【 御主人様のお気に召すまま-028 】



「どうかなさいましたか?」

アルベルトに紅茶を煎れていたイワンは、窓際で外を眺める幽鬼が己に視線を留めたのに気付き首を傾げた。

幽鬼は「気にするな」と言ってイワンの側に来た。


「襟に糸が付いていただけだ」


少し骨張った指がイワンの項の近くに触れる。

糸をつまんだ指先に触れる柔肌はとてもなめらかで、心地好い。

思わず意識の外で指を滑らせていた。

ふわりと肌が粟立つ。


「っん!」


小さく息を詰めたその声は甘やかだ。

指に触れる肌の誘惑に、幽鬼はつぅっとイワンの首筋を撫でた。


「ぁ・・・・・・ゅ、鬼様」


・・・・・・・忘れないで頂きたい。

冒頭でイワンが何をしていたか。


「アルベルトに紅茶を煎れていた」


のである。幽鬼に擽られているイワンの隣には不機嫌MAXのアルベルトがいる。

だが幽鬼はテレパスの保持者である。

アルベルトが制裁を加える寸前でさっくり切り上げた。

お戯れが過ぎます、と困った顔をするイワンに優しく微笑み、また窓際に戻る。

イワンは首筋を軽く擦って、渋くなってしまった紅茶を捨てた。

頬杖ついて葉巻をふかす主の眉間に皺が寄っているのに気付かぬままに。





「っ・・・・ふ・・・・・・・・」

呼ばれて部屋に行くと、すぐに唇を奪われた。

葉巻の苦み薫る口づけを繰り返し受け入れて、舌が痺れる程に吸われる。

唇を擦り合わせたまま抱き上げられ、ベッドに下ろされる。


「ん・・・・・・・・・」


ちゅぱ、と唇が外れる。

ざらりとした舌が下唇を右から左になぞり、また唇が合わさった。

肉厚な舌が、歯列をなぞり上顎を舐める。

軽く顎が引きつって、舌に歯が食い込む。

すると顎が閉じられないように掴まれ、尚も口内を蹂躙された。


「ん、ふ・・・・・・・・っ」


混じり合った唾液を流し込まれて、苦しさに嚥下する。

唇が熱い。


「ぁ・・・・・・・・・・」


唇を吸われながら、イワンは合間にぎこちない呼吸を繰り返した。

重く疼く腰がもじりと揺れる。


「口づけだけでそれか」


スラックスを押し上げているものを指摘され、イワンは羞恥に泣きそうに眉をよせ俯いた。

アルベルトの舌が顎に伝う唾液を舐めとる。


「唇だけでは満足できまい」


アルベルトの指がワイシャツの上から胸の尖りを押し潰す。


「ぁ・・・・・・・っぁ、あ」


くにくにと転がされ、イワンの身体がびくつく。

アルベルトはイワンのワイシャツの釦を丁寧に外し、中に手を差し入れた。


「ひ、っ、アル、ベ、ルト、様っ」


こりこりと硬くなり始めた突起を痛みと疼きの入り交じった微妙な強さでいじられて、イワンはシーツを握り締めた。

手が動くたびに皺が寄るワイシャツからは、いじくり回されている突起が半分程見える。

そこは淡い色で小さい。

だがアルベルトの手により性感帯につくり変えられた箇所だ。

片方は指で転がされてじんじんと疼き、反対はぬるつく舌が這い回り小刻みに吸われてじくじく疼く。

種類の違う愛撫に対する二種の疼きに、イワンは小さく喘いだ。

シーツを掴んだ手がぶるぶると震えている。

雄は完全に立ち上がっていたが、一度も触れられぬままだ。

アルベルトはイワンのスラックスを脱がせて脚を開かせた。

涎を垂らしてひくひくしている雄が反り返っているため、後孔が丸見えだ。

何度も男を挿れられているくせに形崩れもなく、小さく窄まっている。

貞淑なふりをしているが、蟻の戸渡りを先走りが伝うときゅぅと蠢いた。

いやらしい、淫らな孔。

それ専用の女の膣だってこの淫らさはないだろう。

アルベルトはサイドテーブルからオイルを取って蓋を噛んだ。

外した蓋を床に吐き捨てると、硝子製のそれは硬質な音を立てて転がった。

微妙な傾け方でオイルを細く落とす。

イワンの雄の鈴口目がけて。


「っあ、あ、ぁあぅ」


生暖かなオイルが高低差で軽く鈴口を叩く。

敏感な粘膜に与えられる生殺しの快楽。

幹を伝うねとりとした流れにいたぶられ、気が狂いそうになる。


「ふぁ、ぁぁ、あ」


激しく震える身体。

ぎくしゃくした動きで跳ね上がる腰。

