【 RPG-006 】



イワンは妖精だ。

妖精と言っても、永遠の少年と一緒に飛んでいるアレではない。

人に悪さをする、妖精。

人をだまして、状態異常にさせる。

どんな事になるかは彼自身も分からない。

ただ、その人間にキスすると確実にステータスに異常をきたすのだ。

今日は、森を通る者の邪魔。

4人組が3組通る筈だ。

時間差が殆どないから、同志討ちにしてしまおう。

純粋ゆえ、イワンは子供のように悪戯をしていた。

人間には悪戯をして悪さをするものと教えられてきた。

人間に変身・・・・と言っても羽を隠して大きくなっただけだが、今日の獲物を待つ。

最初は、何とも穏やかな雰囲気の4人。

話し声を聞いて判断した結果、どうやら森を通り抜けたいらしい。

だが、焼き払おうと言いだした。

穏やかそうなのに誰ひとり異論を唱えない。

やっぱり、人間なんて嫌いだ。

目の前に飛びだし、先ずは一人目。

肉弾戦に絶対向いていない男は、羽扇を持って硬直している。

ちゅぱっと唇を放すと、男が絶叫した。


「今日の夕飯はカツカレーです!!」

「・・・・・キレたのか?」

「理解不能、通常通り」

「混乱しておるのう」


混乱中の孔明に幽鬼は軽く首を傾げただけだった。

十常寺は冷めきった意見を提出。

カワラザキは回答は合っていても助ける気がない。

イワンは油断している幽鬼に飛びかかった。

混乱したって、この可愛い生き物にちゅーかまして貰えるんなら全然ok!な奴らは逃げもしない。

一生懸命なのはイワンだけだ。

幽鬼にぶちぅとかまし、きゅぽんっと放す。

ちょっと吸われたらしい。

幽鬼は突然へたり込んだ。


「帰りたい・・・・・・・」

「・・・・・本部か?」

「自分の部屋に・・・・」


引き籠りたいようにも聞こえるが、おそらくホームシックだろう。

元々多忙なカワラザキと暮らしていた幽鬼。

一人で平気な性質だから、ご飯がとかそういう話でなく場所的な話らしい。

しきりに部屋に帰りたいという幽鬼を放っていると、次は十常寺が捕獲された。

ちぅーと吸いついた後に感じる馴染み深い感覚。

吐き気、頭痛、目眩、その他。

自作薬物を試すと3割の確率で起こすこれ。


「毒と思わしき」

「うむ、顔色が悪い」


頷くカワラザキの目の前で、十常寺は倒れた。

飛びかかってくるイワンを反対に抱きしめて、口づけをかますカワラザキ。

激しい口づけからやっとのことで脱出したイワンは、けほけほ咳き込んだ。

カワラザキは自分の手を見つめていた。

ひっくり返したり開いたりして、頷く。


「見えんな」

「おや、どうした」

「おお、その声は白昼か」


後続が到着してしまった。

イワンがカワラザキと話す青年に飛びかかる。

ちゅぅぅっと口づけて離れる。

カワラザキは残月達に状況説明とイワンの能力の推測を話していた。

色めき立つ男達に恐怖を覚えたが、全員ステータスを狂わせてやると意気込み誤魔化す。

キスを受けた残月の手が震えていた。


「っ、身体が勝手に」


しぱっ。

すられていく全員のぱんつ。

しかもイワンのもの以外は速攻で投げ捨てた。

どうやらバーサクらしい。

なんて迷惑なバーサーカーだと思いつつ、毒状態の十常寺をひっ立たせて拘束させる。

叉焼よろしくごろつきながら洗濯物が欲しいと叫んでいるのはバーサクというより本音だ。

残月拘束中に接吻された樊瑞は、もろ出しのまま石化。

嫌な石像が出来てしまったが、触りたくもないので放っている。

ちなみに怒鬼が沈黙になっているのに誰も気づいていない。

やわらかぷにぷにの唇と良い匂いにご満悦の男はそれで全く構わないらしいが。

それを横目で見て笑っているヒィッツは、火傷。

捕獲して『お前と火遊びがしたい』と囁いたらぷいとそっぽを向かれてしまった。

気まぐれな妖精が可愛いと思ったから、惜しいが手を放してやった。


「まあ、妖精さん!」

「?」


服を引かれて見やれば、10くらいの少女が目を輝かせて見上げてきている。

この子は、逃がしてあげよう。

そう決めて、ほっぺたにちゅう。

眠ってしまったサニーを寝かせ、イワンは目つきの悪い忍者に掴みかかった。

ちゅむっとキスされ、とたん身体がぎくしゃくするレッド。

麻痺だ。

だが、きっと混乱も起こしている。

でないと、痺れながら茫然と『これが・・・・恋』と呟く彼が痛々しすぎる。

振り向くと、残りは2人。

先ずはカモンと手を広げている笑顔の方。

ちょっと背伸びしてキス。

・・・・・しようと思ったら、顎を掴まれ腰を抱き寄せられて深いキス。

嫌がって顔を背けてもしつこく追ってきて、酸欠で頭がくらくらする。

舌に噛みつき突き飛ばしてやっと逃げる事が出来た。

離れて人の影に隠れて様子をうかがうと、ゆらと立ちあがる。

彼は自身を色々確認し、頷いた。


「呪われちゃった」


世界が素敵に見えるんだ。

アルベルトが髭の38歳に見えるんだ。

そこの妖精さんが好きで好きでたまらないんだ!

妖精さんが私に可愛い顔で浣腸をねだるんだ!

