【 御主人様のお気に召すまま-071 】
「・・・・何の真似だ」
「こ、こんな事になるとは思わなくて・・・・」
怯えながら謝る従者。
しかし縄は解かない。
先程本部に帰還したアルベルトは猛烈に「溜まって」いた。
長期任務だったわけではないが、兎角やりたかった。
その気満々だった時に、不意に盟友に声を掛けられ、振り向きざま。
疲れもあった、向こうが本気だったのもあった。
つまり、幻惑を掛けられてしまったわけで。
即縛りあげられ、邪魔をする気かと思いきや、イワンの部屋に俵担ぎで連れて行かれ、椅子に座った状態で縛りつけられ。
何もそこまで、と言うイワンに笑って菓子をねだり、目の前で甘え倒しキスまでしてから盟友は出て行った。
残ったイワンは不機嫌丸出しの主に怯えていたが、意を決したように近づいてきた。
ここまでしたと言う事は、平手打ちか・・・・悪ければ脛ガムテープの刑。
局部剃毛は全力で遠慮したいが、そこまでの度胸はあるまい。
と、思っていたら膝を折り、スラックスの前を緩められた。
まさか、いや、だが報復される程度には身に覚えがある・・・・!
固唾をのんで見ていると、イワンは一度主の顔を見上げて、俯いた。
下着を下ろされ、益々緊張が高まる。
だが、イワンは刃物を握らず自身のワイシャツを肌蹴た。
そしてアルベルトの膝に乗り上げ、その白い胸に男根を立てて添わせる。
裏を胸につけ、表を手で優しく包み、ゆっくりと胸で擦り始めた。
・・・・どう考えても、パイズリだ。
しかし、そんな事をこれが思いつく筈がない。
男女のそれに当て嵌めてさえいない可能性がある。
「・・・・何をしている」
「・・・・あの・・・・」
小さく呟かれた言葉は、自分が考えたそれと同じで。
意外と思いながら見ていると、泣きそうな声が絞り出される。
顔を見上げる事さえ出来ずに耳を赤くしながら。
「これが、好きだとお聞きして・・・・でも、私には乳房がありませんし・・・・」
手と、挟んで。
痛かったら、やめます。
誰から吹き込まれたかは知らないが、それは恐らく裏目だ。
吹き込んだ男は大方「だから出来ないお前はその内捨てられる、私のもとに来い」と言いたかったのだろう。
しかし能力以上の部分を努力で補うイワンは、必死で考えて、どうにか好きな行為を楽しんで欲しいと思ったのだろう。
自分が、イワン以外を抱こうとしないから。
任務ですら上手くかわして女を抱かず、禁欲が苦手なのを我慢して、帰るまでひたすらに。
だからどうにか似たような事が出来ないかと考えたのだ。
可愛くていじらしくて、愛しくて。
小さく笑うと、顔をあげるから。
悪くないなんて遠まわしは言わずに、興奮すると言ってやる。
すると頬を染めて嬉しそうにしながら、続行する。
男にしては柔らかめの胸肉はたっぷりとしているが、硬い筋肉とは根本的に違う。
しかし脂肪の乳房でもない。
柔らかい肉質が気持ちいい。
挟んだ指の締め付けも自分の好みを良く分かっている。
「ん・・・・ん・・・・」
「っ・・・・もう少し押しつけろ」
「はい・・・・」
「っふ・・・・ああ、いいぞ」
流れ落ちる蜜でずちゃずちゃとぬめる男根は既に硬く、流石に男の胸では痛むだろう。
相当胸の大きな女でも長くすると痛くなると言う。
だが、イワンは育つ男根を愛おしそうに見つめ、愛情のこもった奉仕を繰り返す。
鈴口が開き始めたのを見て、少し上体を起こして腰を使い、激しく擦る。
荒い呼吸に開いた唇から覗く舌にむしゃぶりつきたい。
口にねじ込んで犯したい。
喉奥で子種を出して飲ませてやりたい。
脳裏をよぎる泣き顔に熱が高まり、鈴口がくぱりと開く。
