【 御主人様のお気に召すまま-060 】



「んぐ・・・・・むぐっ」

ぐぽっぐぽっと口内を無理に掻き回されているイワンは息苦しさの中で何処か陶然としていた。

従順な彼は被虐嗜好はないが、従わされたりやや無理強いされる事に幸福感を感じてしまう傾向にある。


「けほっ・・・・・」


口から引き出された雄を無意識に目で追い、口内に残る先走りの蜜を味わう。

うっとりとしたその表情までが無意識の産物と言うのだから恐れ入る。


「イワン」

「ん・・・・・・」


名を呼び催促すると、おとなしく従う。

這って大事そうに雄を支えて舐め始めた。

悦に入った愛らしい表情。

淫らな筈なのに不快感はない。

どちらかと言えば興奮や劣情を煽る。


「んん・・・・ふ・・・・」


ちゅぱちゅぱとかりを出し入れされて息が詰まる。

初めの頃はまるで児戯だったが、一度素晴らしきに指導を受けてからはめきめき腕を上げている。

元々物分かり良く器用だとは思っていたが、こんなところまで発揮するとはついぞ思わなかった。


「ん・・・・はぁ・・・・」


袋の一部を口いっぱいに含み、ちゅくちゅくと口内で転がす。

目を閉じて眉を寄せ、幸せそうに。

生臭い男の匂いと味しかしないだろうに、酷く気持ちが良さそうだ。


「んっ、ん」


喉の奥までずっぽり銜え込んで頭を揺らし始める。

仄かな色の唇は今やぽってり赤く色付いて濡れ、使い込んだ色合いの男根を柔らかに締め上げていた。

咽頭で亀頭も軽く締め、きゅっと吸い上げる。

アルベルトが赤らんだ頬から汗が落ちるのを拭ってやると、上目で見てくる。

恋人が自分の男根を口で愛撫しながら見上げてくると言うのはかなりの攻撃力がある。

一度口を離すと、たっぷり絡んだ唾液が糸を引いた。

それを少し苦しげに飲み込み、口元を拭う。

今度は舌を少し出して、舌先での愛撫。

かりの裏を丁寧に舐め、側面に軽く吸い付きながら根元へ。

裏の方の袋との境の窪みに吸い付き、舌で押す。

ほんの少しだけ歯をあて、可愛いリップ音を立てながらキスを繰り返す。


「・・・・・イワン」

「ふは・・・・けほっ・・・・はい」


少し潤んだ目で小首を傾げる動作。

四つん這いの彼を起こして抱き寄せ、膝に乗せる。

頬に口づけると擽ったそうに身を竦めた。

先刻まで行っていた行為でたっぷり濡れている後孔に指を差し入れ、掻き回す。

びくっと震えた身体を抱いて、何度も掻き混ぜた。


「んっ、あ・・・・・っ」


くちゅくちゅ掻き回しながら、時折いいところをつついてやる。

こうして意地悪をしてやると、無意識に抱きついて縋るのだ。

これに気付いたのは最近だが、かなりの頻度で使っている。

こうでもしないと甘えないのは癪だが、自分とてそう誉められた恋愛姿勢でないのだからお互い様だ。


「は、はっ、ぁっ・・・・・」


膝辺りに触れる内腿が痙攣しているのを感じ、ゆっくり指を引き抜く。

荒い息をつきながら肩に縋って腰を上げた従者を呼ぶ。

首を傾げる前に顎を掴み、深い口づけ。

感じる苦みは自分の先走りだろうが、この男の唇を介してならまあ悪くはない。

ゆっくり口内を探り合い、舌を絡めてなぞり、唾液を飲み込ませる。

こくっと小さく喉が鳴るのを二回聞いてから、唇を離した。


「力を抜け。縋って構わん」

「しかし・・・・」

「イワン」


矢張り命令と言わなければ聞かないのか。

内心溜息をついて命じようとすると、首に怖ず怖ず手が回った。

襲ってくる、息が止まりそうな充足感。

たったこれだけの他愛無い事だが、自分達にしてみれば大した進歩だ。

誉めるように軽く腰を撫でてやり、腿の付け根を支えて下ろさせた。

強張る腕を感じ、動きを止める。

物分かりの良い従者は腕の力を抜いて強張りを緩め、甘く絡めた。

耐えるのでなく、縋って甘えて。


「やれば出来るのだな」

「アルベルト様・・・・・」


甘い声で困ったように名を呼ばれ、アルベルトはゆるりと繋がりを深めた。


「んっ、く、はぁっ」


いっぱいに飲み込まされて喘ぐ従者の首を柔く噛む。

背を支えたまま押し倒して、腰を上げさせ突き始める。


「あっあっ」


耳を擽るアルト。

甘く可愛い声は自分だけの特権だ。

主でなく、恋人としての。

境界が今一曖昧な従者兼恋人にどうやって線引きを教えようか。

煩わしくも楽しい作業に苦笑しながら、アルベルトはイワンの身体を掻き抱いた。





***後書***

口とか舌の描写を修業したかった。でもどう転んでもエロなんだよね。