【 御主人様のお気に召すまま-067 】
「ふむ、それでその薬かね」
「ええ・・・・」
熱が出てベッドに沈んでいるイワンを、残月は指先で擽る様に撫でた。
イワンが寝込んでいると言うのを聞きつけて速攻で部屋に押し入ったのだ。
話のネタは医務室で貰ってきた薬。
抗生物質や頭痛薬などをもらってきたらしい。
「見ても?」
「はい、どうぞ」
袋を開けて一つ一つ出し、最後に出したのは、銀紙で密封された。
「・・・・座薬だな」
「・・・・そうですね」
子供でもないのに、と思っていると、残月が手袋をはずしてそれを摘まみあげた。
「38度を超えているしな」
「え・・・・あの・・・・?」
「どうした?」
鉄の理性と仮面で卑猥さを押し隠した男は、優しそうな顔をして首をかしげて見せた。
それでもやはり流せない部分はあるわけで。
「い、いえ、自分で・・・・」
「まあそう言うな」
パジャマのズボンを引っ張られて、逃げを打ったら白い臀部が出てしまって。
這いまわる視線に頬が熱くなる。
「ざ、残月様」
「力を抜かんと痛むし切れ・・・慣れているからそれは無いか」
「!!!!」
主との身体の関係を暗に示唆され、イワンの身体が羞恥に染まる。
白い尻まで仄かな桜色にして、恥ずかしさに涙ぐむ姿はかなり腰にクる。
柔く張りのある尻たぶを押し広げると、桜色の窄まりがひっそり息づいていた。
色々なものを突っ込んでやりたくなるが、ここは我慢。
イワンの腰をがっちりホールドして、ゆっくりと尻を撫で上げる。
「ひっ」
ぞくぞくぞくっと背筋が震える。
可愛い反応に気を良くし、残月は銀紙を口で破った。
取り出して少し温めてぬめらせ、尖った方を押し当てる。
嫌がるのを押さえつけて半分ほど押し込むと、後は勝手にちゅるんと入り込んでしまった。
入口に留まる座薬で、蕾が開きそうに膨らんでいるのが何ともいやらしい。
「ん・・・・っ」
「暴れてくれるなよ?」
「ひぃ、ん・・・・・」
中指をゆっくり差し込んで押し入れていくと、熱い肉が指に絡みついてくる。
何とも淫らがましい動きで、奥に引き込むように。
ごくりと喉を鳴らして奥を撫でると、入口が強く締まる。
指先に当たる薬を弾いて振動させると、泣き声の様な悲鳴を上げた。
「あっ、あっ・・・・」
「我慢できないならもっと他のものでも構わないが?」
からかうように言っているが、声音は本気が滲んでいる。
その背後に突然風穴があいた。
「おや、バレてしまったようだ」
さっさと退散する残月は去り際にイワンのパジャマのズボンを上げたが、余り意味はなかった。
半壊した窓から入ってきた主が最高に不機嫌な顔で下ろしてしまったからだ。
修羅の形相の主に怯えるイワンを引きずってバスルームへ行く。
無言のままにイワンの後孔に指を突っ込んで掻きまわし、強引に三本咥えられるように広げた。
そこにシャワーヘッドを押し当て、あろうことかゆっくりと沈めていく。
イワンが引き攣った悲鳴を上げた。
「っ、あ、う、く・・・・!」
「指が良いなら加えて突き込んでやる」
恐ろしい提案に悲鳴を殺して首を振り、硬く無機質なシャワーヘッドを受け入れる。
主の手が伸びた先の蛇口を見て、イワンは必至で手を伸ばした。
主の手を引いて必死に首を振るが、振り払われてしまい。
思い切りひねられる蛇口、浴室に木霊す絶叫。
「っあああああああ!」
ごぼごぼごぼっと激しい音を立てて腹を満たす強い水流に、腰が砕けて倒れ込む。
アルベルトが支えてゆっくり下ろしたので打ちつけはしなかったが、いっそその方が良かったかもしれない。
最早声すら出せないイワンは、目からとめどなく涙を、口端から唾液を伝わせて小さく痙攣していた。
膨れ上がった腹に内包しきれない湯が溢れて流れ出し、溶けた薬で白く濁っていた。
腹の中を湯が逆流する異様な音と、内臓が悲鳴を上げて激しく動く音がする。
粗方薬が流れ出すと、アルベルトはシャワーヘッドをゆっくり引き抜いた。
湯の温度と水流で解された後孔を指で広げ、舌先で粘膜との境目をなぞる。
こぽっと湯が噴き出すので尻を叩いて全部出させた。
そしてまた舌を這わせ、収縮して指から外れると、また引っ掛けて何度も舐め上げてやる。
イワンの意識は虚ろから戻ってこない。
もしかしたら現実を受け入れるのを拒んでいるのかもしれないが、それならそれで構わない。
無意識まで、自分を擦りこんでやろう。
たっぷりと唾液をまぶしながら粘膜を辿り、目の前でひくつくピンクの肉を楽しむ。
いやらしい肉をツッとつつくと、ひくひくして悦ぶ。
