【 パラレル-013 】



「これをおばあさんの所に持って行って下さい」

「自分で行くがいい」

速答で帰ってきた俺様な答えに、母・・・孔明は額に青筋を立てた。


「私は決算書類があります」

「ワシは今出掛ける気分ではない」

「・・・・葉巻を全部燃やして差し上げましょうか?」


早くも切り札を出して黒く微笑む孔明に、渋々立ち上がる赤頭巾ちゃん、通称アルベルト。


「川に捨てて帰ったりしてはいけませんよ」

「・・・・・・・・」

「やる気だったんですねぇ・・・・まぁ私もセルバンテスに菓子を届けるのを進んでやっているわけではありませんが」


おばあさんはセルバンテスと言い、アルベルトといい勝負の我儘さだ。


「いってらっしゃい」


ぽいと放りだされ、アルベルトは持った籠を睨んで歩き出した。


「面倒臭い」





歩いていると、お花畑で何やら発見。

蔓草を咥えて噛んでいるのは、犬でなく狼だ。

腹が減っているのか。


「おい」

「!」

「逃げるな」


声をかけたら弾かれたように逃げようとし始めるのを蹴倒して背中に足を乗せる。

何とも頼りない狼は、掠れた悲鳴を上げてもがいている。


「びくびくするな」

「・・・・・・」


そろーっと見上げてきた目は黒目がちで大ぶり。

睫毛は短いが、愛嬌のある感じだ。


「腹が減っているのではないのか」

「・・・・・・・・」


足を離すと、座り込んだ。

こくんと頷くから、籠からクッキーを取り出して与えてみた。

手を出そうとするから口元に付きつけてやると、おずおず齧りつく。


「あ・・・・美味しい」


小さく呟いた声は、酷く味わい深い。

少し高めだが、何とも言えぬ甘さが舌に乗る。

甘味はさほど好まないが、これは中々に良い。

もう一枚差し出し、食べさせてみる。

こりこりと齧る姿は狼と言うよりおとなしい草食獣のようだ。

籠全量の半分ほど食べさせたところで、狼は首を振った。


「もう、食べれないです」

「・・・・そうか」


これを餌付けするのは面白かったから些か残念に思いながら立ち上がる。

すると、袖を引かれた。


「あの、何かお礼は出来ませんか」


私は何も持っていませんが、お役にたてるなら伝令でも届け物でも致します。

怒られないかと気にしながらだが、必死で良い募る。

中々可愛いが、特に望みはない。

追い払う意味も含め、意地の悪い事を言ってみる。


「ならば、溜まった欲望を始末できるか?」

「え・・・・っ」


頬を染めて恥じらう姿が可愛い。

冗談だ、さっさと行け。

そう言おうとしたら、目の前に狼が座り込んで。

スラックス越しに、撫でられる。

ぴく、と反応すると、驚いたように手を引く。

だが、そっとジッパーを下ろして、取り出し。

柔らかそうな唇が、近づき。

押し当てられる。


「っ・・・・・」


実際柔らかい唇は表面を滑って甘美な快感を与えた。

思わず息が詰まる。

ぐぐっと立ち上がる男根にキスを繰り返し、狼は一度唇を離した。

コクン、と白い喉が鳴る。

ごくり、と男の喉が鳴る。

不安が、期待が、高まる。


「ん・・・・・っ」

「っ・・・・」


柔く濡れた口内に含まれ、アルベルトは片目を眇めた。

気持ち良さは格別だ。

丁寧に皺の一本一本を辿る舌先で、皺が伸び切って膨張する。

堪らずに顎を掴んで腰を揺する。

イマラチオに苦しげにしながら、狼は抵抗しない。

口の中を滅茶苦茶に掻き混ぜてたっぷり出す。

ぼたぼた口端から零すのを眺めながらゆっくりと抜き取り、命じる。


「飲み込め」

「ん・・・・っ」


きゅくっ、と粘つくそれを飲み下した狼に口端を釣り上げ、下半身をまさぐる。

すると、潰れた悲鳴を上げて飛退った。

