【 御主人様のお気に召すまま-070 】



「じゃーん、これこれ、これが自慢の逸品!」

イワン君再生お願い、と言われ、イワンは前のスクリーンにPC再生をかけた画像を映した。


『っああーっ!ああん!あん、ああんっ!』

「ほら、この設定が面白いよね。突然始まって何故かテーブルクロスの下って言うのが」


けらけら笑っているが、無修正でしかもグロい程にモロ出しな映像は所詮AV。


「第一さ、足いっぱいあるけどこれだけ声出したら気づく筈なのに、最後までこの脚リアクションなし」

「生きた人間の足を使ってはいるらしいな」

「そこがまたおかしくってさあ!」


こんな最悪な始まり方をした盟友のAV批評。

セルバンテス秘蔵の絶対に合法で無いものが次々再生される。


「これなんてさ、BGMで声全然聞こえないの。多分監督の指示入ってるんだよ」

「まあ、女は悪くないが、下着がおぼこを狙い過ぎだ」

「その辺は好き好きでしょ」


イワンは少し頬を染めて、平常心を心掛けていた。

デビルのカクテルを作り、ミントを乗せた。


「こっちはね、素人系なんだけど。この子他のタイトルでも見るから一発でばれるんだ」

「素人を求める必要性があるのか?手練の方が煽りが上手い」

「素人、って響きで興奮するんじゃない?あ、こっちは凄いよ。最初男優が寝袋に入るの」

「寝袋?」

「で「身体全部が○○○に入ってる」っていう妄想を始めて、そこからがエロシーン」

「何だそれは」

「奇抜さはピカイチじゃない?」


笑いながらする話だろうか。

いや、笑うしかない話ではあるが。

イワンは同じカクテルに色違いのミントリキュールを混ぜスティンガーを作った。


「これは、近所の女子○学生をっていうやつ。女の子もロリっぽくて中々だよ」

「中○生など乳臭い子供ではないか」

「それが良いんじゃないの?私はちょっと分からないけど、樊瑞とか」

「・・・・・・・」

「・・・・いや、サニーちゃんには手を出さないと思うよ?」


セルバンテスの為に楊貴妃を作り、イワンはふと顔を上げた。

会話が止まったのに気付いたからだ。


「どうされました?」

「イワン君も、男の子だったんだねぇ」

「?」


別に立ったりしていないし、きょとんと首をかしげる。

すると、セルバンテスが見せびらかす一枚のディスク。

無地のそれは、今迄再生していたものと見分けがつかない。


「箪笥の下から二番目の区分けボックスの裏から発掘」

「っ・・・・!」


イワンは反射的にそれを奪おうと手を伸ばした。

すると、ひょいとかわされる。


「何が映ってるのかなー?人妻?美少女?それとも」


男?

イワンの肩が震えたのに、盟友二人は顔を見合わせた。


「ありゃ、冗談だったんだけど」

「・・・・男色ではないと聞いていたが」

「か、返して下さい!」


泣きそうな顔で必死に手を伸ばすのを、アルベルトが掴まえて自分の右膝に押しつけた。

セルバンテスが楽しげにディスクを再生する。


「・・・・・ピアノ?」

「・・・・・?」


鍵盤が大映しになり、男の手が映る。

わくわくして見ていると、その手が「蠍火」を演奏し始め。

二分後には演奏が終了、映像は途切れた。


「へ?何これ」


拍子抜けしたセルバンテス。

イワンは頬を染め、泣きそうな顔で俯いていた。

別にこれで性的な興奮を煽っていたわけじゃなくて、寂しい時に、これを見ていただけ。

頑なに口を噤んで俯くイワン。

手を離すと、ふらふら立ち上がってディスクを回収する。

アルベルトがその腕を掴む。


「・・・・サニーからか」

「・・・・複製させて頂きました」


それは、ずっと昔に自分が弾いた時のもの。

指の形もだが、弾き癖がある。


「はぁ、何て言うかイワン君いつでも君に夢中だねぇ」


やっかむセルバンテスの視線の先で、熱烈な口づけがかわされていた。





「とは言え好みを知っておくのもよかろうと思ってな」

そんな言葉と共に捕獲され、椅子に縛り付けられて。

目の前には、再生される淫行映像の嵐。


『あああああーっ!いい、いいわぁっ!』

「・・・・女医は好みではないか」

「あ、あの」

「画面を見ろ」


にべも無く命じられ、半泣きで画面を見やる。


『あふぅっ、あっ、もう、上手ねぇ』

「・・・・教師も駄目か」

『らめぇぇっ!お兄ちゃん、もういっちゃう!』

「・・・・兄妹も」

『ふふっ、悪い子に育っちゃったわね・・・・っあん!』

「母息子もか」

「いえ、その」


何故イメプもの?