勢いよく噴き出した精液は、溜まっていたのと高まった興奮で相当な量だ。
顔に飛び散る。
はっはっと息をつく従者は、精液を呆然と浴びていた。
何処か恍惚とした気だるげな表情。
首を伝う白い流れ。
先走りでぬらぬら光り、精液を掛けられてドロドロに汚れた胸元。
力なく縋っていた手が、だらりと落ちた。
「あ・・・・」
そこに至って漸く射精した事に気づいたようだが、まだ正気ではない。
胸を流れ落ちる精汁を掌で拭い、見つめて。
ぴちゃ・・・・・
ピンクの舌を出して、舐め始める。
時折口を閉めて喉を鳴らし飲むが、その直前に口が少し動く。
舌の上で転がし味わう姿に、突然我慢の限界が来た。
縄を引き千切り、床に押し倒す。
首筋を舐めると、自分のものが口に入った。
だが、それ以上にこの芳しく甘い蜜酒のような汗を味わいたい。
白濁の余りかかっていない所に舌を伝わせ、胸の尖りに吸いついた。
柔くした方が感じると分かっているが、強く吸いたいという欲望のまま、左右交互に吸引する。
「あ・・・・あっ・・・・んっ」
そのたびに小さく詰めた悲鳴が上がり、煽られて立っているものを腿に擦り付けてやる。
すると、珍しい事に自分からスラックスを脱いだ。
頬を真っ赤にしているが、今日はと決めたのか、かなり頑張っている。
探ると、少し硬くなり始めているが、緩めた形跡のある後孔。
不義を働いていれば、こんなに胸で痛がるはずがない。
久し振りで、過敏な胸の尖り。
緩めたのは、恐らく自分の指だ。
帰ってくると知っていたから、その欲を溜めていると分かっていたから、直ぐに身体を開けるように。
堪らなく愛しい献身の褒美に、深く深く口づけてやる。
舌を絡めて吸いながら、脚を持ち上げて。
身を、沈める。
「んんっ」
「痛むか」
「大丈、夫、です」
涙を滲ませ息をあげながら首を振る。
苦笑すると、躊躇いがちに首に手が回った。
背を支えながら挿入しきり、奥をぐっと押し上げる。
「っあ、くぅ、んんっ」
「もう少し強く縋れ。髪を引いても構わん」
「あ、あ、っあ」
控え目に縋る手も、追い上げていくたびに力が入る。
髪を掻き混ぜながらしがみつく腕。
耳元で囁きのように繰り返される早い呼吸が官能を煽った。
「イワン・・・・」
名を呼ぶと、自分の声に弱い従者は身体を震わせて、締めてきた。
自分ではない体液の青い匂いがする。
吐精中の気持ち良さそうな甘い溜息。
「あ・・・・ふ、ぅんっ・・・」
痙攣の様に絡みつく中の奥に突き込んで、叩きつけるように出してやる。
堪らない溜息を吐く恋人の耳に口づけ、アルベルトは今一度彼の名を呼んだ。
「なっ・・・・そんなイイ事あったの?!」
イワンの乳ズリを聞いたセルバンテスは、口の端にフロランタンの欠片をつけて悔しがった。
「『アルベルト様に少しの間動かないでいて頂きたいのです』ってそういう・・・・あああ、いいなあ!」
尋常でない悔しがりっぷりのセルバンテス。
しかし右手は焼き菓子を離さない。
「私もお願いしてみようかなぁ」
「やらんだろうな」
「じゃあ君が命令してよ」
「断る」
ああとかううとか言いながらフロランタンをぼりぼり齧る男は、恐らく菓子も従者も諦めまい。
気を抜いたら幻惑で捕獲して、幻惑でいいようにして、幻惑で忘れさせてと言うのを飽きずに繰り返す勢いだ。
イワンにスタンガンを持たせようと考えるアルベルト。
従者がもっと凶悪な超小型出力違法改造スタンガンを普段から所持している事を知り、背筋をひんやりさせるのは二日後の事。
***後書***
ぱいぱいでずりずりして欲しかったんだ(黙れ)