【御主人様のお気に召すまま-044】



「貴様の主が誰なのか叩き込んでやろう」

そう言って笑う主の瞳孔は開き気味だった。




アルベルトの執務室に書類を届けに行ったイワンは、刺さる視線に首を傾げた。

自分のワイシャツの襟を射殺すように見ている主。

アルベルトの視線の先の白い布地には、僅かに赤いものが付着していた。

擦れたように付くそれ。

知らぬ女の気配に頭に血が上った。

誰にも渡さない。

渡すものか。

アルベルトの手が襟元を掴む。

忌々しい紅を含んだ部分を先ず千切り取り、イワンに突き付けた。


「これは何だ」


イワンの目が瞬く。


「これは・・・・・・」


聞いておいて何だが、聞きたくない。

薄く開いた唇を乱暴に塞ぐ。

これは宣告だ。

今から罰を与えるという。


「ん、ふぅ」


絡む舌に苦しそうな様子を見せる。

身じろぐ事さえ怒りを誘発する。

逆らう事など許さない。

雁字搦めに縛り付けてやる。

自分だけに愛を捧げるように。

自分だけに愛を請うように。

唇を離し、アルベルトはイワンのワイシャツを裂いた。

上着が邪魔だが、まあいい。

タイの端を掴み、左手を結わえる。

首と繋がった手に右手を纏めて、ベルトを抜いて拘束する。

不恰好に拘束された上半身。

いつもならそこに与える執拗な愛撫はない。

スラックスを引き下ろし、力無い雄を掴む。


「痛、いた、ぃ・・・・・・・っ」


力任せに扱き立てる。

痛みの所為で立ちは甘い。

アルベルトはポケットに手を突っ込んだ。

小さなケース入りの清涼菓子。

粒タイプのそれを手に取り、半立ちの雄をぐいと上向かせた。


「え・・・・・ひぐっ!」


先端の小さな穴に清涼菓子をねじ込まれる。

そこは拡がるようには出来ていない。

激しい痛み。

先端が焼けるようだった。


「っあ、ひっ、っ」


言葉も出なくて思わず藻掻くと、握り潰す勢いで掴まれた。

余りの痛みに涙が流れ落ちる。


「っああ、ぅ」


何粒も押し込まれ、ごり、と細い管が刺激される。

先端は未だ激痛の火中だが、尿道が刺激されて射精感がある。

長ったらしく半端に精を放つような感覚は苦しくも甘く、イワンを苦しめた。


「ふ、ふっ・・・・・・・」


眉根を寄せて息を整えていると、主の手が菓子を放り出す。

根元に強めの輪を作り、ゆっくり上下させる。


「ぅあ、あ、あ」


中で擦れ合い動く硬い粒。

感じたことの無い快楽と、強い痛み。

先走りさえ塞き止められたためにぱんばんに膨れた袋が震えていた。


「は、はーっ、は、っ」


口端から垂れそうになる唾液を必死に飲み込む。

ぴくぴく動くはしたない雄に、顔から火が出そうだった。


「だらしない身体を持つと苦労するな」


嘲り笑い、アルベルトはイワンを執務机の下の狭い空間に押し込んだ。

椅子に座ると同時にノックがある。


「入れ」


従者の驚愕の瞳を無視して、入室を許可した。


「何だ」


前回の任務の始末についてと、次の任務の予定。

いつも通りの憮然とした顔で応じながら、アルベルトは足を動かした。

靴先で従者の腿を踏み付ける。

靴裏のなめらかな肌が隙間の石砂で傷ついていく。

軽い擦傷を作りながら動かし、膨らんだ袋を小突いた。

ビクンと脚を強ばらせるのが分かる。

ゆっくり踏み付けて揉み、嬲る。

裏を靴先で軽く擦ってやると、ぽと、とごく小さな音を立てて清涼菓子が落ちた。

詰められた粒を押し出す程に塞き止められた雄は濃い色に変色してぴくぴくしている。

腰が痙攣し、口端から涎を零し。

快楽に手撫付けられた体は無意識の範囲で腰を突きだしている

それでもなお理性を掻き集めて息を殺す姿。

部下は気付かずに退室したが、苦痛と緊張にのまれている従者は気付いていない。

椅子を引いて引き摺り上げ机の上に転がすと、怯えた目で周りを見回した。

仰向けの脚を掴んで上げさせる。

清楚に窄まった孔が、どんなに淫らに拡がり卑猥な動きで男根を呑み込むのか知っているのは己の他にいない。

痛みに耐えながら受け入れていたのを、ここまで仕込んだ。

