【 もしもシリーズ-027 】
ブラウニーという妖精がいる。
夜に現れて、家の中を片付けてくれる。
勝手に住みつくが、害は無い。
無いが、勝手にやっているお掃除のお礼が無いと怒って家を散らかす。
だからと言って、いかにもお礼というのは益々怒る。
ちょっとその辺にカップ一杯のミルクを放置して寝たり、パンをひとかけ置いておくと、翌朝に消える。
それが、彼らの求めるお礼。
何とも不思議だ。
そして、ある日。
盟友と酒を飲んでいると、その話になった。
何故か妖魔に好かれるこの男は、妻が死ぬ際にやってきたデュラハンという死神を見事撃退。
奥方は死の予定から外れ、今も健在。
可愛い顔で、酒のつまみに物体Xを差し出してくれた。
彼の家にはブラウニーは来ないが、悪戯だけするゴブリンは10匹近く来るらしい。
面白い、そんないきもの欲しい。
でも、そうそう手に入るものではない。
残念に思っていたら、奥方が粉をくれた。
なんでも、この前お料理をしていたら失敗して出来たと言う。
この前以前に一度も成功したものを見た事が無いが、この粉をまくとスライムが寄ってくるから面白いの、と。
帰って撒いてみると、なるほど面白い。
色とりどりのスライムが来るわ来るわ。
飽きたところでそのまま寝たが、翌朝。
粉が無い。
いや、引き出しの中のはあるのだ。
床に撒いた分が綺麗になっている。
その辺も、片付いている。
家の中を見て回るが、流石に一日では無理だったらしい。
魔術を研究してぐだぐだの館の中。
それでも、一晩でこれだけやるのだから大したものだ。
ちょっと考え、やっぱり深く考える。
お礼は、あまり高価ではいけない。
牛乳って、どんな牛乳をあげればいいのか。
いつも飲むのでいいのか。
取り敢えず買ってきて、器に注ぐ。
こびとさんだと言うから、ティーカップに入れてみた。
そして研究室に向かい、そのまま丸一日。
気づいて見に行くと、カップは空になっていた。
そして、辺りも片付いている。
洗濯もしてあった。
飽き性のセルバンテスが、珍しく続けたブラウニー飼育。
ある夜に研究室から出ると、何かが視界の端を横切った。
不思議に思ってその方向に歩くと、明かりを点けっぱなしの浴室から気配。
そろー、と覗き込むと、残り湯で洗濯中のブラウニー。
1mくらいしか身長は無いが、これで大人らしかった。
家事をするから勝手に女性と思っていたが、男性。
聞いたところによれば、ブラウニーは書いて字の如く茶色っぽいらしい。
服はぼろぼろ、髪も伸び放題。
だが、このブラウニーは白かった。
スーツは襤褸だが手入れされているし、穴も繕った形跡がある。
髪は伸び放題どころか禿頭、一本もない。
肌は眩しいくらいに白く、髭もなし。
顔立ちは普遍的、サイズさえ大きければその辺にいそうな男性だ。
だが、一生懸命な姿が可愛い。
身体が小さいから、セルバンテスの服を洗うのも大変だ。
丁寧に洗って、籠に入れ始める。
慌てて隠れると、ひと抱えある籠を抱えて、よたよた歩いていく。
魔術で手伝ってもよかったが、彼の仕事を奪うのは悪いだろう。
ベランダに出て、綺麗に干して。
たたっと駆け出し、今度はお掃除。
尋ねてきた可愛い笑顔の人妻が、お夜食と称して作った物体Xとともに生産された焦げフライパン山積みの台所。
これをどうするのか、魔法に興味があって見ていると、彼はまず、簡単に片づけた。
無事な皿だけ洗ってしまい、干す。
その間に作業台や床を綺麗にし、一度自分の靴の裏を雑巾で拭く。
これで、相当綺麗になってしまった。
水がきれた皿を布巾で拭きあげ、ガス台を念入りにお掃除。
