【 パラレル-011 】



「はい、大丈夫ですよ」

小児科医のイワン先生はとても人気がある。

草間大作君やサニー嬢に、診察の後に本を読んだりしてあげているのはとても微笑ましく愛らしい。

今日も朝から、無言で針をぶすぶすやっている怒鬼看護師の後ろでおろおろしていた。


「ど、怒鬼様、それはちょっと・・・・」


失敗を繰り返す注射で真剣に顔色が悪いセルバンテスは、それでも朗らかに笑ってくれている。

それはひとえにイワンの為だが、イワン自身は気づいていない。

セルバンテスは断わっておくが38歳の大人の男、即ちいい歳のおっさんである。

なのに、見かけたイワンに診て貰いたいからと盟友に喧嘩を吹っ掛けて怪我を負い入院。

盟友の男性まで怪我をして入院。

初めの診察の時にその人は「あぁ・・・・」と言う顔をして溜息をついた。

小児科医を前にした盟友の顔を見ただけで全てを汲んだ素晴らしい人だ。

その後も「イワン先生じゃないと嫌だ!」とごねるセルバンテスをシバき倒して回収してくれる。

だがその後二人が病室をひっくり返して大喧嘩するのでどっちがいいのか分からない。

最終的には二人を別々の部屋に突っ込み、イワン先生が診察することで落ち着いた。


「痛いよー、看護師さーん」

「・・・・・・・・」

「ど、怒鬼様・・・す、すみません、セルバンテス様」

「いや、先生はいいんだけど・・・・ちょ、ちょっ、看護師さんその方向はちょっとヤバそうじゃないかなぁなんて!」

「ああああ、ど、怒鬼様!」


たかが採血なのに酷い惨状。

新人看護師の怒鬼は非常にマイペースかつ人の気持ちを考えずに何度もぶすぶすやっている。

しかしそれはぶきっちょな「ふり」をしているだけ。

いつもイワン先生にセクハラしやがって、という思いがイワン以外の当事者二人にひしひし伝わる。

だからセルバンテスは余裕のふりに拍車がかかり、怒鬼の容赦は無くなり。


「ど、どうしよう・・・・」

「この朝のクソ忙しい時に何をやっている!」

「ひっ」

「・・・・・・・・」

「やあレッド」


陽気な挨拶を無視して、レッドは怒鬼を押しのけた。

ぴっと針を打ちこみ、素晴らしい手際で採血終了。


「ふん、行くぞ」


怒鬼とイワンを連れて出て行ってしまった看護師さんに、セルバンテスは溜息をついた。


「良いとこ取りしたね、レッド」





「朝から大変じゃのう」

「はあ・・・・・」

朝の回診、最初はカワラザキさん。

老人の朝は早いと言うが、この時間に朝刊を全種読み終わって本日発売の女性週刊誌を隅々まで読破。

さらに読書を開始しているこの人は一体何時に起きているのだろう。


「御加減変わりはないですか?」

「特にないのぉ。しかし」


小児科医が引っ張りだされるとは大変じゃな。

患者が多いとは穏やかでない。

思慮深い言葉にイワンは苦く笑った。


「ええ・・・・医者が忙しいのは余りいい事では・・・・」

「おぬしは医者に向いてはおるが、同時に不向きだしのう」

「え・・・・?」


カワラザキは優しく笑い、イワンの頭を撫でた。


「お主に見られた患者は幸運じゃろう。必死になって治療してもらえるのだから。だがおぬしは傷を病を見るたびに傷つく。苦しむ人間に苦しむ」