器官が違うのだから仕方がないが、そこは膣程の柔らかさはない。

だがその弾力ある肉が絡み付き、引き絞られた肉管に締め付けられるのは比べようが無い程に良い。

アルベルトはきゅっと窄まった孔を擽った。

ひくんと動くそこをこすってやると、雄から二粒清涼菓子が落ちた。


「あぅっ」


濡れてさえいない孔に、机の上にあった万年筆を突き入れる。

捩られる腰。

白い尻を掴んで激しく抜き差ししてやる。

乾いたそこが引きつり痛むのに震えるのに唇が歪む。

腸液に濡れたそれを引き抜き、くわえさせた。


「貴様の味だ。知っておくのもよかろう」


机上のコーヒーカップを取り、従者の下腹部にぶちまける。

伝う黒い雫を使って指を沈めた。


「ぅう、う」


万年筆に歯が当たる音がする。

苦しんでいる事に暗い愉悦を覚えながら、中をえぐり掻き回した。

二本の指が出入りする孔は桃色に色づいている。

皺を伸ばして入り口の裏を刺激すると、息を呑んで嫌がった。

指を揃えて曲げ、中から入り口を圧迫する。

押されて盛り上がったところに親指を這わせて内と外から挟み込むと、悲鳴を上げた。


「ひ、っ」


そのままぐるりと回す。

余りの気持ち悪さに、口から溜まった唾液がぼたぼた落ちた。


「ぅあ、ぁあ」


グチュグチュと掻き回し、軟らぐたびに指を増やす。

常なら三本で引き抜くが、既に四本入っていた。

仕込んでも端々初い身体はそれが限界だ。

だがアルベルトは指を巧く揃え、ゆっくりと押し込んだ。

しつこく慣らされたために痛みは少ないが、感じたことの無い強烈な圧迫感。

内腑を押し上げられて込み上げる吐き気。

粗相をしてはと必死に我慢していると、起きろと命じられた。

震える身体を叱咤して、腹筋で起き上がる。

締め付けてしまい明確に感じる質量。

だが何かがおかしい。

身を起こしたイワンは擦れた悲鳴を上げて身を強張らせた。

余りの恐怖と事の異常性に怯え、必死に目を逸らす。

中をゆるりと撫でられた。

孔から突き出た男の手首。

そこから先は中に入っていた。

皺を伸ばし切って咥え込んだ孔。

境目のきわを光らせる珈琲を含み黒ずんだ粘液。

異様な光景。

変わってしまった身体。


「あぁあ・・・・・・」


出入りする拳にまた涎が垂れた。

蹂躙される孔はいつも以上に柔らかく。

アルベルトは体液に濡れた掌を引き抜いて、男根を取り出した。

押しつけただけで先が呑み込まれる。


「んっ、んっく」


苦しげな従者だが、孔は解れて甘くひくついている。

膣の如き柔らかさのそこをじっくりと犯した。

大きくゆっくり抜き差しし、突然細かく早い注挿に変える。

角度を強さをリズムを変え、苛むように。

限界に小さく息を詰め、激しく突き込み始める。

骨を軋ませて耐える従者の口からは絶えず悲鳴が上がっていた。

ぐりっと抉り、中に流し込む。

悲鳴が耳に心地よい。

白い腹の上の白い水溜まりに浮かぶ白い粒。

少し溶けたそれを口に含む。

従者の味がした。

もう一粒取り、今度は従者の口に押し込む。

あたたかな管に入れたまま、アルベルトは少し力を抜いた。

イワンの目が驚愕に彩られる。


「ぅあ、あ、あ」


腹の中に注ぎ込まれる、熱くて粘度の無い大量の液体。

中で排尿されている。

現実離れした状況に歯の根が合わない。

主が怖いと思った。

排尿を終えて引き抜かれる。

緩んだ孔から零しそうになって、身体が勝手にそこを締めた。

怯えた瞳の中に映る男は、低く笑っていた。

愉快そうに、笑っていた。





「普通のセックス出来ないの?」

つい口走った情事の断片に激しく攻撃され、アルベルトは気不味そうに葉巻をふかした。


「大体中で用足しちゃうとか有り得ないよ。しかも手は突っ込むし清涼菓子詰め込むし」


イワン君が可哀想だ。


「ちょっと女の子と遊ぶくらい・・・・」

「・・・・・・・・・・・違った」

「はぁ?」


製図用の赤インクだった。

盟友の言葉に、セルバンテスは思い切り眉をひそめた。


「最っ低だよ、君」





***後書***

今日はよく喋りますね、アル様。

普段黙ってやるのに。