【 御主人様のお気に召すまま-167 】
セルバンテスから箱を押しつけられたイワン。
中身はそう重くは無いが、何だか嫌な予感がする。
彼がくれるものは大抵素敵なものだが、たまにとてつもなく迷惑な物が入っている場合がある。
恐る恐る開けると、矢張り。
いつもより小さめの、張型。
そのまま捨ててしまいたいが、即日処分と言うのも彼が可哀想な気がする。
そんな仏心を出すから毎回痛い目に遭う気もするが、優しいイワンは後日返す事にしてそれを自室に置いておいた。
が、その夜。
泥酔した主に身体を弄り倒され、おまけに主はそのまま爆睡してしまった。
完勃ちで眠る主も凄いと思うが、腰砕け状態で放り出されれば相当きつい。
なんとか主の身体を引きずってベッドに上げ、自分はソファに。
解されて疼く場所に触れようかと一瞬悩んだ瞬間に目に飛び込んでくる、箱。
鼓動が跳ねあがり、さっと目を逸らす。
駄目だ、使ったら返せないし、そんなふしだらな事。
そう思いながら、視線はちらちらとそこに行く。
そーっと手を伸ばす頃には、彼は同じ部屋に主が眠っている事なんて忘れていた。
耳に響く自分の心音に唾を飲んで、箱を開ける。
中には、標準的な大きさの張型。
何だか知っているような気がしたが、気のせいと首を振る。
こくんと唾を飲んで取りだし、先端に舌を這わせる。
ちゅっちゅっと舐めていると、何だか自分が舐められているような気分になってしまう。
丁寧に舌を這わせていき、時折焦らすように舌を滞らせる。
相手は無機物と分かっていながら、何だかとても気持ちが良い。
腰をびくつかせながら張型に奉仕する姿は途方もなく厭らしく、そして愛らしいが、それを見る者はいない。
弾む息に段々と興奮が高まり、急性に押し当てる。
息をのんでぐっと力を込めると、ずぶりと先端が刺さった。
「ぁは、っ」
びくんと腰が跳ね、座ったままの挿入の痛みを感じる。
だがそのまま先を含ませるまでは我慢し、ゆっくりと仰向けになる。
少しずつ押し込んでいきながら、這いあがる苦痛と心地好さに酔い痴れる。
痛みと混じり合う快楽は甘美で、自分で加減が出来るのが気持ちいいのにもどかしい。
好い部分ばかりを刺激するそれは、主や主が使う玩具より大きくもないのに、腰が跳ねあがるほどに気持ちが良かった。
滑る指でしっかり持ってぐりぐりと突くと、掠れた声が出てしまう。
自慰の数倍も罪悪感があるのに、何でこんなに気持ちが良いのか分からない。
片手でソファに爪を立て、もう片方の手で強く押し込む。
びくびくしながらそそり立ったものは既に達さぬばかりに育っていて、酷く厭らしい匂いの汁を垂らしていた。
「ぁあ、ん・・・・・・・」
思わずソファから離した指を噛み、声を抑える。
しかし噛んだ痛みさえ心地良いばかりで、腰がくねるのを抑えられない。
女性でもないのに変な腰つきをしてしまっていると自覚しながら、なまじっかな女性よりもずっと厭らしい腰のくねらせ方なのにはまるで気付かない彼。
白い肉の狭間に隠れた厭らしい孔は、すっかり甘ったれて硬い棒にしゃぶりついている。
「んん、っ」
ずずっと引き出すと、絡みついた肉が離れずに苦しい。
その摩擦で益々汁を漏らしてしまって、顔から火が出そうに恥ずかしい。
自身に触れるか迷ったが、それより触れたくて堪らない場所。
噛んでいた指でそっと胸の尖りを摘まんで、柔らかく揉んでみる。
「あ・・・・・・・」
堪えるような溜息が洩れ、びくんと腰が跳ねる。
潤んだ目からは今にも滴が零れ落ちそうになっていて、顔はすっかり火照っている。
はちきれんばかりの雄は汁塗れで、銀糸まですっかり濡れてしまっている。
ぷるんとした袋はその熱さが分かりそうなほどに震えていて、十傑や策士以外の男でも、見たら飛びかかりそうな艶姿だ。
「あ、あ、だめ、ぃや、っ」
自分で自分を攻め立てながら、嫌がる口調と羞恥の滲む声。
厭らしくも可憐な姿を惜しげなくさらし、手にした玩具を時計回りに捻る。
「ひんんっ」
目を眇めて泣きだしながら、手は益々強く玩具を扱っている。
泣きじゃくりながら激しい自慰を繰り返し、絶頂を求めて快楽を貪り続ける。
「あ、あんっ、あ」
それでももどかしさはどうしても拭えない。
加熱していく一人遊びはそのもどかしさを振り切るためなのに、全然足りない。
視線の先には眠りこける主がいて、その腰には今、勃起した性器があると分かっているのに。
ずるりと玩具を引き出し、ふらふら立ち上がる。
頭の大事な線が焼き切れてしまって、何も考えられない。
ただ、ばれないようにすれば良いという追い詰められた思いだけ。