そして、焦げ付いたフライパンや何かがこびりついた物を丁寧に洗う。
これらも拭きあげて、最後にガスでちょっと温め、綺麗に乾いたら仕舞う。
そして、最後に全体をもう一度綺麗にお掃除。
ぴかぴかの台所が、今日の予定だったらしい。
そこで、彼は一度出て行った。
てっきり魔法だと思っていたのが人力であったのに驚いて見て回っていると、帰ってくる足音。
隠れると、彼はいつものカップを持っていた。
ちょんと椅子に座って牛乳を飲み、休憩。
そうしたら、冷蔵庫を開ける。
呼びつける料理人達が、好き勝手使い、使いかけを詰めては誰も掃除しない魔窟。
全部出し、使えないものは袋に詰めて隅に。
使えるものは、タッパーや袋に詰め直してきっちり封を。
そして、彼はあるものに興味を示した。
牛乳。
いつも買ってくるやつだから、まだ期限は来ていない。
やっぱり好きなんだと嬉しく思ったが、彼はそれと残ったものを使って料理を始めてしまった。
牛乳を呑む姿以外にイメージがわかないから興味津々で見ていると、手際よくお菓子を。
ブラウニーが、ブラウニーを作った。
可愛くて、可笑しくて、笑いをこらえるのがつらい。
彼は端を落として、たっぷりの綺麗なブラウニーを皿に乗せた。
端は、小さなお皿に。
端を嬉しそうに食べ、彼は片づけを終わらせ、お皿に山盛りのブラウニーを抱えて台所を出た。
巣に帰るのだろうと思いつつ、冷蔵庫を開ける。
何か食べたいが、碌なものが無い。
取り敢えずバターをひとかけ口に入れ、諦めて研究室に戻る。
と、机の上にお菓子のブラウニー。
山盛で、とてもいい匂いで。
代わりのように無くなっているのは、いつのか忘れてしまって放置していたチャイ。
あんなもの飲まなくても、冷蔵庫の牛乳をあげたのに。
ブラウニーを齧りながら、あの可愛い姿を思い出す。
優しい味と濃厚なチョコレートが、とても美味しかった。
ある日、夜中に物音がして目を覚ました。
研究机に突っ伏して寝ていたが、何だか変だ。
音源を探すと、寝室。
躊躇ったが、開けた。
ベッドの上でブラウニーがもがいている。
周りには、ゴブリンが9匹。
雄の彼に何をしようとするのかは言わずと知れるが、モンスターも交尾以外に快楽を求めるのだろうか。
取り敢えず、ゴブリンを全部捕獲して箱に詰める。
盟友の住所を書いて、ペガサスのイラスト眩しい宅配にお願いする。
そして、ブラウニー。
彼は余りに怖かったのか、箒を抱きしめてぶるぶる震えている。
どうしたものかと思ったが、ホットミルクを作って持ってきた。
彼が食べるのは牛乳とブラウニー以外に知らないし、ブラウニーを自分が作ったら即死アイテムになる。
落ち着かせるには温かい方が良いし、小さなブラウニーを膝に乗せて牛乳を渡してみた。
ブラウニーは暫くセルバンテスを見上げていたが、どうやらこれは自分にくれるのだと分かったらしい。
こくこくと飲み始める。
愛らしい姿に苦笑し、頬を擽る。
ブラウニーはきょとんと見つめていた。
ちょっと、悪戯したい。
どの程度で逃げてしまうかは分からないが、したい。
可愛いこれに恋をしたのは記憶に新しい。
人間ではないが、好きなのだ。
これに恋してからは勝手に操立てして花街にも行っていない。
ブラウニーにしてみれば迷惑千万だろうが、だってそうしたいのだ。
沢山の魔術書を買い求め、寝る間を惜しんで読み漁った。
ブラウニーとの共存の仕方は、どれも大体同じ事しか書いていない。
有益と言っても微々たるもので、戦えるわけでもない彼ら。
お礼もやや面倒臭い。
血眼になって捕獲法を探し、契約や拘束を調べたが、無い。
段々怖くなった。
