【 御主人様のお気に召すまま-056】
「アルベルト様」
照れたような奥床しい笑み。
抱き寄せてみた。
抵抗するように身を捩るのは反射と知っている。
目が合うと、怖ず怖ず力を抜いておとなしく胸に納まる。
背を撫で、暖かさを感じながら前を見る。
いつも通り、手入れの行き届いた庭。
冬は花が少ないが、それでも構わないと思っている。
そう花に興味はないのだ。
一輪でいい。
腕の中の白百合が、一輪あれば。
それで。
宵の内に部屋に戻ると、机の上に花がいけてあった。
指先で撫でる。
雄蕊も雌蕋も綺麗に取られていた。
机に花があろうがなかろうが構わないと思っている。
そう花に興味はないのだ。
一輪でいい。
自分の下で悶える艶めかな紅百合が、一輪あれば。
それで。
ノックの音。
入室の許可を出すと、そっとドアを押し開けて。
白と紅の狭間の、薄桃の肌。
何をされるか知っていて。
今宵も蜜を奪われ散らされると知りながら。
自分だけの為に咲き誇りにくる、恋人。
心許なさげな恥じらいの足取りは重く。
少し離れた場所で立ち止まり。
小さく震えていた。
「来い」
命じると、僅かな足音を立てて傍に寄る。
顔を見て、目が合うと慌てて俯き、また顔を。
ソファを立ち、ベッドに向かう。
ちらと見やると、頬を紅潮させて怖ず怖ず追ってきて。
軽く引いてベッドの傍に立たせる。
じっと見つめると、そっとベッドに腰を下ろし。
甘く濡れた瞳で見上げてくる。
「アルベルト様・・・・・」
顎に手を掛け、上向かせ。
浅い口付けを。
角度を変えて徐々に深め、貪っていく。
甘ったるい蜜を啜り、唇を噛む。
「ん、ふ」
苦しげな息をつくその吐息すら奪うように、下唇と上唇を交互に吸う。
背を支えて横たえてやると、小さく喉を鳴らした。
ストイックなくせに、期待を滲ませて恥じらう。
そわそわして益々頬を火照らせていく従者にもう一度口づけ、アルベルトは上着を脱いだ。
身を起こし、脱ぎながら薄く笑う。
「ワシだけ脱がせてどうする」
脱げ。
顎をしゃくると、慌てて上着を脱ぎ始める。
白いワイシャツからあらわになる肌は玉の輝きで誘ってくる。
少し抜けたところのある従者は、全て脱ぎ落としてその衣服をさてどうしたものかという段階になって漸く、主が上だけしか脱いでいない事に気付いた。
ぶわっと音が聞こえそうな勢いで顔を真っ赤にし、口をはくはくさせ。
期待を知らず体現したことを酷く恥じて。
泣きそうな顔をした。
必死に衣服を抱き込んで裸体を隠す。
「どうした?」
「ぁ、あの・・・・・」
「くく・・・・・期待に応えねばなるまいな」
喉奥で笑って、もう一度のしかかる。
首筋を軽く噛むと、喉が震えた。
「は・・・・っ・・・・」
小さく震えながらまなじりを染める従者。
なめらかな腿をなぞると、きくんと引きつる。
間に手を入れ閉じようとする脚から袋をはみ出させる。
ぷるんと出たそれとまだ力ない幹を一緒くたに手のひらで揉みしだくと、腰が震えた。
「ぅ、く・・・・」
先程の先走った脱衣で気が引けているのか、声はかなり控えめだ。
瞼を震わせて我慢している。
「は、ぅ、う」
びくびくと身体を跳ねさせながら堪える姿は酷く禁欲的だ。
淫魔に抵抗を示す聖職者のようで。
「イワン・・・・」
耳を唇で挟んで扱いてやると、堪らず身をくねらせる。
浮いた腰裏に手を入れ、閉じた脚を股越した。