そう聞こうとしたら、趣旨変えを図ってきた。


『いああああ!許してェェェェ!』

「・・・・泣く程怖いか?」


顔面蒼白のイワンの前には、鼻フックの上激しく二穴ファックされて半分白目の女。

これが怖くないのは正真正銘のサドだけだ。


『痛い!痛いぃぃっ!』


あそこのビラビラを縫い合わせられる衝撃映像。

最早AVか怪しい過激映像に、イワンは怯えきっていた。


「っ、ならばこれならどうだ!」

『もう駄目ぇ、おなか痛いよぉぉ!』


アナルファックの過ぎた凌辱で腹の痛みを訴える女。

普段されている事に近かろうと思うが、イワンの恐怖は益々増す。

最早これはAVを使ったSMだ。


「何が気に入らん!」


キレてしまったアルベルト。

怯えて涙ぐみ鼻を啜っているイワン。

アルベルトはソファに座り、イワンを括りつけた縄を投げナイフで切った。


「貴様が好きな手を貸してやる」


ワシの機嫌が直るまでそれで自慰でもしていろ。

「でも」していろ、何て言うが、他の事をしたら更に怒り出す暴君であるのは承知している。

イワンは涙を拭ってアルベルトの傍に膝をついた。

投げ出された手を両手で持って、額を当てる。

大好きな手の感触。

眦を擦りつけ、頬に押し当てる。

それだけで、酷く気持ちが良い。

段々と夢中になり、は、は、と控え目に息を荒げながら手に擦りよる姿は、余りにいじらしく可愛い。

アルベルトの機嫌も現段階ですっかり直っていた。

しかし、楽しんでやろうなどと言う不埒な考えのもとに不機嫌なふりをして。


「自慰でも、と言った筈だ」

「は、い・・・・・」


とろんとしたまま分かっているのかいないのか曖昧な返事。

目を向けると、気持ち良さそうに目を細めて指先を咥えているところだった。

ちゅぅちゅぅと柔く吸って、下肢に手を伸ばし。

何の味もしないそれを恍惚と吸いながら柔い自慰。

いやらしい格好。

愛らしい姿。

そんなに手が好きなのかと不思議だ。

全てを壊す衝撃波を打ち出す手。

擦り寄せた頭部が気分一つで吹き飛ぶと言うのに。

そうされないと分かっていると言うより、そうされても良いと思っているのは明白だ。

自身の手に複雑な嫉妬を抱いていると、イワンが小さく舌を出して指先を舐め始める。


「ふ、ぁ・・・・あ、るべると、様」


気持ちが良くてたまらないと言った呟きに、思わず唇を舐めていた。

興奮で乾ききった唇を湿し、腰砕けのイワンを抱き上げる。


「ぇ・・・・・?」

「『手で』触ってやる」

「ぁあ・・・・ん・・・・」


首筋を擽ると、身を震わせて手を見てくる。

頬を染め、一体何を見ているのかと思う様な恋慕の表情で。

ワイシャツをはだけて胸の尖りを摘まんで弄ってやると、腹から下がびくっと跳ねた。

雄の本能的な動き。

臍のくぼみに指を入れてくりくりとなぞり、親指で肋骨を少し押しながら辿る。

甘い声が耳を擽るのに気分を良くし、スラックスを脱がせた。

白い脚を上から下までたっぷり時間をかけて感触を楽しみ、脚を上げさせて。

可愛い窄まりに指を当てて揉んでやると、腰がくねる。

反対の指を口に差し入れてやり、掻き混ぜながら挿入していく。

イワンが夢中で舐めていた指は、濡れて抵抗に抗って入っていく。

今口内に差し入れてやっている指は、絡む舌ごとかき混ぜている。

上と下から指で犯されているイワンは、惚けた目で快楽に浸っていた。


「悦さそうだな」

「んん、ん・・・・・」


ぐりっと中の良い所を押してやると、激しく腰を捩って達してしまった。

上からも下からも指を引き抜いて、イワンの手指と絡めて握る。

ベッドに押し付けた手は両方とも体液で滑るが、しっかり離れぬように。


「手がそんなに好きか?」

「手・・・すき・・・」


潤んだ目は、どこかに理性を置き忘れていた。


「アルベルト様の手・・・・アルベルト様がすき・・・・」


可愛い事を言い出した従者が正気に戻るまでたっぷり「すき」を繰り返させ、アルベルトはとても充実した夜を過ごした。

たまにこうして理性を崩してやりたいが、ポイントがずれていて中々出来ない。


「色々試してみるか・・・・」


崩れなくても、営みのスパイスにはなるのだから。





***後書***

ゾウさんが好きです、でもキリンさんはもっと好きですよ!