【 もしもシリーズ-009 】



退屈だ。

何もすることがない。

本当なら忙しい役職の筈なのに。

仕事を、取り上げられてしまった。

何故か。

仕事など後で良いからちょっとは大奥に行けと。

正直、興味がない。

女は良い匂いがするし好きだ。

だが、身綺麗にされるとどうも萎える。

化粧も装いも好きにしていいから、刺激臭がするくらい風呂を断ってくれまいか。

一言そういえば、欲望渦巻く大奥の女たちはこぞって望みに従うものを、怒鬼は黙っていた。

言っておいてあれだが、どうせ風呂断ちさせるならあの男が良いと決めている。

料理番の、洋人。

白い肌、鷲鼻、禿頭、そして甘い体臭。

流暢に日本語を話し、こっそり甘味もくれる。

優しいひとで、言ってしまえば惚れている。

でも、命令してもいいのだろうか。

立場としては許されるが、それゆえ心は伴わぬ。

溜息をつき、池に小石を投げた。

一番大きい錦鯉が、ぷかりと浮かんだ。





「どうか、頼めんか」

「このとおりだ」

「頼む!」

頭を下げられ、イワンは慌てた。

頭を上げて欲しいと頼み、顔を上げた殿の側近に首を振る。


「私になんて、気の迷いです。どうか、大奥の方に・・・・・」


奥ゆかしいひとは、頬を染めていた。

それはわざとでなく、純粋に照れだ。

そして、本当に怒鬼の事を思って身を引こうとしている。

この人がとても一生懸命怒鬼の世話をしているのは有名だ。

いつだって一生懸命に、直向きに、殿の為にと。

身体についても、お庭番の忍者いわく純潔。

大奥のお局様は叩きたくなる良い尻と言っていた。

いつでも御着物全開、色っぽさの欠片も無いむさ苦しい半裸は、恥ずかしがりやと。

何故娶ってしまったのか残念すぎる38歳組は口々に嫁にしたいと言っていた。

お前らが嫁になっている筈だと言っても聞かない。

だって政略結婚だしぃで終了だ。

洗濯が好きすぎて気持ち悪い女中は、ポケットに褌を突っ込みながら愛用は黒と教えてくれた。

ぱっちん庭師は、初々しくて落そうとしてもそう落ちるものでないと。

侍医は、心の中が清純すぎて泣けると言っていた。

薬師はそっと薬をさしだしてきた。

老中に相談したら、捕獲して怒鬼の寝室に突っ込めと笑っていた。

と、言う事で、お庭番に捕獲させ、薬師の媚薬を投与し殿のお部屋にぽい。

そして、殿が湯あみから帰ってきた。

がらりと開けて目に飛び込んでくる・・・・・ものはない。

鼻腔を刺激する、甘くかぐわしい匂い。

くんかくんかと探し回り、屏風の裏にいいもの発見。

息も絶え絶えで、着物の股を精液に湿らせる可愛い生きもの。

抱き上げても力なくもがくばかり。

布団に下ろして、縄を解く。

すっかり薬が回って快楽の坩堝に突き落とされているイワンは、抵抗することを思いつきさえしない。

早く触って欲しい、おちんちんを、いっぱい扱いて虐めて欲しい。

ぐるぐるする事を口に出す事も出来ないで、でも怒鬼はそれを察し。

・・・・察したが、その前に自分の欲望が満たしたい。

いつからここに転がされていたのか、乾きかけの先走りと精液。

服を脱がせ、丸裸に剥き。

脚を押し開き、鼻先を近づけて。

良い具合にかぴかぴになった精液の絡む陰部の匂いを、思いっきり吸いこんだ。


「あぁ、っそん、な・・・・!」


すーはーとジャンキー並みの呼吸音を立てている怒鬼に、思わず腰を捩る。

恥ずかしくて頭がおかしくなりそうだった。


「いやっ、におい嗅がないでっ」


嫌と言っても聞いてもらえない。

すーすーと軽い鼻息を立てて匂いを嗅がれて、段々興奮してくる。