二番目は間違いなく誰が見てもそうだし、四番目に至っては呪いというより妄想だ。

イワンは、やっぱり人間は怖い生き物だと思った。

そして、自分が後ろに隠れても動じず葉巻を吸っている男を睨みつける。

悠々と紫煙を吐きだした男は、あろうことかそれを地面に落して踏み消した。

イワンの目がつり上がる。

ネクタイを引っ張って、キス。

あっさり離れた男が、眉をひそめる。

もっと困ればいいと思いながらさっさと逃げ出そうとして、捕まる。

掴まれた腕が軋む。

痛みは、あとから来た。

激痛に身を捩ると、頬を張られる。

驚いて見返すと、男の瞳が怒りに燃えていた。

怒りステータスを誘発してしまったらしい。

普通は仲間に当たり散らして乱闘なのだが、アルベルトの怒りは何故かイワン一人に向いた。

引き倒して、押さえつける。

口に指をぐいぐい突っ込んで喉に指を入れれば、苦しそうにえづいて首を振る。

だが、喉に指が入っているため吐き戻せない。

苦しさに泣きだしたイワン。

はじめに言ったが、彼は純粋な妖精だ。

妖精は自然界から派生するもの。

生殖行為など知りもしない。

強姦されると分かるならまだしも、何が何だか分からないで、何をされるのかという恐怖。

あまりの恐ろしさに激しく暴れだした彼の頬を、アルベルトは加減なく殴打した。

口端から血が散って、イワンの動きが唐突に止まる。

あまりの恐ろしさに、動けなくなって。

蜜のような、花のような匂いにあたりを見回すアルベルト。

そうして、やっと気付いた。

妖精は人とは違う。

恐怖に失禁したが、匂いは摂取する花やその蜜そのままだったのだ。

つまらなそうに鼻を鳴らし、服を引き裂く。

濡れたものを掴んで乱暴に扱くと、引き攣った悲鳴を上げた。

そういえば、妖精は生殖能力がないと聞いたと思いだす。

ならば、何のための器官なのか。

袋も幹も、人と変わらない。

荒っぽく扱くと、泣きながらもがいた。

暴れっぷりに手を焼いて、黙らせる意味と欲望の始末を兼ねて、白い尻を割り取りだしたものをねじ込む。


「ひぐっ・・・・・!」

「・・・・・・・っ!」


妖精というものは不思議だと思った。

中はあたたかく濡れて、心地よく締め付けてくる。

直ぐにでも出そうなくらいに具合が良い。

だが、本人は相当苦しいらしい。

人間だったら、苦しんで頑なであるとか、身体が慣れて気持ちいいとか。

そういう統一感があるのだが、これにはない。

だが、怒りと快感に任せて、アルベルトは容赦なく腰を使った。

えぐえぐと泣きながら怯えるイワン。

嗚咽の度に良い具合に締まる中に、獣のように唸って流し入れる。

イワンは酷くびっくりしたようで、涙も止まって目を瞬かせている。


「いまの、なに・・・・・」

「・・・・・精汁だ」


無意識に、イワンの雄を濡らす透明な液を舐め、気付く。

急速に鎮火していく怒り。

引き抜いて仕舞い込み、イワンの蜜に濡れた指を孔明の口に突っ込んでみた。