規則正しい呼吸を繰り返すアルベルトの腹に座ったイワンが、そのネクタイを抜いてそっと目隠しをする。
目元を隠しても矢張り整った顔立ちに、心音が跳ねる。
そろそろと服を肌蹴てジッパーを下ろし、遊びやすいようにして。
自分の良いように出来る男性の身体に、そっと覆いかぶさる。
「あるべるとさま・・・・・・」
下腹部に座って逞しい胸に身を擦り寄せ、筋肉質な胸板を噛み始める。
主の体臭に興奮が抑えられなくて、戒めるように自身を強く握った。
首筋から顎へと舌先を滑らせ、唇に唇を押し当てる。
葉巻と酒の苦みが混じった味と、こちらまで酔いそうな酒臭い息。
切なくて幸せで、頬を包んで何度も舌を絡め合わせる。
アルベルトのアクションが無い分やり易かったし、何より相手が気づいていないと思うと落ち着いてやる事が出来る。
少し唾液を零しながら濡れた音を立てて口内をかき回し、何度も唇を吸いあげる。
上下を交互に吸って、頬に頬を擦り寄せる。
そのまま身体を下にずらして、そそり立ったものを自分の後孔に宛がった。
「あるべるとさま・・・・・・」
ズッと濡れた音を立てて入り込んでくるもの。
熱過ぎる肉は寝ていても硬くそそり立ち、その癖何の動きもない分もどかしさが募ってやまない。
締めないように頑張りながら根元まで受け入れ、腰の位置を調節する。
アルベルトの指を摂って頬ずりし、イワンは恥ずかしそうにつぶやいた。
「お借りします・・・・・・」
右手で取った左手を自分の尻に這わせ、左手で取った右手を雄に押し当てる。
自分の指でアルベルトの指を動かしているのに、酷く心地よさそうに耽っている。
腰を揺らしながら、白い尻を握らせ、硬い男の手に雄を擦りつける。
先走りで濡れていくそれに快楽が増し、尻を揉ませていた手を離し、自分の手でアルベルトの袋をさすり始める。
「あぁ、っ」
持ったままの手は自分の袋を掬わせ、主の手の上に性器を乗せている事の背徳感に酔う。
アルベルトの袋をさする手つきは優しくも激しく、ぼってりと汁を溜めている感触に射精してしまいそうに興奮してしまっていた。
掠れた声で気が触れたように主の名前を繰り返し、イワンが果てる。
中には主の汁が零れ始め、酷く心地が良い。
腰を上げて引き抜くと、喪失感が酷かった。
主の胸に頬をつけたままに自分の指を差し入れ、粘液が空気を含むほど激しく掻き混ぜる。
アルベルトの肌蹴たワイシャツを掴んでもう一度射精したイワンは、指を抜いて主に縋った。
閉まりかけの後孔から泡立った精液が零れ落ち、アルベルトのスラックスを汚していく。
満足感と共に恐ろしい程の罪悪感を感じ、やおら正気に返ったイワン。
起たない腰を無理やり立たせて、浴室に始末をしに行った。
その2分後に目を覚ましたアルベルトは、視界が暗い事に首を傾げた。
手をやると目隠しをされているから、ほどいてみる。
が、自分の状態にぎょっとした。
逆レイプにでも遭ったような状態だ、全く記憶にないが。
しかもここは従者の部屋らしい、絶対に見つかったらまずい。
曲がり間違っても従者が自分の意識の無い隙に相手をさせるなんて言う事は無いだろう。
酔ってここに押し入ったなら、どこぞの女とそういうプレイをした色濃い痕跡を消しておくべきだ。
そう思ってベッドから降りようとした時に、ドアの開く音。
浴室の方から帰ってきたイワンが、顔を真っ青にして絶望的な目で見つめている。
言い訳のしようが無い、何処まで見られていたかも定かでないし、まさか目の前でやったとかではあるまいか。
どうすればいいかと死にそうになっているのはお互いだが、イワンのアクションの方が早かった。
持っていた濡れタオルを投げ捨てて、浴室に逃げ込んでしまったのだ。
慌ててドアに張り付いたが、イワンは中で激しく泣いている。
宥め透かしてみるが、どうも機嫌が直らない。
が、イワンはその内に掠れた声で謝り始め、ついにはセルバンテスの名前を出した。
その瞬間、もう一つの可能性に気づく。
自分が酔って手を出しに行く最たるものがイワンだ。
途中で爆睡したとしたら、万が一一緒に飲んでいた盟友が自分を追って来ていたら。
セルバンテスに慰められても可笑しくは無いし、文句を言える筋合いでもない。
唇を噛んで、入れなければドアを破壊すると脅した。
ドア云々よりもその気迫に怖気づいてドアを開けたイワンを捕獲し、引きずっていく。
見れる程度に直した服装のまま盟友の屋敷まで行き、その自室に押し入る。
セルバンテスは、その中で一人。
床に転がって悶絶していた。
***後書***
分けてどうすると思ったが、こんな濃いエロ一本に詰めてどうすると思った。