【 パラレル-015 】



山積みの書類に耐えきれなくなったおばあ・・・孔明は、川に来て休んでいた。

やらねば間に合わない、間に合わせねば、ああしかし。

もう、やだ。

石をぽちゃんと投げ入れて疲れた目を休めていると、川上からショッキングピンクの大きな・・・・。


「桃・・・・ですね」


引き上げて叩いてみる。

かぽんかぽんなんていう音がするこれはまず食べられる桃ではない。

中も恐らく空洞。

というかちょっと開いていて中から気配を伺っているのがもろに分かる。


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


隙間から覗いてみると、薄暗い中に子供が一人。

暇つぶしに育ててみるか。

飽きたらうちのエージェント育成機関に放り込んでしまえば良い。





「孔明様、お茶が入りました」

「ああ、有難うございます」

あれから早三ヶ月。

植物から出てきただけに、子供はひと月ほどで33歳に成長。

それからは緩やかな成長速度になったが、まあ。

実にうまそうに育った。

親代わりをしてこういう不埒な思いを抱くとは夢にも思わなかったが、子供を抜け大人になってから一気に色香が増した。

腰も脚も、首も頬も思わず触れたくなる。

柔く温かいだろうと期待し、期待通りのそれ。

優しい気質で、物腰低く忠実。

とても役に立つし、心癒される。

膝枕など最高だ。

優しい手つきで髪を撫でたり腹を軽くとんとんしてくれる。

そろそろ食べ頃だ。

歯向かわないよう躾けてあるから、たっぷり可愛がってやろう。

浮き浮きしながら書類を片付け、夕飯時。

孔明の希望で厚切りパイナップルが入った酢豚だ。

やはり良い妻になると思いながら食べていると、桃太ろ・・・・イワンが控え目に申し出た。


「あの・・・・孔明様」


私は鬼退治に行って参ります。

孔明は思い切り箸を噛んでいた。

しかし平静を装い、首を振る。


「いけません」

「どうしてですか?」

「ではお聞きしますが、何故突然そんな事を言い出すんです」


問いに、イワンは俯いた。


「孔明様のお仕事が増えているのは、鬼が島の開発が進まないからとお聞きしています」


孔明様が幽鬼(not十傑)の様な御顔をされてお仕事にやつれていくのが、私は辛いのです。

泣きそうな顔で言われ、思わず許可を出しそうになる。

しかし事が事だ。

鬼退治とは穏やかでないし、怪我でもしたら大変だ。

孔明は首を振った。


「いいえ、駄目です」

「孔明様・・・・でも・・・・」

「話は終わりです」


席を立ち、孔明は冷ややかに言った。


「どうしてもと言うなら、もう一度だけ寝る前に話を聞いて差し上げます。あとで寝所にいらっしゃい」





やってきたイワンを食ってしまう算段の孔明だったが、当ては外れた。

イワンは自分では孔明を説得など到底出来ないと悟り、こっそり屋敷を出てしまったのだ。

保護者モードの修羅の形相な孔明が公私混同でイワンを探させているが、未だ捕まらず。

イワンは途中で材料をそろえてお弁当用のブルードネージュを作り、一路鬼が島へ向かっていた。

が。


「おい、それをよこせ」


早くも絡まれてしまった。


「え、あの」

「寄越せと言うのが聞こえんのか」

「いえ・・・・」


おずおず差し出すと、むしり取られてあっという間に食べられた。

青年は砂糖のついた親指をぺろっと舐め、そこで初めて菓子以外のもの・・・・それを持っていた人間に注意を向けた。

まじまじと見やり、ふんふんと匂いを嗅ぎ。


「よし、ついて行ってやる」

「え?えぇ?」

「鬼退治には雉が居ると便利だぞ」


雉だったのか・・・・。

赤い仮面に改造済みスーツで分からなかった。

取り敢えずついてきてくれるらしい。

時折頭を撫でてやると、子供扱いするななんて言いつつ嬉しそうにしている。

天邪鬼なのだなぁと可愛く思って笑うと、僅かに頬を赤らめて不貞腐れた。

そこに。


「おや、レッド。可愛らしいのを連れているな」

「何だ貴様か」


白スーツで決めている男は、イワンにずいと顔を近づけ目を細めた。


「ふふ、甘い良い香りだ」

「甘い香り?」

「いや、こちらの話さ。私は虎のヒィッツカラルド。そのブルードネージュを一つくれないか?」