ブラウニーが出ていってしまうのでないかと眠れなくなり、お礼を忘れるのが怖くて眠らなくなり。
冷静な判断が欠けているのは間違いない。
ブラウニーをそろそろと押し倒し、途中でカップを奪う。
空だったから問題無いと踏んだが、果たしてそうだった。
不思議そうなブラウニーは、笑顔の魔術師に騙されていた。
笑って人を殺せる男だと知らないからだ。
何をされるか分かりもしない。
遊んでいるようにしか見えない、朗らかで優しい笑み。
布団に沈んでいる彼の手首には、イワンと刺青のような模様があった。
名前か、彼らの言語で何かを意味するのか。
でも、構わない。
今決めた、彼は『イワン』だ。
私のイワン君だ。
そっと顎を支え、触れるようなキスを。
ちゅ、ちゅ、と繰り返し、騙し騙し深めていく。
呼吸を奪わぬよう慎重に、痛みを与えぬよう神経を尖らせ。
甘く優しく、口づけを。
甘い味わいの接吻に酔いながら、やんわりと服を脱がせていく。
尖りをそっと摘まむと、嫌そうだった。
直ぐに放して舌を這わせると、びくっと腰が跳ねる。
戸惑う瞳に付け入り、ねっとりと尖りを愛撫する。
小刻みに軽く吸い上げ、舌で押しつぶす。
くるりと周りをなぞると、もぞもぞ動く。
気持ちが悪いならもう消えてしまっているはずだ。
此処にいると言う事は、意味は分からずとも不快で無いと言う事。
唇を離し、舌先だけで弄る。
ちろちろ刺激すると、甘い匂い。
ミルクのような、甘ったるい、匂い。
ちゃんとついてはいるが、まるで色合いが子供の雄をそろりと摘まむ。
嫌がられる前に口に入れてしまうと、激しく暴れた。
それは拒絶ではない。
押し寄せる快感に身体が勝手に跳ねあがる。
小さな体を軽く押さえて、押さえついでに人差し指で尖りも弄る。
腰の震えが激しくなり、口の中のものが硬くなる。
甘い蜜も、蜂蜜のように心地よい。
ちゃぶちゃぶと揉むように吸うと、脚が頭の側面を挟みこんだ。
シーツを掴む音がするのに唇を笑ませ、軽く吸い上げる。
とても小さな、声というより鳴き声のそれを上げ、イワンはセルバンテスの口の中に蜜を零した。
噴き出す蜜はとろりと甘く、どこかミルクのような匂い。
飲み下し、綺麗に舐めとって、口から出す。
興奮に溢れた唾液がどろっと糸を引いた。
口許を拭い、脚を開かせる。
ピンクの窄みは、柔らかそうだった。
ベッドサイドの引き出しをあさり、精製水の入った洗浄ボトルを引っ張り出す。
中身を捨てて、もう一段下から、ローションを。
パウチのそれをたっぷり移し替え、くたくたになっているイワンの窄みに先を差し入れる。
やや尖った噴き出し口を差し入れ、柔らかなボトルをぎゅうと掴んで中身を注入する。
刺激は少ないはずだ、ブラウニーでも人間でも。
濡れない此処に溢れ滴るほどのローションを注ぎ込んで、ぬるぬるにして。
とろっと垂れ落ちるのを指になすって、差し入れる。
もがくと指を止め、様子を見て慎重に。
奥まで入れれば、小さなブラウニーにはかなりの負荷になる。
指一本でも相当きついし、二本入れれば普通のセックスと同じくらい効く筈だ。
中指でそろりと掻き混ぜると、脚がもぞもぞ動いた。
彼らが排泄するのかは知らないが、穴があるから近い行為はあるのかもしれない。
そこに指を入れられて掻き混ぜられれば、排泄感と快感が入り混じった感覚を受けるだろう。
前立腺も、あるようだし。
ひくひくする孔は、相当締まりが良い。
だが、弾力も申し分ない。
くいくいと指先を動かすと、お尻をシーツに擦り付けてもじもじする。
ぐぐっと奥を突くと、ひゅっと息を吐きだした。