「いや、いや、いや・・・・!」


恥ずかしがる姿は演技でなどないのに、立ってしまった雄はぴくぴくしながら濡れている。

顔を隠して泣きだしたイワンが流石に可哀想になって、怒鬼は名残惜しみながら最後のひと吸いをした。

そして、組敷いた身体を色々調べてみる。

風呂は入ってしまっているらしい。

が、あの濃厚な匂いに満足感があるから、腹は立たない。

取り敢えず、枕元の軟膏で指の滑りを良くした。

差し入れると、激しい肉の抵抗にあう。

一度指を抜いて、うつ伏せに返した。

先ずは、右手の人差指で気長に慣らす。

完全に引き抜くと嫌がって尻を振るから、抜け落ちないように抜き差ししてやる。


「んっ、んく、ん」


ちゅくちゅくと弄ると、尻が桜色に染まっていく。

背も薄らと染まって、何ともいやらしい。

汗ばんでくる匂いに大興奮だ。

指をもう一本増やしながら、片手で手早く衣服を脱ぎ捨てる。

そして、もう一本。

今度は左手の人差指を追加。

暫く弄って緩め、その三本でぐいと開かせる。


「んっ・・・・・・ぇ・・・・?」


振り返ったイワンは血の気が引く音を聞いた。

こじ開けて中の匂いを嗅がれるなんて、そんな・・・・!


「いやぁぁぁぁっ」


泣きながら尻を振り立てて逃げ出そうとするが、すっかり中の生々しい粘膜の匂いがお気に召した怒鬼は放さない。

孔どころか中が鼻息で冷たい位に吸引され、イワンはとうとうすべてを放棄した。

力無く転がって涙をとめどなく流しながら、尻の穴の匂いを嗅がれる。

かたかたと小さく震える姿は酷く痛々しい。

暫く匂いを嗅ぎまくって、漸く怒鬼は指を抜いた。

そして、今度は肉体的な欲望を満たそうと、尻を割り開いて突き刺し始める。


「・・・・・・・・・・・・・・・っ」

「んくぅ・・・・・ふ、く・・・・」


ズググ、と犯され、内腑が押し上げられる苦しみを味わう。

思わず締めると、小さく呻いて動きを止める。

が、我慢できなくなったか、突然突き上げられた。

蛙を潰したような悲鳴を上げたイワンの腰を肉が沈むほど掴み、激しく抜き差しする。

若さに任せた力強い犯し方だが、入口が熱く痺れて気持ちが良い。

上半身を布団に投げ出して指で上面を掴んだイワンは、犬のように喘ぎながら揺さぶられていた。

硬い男根が腸壁を押し開いて擦り上げる快楽。

一生経験することなんてないと思っていたし、こんなに気持ちが良いなんて思いもしなかった。

必死で唾を飲んで、舌を噛まぬようにする。


「ひ、ん・・・・・・っ」


中にぶちまけられるもの。

糸引き滴るそれは、大奥の女たちが殺し合ってでも欲しがる子種。

自分の中で死んで行くだけのそれ。

布団に向かって射精しながら、イワンはされるがままに仰向けになった。

甘く甘く口づけられて、なんだかとても。

安心した。





「君も今日からこの牢獄の住人ね!」

歓迎されてしまった。

良く考えたら髭のおっさん何人かいるじゃん、イワンさんくらいいいじゃん、と放り込まれた大奥。

今日からここで、イワンは殿の奥様。

セルバンテスと貝合わせをしたり、アルベルトと花札をしたり。

そして毎晩、殿のお相手。

匂いを嗅がれるのにいつまでたっても慣れないし、お風呂もいつの間にか入ってしまうけれど。

匂いを嗅がれて興奮してしまうのには磨きがかかる、今日この頃。

殿は今日も、池に小石を投げます。


「・・・・・・・・・・・(今日はどこの匂いを嗅ごうかな)」


ぷかぷか浮かぶ錦鯉は、白赤のまだら。





***後書***

髭のおっさん大豊作、そんな大奥、超欲しい(入りたいんじゃない、俺が将軍だ!!)