言われ、イワンは菓子を差し出した。

お腹がすいているのかもしれないと思ったのだ。


「お口に合うかは分かりませんが・・・・」


柔い微笑と共に差し出された菓子を摘まみ、男は口に放り込んだ。

軽い音を立てて噛み砕き、ふふっと笑う。


「ああ、良い味だ」

「有難うございます」


頬をほんのりピンクにして嬉しそうにするイワンの頭を撫で、男はニッと笑った。


「私も鬼が島にお供しよう」





仲の悪い二人を仲裁しつつ進んでいると、道を横ぎる影。

不健康そうな青年だ。


「・・・・鬼が島に行くのか」

「あの、何故それを?」

「いや・・・・」


斜め下に視線をそらした青年は、イワンの持ち物に菓子を発見した。


「それを、一つくれないか」

「え?あ、どうぞ」


差し出すと、手に取らずそのまま食べて、指を軽く噛まれた。

吃驚して引きかけると、手首を掴まれ引き寄せ・・・・られる前に雉レッドが青年のもさもさ髪をぐぎっと引いた。

ヒィッツもそばに立っている。


「毒蛇が・・・・」

「オロすか?」


圧力をかける二人に構わず、青年はイワンを見詰めて口を開いた。


「蛇の幽鬼だ。思わずとは言え悪い事をしたからお供しよう」

「あ、有難うございます」

「絶対これを狙っていたな」

「思わずは意外と本当かもしれんがな」


増えるお供のお世話をしつつ、進む。





マッチの箱と煙管を持って、マッチ箱の中を探り、火をつけないままマッチの箱をしまう男を発見。

恐らくマッチが無くなったのだ。

近くに居たイワンは自然にそれに火をつけていた。

男はにこりと笑って有難うと言い、ゆったり一服。

そして立ち上がり、マイペースに菓子を催促。

食べ終わると、当然のようについてきて。


「・・・・あれ?」


オトモが増えた様な気がする。





「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あの、これですか?」

と言うかまずこれと見て間違いない。

イワンは瞬きすらせずに菓子を見詰める青年に、そろっとブルードネージュを差し出してみた。

青年はそれを受け取りまじまじと見ている。

ふんふんと匂いを嗅ぎ、首を傾げ。

ぱくり。

さく、さく、さく。


「!」

「ど、どうかなさいましたか?」

「・・・・喜んでいるんじゃないか?」

「名前は怒鬼と言うらしいぞ?」


ヒィッツと幽鬼の言葉に、イワンは一ッ言も喋らずに自分の手を握り締めて見つめてくる青年を見つめ返した。


「あ、あの、手を」


放して欲しい。

そう言おうとしたら、抱きあげられ。

ものすごい勢いで走られた。


「ひぃぃぃっ」

「何だ、貴様馬だったのか」

「レ、レッド様、止め、止めてくだ」


叫び空しく、人外のスピードで走る集団。

何でこんな事に。

イワンはしっかり怒鬼の腕にしがみつき、目を閉じた。

どれくらいそうしていただろう。


「・・・・・・」

「着いたぞ」

「え、あぁ、よかっ・・・・」


1、2、3、4、5、6・・・・えっ。


「ふ、増えてる・・・・」


どうしようかと思ったが、イワンはちゃんと動物に芸を仕込んでいた。


「番号をお願いします」

「一番レッド!雉」

「二番ヒィッツカラルド、虎」

「三番幽鬼、蛇・・・・」

「四番残月、猿」

「・・・・・・・・・!」


残月が猿である事を、イワン含め皆初めて知った。

怒鬼は無言だが何かこう、伝わるものがあるのでよしとする。

残ったのは、いかついおっさん。


「あ、ああ、番号は貰っていないが、犬の樊瑞だ」

「どこから一緒になりました?」

「走っているものを見るとつい」


ついて行ってしまうのだ。

犬の習性を痛いほど(本人含め)噛みしめ、番号6を教えて、菓子をあげて。

目の前の海を見詰める。

この海を渡れば鬼が島だ。

しかし、どうやって。


「はいはーい、良い事教えてあげようか!」

「あの、どちら様ですか?」

「私は孔雀のセルバンテス!38歳独身のナイスなおじさまだよ!」

「・・・・今自分でナイスって言ったよな?」

「38歳独身、でチャラだろう」

「アレじゃあ結婚できまい」

「はいそこ煩い!」


