【御主人様のお気に召すまま-041】
「うーん」
下着のカタログを眺め、ローザは顎に手を当て唸った。
彼女の抜群のスタイルに合う下着は基本的に取り寄せだ。
「可愛い・・・・・けどこの青が微妙にヤダし・・・・・」
どう思う?
カタログを突き付けられ、イワンは溜息を吐いた。
「私に聞くな。好きなのを選べば良いだろう」
休日に押し掛けてきて、下着のカタログを見ながらレモンティーを飲む娘に呆れながら、イワンはワイシャツにアイロンをかけていた。
「そうだけどねー。あんたの好きな下着着たって仕方ないもの」
「当たり前だ」
「あ、そう言えばアルベルト様ってどんな下着?」
興味津々な瞳のローザだが、勿論イワンを苛める気満々だ。
恥じらうか、恋人の下着は言わないか、わくわくしてしまう。
だがイワンはアイロンをかけながら普通に答えた。
「黒のボクサー」
「・・・・・・何で普通に答えてるのよ」
不満たらたらのローザにイワンが怪訝な顔をした。
「・・・・・私が買いに行くのだから別に感想はないが」
・・・・考えてみればそうだ。
アルベルト身の回りの事はイワンがやっている。
ローザは「はーっ」と溜息を吐いて、またカタログに目を落とした。
そこでふと気付く。
「あんたは?」
「・・・・・何故言わねばならない」
「ピンクのティーバック?あんたも好きねぇ」
「・・・・・・黒か灰のボクサーだ」
真面目に抵抗するのが馬鹿らしくなって白状する。
「普通過ぎて面白くない」
「煩いな」
ローザの手がカタログのページをめくった。
「あ、ちょっと。これどう思う?」
指差す先には可愛い下着のセット。
肩紐は丸紐で、カップの上の方は白いレースがあしらわれている。
仕様はフロントホック。
パンティはもっとレースが多用されていた。
切れ込みは甘めなのだが、わきは紐で純と色のバランスがとれている。
「・・・・・嫌いじゃないが・・・・」
「良かったー!」
渡された包み。
嫌な予感がしたので押し返そうとしたが、包みを開かされる。
出てきたのはカタログと同じ下着。
「アンダーサイズは大丈夫よ。カップはかぱかぱだろうしお尻も女の子とは違うからちょっと大きいかもだけど」
「待て。誰が着るんだ」
「あんた」
あっけらかんと言い放ったローザに目眩がしそうだ。
こめかみを押さえるイワンに、ローザが首を傾げる。
「・・・・あんた・・・・・嫌いじゃないっていうのはもしかしてその・・・・アルベルト様に似合うって・・・・・」
「・・・・・・違う」
薄気味悪いものを想像しそうになって踏み留まる。
イワンは進まないアイロン掛けを中断して電源を切った。
「その、だから」
「あ、綺麗な女の子で脳内下着着せ替えごっこ?」
「・・・・・・・」
はぁ、と溜息を吐き、イワンは困ったように笑った。
「お前だよ。白もレースも好きだったじゃないか」
「・・・・・・・変なとこ記憶力良いわね」
性格と面立ちがキツいローザは服もクールなものが多い。
だがティッシュケースなどの小物は好きに選んでいる。
好きな色と、形。
白とレース。
頬が熱くなるのを感じながら、ローザは黙ってレモンティーを飲んだ。
実はイワンは男女共人気がある。
人当たり良く、勤勉実直。
遊びには適さないが、結婚するなら誰と聞くとかなり上位にあがる。
男どもは最近味見したがる下衆が増えているのでローザが密かに追い払っているのだが。
「ま、兎に角それ着て」
気を取り直して言うと、イワンが呆れた顔をする。
「何故私が・・・・・」
「誘えないならせめて下着でアピールしなさいよ」
ちうーとレモンティーを啜りながら、イワンを指差す。
「って事で脱ぎなさい」
「は?」
「着せたげるから」
ローザの言葉にイワンはぽかんとしていた。
だが「また何か訳の解らない事を・・・・・・」という顔をしてワイシャツをたたみ始める。
「馬鹿言ってないで・・・・・っわ!?」
床に引き倒されて、イワンはしたたか打った腰に手を当てた。
腰に乗り上げた娘は満面の笑みで女性物の下着をびよんびよんさせている。
「脱ぐ?脱がされる?」
にこーっと笑う悪魔に、イワンは頬を引きつらせた。
「脱がないという選択肢は」
「無いわよ」
硬直しているイワンのパーカーを捲り上げる。
「あは、可愛いわね」
