【 パラレル-014 】



「まぁ、当たり前と言えば当たり前の結果なんだよね」

「そうだな」

春夏秋と遊び呆けていたキリギリスさん達は、冬になって蓄えも無く。

でも問題なく他の生き物を襲って食い殺している。

寒いのを除けば、自由気ままで快適な暮らし。

かれこれ38年目の越冬だ。

毎回こんな調子だが、全然平気。


「女の子の柔らかくって甘い肉も良いけど、もっと面白い事無いかなぁ」

「欲望が二種も満たせていいと思うが」

「でもさ、何か足りないんだよね」


なんかこう、ときめき?

闘争心が刺激されないし。

そんな事をぼやいていると、雪の中に人影発見。

そして見失った。

よくよく気を付けてみると、木の洞にドアがある。


「お宅拝見?」

「ああ、そうだな」


二人の悪魔が、笑った。





「・・・・何か、あったかい」

「・・・・火があるしな」

「君だって分かってるんでしょ、とぼけないでよ」

押し入った二人の冷えた肌の色に、家主の蟻さんはあたたかいタオルと乾いたタオルを持ってきてくれた。

その後、甲斐甲斐しく世話をして。

服を乾かしつつ、毛布を渡して、あたたかいお茶を淹れてくれて。

髪を拭いてくれる手が優しくて。

心配してくれる声が優しくて。

でも安らがない。

もっとと求めてしまうのだ。

隣の盟友を殺して一人占めしたいと互いに考えているのが手に取るように分かる。


「・・・・ここは妥協するしかないかなぁ」

「仕方あるまい」


さあ、キッチンに立っている蟻さんにお礼をしに行こう?




「や・・・・ぁ・・・・」

蟻さんことイワンは、二人の男に身体をまさぐられて息も絶え絶えだった。

既に二回いかされている。

右半身をアルベルトきりぎりす、左半身をセルバンテスきりぎりすに押さえつけられて床から身動きとれない。

身体中に紅の鬱血が散り、腕の柔い部分は最早紫に近い。

乳首は両方ともいじり倒されて真っ赤だし、雄は我慢しているのを執拗に擦られていかされたせいでひりひりする。

後孔は、両側から一本ずつ指を入れられて掻き回されて柔らかみを帯びている。

しかしそれでもきつく締まってひくひくしていて。

堪らない艶姿だが、お礼と銘打った以上悦んでもらわねばなるまい。

泣かれてばかりではプライドが傷つく。

セルバンテスが口づけると、イワンは嫌がって顔を背けた。

セルバンテスは顎を拘束したりはしなかった。

代わりに差し出された耳を柔く吸い、耳たぶを含んで舌で舐めまわす。


「ぅあ、あ、ゃ・・・・」

「ん?気持ちいい?」

「や、めて・・・・い、や・・・・」

「そう?」


まんまと此方を向いた唇に唇を合わせて、下唇を柔らかく吸う。

甘い唇に目を細め、今度は上唇。

下より少し硬いそれを、やわやわと噛んでやる。


「んん・・・・ん」

「・・・・・ふふ、気持ち良さそう」


とろんとし始めた目に微笑って、たっぷりと舌を絡め始める。

長い接吻で酸欠にし、何も考えられないように。

ちゅくちゅくと濡れた音を立ててかわされる接吻を見やり、アルベルトは胸の尖りをいじり始めた。

先に指を付けてくいくいっと押しつぶし、円を描くように揉む。

軽く擦りながら指を移動させると、押さえつけられた体が身悶えた。


「こうされるの、好き?」


セルバンテスが問い、アルベルトが目を向ける。

イワンは潤みとろけた目で胸を喘がせながら首を横に振った。

強情を過ぎてストイックな抵抗に苦笑し、セルバンテスはぺろりと甘そうに濡れた唇を舐めた。


「ひぁん、んん、はぁ」


執拗な間接的愛撫に乱される身体と心。

気持ち良くて、でも少し痛い意地悪な愛撫。

セルバンテスの指が、後孔に入り込む。

中指を入れて一周掻き混ぜ、薬指を入れる。

他の三本と掌底で柔らかく気持ちの良い感触の尻を揉んだ。

ぴくんと引き攣る尻たぶをいやらしい手つきで揉み込むと、立ち上がった雄がぽたぽた蜜を垂らす。

胸を構いながらアルベルトも手を伸ばし、人差し指を入れる。

執拗に解して柔らかいそこに強引に中指も差し入れ、犯す。

狭い中でぶつかり合う男の指に酷く感じているらしく、雄はぴくんと震えて鈴口をぱくぱくさせていた。


「うぅん、あ、はぁ、あ」

「我慢しないで良いんだよ?ほら」

「ぅああ、あぅふっ」

「可愛い」


喘ぎ声は甘ったるく、耳に心地いい。

ぐちゅぐちゅと掻きまわし、もう一方が奥を突き。

快楽責めに、イワンは訳が分からなくなっていた。

これは異常な事。

これはいけない事。

もっとして欲しい。

これ以上されたら壊れてしまう。

でも、気持ちが良い。


「っあ、あ、ひぅ・・・・」

「可愛い顔して頑張るねぇ」

「少し強めるか」


アルベルトが掻きまわしていた指を奥に差し入れる。

セルバンテスの指とあわさって相当な負荷がかかる。

広げられる後孔に感じるのは、痛みより恐怖が強い。

中でばらばらに動く指。


「んん、んっ、はぁっ、あぅ」

「強情な」

「ひぁうぅっ!」


人差し指の付け根の骨が沈むまで飲み込ませる。

セルバンテスが呆れて苦笑する気配がした。


「そんなにしたら壊れちゃうよ」


そう言いながら同じ事をして。

身体を激しく痙攣させながら、イワンは悲鳴すら上げられないまま白濁を噴き零した。

喉の奥で潰れた悲鳴がおかしな音を立てる。


「イワン君、寝ちゃだめだよ?」

「これからだろう」


二人の悪魔に、イワンは掠れた声で懇願した。


「・・・・どう、か、御一人だけ、で、お許し、くだ、さ」


顔を見合わせた盟友。

今度は一緒に出来ない。

死んでしまう。


「・・・・骨は砂漠に埋めてやろう」

「君のお墓には薔薇植えといてあげるよ、赤いの」


第一回目の殺し合い勃発。

勝者はアルベルトだった。

危機迫った阿修羅の形相だった。

現在既に百回を超えた殺し合いだが、アルベルトの連戦連勝。

そのたびにアルベルトはイワンを独占する為に強くなり、セルバンテスはイワンをモノにしようと強くなり。

アンチ虫駆除団のトップの10人に入り、越冬の心配は既にない。

未だにイワンは二人に取り合いをされて捕まったまま。

それどころか他の8人も取り合いに参加してくる始末。

でも、アルベルトにお茶を淹れる囚われの蟻さんは、とても幸せそうに微笑んでいるのでしたとさ。





***後書***

不良きりぎりす過ぎる。これはもう童話じゃないな・・・・。