ぴたと動きが止まり、今までの姿を想像するのが難しいほど平常に戻った孔明。

全員の動きが止まった。

今一瞬、絶対に正気だった。

が、皆おかしいふりをしてイワンに群がる。


「吸いたい!直に飲ませて!お小水も!」

「私が先だ!」

「いや、私だ!」


結局始まった乱闘。

イワンは何とか身を起して座りこんだ。

腿を伝う白濁がいやらしい。

きょとんとしている妖精を抱き上げるアルベルト。


「や、やだ、人間なんか、嫌いだっ」

「人間?」


アルベルトは首を傾げた。


「ここに居るのは全員、淫魔だぞ?」


目の前が真っ暗になる緊急事態。

イワンは暴れたが、放してもらえない。

そのうちなんだか悲しくなってきて、叩かれたほっぺたが痛くて。

しくしく泣き出したイワンに、今度はアルベルトが焦った。

今までの強気で生意気な姿と違う、しおらしい姿。

可愛いだけに、可哀想さが増す。

宥め透かして機嫌を取って、やっと泣きやませて。

持って帰って手当てをして、目を覗きこむ。

早くステータス異常を解けと言ったら、イワンはきょとんとして首を振った。

自分の能力は、精々1時間で切れてしまうのだと。

もう、3時間は経過している。

アルベルトは首を傾げた。

どうもこの妖精が可愛い。

魅惑を掛けられていると思ったのに。

試しに万能薬を飲んでみたが、変化なし。

もっともっと笑って欲しい。

一緒にいたい。

好きに、なって欲しい。

いつも反吐が出ると思っていた純愛じみた感情。

試しに、抱きしめてみた。

甘い匂いを吸いこんで体を触ってみると、自身は反応する。

やはり、そうだ。

好きになってしまったのだ。

ぎゅうと抱きしめて、自分のものになれと囁く。

妖精は不思議そうにして、嫌だと首を振った。

理由も分からぬ要求を飲めぬのは当たり前だ。

考え直して、目を合わせる。


「今帰れば、10人がかりで寄ってたかって犯されるぞ」

「・・・・・?」

「サニーの目の前で、な」


イワンが目を瞬かせ、ちょっと考えてそれは嫌だと首を振った。

そういう習慣がない妖精に性的な羞恥は薄い。

だが、子供に優しいのは人一倍だ。

目の前でそんな事をしてはいけないとおぼろげに感じたのだろう。


「嫌なら、ここにいろ」

「はい」


すっかり騙されてしまったイワンは素直に頷いた。

なんとなく正しい言い分のように聞こえたし、何より優しくされた時に見た笑みが気になった。

こんなにドキドキする状態異常を治してから帰らないと、きっと死んでしまうから。

そうして、妖精イワンと淫魔アルベルトの不思議な生活が始まる。

何も分からない妖精に仕込むのは想像以上に難航。

しかし、それはそれで構わない。

少しずつ花開く身体の蜜は、花など到底かなわない御馳走だ。

時折訪ねてくる10人の男を撃退し、妖精さんを苛めたでしょうと怒る娘をいなしつつ。

幸せに、暮らしましたとさ。





***後書***

っていうか、サニーちゃん転がしたまま帰っちゃったアルベルトの鬼さは半端ない。