ちょん、と淡い尖りをつつかれ、イワンは身を竦めた。
諫めようとすると、腕を取られてパーカーを脱がされた。
「あんた愛されてるわねぇ」
体中に散るキスマークに視線を這わされ、イワンは唇を噛んだ。
気付いたローザが優しく笑う。
「馬鹿ね、気持ち悪いなんて思わないわよ」
イワンの頬を両手で包み、額を合わせる。
「・・・・・あんたが幸せで嬉しい」
軽い付き合いに見えるかもしれない。
単に小娘がじゃれついているように見えるかもしれない。
だが実際二人のつながりは深い。
アルベルトの元で修業していた頃、辛くて泣くのはいつもイワンの部屋だった。
他の誰も、誰一人として知らないローザの弱音。
痛い、苦しい、アルベルト様の馬鹿。
何を言ってもイワンは黙っていた。
そんなイワンに食って掛かることが多かった。
でもある日気付いた。
泣き止むといつもホットミルクを用意してくれて。
「すっきりしたか?」と。
わざと自分に矛先を向けさせていると気付いた。
言いたい放題言えるように。
また明日頑張れるように。
だから、今度は自分がこの優しい人を泣かせてあげたい。
「辛かったら言いなさいよ」
イワンは困ったように笑んで頷いた。
「・・・・・・じゃ、ぱぱっと」
「は?っちょ、ローザ!」
暴れる動きを巧く利用して腕を通し、前で止めてしまう。
イワンが華奢な方と言えど、肺活筋肉量共に女性とは違う。
アンダーラインは矢張り多少あるから、例えAカップでもカップは隙間だらけだ。
65のAとかならまだ何とかなったかもしれないが・・・・・。
しかし抵抗するイワンにブラを着せるのがこんなに楽しいと思わなかった。
平らな胸に余るブラも中々いやらしい。
女がカップを余らせるのは見苦しいが、コレは何だか可愛い。
「ローザ、いい加減に・・・・っ!」
「煩いー」
ブラの上から胸を揉むと、イワンが嫌がって身を捩る。
きゅっと尖りを摘むと、まなじりが赤らんだ。
「ロー、ザ」
可愛いっ!
ストイックな癖に身体は淫ら。
あんた職業欄に「聖職者兼娼婦」って書けるわ。
フルスマイルでいい歳の男の身体をまさぐる娘。
A級エージェントのローザは電撃能力以外も秀でている。
例え男だろうがB級エージェントを取り押さえる事くらい造作無い。
「あ、今日は灰色」
ジーンズのジッパーを引き下げて、脚から抜く。
動きを利用すればそう力はいらないのだ。
「ローザ、本当にやめ」
「あら?中々悪くない持ち物ね」
「っ」
若い娘に下着を奪われた上、まじまじと局部を見られ、イワンの頬に朱がはかれる。
泣きそうな目の端に口づける。
「はいはい泣かないの」
左足の下から紐を回してサイドを結び留める。
蝶結の余った垂れ紐が脚に掛かった。
「お尻上げて」
僅かに首を振って嫌がるイワンの顔を覗き込む。
ずっと見られたいの?
意地悪く追い詰めると、俯いて後ろ手をついた。
耳まで赤くしながら腰を上げる。
「ん、そうそう」
反対のサイドに紐を留める。
少し引いて調節すると、イワンが眉根を寄せた。
「どうかした?」
「余り引くな・・・・」
擦れて、痛い。
ローザは速攻で紐を結び、イワンに飛び付いた。
「可愛いー」
「う、煩いな」
床に倒れたイワンの胸に額をぐりぐりする。
呆れたようにしながら自然に髪を撫でてくれるのが嬉しい。
「折角だから・・・・・」
ガチャ。
開いたドア。
何回ノックをしても返答が無いため開けたこの館の主は、生まれて初めて唇から葉巻を取り落とした。
三人の時間が止まる。
ローザとイワンが慌てて口を開く。
「「あのこれはっ・・・・・・・・」」
アルベルトは葉巻を踏み消して引きつった笑みを浮かべた。
「話を聞こう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一通り話を聞き、アルベルトはソファに座ったまま葉巻に火を点けた。
「すみません・・・・・」
しゅんとする弟子。
「・・・・・・・・・・・」
もはや何も言えずに俯く従者。
二人とも床に正座で、イワンに至ってはまだ下着姿だ。
ローザはしょんぼりしていたが、何か覚悟を決めたらしくアルベルトを見上げた。
「アルベルト様」
写真撮らせてください。
唐突な申し入れに怪訝な顔をすると、弟子はデジカメを取り出して満面の笑みを浮かべた。
