【 RPG-007 】



アルベルトは現在、暗いダンジョンの中を探索中。

パーティ人数、1人。

帝王過ぎて友人が出来ないタイプの男は、最初から今までひとりぼっちで戦っている。

が、何ら不自由は無いし、寂しいなんて考えた事すらない。

気ままにモンスターを狩り、宝を探す。

気にいったら、持って帰る。

どんなに高価でも、いらないと思ったら放置。

別に生活に困ってはいないし、ハンター気質でもない。

言ってみれば、暇つぶしだ。

娘に夜遊びがばれそうになっているので、自重中。

その暇を埋めるべく、日々ダンジョンに潜っている。

モンスターを倒し、勝手に宝箱をあさり、やりたい放題。

そんな男を待ち構えている、一つの宝箱。

中には、お馴染み『ミミック』がいる。

ミミックとは『擬態』を意味する。

欲に目が眩んだ冒険者たちをひとのみにする恐怖のモンスター。

だが、彼らは基本的に単独で、一つの宝箱には一匹しか入っていない。

そうなると、情報の共有は殆ど無いと言っていい。

お宝ハンターアルベルトは、既に幾多のミミックを葬っていた。

飛びかかってきても一撃粉砕、元々そう強いモンスターでもない。

そして、今目の前の宝箱。

大きな絨毯の上、そのど真ん中にででんとある。

その上、殆ど沈んでいない。

そして、蓋は閉まっている。

・・・・ちょっともぞもぞしている。

これは相当間抜けなミミックだと感心し、悪戯心を出して手をかける。

開けて、思わず口が開いた。


「・・・・・・・・・・・・」

「?」


お着替え中。

どうやら、このミミックはかなり変わっているらしい。

普通は、宝が入っているように見せるもの。

金銀、財宝、宝石。

剣、盾、杖。

それは人間の欲望を刺激する、欲しいと思う、箱に手を出す。

そういう仕掛けだ。

しかし、このミミックは何を勘違いしたのか、服を脱いでいる。

そう、着るところでなく脱ぐところ。

まぁ、一理はある。

欲望は欲望だ、性欲も。

だが、雌でもないのに何と無謀な。

引っ張り出しても、不意打ち命のミミックはなすすべがない。

もがいたところで、成体のこれも幼児程度の大きさしかない。

比率は大人だが、小さい。

宝箱に入っているから当たり前と言えば当たり前なのだが。

ばたばたもがくから、ぽいと落として踏む。

軽く踏めば、もう身動きも取れない。

そこで、初めて顔を見た。

まじまじ見て、少し考え、もう一度見やる。


「擬態しているのか?」

「?」


ふるふる、と頭を振る。

箱には、イワンの文字がある。

素にしてはなかなか愛嬌がある。

ちょっと考えた。

獣姦どころかモンスター姦だが、誰にもばれなければ問題あるまい。

可愛いし、具合も良さそうだし、決めた。

すぐさま、魔物の巣窟で始めてしまう。

周りに魔物の気配は無いから、手早く済ませれば大丈夫だろう。

そろそろ禁欲にも限界が来ていたところだ。

出すもの出して、すっきりしたい。

口に指を突っ込んで掻きまわす。

喉まで突っ込むと、激しくえづいて嫌がった。

アルベルトを食べ損ねて空腹のミミックは、吐くものもないらしい。

喉奥のねっとりとした唾液を指に掻き取り、引き出す。

けほげほと咳き込むのを放ったまま、後孔を指で探った。

少し硬いが、捩じ込めば何とかなりそうだ。

モンスターだからそうそう死なないだろうし、こちらには牙もない。

顎を掴んで、しっかり固定。

口を限界まで開けさせ、男根を濡らすために差し入れる。

ぐぐ、と差し込むと、えづく動作とくぐもった悲鳴。

咽頭をがつがつ突き上げる。

人間だったら、ヤバいぐらいに。

先を刺激するこりこりした咽頭に目を細め、喉の奥をごりごり犯した。

途中何度か身体が弛緩したから、意識を失う事はあるようだ。

ごぼごぼと変な音を立てて抉り掻き出される喉の粘膜。

出血する事は無くとも、痛みは相当だ。

それに、呼吸も阻害されている。

引き抜くと、鼻から唾液を逆流させて泣いていた。

口の周りもどろどろ、だらだら垂れ落ちる唾液は、好き勝手に喉を刺激されたために止まらないようだった。

鼻を鳴らし、脚を掴む。

開かせてあてがい、狙いを定め。

強く打ち付けるように、打ち込んだ。

穴があいているのだから、上手くすれば確かに刺さる。

だが、緩めてもいないところに男根を捩じ込まれれば、当たり前だが激痛なんて生易しいものではない。

ぶくりと泡を噴き、がくんと身体が弛緩する。

丈夫なもので、怪我はしていないが。

そして、具合。

今までにない上等さだ。

人間の女なんて目ではない。

とろけるように絡みつき、熱く濡れ、絡みは強く激しく。

好みに合っているし、これは良い。

腰を打ちつけていると、程なく絶頂が来た。

中に出しきり、周りに気配が無いので、調子に乗ってもう一発。

暫くして気が済み、べちゃべちゃに汚れて襤褸雑巾になっているミミックをつまみあげる。

捨てるのは惜しい、連れて帰ろう。

意気揚々と引き上げる。

アルベルトはミミックを箱に入れた。

娘が欲しがったぬいぐるみの入っていた、大きな紙箱。

ミミックはおとなしくその中に入っていた。