めくれ上がったそこを大きく舌を出してべろりとやると、激しく収縮してめくれが戻ってしまった。
もう一度指をかけてめくって、柔く噛む。
内臓に受ける危険信号に、白い身体が痙攣した。
それに目を細めて、今度は指を入れた。
浅い所を緩く、しつこくかき混ぜてやり、ヒクヒクし始めた所で奥に入れる。
堪らず絡む媚肉を掻きわけて奥を探り、特に柔らかい所を激しく細かく突いてやった。
「ぅあ、あぁ、あああ」
虚ろな目のまま喘ぐのが哀れで可愛い。
指先だけで翻弄されて悦楽の境地に突き落とされて。
いつも夜中に自分の指先を手で包み込んで大事そうに温める。
その大好きな指を身体の奥まで覚えれば良い。
これでしか、感じられないように。
たっぷりと指で可愛がれたのは、怒りが欲望を上回っていたからだ。
怒りが堪らぬ愛しさに移行するにつれ、スラックスを欲望が押し上げる。
取りだしたものは、既に血管を浮き立たせて蜜を滲ませていた。
湯での酷行、執拗な指や舌での愛撫に緩んだ蕾は、それでもなお締まりがきつい。
いや、きつさはだいぶ抜けているが、圧迫感は変わりない。
差し入れる先からじわじわ包む柔い肉はたっぷりとぬめりながらきゅうきゅう圧迫してきて、堪らず奥歯を噛む。
息を詰め、覚えさせるように時間をかけての挿入。
いやらしいヂュグリと言う音を立てて飲み込みながら、中に精子を蒔いて欲しがっている孔。
奥まで差し込み、奥歯の緊張を解く。
柔い肉に埋まりながら、先がじんと痺れる。
一気に熱が集まり、噴き出す感覚。
「ひぃ・・・・ぅ・・・・」
「っ・・・・・は・・・・・」
中だしされる刺激に絡みつく肉に、また硬くなる男根。
それで、湯で粘膜の剥がれた内壁に精液を塗りこめていく。
染みる痛みに悲鳴を上げるのを押さえつけ、耳を噛む。
「反省しろ」
「反省するのどう考えてもね、君」
「・・・・あやつが手を出されおったのが悪い」
「じゃあ君が守ってあげればいいでしょ」
「・・・・あやつが手を出されたから」
「イワン君おなか痛いって泣いてたじゃない。しかもスーツ着たままびしょびしょな君の世話した後で、我慢が限界になるまで黙ってて」
「・・・・あやつが手を」
「可哀想。凄く可哀想。泣ける」
「・・・・あやつが」
「別に止めはしないよ?」
早く捨てられてくれて一向に構わないし。
盟友の言葉に冷や汗を背に感じながら、アルベルトは目をそらした。
「・・・・どうしろと」
「私はもう行ってお見舞いしたよ」
セルバンテスの言葉に、ますます頑なに目をそらす。
見舞いすら行っていないのか。
「・・・・分からないかなぁ」
「ならば貴様が居てやれば良かろう」
「あぁ、本当に駄目な男だね、君」
このままでは逆切れして怒り出しそうな盟友に軽い溜息をついて、言い聞かせる。
「レッドは珍しくおとなしくして、イワン君の寝顔を見ていたよ。任務明けで気が昂ぶっているから本当は膝枕して欲しかったろうに、おとなしくね」
「・・・・・・・・・」
「怒鬼は着替えさせてあげてたっけ。坊っちゃんの彼にしてみればよく頑張ったね」
「・・・・・・・・・」
「幽鬼は話をしていたよ。暇だからとりとめなく話がしたいとか言い訳してね、些細な話を延々聞いていたんだ」
「・・・・・・・・・」
「十常寺は薬をあげてたね。今回のは普通の漢方だって。でもやけに色々揃えて真剣に作っていたねぇ」
「・・・・・・・・・」
「ヒィッツカラルドはイワン君の爪を切ってあげていたよ。いつもと逆だとかやけに嬉しげにさ」
「・・・・・・・・・」
「カワラザキは林檎を剥いてあげていたね。能力なしで、手で」
「・・・・・・・・・」
「樊瑞は花なんか活けてたよ。白い百合をいっぱい持って行って。似合わないけど」
「・・・・・・・・・」
「残月は毎回薬を飲ませに行っているってさ」
「・・・・貴様は」
「・・・・私はね、手を握ってあげていたんだ」
「手?」
不審げな盟友に、笑う。
「不安そうに彷徨わせるから、ぎゅってしていたんだよ。眠ってしまったけれど、その内離れてしまった」
セルバンテスが苦笑してアルベルトを見やる。
悔しげに、羨ましげに。
「彼の一番好きな手じゃないからね」
部屋を出て行った盟友が扉を閉めた瞬間駆けだしたのを聞き取って、セルバンテスは小さく溜息をついた。
「私も馬鹿だよねぇ」
敵に塩って言うかさ。
「でも、イワン君が愛しているのは」
私で無く、君だから。
***後書***
痛いエロが十傑のおとなしい日に(おかあさん入院中の十人兄弟)。