【お主人様のお気に召すまま-032】
真夜中。
イワンは出来るだけ主の身体を揺らさないようにその腕から逃れた。
アルベルトは静かに眠っている。
イワンはとても幸せそうにまなじりを染めた。
任務から帰るなり部屋に引き摺り込ま・・・・呼ばれたのだが、本当は早く休んで欲しかった。
疲れが限度を過ぎるとそういう興奮が身体を抜けなくなるから、自分が相手をするのは構わないしむしろ嬉しい。
・・・・アルベルトはイワンを手に入れてから、一度も女に手を出していない。
イワンはそれが嬉しく恥ずかしかった。
だが自分でいいのだろうかと考える事もある。
今まで自分を抱いていてくれていたしっかりした腕。
その手首にそっと唇で触れ、イワンはベッドから降りようとしたのだが・・・・・・・。
「っわ!」
膝立ちで移動していた足首を掴まれ、イワンは咄嗟に手を突いた。
後ろを振り返ると、アルベルトが笑っている。
少し品の悪い、でも酷く格好の良い男臭い笑みで。
「悪くない眺めだ」
「え・・・・あ!」
イワンは慌てて身体を起こそうとした。
腰を折った所為で、昨夜苦しい程に下から呑まされた白濁をとろとろ溢す後孔が晒されている。
アルベルトは手を伸ばし、精液を伝わせる白い腿をなぞった。
するとひくひくしている後孔が小さく窄まり、その反動でぷちゅくと精液が溢れ出る。
「っあのっ・・・・・始末、しますから・・・・・・」
どうもイワンはベッドを汚すのを気にする傾向にある。
これだけ体液塗れにしたらほぼ確実に廃棄なのだからそんな些細な事は気にしなくて良いように思うのだが。
・・・・まぁ一般的感覚のイワンに言わせれば汚したくない、せめて洗濯して捨てたい、いっそ自分で焼きたいとまで思う惨状のシーツなのだ。
アルベルトはイワンに目を向けた。
「・・・・・・掻き出しているのか?」
毎回。
イワンは絶句した。
一般常識が一部欠如した主はたまにこういう事を普通に聞いてくる。
どう答えろというのだ。
イワンは少し迷ったが、足首を掴まれたままアヒル座りになり腹部に手を置いた。
「私は・・・・孕めませんから・・・・・・」
困ったように淋しく微笑み、腹を撫でる。
正直に切なさを見せた従者を、アルベルトはじっと見つめていた。
従者が女だったらと思ったことはない。
イワン自身もそんな女々しい事は思っていない。
だが中に注がれる子種が命を形成せずに死ぬのを感じるたびに切ないのだ。
アルベルトは身を起こしてイワンを引き寄せた。
後ろから抱き込んで耳に口づける。
「自分の始末を貴様に任せ切りにするのも酷だったな」
「え?」
見上げてくる従者に意地悪く笑い、アルベルトはすべらかな脚を掴み開かせた。
「あ、あの・・・・・ぁっ」
クチュッと濡れた音を立てて後孔に指を含まされる。
太く硬いものに散々開かされ侵されたそこは、柔軟な柔らかさを残していた。
ゆっくりと壁をなぞると、入り口がひくひく締まる。
「アル、ベルト様、そのような事は私が・・・・・っん!」
頬を染めて嫌がる素振りを見せるのが可愛らしい。
・・・・いつもは放っておいたわけではない。
自分達の関係は男女のそれとは違うのだ。
自分に始末をさせるのを従者はよしとはしない。
朝目覚めた時にさえいないのが常だ。
目覚める頃にはもうアルベルトの朝食を作っている。
そんな男に無理矢理始末をつけても負担になるだけだ。
だがたまには・・・・こうしていたい。
「ん、っ・・・・・アルベ、ルト、様」
己の胸に当たるなめらかな背は震えている。
