【 御主人様のお気に召すまま-065 】
「・・・・・どうしよう」
イワンは実験温室の中で宙ぶらりんにされて途方に暮れていた。
第二科学班の職員から「実験温室の葛の葉を取ってきてくれまいか」と頼まれて来たら、温室はどう控えめに考えても植物室で無く。
動物の檻と言っていいくらいに動きがあり、時折奇声。
何でこれが植物に分類されるか分からないほど活動的な彼らに怯えつつ中に入り、こそっと葉を採取。
とっとと逃げ出そうとしたら、足首を捕まえられて転倒・・・する前に勢いよく宙ぶらりんというわけである。
しかも地面にはなにやらどろどろしたものが集まりつつある。
言うなればそう「スライム」のような。
もし本当にそうだったら非常にヤバい。
スライムと言うものは元々身体が皮膚であり肉であり内臓であり体液でありと言う分別の無い曖昧な生き物。
体表に触れた物を包み込んで溶かして食べる攻撃的な生き物だ。
食性により消化酵素が効く物が異なると聞く。
宙ぶらりんでいるのが良い事か悪い事かはよく分からないが、落とされてスライムプールにドボンしたら運が無ければ全身火傷と同じだ。
彼らも植物扱いなのだろうか、いや自然発生?それとも・・・・考えても栓は無い。
イワンはおとなしく救出を待つことにした。
幾らなんでも一時間戻らなければ気づく筈。
実験が進まないのだから。
BF団エージェント、しかも衝撃のアルベルトの傍仕えのイワンは実は相当に肝が座っている。
彼は休息も兼ねて、逆さづりのまま眠る事にした。
どうしようもないのなら休んだ方が良い。
喚いてどうなるのならやるが、ならないのだから。
「ん・・・・っ」
「・・・・・・・・・」
スライムの思考は単純だ。
小さく呻いて動きを鈍らせた生き物はどうやら寝ているらしいとか。
包み込んでとろかし食べてしまおうとか。
全く考えていない!
スライムの集合体・・・以下スライムで統一する、はぽやんとしたまま身体を積み始めた。
そしてイワンの頭に身体の一部を伸ばし・・・・
ぺちぺちぺちぺちっ
「?!」
ぶるるんとしたものに叩かれて、イワンは飛び起きた。
目の前にはスライムがいて、目が(?)あう。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
ぺちぺちぺちぺちっ
「いや、ちょっ」
ぺちぺちぺちぺちっ
「ちょ、待っ」
ぺちぺちぺちぺちっ
「やめなさいっ!」
ついついおかあさん口調で叱ると、スライムはぶーたれてしまった。
不服そうにぐにぐにし、にょりんと服の中に入り込む。
どうやらこのスライムは消化酵素が動物に効かないタイプらしい。
「えっ、な、何す・・・・」
慌てて服から追い出そうとするが、次々入ってくるスライムで服の中は満員。
好き勝手にまさぐられてくすぐったかったのは最初だけ。
原始的な生物の行動は2つしかないのを忘れていた。
食事と、生殖。
イワンはさぁっと血の気を引かせたが、もう遅い。
「ぁっ、だ、駄目だって・・・・」
にゅりにゅりと乳首を刺激されて吐息が震える。
スライムは乳が出ない事を確認し、先をつづけた。
乳が出ないと言う事は今は孕める筈だ。
「っや、あ・・・!」
次にスラックスの中で動いていたのが、生殖機能を確かめる。
雄を揉み込んで、機能が正常であることを確認。
「や・・・め・・・・」