診るお主は辛かろう、と言われイワンは泣きそうな顔で笑った。


「・・・・それでも私は、誰かの苦痛を和らげたいのです」

「・・・・そうか」


頭を撫でられているイワンは歳よりずっと幼げで、まるで彼が診る子らと変わらず。

カワラザキは慈しみを込めて優しく撫でてやった。





「・・・・幽鬼様?」

「・・・・イワンか、何だ?」

精神科で入院してリハビリ中の幽鬼さん。

何でも大変な心の傷を負ったらしい。

根が暗いのは元々らしいが、何処か子供の様な頼りなさが気になってよく話しかける。


「今日は、何をなさったんですか?」

「・・・・木を描けと」


簡単な心理テストだ。

幹や枝ぶり、実の有無や瑞々しさ枯れその他で心理状態を推し量る。


「幽鬼様なら、林檎の木を描きそうな気がしますが・・・」


なんとなくイメージで言うと、驚いたように見つめられ、そののち苦笑された。


「お前には隠せんな」

「あ、当たりましたか?」

「ああ、林檎の木を描いたよ」


そう言って、手にした赤い実を見せる。


「描いた後で食べたくなってな、買ってきた」

「剥きましょうか?」

「ああ、頼む」


病室に戻って、林檎を剥いてもらう。

しゃりしゃりと音を立てて剥かれていく皮。

実の両親すら知らないのに、この人の手に温かさを感じ、もっとと求めている。

いけないと思いながら、止められない。


「はい、どうぞ」

「ああ・・・有難う」


差し出されたうさぎさん林檎を手に取らずにかじりつく。

全部食べてしまって、唇に触れる白い指。

ちゅ、と含むと、笑われた。


「もうひと切れ剥きましょうか」

「ああ・・・・そうだな」


そしてもう一度、この指を口に含む口実を。





「女性より男にもてるな、イワンは」

「ヒィッツカラルド様・・・・」


女性看護師に人気の伊達男は、女性のトラブルで刺されたらしい。

担ぎ込まれるのでなく普通に歩いて受診し、診察の段になって「刺された」とスーツを脱いだ時は大騒ぎになった。

まさか白いスーツを派手に汚すのが自身の血液とは誰も思わなかったのだ。

交通事故の付添だと皆思っていた。

セクハラを気遣うふりのセクハラ発言に、からかわないでくださいと溜息をつくイワンはやっぱり可愛い。

病院の消毒液の匂いに染まりたくないといつも香水を付けている。

病人着は似合わないと思ってなと白いスーツで決めている。

それがこの可愛い小児科医の気を引く為とは誰が思うだろう。

当人イワン以外の全員は気づいているのに、イワン自身は全く気付いていないのだ。

しかも話し上手な男にうまい事騙されて、悩みをポロっとこぼしたからさあ大変。

セルバンテスのセクハラの細部まで聞かれ、こんな感じか?それともこうかと確かめられ、慌てたら一転、真摯な目で悩みを聞いてくれる。

よく分からないままに乗せられ、イワンはセルバンテスをどう扱っていいのか分からないのだと零した。

好意と言えば好意だが、その、勢いについて行けないし、第一双方男だし。

ヒィッツは少し考える仕草をし、イワンの頬を指先で擽った。


「まぁ、あの手のはあまり深入りすると厄介な事になるぞ」


言われて目を瞬かせると、白い目と目が合う。


