【 御主人様のお気に召すまま-083 】



「正月らしい遊びをしなかった気がする」

言いだしたレッドに、皆呆れた。


「君サニーちゃんと羽根つきしてなかった?」

「遊んでやったのだ。私は遊んでいない」


遊んでやったと言うが、容赦なしで負かして小さな女の子の顔に落書きしまくっていた男が何を言っているのか。


「じゃあ何がしたいんだ?」

「分からん」


なんだそれ、という答えに呆れるが、笑われてもレッドは嫌な顔をしただけで暴れはしなかった。

笑ったのがカワラザキだからだ。

カワラザキは少し悪い笑みを浮かべ、レッドに目を細めた。


「ならば『ふくろわらい』でもやるかのぅ?」

「爺様・・・・それは・・・・」


幽鬼の顔が微妙に引き攣る。


「福笑いじゃないんだ?」

「・・・・見れば分かる」

「さて、準備するかのぉ」


嬉々として出ていくカワラザキ。

皆手元の本やグラスに視線を戻した。

勝手に遊べばいい、と思っていたのだが。





「・・・・・カワラザキの癖の悪さ忘れてたよね」

言いながら、セルバンテスはしゃがんで袋の端を摘まんだ。

人一人入りそうな袋。

中身は人間くらいの大きさ。

動いている。


「子供の頃は爺様が何人か女を連れこんじゃあこれを・・・・」

「うわ、教育に悪っ!」

「いや、目の前で本番をやられなかっただけマシだ。結構女性も私を構ってくれる人が多かった」

「あー、商売に疲れてたんだねぇ・・・・」


セルバンテスは幽鬼と会話しながら、袋の適当な所を突っついた。


「ひゃっ」


全員、硬直。

室温、上昇。

男共、色めき立つ。


「いや、ぜんっぜん中身分からない。もっと触ってみないと、うん」

「十人がかりでやれば早かろう。衝撃のは嫌なら参加せんで見ているがいい」

「よし、やるか」

「・・・・・・・・・!」

「爺様はどうしていたかな・・・・」

「わしも入れたはいいが中身を忘れてしまってな」

「腕が鳴るな」

「愉しき事」

「う、うむ、儂も中身が知りたいぞ」

「・・・・・貴様ら」


アルベルトが溜息をつく。


「これは強情だ。下手を打てば自害するぞ」

「「「十傑衆をなめるなぁぁぁ!」」」

「それはワシの台詞だろうが!!!」


叫ぶ十傑。

そして。

ハイパーお触りタイム、開始。





「えっ、な、なに?」

声は聞こえるが、詳しい説明なしに袋に詰められ興奮気味の会話を断片的に聞かされても分からない。

しかも突然身体中を撫でまわされ揉まれ始めた。

十傑の仕業らしいし、主の気配もする。

どうすればいいのか分からない。


「あっ、ちょ、そこ、は」


尻に触る手が増え、揉まれ撫でられつねられる。

痛いし恥ずかしいし、ちょっと気持ちいい。


「やっ、やめてください!」


じたばたすると、脚や腕を押さえられる。

直に触られさえしない安心と、それゆえの変態的な輪姦もどきに羞恥と恐怖が高まった。


「あぁっ」


胸の尖りを探りだした手。

触り方が酷くいやらしい。


「ど、どなたですか!」


袋の外の男達は顔を見合わせた。


「どの手?」

「むっ、胸、の」

「あぁ・・・・うん」


カワラザキとは言えず、皆曖昧に濁した。


「他は?」

「尻をそんなに強く掴まれたら痛いです・・・・」

「うん、これはにぎにぎフェチのおっさん」


樊瑞だ。

この男はどうして色んな部位を強く握り締めてハアハアしてしまうのだろう。


「次」

「ふ、太腿が、くすぐったいです」

「それは御坊っちゃんが擽ってる」

「?」


もぞもぞ身じろぐ袋の太腿をさわさわといやらしい手つきで擽っている男が一名。

もの凄く真剣な顔だ。

何故変態行為がまともに見えるのか。

無言だからかもしれない。


「他に質問は?」


質問と言う名目で今の状態を把握する十傑。

正直イワンに聞かないとどれが誰の手で何をしているか分からない。


「ど、どなたか鼻を掴んでいらっしゃるのですが」

「鼻・・・・?」


よくよく見て見れば、彼の立派な鼻とおぼしきものを両手で掴んでにぎにぎしつつ若干息荒げている男。

この中で最年少だと誰が信じよう、いや信じたくない。

まさに白昼堂々だ。


「ひぃっ!あ、あのっ、つ、掴んでいらっしゃる方が!」

「それは大きな子供さんです」


あんたら全員子供だろうと言いたいが、手つきからして過去何度か襲撃された記憶。

しかしパニックを起こしているイワンは気づかない。


「ひぃぃっ、あの、あのっ」


色気の欠片も無い声に臍を曲げて強く揉み始めたレッドに呆れつつ、次。


「他は?」

「くちびふゅをうにうにゅしふぇいるかふぁら・・・・・!」

「伊達男」


唇をぷにぷにして自慢の指をたっぷり楽しませるヒィッツはとても嬉しそうだ。


「ぷはっ・・・・っ、脚の付け根、擽ったいです・・・・!」

「それは狸さんですよー」


微妙な所をしつこくさする十常寺はとても生き生きしていた。


「あ、あの、そのっ・・・・・あ、蟻の戸・・・・」


恥ずかしげに消えゆく言葉。

確かめると、不健康そうに骨張った手。


「うん、引き籠り」

「それ隠せてないぞ」


ツッコミを気にしない幻惑、真剣に蟻の戸渡りをなぞり続ける幽鬼。

ここを選ぶのも中々の玄人だ。

まさかこの男が15の時に歓楽街に「筆下ろし」と爺様に放り込まれ「嫌だ帰る!」と泣いたと誰が思おうか。

泣いたと言っても爺様が本気と悟ったら渋々女を鳴かせたが。

心が読めるから望みも全て筒抜け。

しかし狂気がかった愛撫に怯えられ「あの子怖い子よ」と噂に。

最近まで出入り禁止になっていた。

本人はそれで結果オーライだったのだが。


「で、ではこれはどなたですかっ!」

「これって?」


お前だ、と言いたい。

思い切り樊瑞の手の隣。

即ち窄まりをぐりぐり押しているのが分かる。

変態過ぎて話にならない。


「でも気持ちいいでしょ?」

「き、気持ち・・・・?!良くありませんっ!」


ヒステリックに叫ぶが、泣きかけでは威力は無い。


「尾てい骨を擽らないでくださいぃぃっ!」

「それアルベルトだよ?」

「えっ・・・・・」


一発で大人しくなってもじもじし始めたイワン。

機嫌良く触り続けるアルベルト。

意地になって本気で触り始めた九傑。


「いやぁぁぁぁぁ!」

「大丈夫大丈夫。怖くないよー」


正月だろうと、なんだろうと。

十傑の遊びは常に。

不健全な大人の遊びである・・・・。





***後書***

爺様とゆーきちゃんの信頼関係は『お互い我慢しないで好きに生きつつ思いやりを忘れない』から成り立っていま(黙れ)