【御主人様のお気に召すまま-046】
ちゅぱ、ちゅ、ちゅぅ。
「・・・・・わざとだと思うか?」
「いや・・・・・・無意識、じゃないか?」
「アレを無意識でやるのか・・・・」
十傑の視線を一身に受けるイワンは、気まずい思いをしながらアイスキャンディを舐めていた。
空調が壊れたBF団本部は異様に暑い。
動かなくなったのではなく、止まらない暖房の「限界+3度」は猛暑と変わり無かった。
しかし外は真冬日。
極寒。
人により選択は変わろうが、取り敢えず十傑は全員サロンにいる。
暑さを選んだ者と、呼び出し待ちの待機で動けずに不本意ながらいる者、割と平気な者。
冷凍庫から氷その他を持ち寄り皆でがりごりやっていたのだが、レッドがアイスキャンディをイワンの口に突っ込んだ。
同じ味を連続で開封してしまい、一口齧って押しつけたのだ。
動き回ると熱気が増す、と、じっとするよう言われていたイワン。
困っていたがおとなしくそれを食べ始めた。
が、はっきり言って目の毒だ。
葡萄のキャンディは使い込まれたモノを彷彿とさせる。
ピンクの舌を這わせ、柔らかそうな唇で吸い付く様は余りにも。
「「卑猥」」
ヒィッツとレッドが頷き合う。
イワンはきょとんとして口を離した。
だがとろりと雫か垂れ、慌てて舐める。
「ん・・・・・」
鼻に掛かった甘ったるい声に、何歳になっても色んな意味で元気過ぎる男共の喉が鳴る。
「誘っているよな?」
「誘っているな」
「・・・・・・・・・・」
ちゅっちゅっと紫の雫を舐め取る姿にぐっときながら眺める。
セルバンテスが場をまぜっ返した。
「イワン君フェラチオ上手なんだよ」
げほっとむせたイワンに能天気に手を振る。
「舌使いもさることながら、吸いの強さとかが良いらしいんだけれど。あぁあと表情もね」
ねえ、と聞かれ、アルベルトは暑さに辟易しつつ頷いた。
「飲み込む時の苦しげな表情がなんとも・・・・・・」
「ああああアルベルト様っ!」
真っ赤になり涙目で止めるが脳の煮えかけた主には届かない。
主は暑さに弱いのだ。
「まあしかし下から流し込んだ時に痙攣しながら恍惚と笑む淫猥な顔の方が・・・・・」
「・・・・!・・・・・・!」
わなわな震えるイワンはそれはそれは可愛い。
能力も駄目加減も超一流な男達は、泣きそうになっているイワンをさらにつつく事で、クソ暑い中更に熱を上げるのだった。
「ぅ・・・・・・」
夜、自室に帰ったイワンは、寝苦しさに寝返りを打った。
汗ばむ暑さではなく、乾燥するエアコン独特の暖まり方。
起き上がって溜息を吐く。
今夜は眠るのを諦める他はなさそうだ。
水を飲もうとベッドから下りかける。
苛立たしげなノックがあった。
「はい」
ドアを開くと、物凄く不機嫌そうな主。
「お加減が悪いのですか・・・・・?」
うろんな目でイワンを押し退けるアルベルト。
部屋に入り窓際の椅子に腰掛けた。
外気で冷えたガラスに触れ、涼をとる。
何とかつらそうな主を楽に出来ないかと考える。
「あの、よろしければアイスティーをお煎れしますが・・・・・」
「寄越せ」
主の興味を引けた事を嬉しく思いながら、所望の冷たい紅茶を煎れた。
涼をとる唯一の手段である冷蔵庫はフル稼動で氷を作り続けている。
主に茶を渡し、製氷皿から氷を出していると、氷入れの中から箱が出てきた。
「うわ・・・・忘れていた・・・・・」
出てきたのは夏に買った氷菓のファミリーパック。
棒タイプと一口サイズの球タイプの詰め合わせ。
そう甘味を好むわけではない主にこれを勧めるべきか。
アイスティーを飲む主に目をやると、間の悪い事にばっちり合った。
普段は憮然としているだけだが、暑さに辟易している今、目付きまで悪い。
はっきり言うとその筋の方に見えた。
「お食べになりますか?」
尋ねると、頷いた。
何故か笑みを、暑さの中で薄ら寒さを感じる笑みを浮かべながら。
自分で選ぶと言うので、箱ごと持っていく。
アルベルトは箱を受け取ると立ち上がり、従者の腕を掴んだ。
「あの」
ばふ、とベッドに放られる。
主を見上げ、イワンは硬直した。
目が怖い。
暑さで何か大事な線が切れている。
ずり上がって逃げようとすると、ベルトを抜かれた。
「溶ける前に、な」
身を返し這って逃げようとすると、スラックスを奪われた。
腰のすぐ上を押さえ付けられる。
ぱり、と包装を剥ぐ音。
「っあう!」
敏感な後孔に冷たい固まりを押しつけられた。
振り返ろうとすると項を強く噛まれる。
「っあぁ」
入ってくる、球状の氷菓。
冷たさに入り口がきつく締まり蠢く。
「味が分かるか」
震えながら首を振る。
主が笑った。
「当てるまで食わせてやろう」
「!」
趣味の悪い戯れ。
嫌がり逃げようとするが、二個目を入れられる。
「ぁ・・・・・っ」
くぷっと入ったそれを奥まで押し込まれた。
熱い内臓を痛める冷たさ。
「待っ・・・・あぁ・・・・・っ」
再び味を問われる。
途切れ途切れに莓と答えると、違うと言われまた押し込まれた。
「ぅ、う・・・・・・」
何度も繰り返される苦痛。
意識を手放しそうになっていると、身体をひっくり返された。
主の手が棒状のアイスキャンディを取る。
嫌だと訴えるが、聞いてはいない。
「ひっ」
雄の先端に押し当てられる。
甘く立っていたそれは、裏筋を辿られ袋をつつかれて反り返った。
アルベルトは震える従者の顔を覗き込んだ。
にぃ、と口が笑みの形に裂ける。
「っあああ・・・・・・」
ぢゅぢゅ、と入ってくる氷菓。
冷たさに締まる後孔に痛みが走った。
身を捩るが放してもらえない。
焦らすように抜き差しされて喉が震えた。
ピンク色の粘膜を引き伸ばし出入りする、バニラのアイスキャンディ。
溶けるにつれ、孔は甘い白蜜にまみれていく。
細くなったそれを引き出し、スラックスを緩める。
押し当てると、大袈裟な程に身体が跳ねた。
ゆっくりと差し込むと、従者がとうとう泣いた。
すっかり怯え切って、逃げを打つ。
「熱、ぃ、灼け、る、こゎいっ」
泣きながら身を捩るイワンは本気で怖がっている。
パニックを起こしている。
だが、先の言葉に興奮してしまった男は舌なめずりして腰を使うのだ。
冷たく絡み付く肉に酔うために。
「いやぁ・・・・っ」
泣き叫ぶ従者を犯すアルベルトが正気に戻ったのは、二時間後だった。
怯え泣く従者はまるで子供の仕草で、とんでもない罪悪感を覚えた。
宥め透かして寝かせたが、流石にアルベルトも反省のはの字くらいは考えた。
その程度しか進歩のない主に比べ機敏な従者は、後日本部の空調設備から自室のエアコンを独立させたそうな。
***後書***
意外と難しくてやっつけ仕事に。
氷菓挿入ってそう異常性のあるセックスでもない(異常性?)
アブノマエロじゃなくって異常変質行為担当を自負。