【 パラレル-016 】



このままでは、駄目になってしまう。

私の所為であの人が、おかしくなってしまった。

私さえいなければ、あの人はちゃんとした人を見つけるだろう。

そう思って、城を出た。


「今まで有難うございました・・・・少し怖かったけれど、楽しかったです。どうか、お幸せに・・・・」

「って何処に行っちゃうのかな?」

「えっ、あっ、お、お母様・・・・」

「はいはーい、お母様ですよ。でもセルバンテス様って呼んでね?その方が嬉しいなぁ」

「せ、セルバンテス様・・・・」


そう、このお母様、女王セルバンテスの卑猥な苛めに耐えきれず、イワンは家出を計ったのだ。

この男が元々おかしいとか、自分限定のセクハラであるとか知らないイワンは、純粋に道を踏み外しかけている男を心配している。

既に踏み外して転落中だが、まだ少しまともだ。

それを何とかつなぎ留めないと、38歳独身には勿体ない素敵な人なのに。

お婿に行けなくなってしまう。

自分が行こうとは思わない所が痛いが、イワンは真剣に心配していた。

しかし、家出なんていうセルバンテス的大罪を犯せば、お仕置きは必至。

幻惑の邪視が酷薄に細まった。


「・・・・いけない子だねぇ」

「あ・・・・も、申し、訳」

「許さない」


セルバンテスの手が、イワンの首筋に触れる。

する、と指の甲でなぞり上げ、耳元で甘く冷たく囁いた。


「私の部屋に行きなさい。直ぐにだ。今から十分だけ待ってあげるから、服を脱いでおきなさい」

「そ、それは・・・・」

「出来ないなら幻惑で従わせても良いんだよ?」


にこりと優しく笑うと、イワンは肩を揺らして俯いた。

だが、抗う術はないと知っている。

重い足取りで歩きだした後姿。

ああ、やっと焦がれたものが手に入る。

いつも寸でで逃がしてきたが、もう逃がさない。

ゆっくりと歩き出す男のクフィーヤが、風に揺らめいていた。





「おいで」

「・・・・・・・・っ」

おずおずと寄ってくる身体はたわわな肌を惜しげなく晒し、仄かなピンクに色づいている。

傍に寄って俯く身体を引き寄せ、抱きしめた。

温かで柔らかな身体。

女性とは確実に違う、違うが故に心地好い。


「あ・・・・っ」

「ん?こうしたら気持ちが良い?」

「ち、違、や、ぁ・・・・ん・・・・・」

「ふふ、可愛い」


背中を擽る様に撫でると、背がさぁっと粟立つ。

随分敏感だ。

肩甲骨や背骨を辿って、セルバンテスはイワンを寝台に降ろした。

うつ伏せにされて見上げてくるのに優しく笑い、滑らかな背中に唇を寄せる。

とても口触りの良い肌に目を細め、ゆっくりと舐め上げる。


「ぁ、ああ、は、あ」

「ぞくぞくするかい?」

「ん、っん」


甘噛みしながら舐め下ろしていき、腰のくぼみを吸い。

震えている白い尻に唇を押し当てて柔く吸った。

甘い悲鳴が迸るのが堪らない。

何度も臀部を吸い上げ、時折強く吸いついて、花弁を散らす。

押し広げて際どい所に吸いつくと、晒されたピンクの蕾がひくんと動いた。

息を吹きかけると、きゅっと小さくなる。

可愛いそこを構うのはもう少し後だ。

一度身を起こし、イワンの背に沿う。

体重をかけ過ぎないようにしながら前に手を差し込み、胸元を探る。

少し硬くなった、胸の尖り。


「あ、あっ、や、そこ、は」

「擽ったい?」

「あ、あ、ち、ちが、くて・・・・」


そんなのは分かっている。

がくがくしている腰を見れば、性的な快楽を感じているのは明白だ。

この白百合が穢されぬように純粋培養したのは自分だ。

知識は与えた。

だが、身体は無垢だ。

いつも微妙に邪魔をして、自慰すら許さなくて。

溜まる欲望に身を焼いて夢精するまで我慢させる。

別にその下着やシーツをどうしようと言うわけではない。

辱めて、苛めて。

そして身体を触って、また追い詰める。

胸を触られてこんなに感じる可愛いひとの項に口づけた。

甘い体臭で肺を満たす。