「イワン撮るつもりだったんですけど、どうせならアルベルト様とイワンを」
エロ本の投稿写真みたいな感じでお願いします。
猥褻雑誌など見た事が無いアルベルト。
一瞬考えたが腰を上げた。
イワンを立たせて背から抱き竦める。
「あ、アルベルト様っ?!」
まさか乗るとは思っていなかった主の戯れに、イワンの顔が引きつる。
「暴れるな」
耳を噛んで、左手をブラの中に入れる。
右手がパンティの紐を摘んだ。
動けば解けてしまうから止まった従者に意地悪く笑う。
「わ、凄いアングル」
言いながら写真を撮りまくるローザ。
彼女はひとしきり撮ると、それをアルベルトに渡した。
「動画も撮れます。ヤバいのは後で消してくださいね」
にぱっと笑ってローザは部屋を出ていった。
そう、うまくイワンを人身御供にして脱出を謀ったのだ。
「・・・・・アルベルト様」
やめてほしいという期待を込め、縋るように見る。
憮然とした主はとても機嫌の良さそうなオーラを出しながら、デジカメを掴んでいた。
「ひっ、ひくっ、あっあっ」
しゃくり上げながら、イワンは後ろから犯されていた。
四つんばいではなく、膝立ち。
ブラはずれて淡い尖りを見せびらかし、パンティもずらされている。
着せたまま突っ込んだために、抜き差しするたびアルベルトの男根の左側面を布が擦った。
俯かないよう顎を掴まれ、ゆっくりと注挿される。
俯かないようにされているのは側のテーブルのPC画面を見せるためだ。
そこに映る、横顔。
血管の浮いた男根によるイマラチオに、小さくえづきながら抵抗はしない。
『ん、ん、ぐ』
ぐぽぐぽと口内を掻きまわされて、飲めない唾液とカウパーが混じったものが大量に顎を伝い落ちていた。
男根が口から引き抜かれ、ありついた空気に咳き込む。
咳が治まると、ピクピクしてそそり立つ男根を舐め始めた。
男根に舌を這わせながら泣いているくせに、フェラチオ自体は愛情の籠もった丁寧なもので。
「ぃや・・・・・お許しくださ・・・・・・・・」
男でありながら男根に口で奉仕する自分の姿に、泣きながら懇願する。
だが主は聞いてくれない。
くつりと笑って強く腰を使ってくる。
「ぁんんっ」
ビクンと跳ねた身体を拘束じみた強さで抱かれ、イワンが身を捩る。
PC画面が切り替わった。
『あっあっあっ』
ぐちゅぐちゅと後孔を突き上げられて泣く姿。
男のくせに高い声が女のように喘ぐのを聞きたくなくて首を振る。
『っあ、あっああ』
背面座位で犯される、ランジェリー姿の男は紛れもなく自分で。
脚を大きく開かされて抱き上げられ、男の腕に縋りついている。
レースのパンティをぐいぐい押し上げる雄は恥知らずに勃起していて。
下着に染みを作りながら孔を突かれてよがる姿がいっそ惨めだった。
「何を泣いている」
ぽろぽろ涙を零す従者の腹に手を回す。
「貴様はもうこうされねば満足出来ん」
イワンの目から涙が溢れる。
「こうされねば達する事の出来ぬ身体に作り替えてやろう。女を抱いても子を成せぬように」
貴様は子や子を孕んだ女に情を傾ける。
それを許しはしない。
絶対に。
「イワン」
「あぁ、ある、べ、ると、様」
突き上げに詰まる声で呼ばれ、アルベルトはイワンの肩に顎を乗せた。
「何だ」
「お慕、い、してい、ます。貴方様、だけ、を」
愛は与えるものだ。
恋慕は捧げるものだ。
「ああ」
知っている。
アルベルトは満足気な笑みを口元に浮かべ、イワンを強く抱き締めた。
「・・・・・・・って事があったんですよ」
アルベルトから逃げ逃れたローザは、サロンでセルバンテスの話相手をしていた。
暇になると幻惑は人と話したがる。
「ふーん、イワン君に白のランジェリーかぁ。私も見たかったけど、アルベルト消しちゃうだろうねぇ」
残念そうな幻惑に、ローザは満面の笑みを浮かべて指で摘んだ物を目の高さに上げた。
「端末ー」
「・・・・ローザ、君って子は」
ナイス!
直ぐ様端末を自分のPCに繋いだ幻惑。
駄目な盟友を持つ俺様な主と、愛らしい顔の破天荒な友人を持つと苦労するいい見本である。
***後書***
あんまりランジェリー活かせてなくない?
ハメ撮りって一言聞いた朝に速攻で仕上げてしまった一品。
居酒屋のつきだしと同じで基本的にそううまいものではない。。。