「調子に乗らせると、夜中に」


こうやって身体をまさぐられて。


「えっ、あの」


こうして唇を。


「医者に手を出すとはいい度胸だ」

「れ、レッド様」

「やあ、レッド看護師。機嫌が悪そうだな」


青筋立てて引き攣った笑みを浮かべるレッドの指には複数本のメス。

彼は業務中もこの人気の小児科医の貞操を守っている。

いつか自分が純潔を穢す為に、日々の努力が大切だ。


「イワン、次の診察に行け」

「え、あの」

「行けと言っている」

「はっ、はいっ」


走っていくのを見計らい、二人は室内で距離を取った。

ここは病院、殺傷沙汰になっても助けてくれる場所だから。





「・・・・何だか騒がしいな」

「ええ・・・まあ・・・・」

隣室の樊瑞さんを診ながら、イワンは曖昧に頷いた。

樊瑞さんは胃潰瘍で入院中だ。

神経性胃炎も併発している。

胃を休ませるから主に点滴での栄養摂取だが、そろそろ飲料くらいは摂っても良い頃だ。


「何か、飲めそうなものはありますか?」

「珈琲・・・・」

「何ですって?」


微笑みの後ろに見てはいけないものを見て、樊瑞はさっと意見を変えた。


「ホットミルクが、良い」

「ホットミルクですね?」


出来ればお前のホットミルクを直に飲みたいと言いたかったが、それは流石にまずい。

ずれてはいても常識を一応持った男は、黙って頷いた。

少しして持ってきてくれたホットミルクはほの温かく、甘い。


「少し甘すぎんか?蜂蜜が・・・・」


不快ではないが、余りに甘くて訊いてしまう。

するとイワンは首を傾げた。


「砂糖も蜂蜜も入れてはおりませんが・・・・」

「砂糖も蜂蜜も入れて・・・・」


ああ、そうか。


「いや、勘違いだったようだ。胃がやられていたから味覚も若干おかしいらしい」


これは、貴方が作ってくれたから。

貴方の気配が、甘い気配が溶け込んでしまったから。

こんなにも、甘いのだ。





「・・・・何故でしょう」

「不思議この上なし」

「いえ、あの・・・・」

制限、かけましたよね?

一向に守ってくれないこの男、体調は最悪な筈なのに元気で、しかし数値は矢張り最悪。

制限と言うか、はっきり言って自作薬物の試し過ぎ。

怖い薬品もためらい無く一気してしまうのは自分に自信があるのか何なのか。


「問題なし」

「いや、あの・・・・って言うか元々何を作ってらっしゃったんですか?」


そんなに一生懸命に薬品を・・・・まさか不治の病の娘がいるとか。


「媚薬」


あっさり言われて脱力する。

どこまでも男の欲望を満たすための薬品でしかない。

何故それをそんなに一生懸命に。


「どなたかを想われていらっしゃるんですか?」

「是」

「ですが、無理に飲ませたら犯罪ですよ?」

「・・・・是」


僅かに目をそらしたこの人は、もしかして相当思いつめているのかもしれない。

イワンはそっと目を合わせた。


「十常寺様、早まらないでください」


イワンは貴方様が遠くに行ってしまうのは嫌です。

必死に言われ、流石の腹黒狸も思わず頷いていた。

イワンが嬉しそうに笑む。


「では、薬は控えてくださいね」


えっ・・・・?