こりこりと尖りを弄りながら興奮あらわな男根を押しつけてやると、息をのむ。

柔らかい臀部にごりごり押し当てながら、耳を噛んで、胸を弄る。

声は小さく上げるが、緊張にしゃくりあげ始めてしまった。

ゆるゆると左手を下ろし、袋の裏を探ってみた。

嫌がっても、この体勢では到底逃げられない。

快楽にひくひくしているそこを揉んでやると、悲鳴を上げた。


「な、なに、を」

「ここにねぇ」


私のを挿れるんだよ。

間近にあるイワンの顔に、恐怖の色が浮かぶ。


「そ、んな、事」

「大丈夫、一杯いじって、イワン君も気持ちいいように」


中を沢山苛めてあげようね・・・・。

すっかりセルバンテスに苛められる癖が付いているイワンは、こういう性的な行為は受けた事がなくても十分怖かった。

セルバンテスは苛めても嘘はつかない。

だから、本当に気持ちいい事をされる。

本当に中に入れられて気持ち良くされる。

それが怖くて、イワンは怯えた。

セルバンテスの甘い声が耳を擽る。


「ほら、指を入れてあげるから」

「や、あ、ぁ、んん」


要領良く軟膏でぬめらせた指を差し込まれ、背が反る。

じんじんして痛い。

でも、中の圧迫感が気持ちが良い。

けれど、一本でこんなに苦しいのに、あんなものを入れたらきっと壊れてしまう。

恐怖に竦むイワンの身体を撫でまわし、セルバンテスは耳を軽く噛んだ。


「息を吐いて・・・・そう、もっと吐いて」

「は、はぁ・・・っは・・・・んぁあっ!」


肺が潰れるくらい息を吐いた瞬間に、奥まで指を入れられた。

入口のじんじんが収まってきて、圧迫感が残る。

思わずそこを締めてしまい、腰が重く疼いた。


「う、ん・・・・ぁ」

「あんまり入口を擦ったら痛いかなぁ?」

「は、ぁは・・・・ひぁんんんっ!」

「気持ちいいかい?」

「あっ、ああっ、あああ、あ!!!」


女に潮を吹かせる時の手淫のように、激しく細かく突かれる。

後孔がじんじんして、中が重く疼いて、痛気持ちいい。


「はっ、はぁっ、あっあっ」

「ふふ、これはどうだい?」

「あっ、ああ、あ」


ぐっと広げられて、もう一本差し込まれる。

それを捩りながら押し込まれ、イワンが身悶える。

執拗に与えられる後孔への刺激に、腰から下が溶けたようだった。


「いやらしいなぁ。ここ真っ赤になってヒクヒクしてるよ?」

「あっ、あっ、や、め、て・・・・言わな、で・・・・」

「駄目。ねぇ、イワン君。もう怖くないだろう?」


ここに入れてあげようね・・・・。

色気たっぷりの声に、イワンの身体が激しくしなる。

彼も大人の男だ。

想像力は人並みにある。

そこにねじ込まれるものを想像してしまって。

酷く感じて。

初めて意識がある状態で射精を経験した。


「あ・・・・あ・・・・」

「ああ、そんなに気持ち良かった?」


卑猥な妄想でイクなんて、悪い子だねぇ。

囁かれ、イワンの瞳を涙が濡らす。


「許して・・・・もう、許して・・・・」

「駄目だよ。ほら、ちゃんと「入れてください」って言ってごらん?」


涙を流して首を振るイワンに、セルバンテスは優しげに笑った。


「言えるまで待ってあげようね」





中々言わないイワンに腹も立てないセルバンテス。

彼が仕事の電話で席を外した時だった。


「・・・・・・・・なんだ、おらんのか」


窓から入ってきたのは、隣国の王様。

彼はたまにセルバンテスとチェスをしたり酒を飲んだりでここに訪れていたが、イワンの事は知らなかった。

セルバンテスの自慢は聞いていたが、そうたいしたものとも思えない。

第一33の男だと言うではないか。

何がそんなにあれを燃えさせるのかは到底理解できない。

アルベルトは部屋に入り、啜り泣きに気づいた。

女かと呆れたが、ベッドに近づくとそれは33歳くらいの男。

これか。

瞬時に納得した。

確かに妙に可愛げがある。

綺麗な顔と言うわけではないが、愛らしい。

白い肌も、柔らかそうな身体も。