焦らしの快楽に溺れた表情に、口元を笑みの形に歪めて、アルベルトはイワンの後孔を指でなぞった。

早く頂戴と言わんばかりのはしたない蠢きに誘われ、オイル滴るそこに指を突き立てる。

中指の第二関節までは急性に挿れ、中をぐにぐにと押す。


「ふ、ぁ・・・・・」


少し解れたら焦らすように引き抜いた。

追い縋る襞を爪で軽く掻くと、イワンが泣きの入った悲鳴を上げた。


「悦さそうだな」


緩く抜き差ししてなぶる。

淫らな肉管がどんなに欲しがっても第二関節までしか与えない。

イワンの呼吸が不規則になってきてやっと、指を増やすか深く挿れるかと考える。

アルベルトの男根は既に硬く屹立し、臨戦態勢だ。

頭もそれも血管が切れそうなくらいに興奮している。

だがイワンを堕とすのはやめられない。

淫乱と言っていい身体の癖に精神は清廉。

それを焦らして快楽に身体を陥落させ、精神を凌辱する。

そのほの暗い愉悦。

少し考えて、アルベルトは中指を強く突き入れた。

根元まで入った太い指に、熱い肉襞がにゅくにゅくと絡み付く。

イワンは突然の刺激に喉を引きつらせていた。


「っあ、あぐ、ひゅ」


ぐちぐちと激しく抜き差しを繰り返すと、イワンの雄がびくびく震える。

後ろだけでイける身体にされたイワンだが、指一本では流石に足りない。

口から意味を為さぬ泣き声が上がり、身体は薄く色付いていた。


「も、ぅ、許し、あぅっ・・・・っ」


ちゅぽりと指を抜き取られ、後孔が収縮を繰り返す。

アルベルトは漲る男根を取り出し、イワンの腿に擦り付けた。


「欲しいか」


熱い剛直に、イワンの身体がびくつく。

だがそんな事が口に出来よう筈がない。

イワンは己に乗り上げて悠然と笑う主を見上げ、僅かに口を開閉させた。

潤み切っていた目から涙が伝う。


「欲しいのだろう?」


耳を舌で辿られ、イワンは陥落した。

主の声に脳髄が痺れて自分が何を言っているのか解らない。


「欲し・・・・で、す・・・・・・・・」


とうとう堕ちた従者に、アルベルトは喉奥で笑った。

脚を持ち上げて、狙いを定める。


「っあぁあーっ!」


一気に半分まで埋められ、イワンの身体が反る。

アルベルトは隙間のあいた背の下に手を差し入れてイワンの身体を支えると、奥歯が軋む程噛み締めて中を突き上げた。

イワンの悦いところを外して抉り、柔い肉に涎を垂らす自身を限界の先まで追い詰める。

ぢゅぽっと抜き取ると、イワンが悲痛な悲鳴を上げた。


「っあぁぁぁ!」


痙攣する身体を股ごし、開きっぱなしの唇に開閉する鈴口を擦り付ける。

わななく唇にぬたぬた糸をひく我慢汁がねちゃりと付いた。


「飲め」


限界が射精なら我慢汁はその先だ。

精液よりキツい男の匂いと、味。

イワンはそれを必死で舐め取った。

濃すぎる味に唾液が溢れる。

喉が拒絶するのを騙し騙し流し込む。

ひとしきり舐めさせると、アルベルトは身を退いてまたイワンの中に差し挿れた。

緩く抜き差しし、時折鋭い突き上げを与える。


「っあぁあぁぁ」


不意にイワンの口から長く締まりの無い悲鳴が漏れた。

身体がおかしなリズムで痙攣を起こし、肉管が限界まで引き絞られる。

イワンの雄から透明な粘液が飛んだ。

先走りにしては多すぎる。

アルベルトは息を軽く乱しながら笑った。


「・・・・・・話には聞いていたが」


男も潮を噴く。

相当焦らしていじり倒さないといけないが、射精とは違う快楽だと聞いていた。

イワンはもうおちる寸前だ。

過ぎた快楽に意識が危うい。

アルベルトはイワンの首に口づけを一つ落として、彼の悦いところを狙って突き始めた。

泣きながらかすれた嬌声をあげ、イワンが熱液を吐き出す。

ぎちゅぅと音がする程に締め付けられ、アルベルトは勢い良く男根を引き抜いた。

イワンの脚を限界まで開かせ、ぬらぬらした中を見せながら開閉する孔にたっぷり掛ける。


「ぁ・・・・ん・・・・・」


中ではなく肌に感じる精液と、主の男の匂いに、イワンは小さく身体を震わせた。





***後書***

スパムメールにあった男性の潮噴きがやりたかったんだ。

他意はない。

最近エロ真剣に書き過ぎな自分。

悔いはない。