【 御主人様のお気に召すまま-081 】



「えっ・・・・・」

目が見えない事に気付き、イワンは頭を振った。

どうやら目隠しをされている。

いつもの様に目が開かないから起きた感覚が曖昧だが、意識が浮上しているのは確かだ。

身体が拘束されていて四つん這いから動かない。

だが、身体を痛める拘束の仕方ではなかった。

身を捩るが、然程痛みはない。

が、外れる気配も全くない。

もぞもぞしていると、不意に臀部に触れられた。

気配も無かったのに、とぎょっとして動きを止める。

香を焚いていて匂いが分からない。

気配も巧妙に消している。

声も出さない。

誰か分からないが、直感的に男だと思った。

手が、手つきが、男だと。

スラックスを丁寧に脱がされ、イワンの身体から血の気が引いた。

暴れようと思った。

が、捩った瞬間に当てられた殺気で身体が言う事を聞かない。

その殺気とて本気でなく、随分甘くしていたらしい事が分かる。

本気で浴びせられたら、心臓が止まるだろう。

イワンは息を飲んでじっとしていた。

操を奪われるぐらいなら、舌を噛む覚悟だ。

だが、ギリギリそうでないなら、あの御方の元へ帰りたい、帰らねば。

そう思って、ひたすら息を詰めた。


「ひっ」


尻に垂らされた冷たい液体に思わず声が出る。

とろとろと伝い落ちる感触に怖気が走った。

何をされるのか、分からない。

例えようない恐怖感を覚えながら、イワンは震える身体を叱咤した。

男の雰囲気が和らぐ。

声を出さずに笑っているのかもしれない。


「ん・・・・っ」


ずりゅ、と尻に押しつけられた熱いものは、形状からして男根だ。

熱く太く、しかしまだ完全に硬くはなっていないもの。

尻たぶに先を擦りつけていたが、直ぐにメインの目的に移った。


「え・・・・っ、や、んっ」


尻の狭間に幹を押しつけて擦り始める。

感触としては乳ズリに近いと思われる。

男の胸では出来ない事を、尻でやる発想が何とも言い難い。

ずりゅ、ずりゅ、と擦られて、気持ち悪さに身がすくみあがる。

身体に触れるのは硬くなってきたそれと、尻を掴む手だけ。

混乱したイワンは気づいていなかった。

自分が動揺しているということが、何を意味するか。

無意識に「知っている、敵でない人間」と判じている事。

身体に触れぬのは何故か。

背に身を添わせれば身体のラインが分かるから。


「あ、あっ」


自分のテリトリー内に入れた人間には非常に甘いイワンは、頬を染めて小さく悲鳴を上げた。

何だか、変な気分だ。

入れられていないのに、入れて欲しい訳じゃないのに。

やめないで、欲しい。

はしたない自分に頬を染める事すら思いつかないのは、香の中に含まれる成分のせい。

腰を捩って嫌がりながら、甘く腰を揺らす姿は淫猥だ。

ズッズッと擦り立ててやると、小さく喘いだ。

口からわずかに突きでたピンクの舌が愛らしくもいやらしい。

完勃ちの男根から生温かな先走りが尻に垂れ落ち、新たな潤滑となり。

男の匂いの充満する室内に響く小さな甘い吐息。


「んっ・・・・ゃ、あ・・・・」


ぬりゅぬりゅぬりゅっと激しく擦られ、白い背がくんっとそった。


「あぁ、あ、あ、だ、駄目、ぁ」


窄まりや戸渡りを熱く硬いものが往復する快楽に首を振る。

完全に立つ程の快感ではないが、甘く立ったものは涎を垂らしている。


「ん、んん、っ」


尻に降りかかる熱い粘液。

どうなっているのかなんて考えたくない。

塗り拡げられているのを感じて頬が熱い。


「ふ、ぁ・・・・・」


香の香りが強くなったような気がした。





「・・・・何かあったのか?」

「不気味だな」

「あぁ、年一回あるかといった現象か」

「久し振りに見るのぅ」

ヒィッツカラルドとレッドが頷き合い、樊瑞とカワラザキが原因を見やる。

セルバンテスはチョコレートを噛み砕きながら首を傾げた。


「・・・・何であんなに機嫌良さそうなのかなぁ?」


十常寺。





***後書***

目次に書いてるから吃驚オチではないが、狸爺もやる時ゃやる。