蒼白な顔色で呟いたイワンは、次の瞬間身体を痙攣させて悲鳴を上げた。
後孔から入ってくる、どろどろしたもの。
「うぁ、あ、あ・・・・!」
違うと分かっていても、種付けされるのに酷似した感覚。
それが大好きになってしまっている身体は、堪えられない射精感を感じていた。
我慢して我慢して、冷や汗が伝ってくる。
おかしくなりそうな、延々続く体内に流れ込む奔流。
奥の奥まで流れ込んでくるものに激しい悦楽を感じ、イワンはとうとう陥落した。
「あぁ、あぁ、あ・・・・」
スラックスの中で射精してしまった不快感を感じる事も出来ない。
身体の中を犯されて気持ちが良い、それしか分からない。
少し膨らんだ腹を呆然と見つめ、イワンは意識を失った。
幽鬼がイワンを助けたのはそれから30分後。
その時点で既にたっぷりとスライムを腹に飲まされていたイワンは目を覚ましても呆然として震えているだけだった。
「・・・・どうしたものか」
どうしたものかと言いながら、不健康に骨張った手はイワンの身体を這っている。
「少し我慢しろ・・・・」
耳元で囁き、幽鬼は寝台に寝かせたイワンの身体を撫でた。
宥める様に、だが酷く淫らがましく。
その手が、脚の間に入る。
イワンの口から小さく呻き声が上がる。
思考を閉ざしたままの人形の様な身体はそれでも温かく、甘い香り漂う魅惑の花。
自分の温室のどれより愛らしく、香りよく。
けして手に入らぬ、高嶺の花。
わななく唇をぺろりと舐めて、指を沈めていく。
どろりとした不定形生物のたっぷり入ったそこに喉を鳴らし、ゆっくりと掻き混ぜる。
思考を閉ざしていても反射の声は小さく上げる。
それで十分にイイ。
ぐり、と掻き混ぜて指を曲げ、引きだす。
ぐぶり、と音を立てて掻き出されるスライムは、既に幽鬼の精神系攻撃によって死滅していた。
単純な生物だけに、効きやすい。
鈍い反応で小さく舌を出し喘ぐイワンを目を細めて眺め、幽鬼はたっぷりと時間をかけてイワンの中の感触を楽しんだ。
目には可愛い姿を焼きつけ、何も出て来なくなってしまったそこから名残惜しい指を抜き、ひと舐め。
無定形生物は味がしてもせいぜいナトリウム系の塩味だ。
だがこんなにも甘い。
このひとの蜜の味に唇を笑みに歪め、幽鬼はそっと口づけた。
「今日はこのくらいにしておこうか・・・・」
幽鬼がたっぷり楽しんだ後にアルベルトに届けられたイワン。
しかし、諸事情聞いた主が名を呼んでも反応しない。
怯えきって思考を閉ざしている、と幽鬼は言っていた。
溜息をついて抱きあげ、シーツに寝かせる。
スライムは幽鬼が「丁寧に」「隅々まで」「掻きだして」くれたらしい。
含み笑いに腹が立ったが、自分がやろうものなら従者は半狂乱になって抵抗するだろう。
「イワン」
そっと腹に手を這わせて、宥めるように呼んでみる。
数回繰り返すと、やっと緩慢に此方を見た。
「ワシが分かるか」
「あるべるとさま・・・・」
頬を撫でてやると、悲しげに涙を流した。
「高々無定形生物ぐらいで泣くな」
「・・・・・私は」
何でもいいのかも、しれません。
耳を疑う言葉に手を止める。
イワンは自嘲するように笑った。
「中を這われて心地よかったのです。快楽を感じたのです。・・・・達したのです」
「・・・・・・・」
「中に、あのどろっとしたものが流れ込んで、私は」
「・・・・・?」
流れ込んで?