スラックスの硬い生地に覆われた己のものを擦り付ける。
「んんっ」
唇を噛むのは咎めなかった。
互いにまだ柔らかいものを、擦り付け合って刺激を与える。
硬くなり始めると、強めに擦り付けて興奮を煽る。
「は、ぅん、っ」
伸びやかに立ち上がったものに口元を笑みに歪め、スラックスを緩める。
熱くそそり立ったものを直にこすりつけた。
「ぁ、くぅっ」
揺れそうになる腰を歯を食い縛って堪える従者に笑みを禁じえない。
何をそんなに恥じる必要がある。
己とてなりふり構わずに求め貪っているというのに。
「ぅう、く」
がちがちに強ばった脚を上げさせ、先で袋の裏をつついてやる。
鋭く息を呑むのを聞きながら、今度は孔を軽く突いた。
「ひんっ」
ひくんっ、と強く窄まる愛らしい孔。
何度も意地悪くつついてやる。
互いの雄は興奮あらわに蜜を垂らし始めている。
孔を突かれ犯される期待。
孔にねじ込み犯す期待。
それを堪え、身を起こしてイワンを膝に乗せる。
「好きに擦り付けて構わんぞ」
つっと軽く孔をこづくと、びくっと腰を上げた。
目を合わせて細めると、熱い吐息を吐いて俯いた。
「イワン」
「アルベルト様・・・・」
泣きそうな顔で、肩に縋り。
怖ず怖ず腰を下げ、擦り付け始める。
「ぅんっ、は」
蜜でぬめってにちゃにちゃ音がする。
鈴口を刺激する窄まりの襞が心地よい。
「んっんっ・・・・んんっ」
自分がどんな淫らではしたない振る舞いをしているかにも気付かずに、腰を揺らめかせる従者はただ必死で。
なんて、可愛い。
「ぁん、あ、んんっ」
「っ、イワンっ」
我慢できない。
こんなにも切羽詰まっているのに、唇が高揚に薄く笑むのをおさえられない。
一度強く先端を擦りつけ、脚を上げさせる。
引っ繰り返った身体がシーツに沈んだ。
大きく脚を開かせる。
濃い桃色に色付いた、可憐な窄まり。
このまま入れれば相当に傷める事になる。
だが、今直ぐにでも突き込んでしまいたい。
涎を垂らしてぴくぴくしているものを未練たらしく擦り付ける。
「は、ぁあっ・・・・・」
眉根を寄せ、辛そうな従者が手を伸ばした。
首に回し、身を寄せて。
「アルベルト様・・・・・」
どうか。
「我慢など・・・・・」
為さらないでください・・・・・。
甘い声の、甘い誘惑。
甘やかされているのだと知りながら。
我慢など出来ようか。
「・・・・っ!」
「ぁ・・・・っぁうぅっ」
腰を強ばらせながら、必死に脚を開く従者が。
余りに愛しい。
「口を開けろ」
「・・・・・・ん」
口に指を差し入れてやる。
せめて、こちらは傷めぬように。
「思い切り噛んで構わんぞ」
強く腰を入れる。
「んんんっ」
強く閉じた目から流れ落ちる熱い雫を唇で拭い、赤い血を流しながら受け入れる後孔を突き進む。
しっかり収め、指をくわえた口の端に口づけた。
強く締まる後孔に痛みを覚えない訳ではない。
だが、それを遥か上回る快楽につき動かされて腰を使う。
「っんん、んっん・・・・・っ!」
「っふ・・・・・っ」
ぐぽりと引き抜いて、激しくひくついている孔の入り口に白濁を引っ掛けてやる。
熱い雫に驚いて硬く閉じる孔。
イワンの腹の上にぶちまけられた蜜を掬って舐め取り、アルベルトは腕の中で艶めく百合を愛でた。
庭のより、机上のより、ずっとずっと愛らしい。
百合の花。
***後書***
甘々路線を攻めたい最近。