【 御主人様のお気に召すまま-017 】



真夜中。

耳が痛い程静かな満月の夜に、イワンはふと目を覚ました。

ゆるりと身を起こす。

溢れた残滓が腿を伝い落ち、思わず顔を赤らめた。

そしてやっと、それを残した主の姿が隣に無い事に気付く。


「・・・・・・・アルベルト様・・・・・?」


滅多に夜中目を覚まさない主が消えた事に不審を覚え、シーツを巻き付けて脚を降ろす。

ツキッと腰が痛んだが我慢して立ち上がった。


「・・・・・・・・・・・・・」


ドアは閉まっていた。

窓に近づいて外を見る。

白い月光に照らされた庭には、花が咲き乱れていた。


ギッ…


背後で扉が軋んだ。

慌てて振り返る。

だがそこに居たのは主ではなく・・・・・・。


「・・・・・・・・!」


真黒な、狼。

後退ろうとして、窓枠に腕が当たる。

刺激しないように静かにしていると、黒狼は優美な足取りで近づいてきた。

月明かりを受けたイワンと黒狼の視線が絡む。

狼の赤色の瞳が主に似ていて、イワンは小さく息を呑んだ。

黒狼はイワンに寄ると、ひょいと前脚を掛けた。

飛び付くと言うには穏やかすぎる。

だが体の大きな狼のこと、身長はイワンと変わらぬ程で、掛かる体重はかなりのものだ。

壁に押し付けられたイワンの首に、獣の舌が這う。

ぺちゃぺちゃと舐める仕草は人間とは全く違うのに、身体が震えて吐息が熱くなってしまう。


「あ・・・・・・・・」


耳をなぶられて膝が砕ける。

ずるずると座り込んだイワンに、狼が覆いかぶさった。


「んっ・・・・・・・・・」


身体のそこかしこを舐め回される。

首を、腹を、腿を。

不思議と嫌悪感はない。

この現実離れした状況のせいだろうか。

どこか夢の続きのようで・・・・・・・・。


「う、ん・・・・・・・・」


胸の尖りを熱い舌が這い回る。


「あ・・・・・・・・・」


狼の鼻先が、立ち上がった雄に触れた。


「そこ、は」


手で隠そうとしたが、遅かった。


「ひぅっ!」


びちゃっと舌が触れ、荒々しく追い立てられる。

イワンは小さく喘いで堪えていた。


「は・・・・・ぁっ・・・・・・・・」


伝う蜜を舐め取られて、思わず指を噛む。


「くっ、ふ、ぁ」


イワンが我慢している事を感じ取ると、獣は攻め方を変えた。

最奥を何度か舐め上げて濡らし、鼻先でいとも簡単にイワンを引っ繰り返す。

逃げを打って立てた膝が裏目に出て、獣にのしかかられた。

ぼやけた頭で必死に首を振る。

獣となんて、そんな・・・・・・・・。


「ぁう、う・・・・・・・・!」


ずるぅ、と先が細った長い雄が入ってくる。

己より重たい身体に背から乗られては身動き取れなかった。

むき出しの背に、じゃりじゃりとした獣の毛が触れる。


「ぁ、あ、っ」


獣独特の動きで犯され、イワンは浅く喘いだ。

奥まで届くのに、余り拡げられない。

気持ちいいのに、物足りない。

だがそれに焦れた身体に、強烈な快楽が弾ける。


「ゃ、あっ、あっ、あ・・・・・・・!」


奥に流し込まれる、熱いもの。

年中子孫を残せる人間とは違い、確実に孕ませるために溢れる程流し込まれる子種。

イワンの後孔が激しく締まる。


「は、ぁ、っ・・・・・・・・・」


背徳感と快楽に耐え切れず、イワンは肘から崩れ落ちて意識を手放した。





「貴様は本当に面白い」

前回サニー(未遂)とイワンに札を使用するという愚考に走った樊瑞の「詫び」を腕から剥がし取り、アルベルトは人身に戻っていた。

そう、あの破廉恥狼はこの男だったのである。


「まあ、達しなかったのは誉めてやろう」


単に足りなかっただけかも知れぬがな?

くくっと笑い、アルベルトは眠るイワンを抱いて耳に口づけた。

満月の夜は、愛する者に悪戯を。





***後書***

ハロウィンが近い→狼男→いや狼だろ→獣姦?→一発書いとくか!

・・・・ごめんなさい。