パンッと笑顔で発砲しやがった男にイワンは怯えたが、皆かわして煙草を吸ったり耳を掻いたり欠伸をしたりで緊張の欠片も無い。

男は嘆かわしいとばかりに首を振った。


「此処を渡れなきゃ鬼が島は諦めた方がいいねぇ」

「お、教えてください素敵なおじさま!」


食いついてさらっとこれの心を擽る呼び方をしたイワンはある意味天才だ。

セルバンテスは「くはぁっ・・・・」と堪らなそうな溜息をつき、イワンの肩を掴んだ。


「よし、じゃあ教えてあげるから私の寝室・・・・」

「寝室のお掃除ですか?」

「え、う、うん、お願い」


必死な姿に一瞬怯んでしまい、寝室のお掃除を頼んでしまった。

結果。


「まぁ、この海亀に乗ればいいんだけど・・・・」


イワンを食べられず、ブルードネージュを貰ってもぐもぐしながら、セルバンテスは指差した。


「え、あの、これ、海亀・・・・・?」

「うん、海亀の十常寺」

「早く乗るべし」


甲羅を背負って海に入っているが、明らかに人型だし、着物濡れてるし。

重ね着で透けていないのが救いだが。


「お、お願いします・・・・」

「承知」


おぶられて、海を進む。

満潮の遠浅は水深三十センチ。

イワンが全く濡れないと言うのを追求しただけなので、皆ジャブキャブ渡っている。

スラックスが濡れても気にしない。


「海亀を選ぶ所がのぅ」


見れば、浮かせたスノーボードに座ってふわふわしつつついてくる狐。

彼はカワラザキと名乗り、矢張り菓子を欲しがった。

渡すと、お礼についてくると。

対岸に着き、イワンが海亀の背から降りる。

海亀にお礼を言い菓子を渡す。

すると矢張りついてくるわけで。

桃太郎とオトモ9匹、鬼が島に上陸。





「偵察は雉だろう」

と言う幽鬼の意見のもと、飛びはしないが跳んで門の中を確認したレッドは、仕草で


「今なら錠前外してもバレん」


と言った。

するとイイ笑顔で進み出たのは猿。

かんぬきでなく錠前だったため、針を2.3本使ってモノの十秒で開けてしまった。

明らかにプロの動きである。

皆普通にしているが、常識人イワンはこれは問題だろうなぁと思い、それをそっと心の奥にしまった。

きっちり施錠して。

さて、鍵を開けてイワンが扉を押すと、皆わらわら入って、勝手気ままに散策開始。

イワンは溜息をつきながら扉を締めて、鬼の城・・・・と言うか洋館の中を歩き始めた。

人様の家の冷蔵庫を開けているレッドも、片っ端から彫像の首を落として遊んでいるヒィッツも今は放っておこう。

孔明の負担を軽くするため、頑張らねば。

なんて意気込んでいたのだが。


「あ、すみませ・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


角を曲がってぶつかった男は自分のお供ではない。

黒い短髪、赤い瞳、黒いスーツに葉巻。


「え・・・・えあ・・・・っ!」

「・・・・?」


突然ダッシュで逃げようとし始めた生き物を捕まえ、アルベルトはそれの顎を掴んでまじまじ顔を見た。

見覚えはない。

邸内からは不穏な音。

とは言え、荒らされて困る事も無い。

だからと言ってタダで荒らされてやる言われは無い。

それにこれは美味そうだ。

にぃ、と笑った男はまさしく「鬼」で、イワンは掠れた悲鳴をあげて手を引いた。

身を捩って振り払おうとするが、引き寄せられて身体をさすられる。

荒々しい手つきに、身体が熱を持つ。

3か月で大人になってしまった彼は、当然経験はない。

それについての知識は子供程度しかなく、ほぼ無知と言って過言でない。

孔明はじっくり実技で教える気だったらしいが。

兎角、何だかドキドキする触り方である事は間違いない。

どうしていいか分からずにされるがままになる身体。

アルベルトは恥ずかしそうにしつつもどうすればいいか分からない様子に、思わず口端を吊り上げた。

ぐいと雄を掴んで揉んでやると、腕に白い指が食い込んだ。


「あ・・・・っ、そこは・・・・」

「ここか?」

「んんっ、く、ふ・・・・!」


目をきつく閉じて唇を噛む仕草が堪らない。

唇を無意識に舐め、アルベルトはイワンのベルトのバックルを外し、スラックスを蟠らせた。

明るい場所で下半身のみを晒され、イワンが頬を赤くする。