「万が一薬物中毒を起こしては困りますし」


遠く、とは拘置所その他ではなくあの世の事だったらしい。

心配してくれるのは嬉しいが、結構過激な心配だ。

しかし、この可愛い笑顔でお願いされると断れないわけで。

渋々頷いた十常寺。


「願いなら寝所で聞く事望む」

「え?」

「否」





「夕食は食べれましたか?」

夜の回診に来たイワンに、残月は読んでいた本にしおりをはさんだ。


「ああ、きちんと食べたよ」


イワンがくすりと笑った。


「本当に?」

「ああ」

「では」


残月、のプレートの乗った食器の上に残っていた人参は誰のだったのでしょうね。

悪戯っぽく笑われて残月は苦笑した。


「そう言うところが小児科医だな」


見つかってしまったと言い、イワンを見る。

イワンは優しく微笑んだ。


「いつもは残したりしないのですから、何か理由があったのでしょう?」

「ああ・・・その、味付けがな」


グラッセはどうも、お前のしか受け付けんのだよ。

手を取って引き寄せ、膝に乗せる。

小さい頃からかかっている病院。

イワンが研修医だったころから知っている。

いつの間にか自分の方が身体が大きくなってしまったけれど。

入院も数回したが、小さい頃はあれが嫌これが嫌と食事を残していた。

その時に、イワンが人参のグラッセを作ってくれて。

子供向けの、甘い甘いグラッセ。

それなら食べるようになり、それが食べたくて他のものを必死で口に押し込んだ。

懐かしむ目をした残月の頭を、イワンはそっと抱いた。


「大丈夫、弟さんは目を覚まします」


幼い日の事故。

あの日から眠ったままの双子の弟は、この病院の一室に居る。

怖くて、目の前で息が止まるのではないかと恐ろしくて、ずっと見に行っていない。


「いつか、一緒にお見舞いに行きましょう」

「・・・・ああ」

「怖くないですから、ね」


優しい声音を聞きながら、清純な香りの胸に顔をうずめ、残月は目を閉じた。





「消灯ですよ」

「もう少し待て」

消灯時間を待てと言われてもと思うが、イワンはおとなしく待っていた。

五分程して本を置いた男に近づく。


「アルベルト様、御加減は」

「あの馬鹿が抉った傷は平気だ。はらわたは煮えているがな」


そう、この人がセルバンテスさんに喧嘩を吹っ掛けられた人。

喧嘩と言うよりどつき合い、と言うより殺し合いな殺傷沙汰を経て、入院中。

セルバンテスさんは脾臓破裂、アルベルトさんはわき腹を刃物で抉られていた。

二人揃って深夜の救急を受診、明るく笑っているのと不機嫌そうに怒鳴るのは間違っても怪我人に見えないが怪我は大変なものだった。

その後でまた担当医についてひと悶着あるが。


「熱はありませんね。食欲はありましたか?」

「ああ、普通だ」

「良かった」


ほわっと笑う笑顔の愛らしさに思わず心臓が跳ねる。

アルベルトは鼻を鳴らして不機嫌そうにそっぽを向いた。


「貴様がセルバンテスを構わんからこんな事になったのだ」

「・・・・申し訳ありません」

「あやつと付き合う時点で常に構ってやらねばならん生き物だと覚悟しておらんかったのか」

「申し訳・・・え、あの、付き合ってはおりませんが?」

「は?」


アルベルトは眉をひそめ、ついで深い溜息を吐いた。

またあの男の妄想か!


「貴様とセルバンテスの関係は」

「この間初めて診察しました」


ほんっとうに先走った妄想を聞かされていたらしい。

料理上手とか、エプロンが似合うとか。

ベッドの上では甘えてくるのにいつもはかまってくれないとか。

喘ぐ声が、イイとか。


「どうされました?」


問う声をつい勝手に変換してしまう。

息も絶え絶えになりながら、動きを止めた事に疑問を。


「いや・・・・」

「顔が少し・・・・」


赤い、と触れた手を掴み、引き寄せる。


「え・・・・?」

「セルバンテスの悪い手癖は許すのなら、ワシも少し遊んで構わんな」


言いながら、白衣の上から尻を揉む。

張りのある柔い良い尻だ。

むぎゅ、と揉み込むと、引き攣る。


「あ、あの、アルべ」


戸惑う唇を唇で塞ぐ。

顔を背けようとするのを顎を掴んでやめさせ、なおも舌を絡ませる。


「ん・・・・んっ・・・」

「は・・・・何だ、欲求不満か」


引かれる腰を引き寄せれば、軽く勃った雄の感触。

スラックス越しのそれを撫で上げてやると、びくっと身を竦めて逃げを打った。


「男の荒々しい口づけが好きらしいな」


セルバンテスとは口づけぐらいは交わしたか?

