【 御主人様のお気に召すまま-066 】
「あ・・・・・」
押し倒して目が合うと、小さく声を上げて眦を染め、俯いた。
元々相当な恥ずかしがりだが、こうも行為を繰り返せば慣れると思うのだが。
全く慣れる様子も無く、いつまでたってもおろおろと初心い様子を示す。
今迄抱いた女は多種多様で、きつい色香の豊満な身体、深窓の白百合、まぁ色々楽しんだ。
しかし男を抱いたのはこれが初めてだし、こんないやらしい魅惑の身体、愛らしい仕草と清純な瞳も初めてだ。
と言うかこの相容れぬ要素を併せ持つ事自体が不思議でならない。
アルベルトはスラックスを緩めて男根を取りだした。
いい加減窮屈で痛い。
イワンのスラックスも下げ、今日はどう攻めようかと考える。
何となく頭を股越し、69の様な体勢にした。
だが咥えるようには言わず、足を上げさせて自分の脇の下を通してしまう。
無防備にさらけ出されたのは、可憐な窄まり。
「あ、アルベルト様っ」
焦ったように脚を掴んでくるイワンを放置して、アルベルトはイワンの腿に鼻先を擦りつけた。
滑らかな白い肌は心地がいいが、匂いは清純な石鹸の香り。
もっといやらしい体臭が良いのに、恥ずかしがりのこの男は頭の上から爪の先まできれいに磨き上げないと身を差し出さない。
アルベルトはひくひくしている窄まりに鼻先を近づけ、匂いを嗅いだ。
やはり石鹸の香りしかしない。
まあ、人間の身体はその時まで排泄物を腸の奥から出さないから、直腸内など常に空に等しいのだが。
鼻先を擦りつけてやると、イワンがつぶれた悲鳴を上げた。
色気の無い、と呆れて見やると、驚愕羞恥愕然その他がない交ぜになった目で、怯えたように見つめてくる。
「なんだ」
「な、なに、を」
「匂いを嗅いでいる」
「っ・・・・!!!」
イワンが口をはくはくさせて血の気を引かせていく。
頬でも染めんか、色気の無い、と思うが、忘れてはいけない。
一般常識から逸脱した変態行為に耽っているのはアルベルトの方だ。
イワンの反応はそうおかしくは無い。
「やっ・・・・嫌っ・・・!」
「暴れるな」
「いやあ!」
泣きながら身を捩られ、アルベルトは背筋をゾクリとさせる何かを感じた。
もっと泣け、泣き叫んで許しを請え。
尻をがっちり固定して、べろりと舌を出して上下に舐め上げる。
白い尻がビクビクと痙攣し、孔がヒクッヒクッと蠢いた。
身体はくねって暴れ、口からは引き攣った悲鳴が上がっている。
堪らなく、イイ。
イワンの顔の上にきている男根は先走りを垂らしてそそり立ち、脈打っている。
窄まりに舌をねじ込んで抜き差ししてやると、イワンが悲痛な悲鳴を上げた。
「ゆ、許し、お許し、くだ、さ」
「・・・・・・・」
「ひぃっ」
指を引っ掛けて広げ、だらぁっと唾液を垂らす。
中に滴り落ちるヌルい唾液に腰を捩るが、許してはもらえないのだ。
「ぅあ、ああ・・・・」
指をかけられて広がったままにひくひくして内肉壁を晒す孔に鼻先を突っ込んでやると、泣きだしてしまった。
いやらしい肉と体液の匂いに興奮してしまう。
くん、と鼻を鳴らすと、イワンが懇願した。
「何でもします、何でもしますから、どうか・・・・」
薄い縁を舌先で辿り、男根を涙の伝う顔に擦り付ける。
「貴様が好きなこれは」
その鼻に何を感じさせる。
暗に蜜を滲ませた男根の匂いの感想を聞かれ、イワンは身を震わせた。
ああ、でも、でも。
匂いを嗅がれるくらいなら、言ってしまった方がずっと。
楽になれる。
イワンは熱いそれに鼻先を近づけて小さく鼻を鳴らした。
身体が熱くなる、男の匂い。
主の濃い体臭。
生臭い汁の匂い。
口の中に唾液が溢れて上手く言えない。
呼吸を整えているのは口なのに、僅かに鼻孔を擽る男の精の匂い。
喉が鳴り、胸の尖りがツンと立つ。
恥ずかしさにとうとう本気で泣きだしてしまったイワンに、アルべルトは口端を歪めて笑んだ。
胸の下を見れば、そそり立って涎を垂らす色の薄い雄が見える。
恥ずかしがりな口よりよっぽど素直な身体。
身体を反転させ、赤らんだ泣き顔を眺める。
「ふん・・・・今日は容赦してやる」
その代り、明日はシャワーを浴びずに来い。
イワンが縦に首を振るまで、しつこく後孔を指で掻きまわす。
生殺しに耐えきれずに首を振る従者に、アルベルトは深く口づけながら挿入した。
舌を噛まれたが、気にならない。
僅かな血の味を楽しみながら、たっぷりと先走りを中にこすりつける。
混じり合う体液と、匂い。
吐息と恋慕を交換して、肉を突き入れ受け入れさせる。
臭気とは違う、匂い立つ色気に堪らなく興奮する。
脅すように舌に噛みつき歯を食い込ませて、奥に。
「!!!」
「・・・・・っ」
舌を拘束されて声の出ない従者が、背中に爪を食い込ませるのを感じた。
ああ、こうすればいいのか。
背に引かれる線の痛みが甘美で愛おしく、挟んでいた舌を軽く傷つけて血を味わう。
味わう血の甘美さと、自身の血の匂いに包まれたままに、愛する従者を掻き抱いて。
一晩中、夜が明けるまで。
貪った。
「なんていうかさぁ、君最近」
変な方向に開眼してきてない?
冷たいレモンティを飲みながらドン引きの目を向けてくるセルバンテスを歯牙にもかけず、アルベルトは紅茶を飲んだ。
「何がだ」
「いや、女の子は良い匂いするけど、中まで臭い嗅ごうと思った事は」
「いつ女の話になった。イワンだ」
「すっごくいい匂いだと思うね!興奮する!」
即180度の方向転換を図って「私も匂い確かめたい!」と言いだしたセルバンテス。
彼にお代わりのレモンティを用意しながら、イワンは意外と普通に振舞っていた。
というのも、頭の中はどうやって主にばれないように身を清めておくかと言う今夜の事を考えているからで。
そう言う色っぽい方向に思考が傾いているから。
「い、イワン君なんかいやらしい匂いする・・・・」
「気のせいだろうが、分からんでもない」
「えっ?あ、おかわりですか?」
「え、あぁ、うん」
言葉とともに無意識にセクハラの手が出たセルバンテスは、素敵な威力の鉄拳を後頭部に貰って、涙目でアルベルトを睨んだ。
イワンに大事ないかと心配され、しかし痛みに気を取られてポロっと本音が出る。
「痛った・・・!何するの!ああイワン君心配無いよ!それと次はミルクティでイワン君のミルクをたっぷり入れて欲しいんだけれど」
「本音が出おったな、変態」
「・・・・セルバンテス様・・・・」
「え、何か変な事言った?」
そう大差無い二人は盟友。
***後書***
匂いフェチが悪い方向に悪化した場合こうなるらしい。