「やっ・・・・ん、くっ」


つぅっとなぞられ、腰が震える。

腰が痺れて、気持ちが良い。

でも、どこか背徳感がある。

首を振ってやめて欲しいと訴えるが、男は笑うばかりで。

背から抱き込まれたまま扱かれて、腰を引く事が出来ない。

腰のあたりには固くなった男根の感触がしていて、息が止まりそうに恥ずかしい。

胸をいじられて痛みに身を捩ると「感覚が鋭すぎるな」と笑われて。

何の事だか分からなくて、肩に顎を乗せた男を必死で見つめる。

すると、頬を舐められて。


「え・・・・・っや、そこは・・・・・っ!」


奥の奥に、入ってくる指。

先走りに濡れても、初めてのそこは激しく拒む。

イワンがそこでの性交どころか性交の仕方すら知らない事を知らないアルベルトは、余りの暴れっぷりに焦れて耳を噛んだ。


「暴れるとこのまま突っ込むぞ」


それでもイワンは暴れるのを一向にやめない。

これ以上に怖いものを突っ込まれる事を発想すらしないのだ。

だが、矢張りアルベルトが知る筈はないわけで。

乱暴に指を引き抜き、バックルを緩めて自身を取り出す。

大きなそれはたっぷり血を含んで硬く怒張し、ぴくぴくしていた。

押し当てると、ぎくんと身体が強張る。

息も止まっていて、冷や汗で身体が心地よく湿り。

匂い立つ色気。

堪らずねじ込んでやると、悲鳴を喉に張りつかせてもがいた。


「っあ、い、あ、いた・・・・痛・・・い・・・・」


しゃくりあげるたびに締まってかなり痛い。

だが、熱さと濡れは具合が良い。

かりを慎重に通し、あとは力任せに押しこんだ。

仰け反る身体をしっかり抱きしめて、首筋を吸いながら腰を揺らす。

血臭さえ興奮を煽る甘さだった。

ゆっくりと腰を揺らすと、咥え込んで締め上げている為に腰が一緒に揺れ、余り注挿は出来ない。

しかし震動で徐々に強張りが抜け、僅かずつに滑りが良くなる。


「あ、あ、そん、な・・・・」

「どうした、初めてか?」


後孔に男根を突き入れられて感じる感覚に怯える姿に笑うと、涙ぐんで唇を噛んだ。

奥まで入れて突き上げてやると、身を捻って嫌がる。

どうしたのかと思っていると、掠れた声で白状した。


「出る、から、やめ、て・・・・」


トイレ、行かせて。

掠れた声で請われ、アルベルトはくつりと笑い、後ろから脚を抱えて開脚のまま持ち上げた。

ぐい、と奥を突く。


「っあ、や、やだ、や・・・・っああああ!」

「っくく・・・・勢いが良いな」


ぱしゃぱしゃと小水を漏らすイワンを眺めてやる。

人前で、しかも異常な状況で小水を漏らしてしまった事に泣きじゃくるたび、良い具合に締まる。

堪らず中に種付けすると、今度は精液を噴き零す。


「や・・・・なに、これ・・・・」

「前立腺を突かれれば射精するものだ」

「この、白いの・・・・?」

「・・・・・貴様本気で言っているのか?」


引き抜いて下ろしてやると、崩れ落ちそうになるので支えてやる。

床に座らせてやり、今一度抱き上げた。


「話を聞こう」





「・・・・・と、言うわけでイワンが身体を張って貴様の仕事を軽くした」

良かったな、親孝行な息子を持って。

そう言われても何の嬉しさも感じない。

すっかり躾け直されて益々美味しそうになってしまったイワンは、鬼・・・・アルベルトに懐いてしまっている。

従順にしていたのが悪かったか・・・・。

鬼が島から某所にお引っ越しした鬼は、そこに可愛い恋人桃太ろ・・・・イワンを監禁・・・・住まわせて楽しく暮らしている。

孔明に手紙を毎日書いて投函しているイワンだが、全てアルベルトが回収、後に焼いている。

野放しだった動物は鬼が島各所に巣を作り、鬼と同等にたちが悪くなっている。

それが9匹なので、孔明の負担は簡単に計算して九倍。


「・・・・策に、溺れましたかね」

「そうだな」


葉巻をふかす鬼に、孔明はぼんやり窓の外を見た。


「何処か遠くに行きたい・・・・」


一週間後、イワンさんのもとに孔明が訪ねてきます。

どうやら休暇をもぎ取り旅に出たらしい。

休暇中はここに居ますと言う孔明と、牽制するアルベルト。

戦いは、終わらない・・・・。





***後書***

公開プレイと無知でお漏らしプレイを真剣に迷った30分。