くくっ、淫売が」
「あうう、あう、う」
ぢゅっぢゅっと激しく抜き差しされ、砕けている腰を好き勝手引かれて捩じ込まれる。
訳が分からなくなっているイワンが惚けた笑みを浮かべるのに気付き、少し溜飲が下がる気がした。
自分を忘れても、身体が覚えている。
それにやや満足を覚え、中にたっぷり出してやる。
「うあ、ぁん、ぁんっ」
「まるで女のよがり声だな」
「ぅ、ぁは・・・・ぁ・・・・・・」
びくびくと震える背中に口づけを落とし、アルベルトは自身を引き抜いた。
「・・・・・・・・・・君ってそういう部分浅慮だよね」
「何がだ」
簡潔に昨夜の話をしてくれた盟友に、セルバンテスは呆れた視線を向けた。
「イワン君からすれば、今の君は強姦魔。ついでに言うと、拾ったのはそういう目的と勘違いする可能性大」
「・・・・・・・・・・・まさか」
そんなわけ、と首を振ろうとしたアルベルトは、過去散々やった失敗に思い当って一気に肝が冷えた。
いや、だが快楽で懐柔すれば何とか・・・・・。
「気持ちが良い事で縛れるんなら、それってもっと優しいのが10人いるんだよ?」
「っ・・・・・・・・」
ぞっとする事を言い出した盟友に視線を向ける前に、声がかかる。
そっと開くドア。
「失礼します」
「あぁ、イワン君。身体大丈夫かい?」
「え・・・・・あ、は、はい」
頬を染めて困ったように笑う姿。
どうしていいのか分からない顔。
「ねぇ、イワン君。絶対に怖い事はしないから、今夜は私と遊んでくれないかい?」
「え・・・・・・・?」
「セルバンテス!」
声を荒げたアルベルトに視線すら寄越さず、セルバンテスは微笑んだままだ。
「どうかな、もし許してくれるなら、沢山キスして愛を囁きたいんだ」
「あ・・・・・・・・・・・・」
過る飢餓の色。
快楽など二の次の、優しい愛情に飢えた瞳。
泣きそうな顔で笑って、イワンは首を振った。
「・・・・・アルベルト様のお世話がありますので」
悲しそうに目を伏せた彼は、快楽の世話という意味では言っていない。
ただ、何の褒美もない主への献身を生きがいにした言葉。
ただそうしていたいからという直向きな愛。
それが辛くて、浅はかな自分が腹立たしくて。
何も言う事が、出来なかった。
***後書***
手●ンがやりたかったと一撃でばれてしまうこの作品。