腕に縋って来るのを愛しく感じながら、アルベルトは己が飽きる事なく注ぎ込んだ精液を掻き出し始めた。
少し腫れて熱を持った入り口を抉じ開け、内部を満たす粘りを掻き出す。
「ぁ・・・・は・・・・・っぁ!」
「我慢しろ」
奥の方まで流れ込んでいるものを掻き出すと、イワンが嫌がる。
従順な彼は抵抗などしないから、相当苦痛で無意識に逃げを打っているのだろう。
可哀想だと思わなくはないが、それ以上に精神的快楽を覚える。
「っあ、や、ぁ」
奥の前面をつうーっとなぞると、イワンがかすれた悲鳴を上げた。
もう一度なぞると、ばたばたと暴れる。
初めて見た従者の抵抗。
捕まえて続けようとすると、涙ながらに放して欲しいと訴えられた。
不思議に思ったが、そわそわした様子に思い至り、指先で内壁を辿る。
膨らんだ膀胱の裏。
アルベルトはとんでもなく質が悪い笑みを浮かべ、サイドボードのグラスを取った。
中には溶け切った氷により薄まり、もうぬるまったウイスキー。
それを床にぶちまけ、空のグラスをイワンに持たせる。
「シーツの上でも構わんがな」
「え・・・・・・・?」
背中越しに見上げてきた従者に口づけ、アルベルトはイワンの内壁をくいと押した。
イワンが暴れるのを押さえ付けて舌を絡ませる。
悲鳴はその中に溶けた。
一度唇を離して強く中を圧すと、イワンが悲痛な悲鳴を上げて逃げを打った。
「あ、あぁ、い、や、嫌・・・・・・・!」
イワンの手から転がったグラスをあてがい、激しく絡み付く内壁をぐりぐり圧す。
見開かれた目から涙が落ちた。
「あぁぁああっ」
絶望的な悲鳴。
グラスの中に黄金色の液体が溜まっていく。
一度堰を切ったものを止めることは出来なかった。
「っあ、あ、あ」
顔どころか身体まで染めて、イワンは主に抱かれたままに排尿した。
主に見られながら、主の手の中のグラスに。
アルベルトがサイドボードにグラスを置くと、イワンは力なく拘束された腕を引いた。
呆然としたままその腕から逃れようとする。
「イワン」
「ぃゃ・・・・・もう、許・・・・・ぁ!」
入ったままだった指が中を掻き回す。
イワンはとうとう本気で泣きだしてしまった。
「っぁ、ぅ、ふ・・・・・っ」
「何を泣く」
今更ワシに見られて困る姿などなかろう。
甘く耳を噛まれ、イワンはしゃくりあげた。
「あのような・・・・情けない、姿を」
イワンのうなじに赤い花弁を咲かせ、アルベルトは華奢な腰を掴んで持ち上げた。
背面座位で飲み込ませると、反った背中が胸に押しつけられる。
「っあ、あっんっ・・・・・」
ぐぷぷっと濡れた音を立てて身体を暴かれる。
一度奥まで入ったら、脚の腿裏を掴んで脚を限界まで開かせ、持ち上げる。
不安定な態勢に、イワンの手が主の内肘を掴んだ。
「っあ、あっ、あっ」
突き上げられるのではなく自分の身体を動かされ、イワンは眉根を寄せて目を閉じた。
情けなくて、恥ずかしくて、気持ち良くて、おかしくなりそうだった。
次第に激しくなる動きに肉管が引き絞られる。
「あ、ん、んんっ・・・・・・・!」
中に吐き出されていく熱い精液に、イワンは身を震わせた。
アルベルトがイワンの耳のきわを舐める。
「見たくない姿があるとすれば」
貴様がワシ以外の者にその身を捧げる姿だ。
イワンは数度目を瞬かせ、照れたように微笑んだ。
***後書***
最初はね、出しながらイかせちゃおうと思ったの。
調べたらね、同時って不可能なんだって。
だからね、グラスにしてみた!
(↑カワイ子ぶっても駄目なものは駄目です)