【 御主人様のお気に召すまま-055 】



「あの、セルバンテス様に呼ばれておりますので・・・・・」

今週に入って五回目の言葉。

任務でない。

雑用でない。

甘えられているのに気付いていない。

序でに言うと自分はそう気が長くない。

我慢強くない。

盟友に寛容でもない。

見上げる目に映る自分。

従者が頬を染めるように格好をつけ、笑む。

染まった頬を、ぎゅむとつねる。


「躾けてやる」





「はぁっ、あ、は」

「どうした。もう限界か」

這わせ、貫いて、揺さ振る。

抑えつけ、突き上げ、犯す。


「っあぁあっ」


びくびくと締まる肉孔。

感じやすいのはいいが、感じすぎだ。

自分は楽しいが、従者自身は半ば地獄を見ているだろう。


「あっ、ぅあ、は」


尻を掴んで開き、孔を晒す。

男根を突き込まれた小さな孔は、皺を伸ばし切り貪欲に銜え込んでいた。

味わうようにひくひく収縮し、蠢く。

白い尻を、叩いてやった。


「ひっ」

「尻を振れ」

「ぁ、あ、は・・・・・」


泣きながら、目では分からぬ程度に揺れる腰。

肉管の細動だけがそれを伝えてくる。


「改善が見られんようなら乗せて腰を振らせるぞ」

「ひぅ・・・・っ、ぁ、おゆ、る、し」

「ならん」


肌がぶつかる乾いた音を立てて突き入れ続ける。

身体の下に小さな白泉を作った従者は息も絶え絶えに許しを請うてくる。

それを鼻で笑い、脇下から肩に手を掛けて激しく注挿した。


「あぁあ、あ、ぅあ、あ」


悲鳴に交じって僅かな振動音が聞こえた。

枕元にわだかまるスラックスから従者の携帯を取り、開く。


「・・・・・何用だ」

『やっぱりねぇ。イワン君来ないと思ったら君が捕まえてたのかい?』


盟友の声に、口元が笑む。


「話すか?」

『あれ?真っ最中かと思ったんだけど』

「イワン。セルバンテスだ」


崩れた四つん這いの口元に、スピーカーホンで置いてやる。


「詫びておけ」


呼吸を整え、唾を飲む従者。


「セルバンテス様・・・・申し訳っあぅ!」


突然いいところを突かれて嬌声が上がる。


『あれ?やっぱり最中?』

「ああ。真っ最中だ」


代わりに答えた盟友に、電話越しに笑う気配がする。


「イワン、謝っておけ。はしたない喘ぎを聞かせたことをな」

「は、ぅ、う・・・・っ申し訳、あり、あぁあっ!」


意地悪く突き上げる男。

電話を切ってくれない男。

二人の悪魔になぶられて、首を打ち振る。


「セル、バン、テス、様、申し、訳」

『・・・・ねぇイワン君』


今どんな格好してるの?

とても言えなくて息を詰まらせると、主の手が携帯を摘み上げた。

解放される、と息を吐く。

抜け出ていく張り詰めた男根。

酷過ぎる、水音。


『随分といやらしい音だよねえ』


息が出来ない。

軋む身体で振り返る。

結合部に近付けられた、携帯。


「アルベ・・・・・」


ぐちゅぽ・・・・。


『ふふ、興奮するなあ』


アルベルト、どうなってる?

欲望を滲ませながら軽い口調で尋ねる男。


「ああ・・・・粘膜がめくれ上がってさながら花のようだな」


身体が熱くなるのを感じる。

尋常でない羞恥。


『どれだけしたんだい?中ぬるぬるじゃないの?』

「数えておらん。中は元々良く濡れている」

『うわ、気持ち良さそう。ねえ、イワン君』


君は、どう?

見えないのに首を振ってしまう。

言えない。

そんな事。


『言ってごらん・・・・・?』


身体が震えた。

色気のたっぷり含まれた声音。

シーツを握り締める。

濡れた後孔にまた硬く熱いものが刺される。


「あ、ぅう、く」


半端に飲み込まされ、動きは止まった。

見えていない、筈なのに。


『イワン君、ちゃんと素直に言わなくてはいけないよ?』


ほら、気持ちが良い事してほしいでしょ?

握り締めたシーツがきりっと鳴った。


「言え、な・・・・許、し」

『イワン君感じすぎだよ。乳首こりこりしてる』


熱い息が漏れる。

触られている錯覚を起こす。


『こっちも』


硬くなってびちょびちょじゃないか。

なぞられているような感覚を覚えてしまう。

蜜がぽたぽた落ちた。


『どうして欲しいの・・・・?』


飲めなくなった涎がシーツに落ちた。


「ぁあ、あ、奥、に、っひぁぁ」


ごりごりと腸壁を開いて入ってくる剛直に声を抑える事が出来ない。


「あ、ぁあ、セルバンテス様っ、申し訳、ありま、せ」

『駄目。許してあげない。許して欲しいならちゃんとどうして欲しいか言えるいい子でいないと』


意地の悪い言葉、甘くセクシーな声。

必死で、言い募る。


「中、を、突いて、欲し」

『どんな風に?優しく?ゆっくり?』

「っ、激しく、乱暴にっあぅあ!」


大きな水音を立てながら、求めたように犯される。

恍惚感、背徳感、羞恥、快楽。

混ざり合って酷く気持ちが良い。


「ぁあああ、はぁ、っは!」

『大好きだよ・・・・イワン君・・・・』


指か、手の甲か。

吸い付く小さな音。

絶対に有り得ないのに、唇を柔く吸われる幻覚。


「セルバ、ン、テス、様ぁっ・・・・・」


泣きながら名を呼び、イワンの意識は闇に落ちた。





「いやあ、中々良いプレイだったね!」

翌日とてもいい顔で言われ、イワンは涙ぐんで俯いた。

アルベルトは新聞を読んでいる。

助ける気はないらしい。


「御免なさい、イケナイ私を許してあなたぁっ!みたいでね。こう、人妻が快楽に溺れていく的な」

「セルバンテス様・・・・・」


お、神速平手炸裂かな?と構える。

ソファから立たないのはどちらにせよあの速さの平手打ちからは逃げられないと諦めているからだ。

イワンが濡れた瞳でセルバンテスを見る。

擦れた甘い声で、心底申し訳なさそうに。


「お耳汚しを・・・・・」

「イワン君・・・・!」


じゃあお詫びに私の為に歌ってくれないかなっ!

何をと言わず快楽に囀るのを聞きたいのが丸分かりな盟友の頭の上からたっぷり熱い紅茶をブッ掛けてやったアルベルト。

だがどう考えてもこの男が諸悪の根源だと思う。

気付かないのは盟友二人。

薄々気付きながら黙する賢く健気な従者は、紅茶に濡れそぼりながら手を握るセルバンテスに曖昧に微笑むしかなかった。




***後書***

未亡人、って素敵な響きだと思ってね。あと、テレフォンにゃむにゃむ。

ここで二つを一つに足してしまう残念クオリティ。