甘い匂いも、掠れた啜り泣きも。

全てが男を燃えさせる。


「・・・・・セルバンテスに抱かれたのか」

「・・・・・・・・」


イワンは泣きながら首を横に振った。

責め苦に疲れ果てていた彼は、それが誰かなどもう考えなかった。


「許して・・・・・」


泣きながら許しを請う姿に身体が熱くなる。

見れば、身体はたっぷり可愛がられたらしく、桜色に上気していた。

一度いかされたようだが、脚を開かせても蕾から白濁は漏れていない。

だが、執拗に嬲られた形跡はある。

赤くなって蠢くそこに、喉が鳴る。

一度味見をした所でそう困る事も無かろう。

それが『初めて』であると知らないアルベルトは、凶器を取り出してあてがった。

イワンを見ると、顔を背けて目を閉じている。

まるで捧げるように身を差し出すのが、酷くいやらしい。

ゆっくり沈めるが、余りのきつさと絡みつきの心地よさに、急性に突き込んだ。


「んくっ、ふ、く」

「息を詰めるな・・・・」


言っても上手く出来ないでいるイワンに手を伸ばす。

腹を立てたのではない。

負担を軽くしてやりたかった。

此方を向かせ、口づける。


「ん・・・・・」


くちゅ、と舌を絡み合わせてやると、胸を手が這う。

弱弱しく叩かれ、一度唇を離した。

急激に肺を満たす空気に咳き込むたびに締まる肉孔。

思わず息を詰める。


「・・・・・痛むか」

「あ・・・・」


じんじんして、おなか痛くて、気持ちいい・・・・。

零れ落ちた言葉のいやらしさに息が止まる。

ゆっくり引き抜いていくと、苦しがった。

だが、奥を強く突き上げてやると、覿面に感じている。

放出を堪えて歯が鳴る程噛みしめて、突く。


「っ、ふ・・・・・・っ」

「ぅん、んっ、あっ、あは、っあん!」


激しくなる律動、卑猥な水音。

中にぐりっと捻じ込んでたっぷり出すと、イワンが身体をびくつかせて射精した。

ピンクの舌を小さく覗かせて喘ぎ喘ぎ白濁を噴き零す姿が可愛い。

もう一度ゆっくり口づけて口内を味わう。

その甘さに、また熱が暴れ始める。

何も知らないしらゆきひめを、何時間もかけて凌辱する。

明け方になって、呼吸のたび痛々しい音を立てる喉が気になり、テーブルの上の林檎を取った。

一口かじって、果汁が滴る部分を唇にあててやる。

少し目を細めて心地よさそうに飲み込むのがもっと見ていたくて、何度も繰り返した。

しらゆきひめが眠ってしまうまで、ずっと。





「腹捌いて内臓口から食わせてやるっ!」

「やれるものならやるがいい!」

あんまり可愛いしらゆきひめ。

見ているうちに段々夢中になってしまって、人のうちから勝手に持って帰ってしまった王様。

激怒してハンマーアックス片手に乗り込んできた女王様。

取っ組み合いの大喧嘩という名目の派手な殺し合いを始めた。

イワンがまさかの初めてで、とんでも無くヤル気かつ殺る気の出ている王様は絶好調だ。

鳶に油揚げ掻っ攫われた女王様はもう口には出せない鬼の形相。

我儘で意地が悪いけれど、優しくて格好良い王様に、しらゆきひめは一生懸命尽くします。

朝も、昼も、夜も、知らない事は教わって。

お料理も上手に出来ます、王様はスクランブルエッグがお好き。

お背中だって流します、王様は強めがお好き。

お口に入れる事も覚えたし、四つに這ってお尻を上げて「ください」とお願いするお願いすることも。

後者はまだうまく出来ませんが、将来有望。

でも、戦闘能力は皆無なので、8人の護衛がついています。

こいつらは単体で護衛に付けると危険ですが、まとめてつけるとフラグをへし折り合い安全です。


「しらゆきひめを返したまえっ!」

「もうワシのものだ!誰が返すか!」


殺し合いをしている二人ですが、やっぱり仲良し。

疲れ果てて戦えなくなったら、二人でしらゆきひめの可愛さについて語り合います。

しらゆきひめにカクテルを作って貰いながら。





***後書***

それは泥棒っていうんだ。もしくは誘拐ね。