弾力ある軟体に感じたのではないのか。
と言うかそれではまるで、その。
「・・・・種付けされるようだったと言いたいのか?」
どう自虐的になってもさすがにそこまで直接的にあけすけな言葉で言えないイワンは、不思議そうに問う主にぎょっとした。
が、イワンのその反応を見れば当たっているのは明白。
アルベルトの機嫌は一気に上昇した。
イワンの身体に入った事があるのは自分だけだ。
つまり中出しも自分だけ。
それが癖になってしまった可愛い恋人。
無定形生物などノーカンだ。
今直ぐその大好きな感覚を味あわせてやろうではないか。
「・・・・あ・・・・」
太腿を撫でられ、イワンは無意識に身を引いた。
が、強く掴まれて硬直する。
男臭い笑みを浮かべる主に、思わず頬が染まった。
「あの・・・・」
「四つに這え」
後ろからたっぷり流し入れてやろう。
その言葉だけで、ぞくんと身体が震える。
期待自体に、感じてしまう。
戸惑ったが命令には逆らえず、もぞもぞとスラックスと下着を下ろして、ワイシャツがずり上がらないようにしながら這いつくばる。
しかしそんな努力空しくぺろりと白い布がめくられて、臀部を噛まれた。
「ぃっ・・・・・」
「あんなものでは足りんかったか?」
尻たぶをこれでもかと押し広げられ、くにゅくにゅとひくついている孔を視線で犯される。
「っ、み、見ないでくださ・・・・」
「普通はくすんだ肉の色だが、貴様はまるで子供の唇の様な色だな」
「・・・・!」
鮮やかなピンクで、慎ましいふりをして。
いざ突き入れられたら、むしゃぶりついて飲み込み、男を籠絡する。
「ワシも絡めとられているのだから何とも言えんが」
「アルベルト様・・・・そのような・・・・・」
下衆な戯れを口にする男は、それでも雰囲気が気高くて妙に色気が出るだけで。
恥ずかしさに白い尻まで薄く桜色に染めた従者は色気と言う言葉では足りない、貪りたくなる色香を纏い。
ゆっくりと舌が押し当てられる。
「ぃや、あ・・・・!」
ぢゅるっと襞を舌で擦られて、悶える身体。
尻を抱え込んで舌をねじ込んで濡らす間も、舌先に感じる肉の熱さや締まり、生々しい体液の匂いで勃起してしまう。
全身が、男を誘ってくる。
唾液でたっぷり濡らし、アルベルトはいきり立った男根を取りだした。
数回扱いて、押し当てる。
ゆっくりと挿入していくと、イワンが肩を震わせながら深い息を吐く。
絡みついてくる肉の熱さと淫らさに舌なめずりし、腰骨を掴んで一気に突き込んだ。
「ひあぁっ!」
「っは・・・・っ」
「あっ、あ、待っ・・・あぅうっ!」
ズチュズチュと抜き差しに転じてやると、イワンが激しく喘いだ。
甘ったるい息を吐き出しながら、過ぎた快感に腰を振る事も出来ずに強張らせている。
奥の奥まで斬り込んで、止める。
「あ・・・・は・・・・」
「請うがいい」
「そん、な・・・・ぁんっ」
言えないと涙ぐむのをせっつくように腰を揺らしてやる。
イワンが切羽詰まっている分、欲しがって絡んでくる肉による快感は相当なものだ。
自分だって額辺りから出血しておかしくない状態。
「イワン」
「あぁ、あ・・・・」
なかに、だしてください・・・・。
必死に絞り出して、羞恥に身を焼き震える男の耳を噛み、なおも言わせる。
「どんな、何を、どれだけ、欲しいのだ」
「ぃや・・・・言えな・・・・」
「言えんのか?」
腰を掴んでいた両手をまわして雄を掴み、根元を締めながらいじくりまわす。
中が複雑に絡んできたが、息を詰めて耐えた。
「あ、あ、あ・・・・」
「言え」
「あぁ、中、に、アルベルト様の、精液、を、熱いのを、いっぱい、欲し・・・・っああああ!」
言い終わらぬうちに注がれる熱く粘っこい精液に、イワンの口端から涎が伝い落ちた。
気持ちいい、ぞくぞくする、おかしくなる。
ビクンビクンと身体を跳ねさせ、恍惚としながら射精するイワンの背に、アルベルトは柔く口づけを落とした。
可愛くて可愛くて仕方ない、いやらしい恋人。
もっともっと、淫らに堕として。
自分なしでは一日も過ごせぬようにしてやろう・・・・。
「第二班の温室ですか?三錬の八階ですよ?」
「・・・・・四錬の屋上は」
「四錬・・・・幽鬼様の第八温室です」
第二化学班の主任から聞く話の食い違い。
アルベルトは葉巻を握りつぶした。
根暗で純情な引っ込み思案のふりをして、イワンにちょっかいかけるとはいい度胸だ。
「あんのクソ餓鬼!!!」
・・・・しかし要領の良い幽鬼は、三週間の長期任務に旅立った後でした。
***後書***
ゆーきちゃんが段々ホラー系の愛情になってきたよ!怖い怖い。