問うと、イワンは目を泳がせた。

それが妙に不快だ。


「ふん・・・・あの男に先を越されたのは気に食わんな」


無理矢理身体の上に乗せ、スラックスを破り捨てる。

剥き出しの白い腿に視線を這わせると、みるみる桜色に染まっていく。


「や・・・・放し・・・」


拘束された左腕を引くイワンを見やりにやりと笑う。


「大声を上げればよかろう。今度こそセルバンテスに殺されるかも知れんがな」


それは独占欲の強い盟友がイワンを、と言う意味だったのだが。

イワンは別の取り方をして、黙ってうつむいた。


「死ぬのが怖いか」

「・・・・死んだ人間は戻りませんから」


医者という職業からして「死」に対する恐怖があるのだと思った。

だが医者の彼が怯えるのは「他人の死」でしかない。

イワンは泣きそうな顔で、震えながら、這いまわる手に耐えていた。

胸を撫で上げられ、尖りを甘くいびられる。


「ひんっ・・・!」

「胸をいじられてここはびしょびしょか」

「あっ・・・・」


蜜を垂らす雄を握られ、腰が痺れる。

座りこみそうになると、腰を支えられた。


「痛・・・っ・・・!」

「固いな・・・・」


蜜に濡れても中々進まぬ指。

固く閉じた孔は竦んだ心で益々頑なだ。

アルベルトは指を強くねじ込んだ。

イワンの喉で引き攣った悲鳴が潰れる音がした。

イワンは自分の親指の付け根を噛みしめて泣いていた。

こんなに怖い思いまでして生にしがみつくのかと笑ってやろうか。

そう思うのに何故か嘲る笑いは出ない。

違う、と感じるのだ。

何かもっと、他のものを、自分を犠牲にして守っているような。


「・・・・何を庇っているのだ」


問いに、イワンは首を振った。

唇から血の滲んだ手を外させると、掠れた声で「アルベルト様が」と呟いた。

沸騰する、血液。

怒りではない、歓喜だ。

自分を守ろうと身を差し出すのが可愛くない筈がない。

吹っ掛けられた諍いの原因と思うと腹が立つから見ないふりをしてきたが、よく見れば可愛いではないか。

顔云々で無く、仕草とか、声とか、直向きさとか。


「イワン・・・・・」

「アルベルト様・・・?」


機嫌が直ったと感じ、イワンは恐る恐るアルベルトの顔を見詰めた。

目を瞬かせると、睫毛に残っていた涙が落ちる。

腰を持ち上げられ、布の擦れる音。


「ぃあ・・・・っ!!!」

「っは・・・・・手を噛むな」

「や・・・・」

「ワシはあやつ如きに殺されはせん」


刺さる剛直にすら悲鳴を押し殺して泣くイワンの手を握り、アルベルトは口づけた。

甘い口内をまさぐり、味わう。

口づけに夢中になって僅かに緩み始めたのを見計らって腰を揺らすと、甘い悲鳴とイイ締め付け。


「あっ、あん、あぁ、はぁっ」

「もっと鳴け」

「だ、め、だめ、ぇ・・・・あぁんんっ」


ずずずっと奥まで犯され、イワンは激しく見悶えた。

アルベルトの膝の上でゆらされながら、必死にしがみつく。


「あぁっ、や、死んじゃ、やだ、やっ」

「ああ、死なん。死ぬ時は連れて行ってやる」


戯れのつもりの、意識外の本音。

イワンが泣きながらしがみついてくる。


「置いていかないで・・・・!」


きっと彼には何か事情があるのだろう。

こんなにも「置いて行かれる」事に怯えている。

アルベルトはイワンの身体を掻き抱き、耳を噛んだ。

中に精液を流し込んでやりながら、囁く。


「ああ・・・・永久に「一緒」だ・・・」





「・・・・へえぇ?それで言い訳は?」

自分が目を付けたお医者さんを掻っ攫って行った盟友にタガーを突き付けながら、セルバンテスは頬を引き攣らせていた。


「私だってほっぺにちゅうしかしてないのに、よくもまあ・・・・!」

「・・・・こやつらしいな」


ほっぺにちゅうをわざわざカウントしたのが事の発端。

しかしそのお陰でこの可愛いお医者さんを手に出来たのも事実。


「セルバンテス、礼を言っておく」

「っ・・・・腹立つ!」


今度こそ本気の大喧嘩が勃発し、飛び起きた小児科医が二人を正座させるまで後十分。

白衣を纏う仁王立ちのそのおみ足を伝う白い液体に歯がみした男は数知れず。

それに気づいて真っ赤になって泣きだしたのを全員で慰める事になるのは、想像に難くない。


「先生、今夜の消灯は何時だ」

「今夜のって・・・・消灯は十時です」

「では十時に待っている」

「え・・・・あ・・・・」

「アルベルト・・・・即殺してあげるよ、病院飛ばして霊柩車にぶち込んでやるっ!」





***後書***

イワンさんが先生の方が話は長いらしいです。ごめん村雨、目が覚めてないらしいよ(ウチは残月(兄)と村雨(弟)の兄弟設定)