過剰反応っぷりに驚いていると、怯えた目で見て、逃げてしまって。

思わず追う。

走って走って、掴まえて引き倒し。

激しいキスを。

この狼が欲しい。

野生のこれが飼われる事を拒むと言うなら、離れられないようにしてでも傍に置いてやる。

突然湧き出す凶暴な情愛に突き動かされるまま、アルベルトは狼の毛皮を剥いだ。

現れる白い肌。

堪らずに噛みつき、きつく吸う。


「ひっ・・・・痛、痛い・・・・っ」


怯えきっているこれは十中八九初めてだ。

口淫は上手かったが、反応が初心過ぎる。

尻を押し広げてみると、窄まりは変形も無いピンクの淡い色。

揉むが、かなり固い。

舐めてやると、益々小さく窄まった。

それを抉じ開けて中に舌をねじ込むと、尻を振って嫌がる。

ぱちんと叩いてやると、舌を飲んだまま締まる。

ぐちゃぐちゃと舌で犯してやると、小さな啜り泣きが聞こえた。

興奮で唾液がさらに伝う舌を奥まで突き入れる。


「ひっあ、あっ、く」


ぢゅ、と唾液を送りこんで舌を抜き、指を掛けた。

ゆっくりと差し入れてやると、何ともいやらしい動きで絡みついてくる。

入口はひくひくして、中はきゅうきゅう絡んで。

中指を根元まで入れてゆっくり引き抜いていくと、びくっびくっと背が痙攣する。

もう一度奥に入れて指先が届く限界を激しくかき混ぜると、指が食い千切られそうに締められた。


「ぅあ、あ、あぁ、あ」


ぽた、と液体の落ちる音。

涙にしてはやけに重たげだ。

見れば、下肢を白濁に汚している。

潤んだ目は他人から強制的に与えられる初めての快楽にイってしまっている。

がくがくしている身体を抱き直し、ゆっくりと男根を沈めていく。

絡みつき押し包む肉の快楽に奥歯を噛みしめ、奥まで入れた。

初めてで男に犯される異常性交を強いられる狼をせめて優しくとは思うが、余りの具合の良さに気がつけば夢中で腰を使っていた。

途切れ途切れの掠れた悲鳴。

体液が泡立つ音のする後孔。

宙を彷徨う手を掴んで、奥深くに種付けした。

孕む事がないと知ってはいても、疵に塗り込んでやりたかった。


「・・・・あ、あ・・・・」


中に流し込まれる子種に身を震わせる姿が、とてもとても。

愛らしい。





湖に連れて行き身を清めてやると、狼に礼を言われた。

強姦されたのが分かっていないのかと呆れたが、そうではなく。

狼と言うだけで怖がられ、ひとりぼっちでさみしかったのだと。

誰かのぬくもりを知る事が出来て、怖かったけれど嬉しいと。

この記憶を抱いていれば、また一人で生きられるからと。

寂しそうに、微笑っていた。

それが、どうしようもなく愛しくて。

自分に縋らせたくて。

もう一度、キスをした。





「・・・・へぇ、それはよかったね」

微笑むセルバンテス。

彼は狼にいやらしい視線を這わせた。


「狼さん!いや、イワン君だっけ?」

「は、はい」

「私と『愉しく』暮らそう?」

「貴様が愉しいだけであろう」

「え・・・・え・・・・?」

「アルベルト、ちょっと表でお話しようか」


この男は欲しいものは何が何でも手に入れる。

一人や二人殺すのは訳ない。

第一既に手にはショットガンを持っている。


「狼さんを渡したまえよっ!」

「断る!」


表でドンパチ始めた二人に紅茶を淹れながら、イワンはとても嬉しかった。

とても温かいぬくもりを手に入れた狼さんと、赤い頭巾を被ってすらいない帝王は幸せに暮らします。

ぬくもりを知るたびに魅力的になっていく狼さんを狙う猟師が後に8人程現れ、おかあさんも参加。

最有力はおばあさんですが、不動の隣は。

アル頭巾様。





***後書***

肉食獣すら捕食するアル頭巾様。