声もかけてもらえず、餌も与えられず。

場合によっては、目の前で女性とアルベルトの情交を見る事になっても。

黙って、箱の中に。

『要る』時だけ出して『使う』。

アルベルトは、それが残酷であるとは思っていなかった。

モンスターに感情など。

ある筈が無い。

その考えが間違っていると気づいたのは、偶々盟友が来てそれを持ち上げたから。

小さな手を伸ばして、それは助けを求めたように見えた。

盟友が興味を示す前に回収し、その場は濁しておいた。

帰ったら、ミミックを出し。

思うさま、気が済むまで。

蹴って踏みつけ、嬲った。

ミミックはあまり動かなかった。

ただ、黙って見つめていた。

それを『使う』。

奇妙な鳴き声のように悲鳴を上げるばかりのそれを犯し凌辱し、壊そうと思った。

ミミックは壊れなかった。

そして、ある日。

盟友に噛みついたのだ。

信じられなかった。

優しい目のままに盟友が自分に刃を向けたの以上に。

あれだけ苛烈な虐待を強いた自分を守ったのが。

ミミックは盟友によって傷を負わされた。

盟友は自分によって、死んだ。

ミミックの世話をして、傷の手当てを。

そして、元のダンジョンの、元の箱に。

眠っている時に、そっと。

入れておいた。





部屋に帰って、ソファに。

盟友の行動の衝撃もあるが、何よりミミックに参ってしまった。

あんなに可愛い事をされ、自分の残酷さが浮き彫りになる。

髪を掻き毟り、ひじ掛けを殴る。

足元の箱を蹴り、がこっと音がしたのに、不審を抱く。

ミミック以外に何か入れた記憶は無いが。

覗き込むと、紙屑やら布屑のかたまり。

何だか、巣の様な。

まさかとはっとし、ダンジョンに走った。

ミミックの箱の周りには案の定、魔物の群れ。

蹴散らしてミミックを回収したが、もうそろそろらしい。

連れて帰って、箱に戻す。

ついでに紙やら布も入れてみると、それは巣作りを始めた。

そして、丸くなって。

小さく唸る。

どきどきしながら見ていると、ピンクの窄みがぷくりと膨らむ。

苦しそうにするから背中をさすってみたが、あまり効果は無い。

脇腹をさすると、楽になったらしい。

くく、と出てくる純白の卵。

苦しがるが、これ以上どうしようもない。

尻たぶを広げてやると、白い卵がゆっくりと生まれてきた。

ころ、と転がったそれに手を伸ばすと、ミミックが噛みつく。

苦笑して手を引っ込め、部屋を出た。





「・・・・・何の因果かな?」

「呪い・・・・か?」

卵から生まれたのは、何を間違ったのか、ミニサイズの盟友。

ミミックが噛みついた折に残っていた情報を中に入れ、身体はアルベルトの精子から合成したらしい。

ミミックは疲れ切って眠っていた。

子と言っていいかは定かでないこれを取り上げるのもどうかと思ったが、盟友は盟友、まがいものとしてもだ。

理由も複雑だった殺人未遂の誤解も解け、結局ミミックは元のダンジョンに戻した。

おかあさんだ、と懐く盟友は、ミミックに行った所業を知りそれは激しく攻撃してきたが、サイズがサイズだ。

小さなミミックから生まれた小さな盟友では、戦いにならない。

が、非は認めて謝っておいた。

仮にも彼の『親』だから。

そして、ミミックを逃がしてから4日後。

箪笥を開け、アルベルトはひっくり返った。

中に、ミミック。

帰ってきてしまったらしい。

じっと自分を見上げ、手を伸ばして抱っこをせがんでいる。

どうやら、前に一度抱いたのを覚えていて気に入っているらしい。

抱き上げて、本気で悩んだ。

ミミックは良いのだ、帰ってきたならもう逃がさない。

だが、この箪笥いっぱいのたまご。

何が生まれるのだろうか、盟友か?

冷や汗が流れおちるが、ミミックはきょとんとしてみつめてくる。

毒を食らわば、皿まで。

この可愛いミミックが欲しいなら、ミニサイズ盟友を量産されても堪えるしかない。

復讐なのか、何なのか。


「・・・・・・・・・・・・・・・」

「?」


見やると、きょとんと首を傾げる。

溜息をつき、頬を擽った。


「一緒に暮らすか?」


ミミックが、初めて笑った。

愛らしく笑い、嬉しそうに身体を擦り付けてくる。

心臓が止まりそうだ、これの愛らしさに。

心臓が止まりそうだ、自分の残酷さに。

それに愛や性欲を抱く異常性より、それを虐待して何の感想もない自分の異常性。

ミミックを抱きしめ、キスを。

だが、嫌な予感がした。

そう言えば、卵に手を出して噛まれたはずだ。

この箪笥いっぱいの卵は。

自分の精子と、自分の情報から出来た。

自分?

ちょっと気持ち悪かったが、キスも出来ないのでは話にならない。

気にしない事に決め、たまごは焼いて食ってしまおうと決め。

ミミックを抱いたまま、箪笥を閉める。


「さて、名前をどうするか・・・・・」


ああ、そう言えば、決めていたのだった。

あの箱に刻まれていた。


「イワン」


貴様もたまごも、面倒は見る。

だからどうか。


「ずっと一緒にいてくれ・・・・・」





***後書***

ミミックの話がまさかこんなに痛くなるとは思わなかったので、最後はたまごオチに。