口をあぐあぐと開けて涙ぐむのに唾を呑み、柔らかくしていく。
たっぷり解し、意識が朦朧としているイワンを抱き上げる。
向こうを向かせて膝に乗せ、ゆっくりと腰を下ろさせた。
硬度十分なものは、手を添えなくてもよかった。
先がゆっくりと肉の輪を通り、幹を呑みこんでいく。
だが、先も言ったようにブラウニーは小さい。
1m程の彼の身体に、この長い肉槍は収まらない。
だが、快楽と愛情に狂った男はそれを忘れていた。
ぐいぐい押しこんで、深く繋がる。
臓腑を押し上げられて、イワンは孔を締めて抵抗した。
それによる快感に、激しい注挿が始まる。
尻に腰が当たるほど深く、高い音が鳴るほどに激しく。
痛みは少ないが、ある。
快感は許容量を遥かに超えていた。
中が突き上げられて、快楽と苦痛が混じる。
それにより押し上げられる臓腑に、さっき飲んだばかりの牛乳を吐き戻した。
それ以外の何もない、酸い臭いさえない、牛乳。
顎からぼたぼた垂らしながら、がくんがくんと突き上げられる。
後孔が熱く痺れ、頭が回らない。
抱いていた男の大きな手は、掴む動きに変わり、抱いていたのが獣の交尾に変わっていき。
中を精液で穢され、それを何度も繰り返し。
やっと満足したセルバンテスは、イワンをこちらに向かせて初めて自分が何をしたか気付いた。
ミルクを吐き戻し、歯の根は合わず、目は虚ろ。
慌てて水を取りに行き、帰ってきた時。
ブラウニーは、消えていた。
あんなに大事なブラウニーを夢中になって強姦し、結局自分は馬鹿だと証明しただけだった。
酒を浴びるように飲み、ミルクを入れていたカップは叩き割った。
毎日泥酔して眠り、あの虚ろな姿の悪夢を見て飛び起きる。
もう、限界だった。
恋に狂ってしまった自分に、他に道は無い。
最後に昼寝でもしよう。
もしかしたら、もしかしたら。
愛らしい姿を夢見る事が出来るかもしれない。
そしたら、逝こう。
ソファに横になり、うとうとする。
泥酔せずに眠るなんて久しぶりだ。
が、突然顔に痛み。
目を開けると、手のドアップ。
ぶるぶるしている。
思い切り、顔をつねっている。
なんで、っていうか誰。
飛び起きると、ブラウニーがいた。
ぱっと消えてしまったから捕まえられなかったが、彼はまだこの屋敷にいる。
家中探したが、妖精を捕まえることなど不可能。
落胆していると、盟友から電話。
ぶっきらぼうに答えると、何があったと聞かれた。
今忙しいのにと思いながら簡単に説明すると、盟友が笑う。
「今すぐに、ミルクをカップに入れて寝ろ」
「はぁ?」
そんな場合じゃないのにと思ったが、盟友は笑うばかり。
「早くせんと、ブラウニーを逃がすぞ」
どういう事か分からない。
だが、言うとおりにした。
ミルクを用意し、自分に睡眠魔法をかけて。
起きたら、傍のミルクは無くなっていた。
丁度訪ねてきた盟友に聞けば、ニヤニヤしながら教えてくれた。
「ブラウニーは、礼が無いと怒って出ていく」
その前に、家人に怒っていると示すのだ。
散らかしたり、顔をつねってな。
「片付けをせんのに、顔をつねった。何か不満があるのだろうな」
言われ、考える。
何だろう、家事は特にしていないようだし、さっきも身体が辛そうだった。
ミルクは飲んだのだから、何かのお礼として受け取った・・・・・。
「ち、違う、そうじゃないんだ!」
どこにいるか分からないブラウニーに向かって、叫ぶ。
盟友の前で馬鹿を晒したって構うものか。
「君の身体が欲しかったんじゃない、ミルクもセックスのお礼じゃない。私は、君が好きなんだ!」
しんとした館の中に、声が響く。
「君を愛してるんだ!」
館の中から返事はない。
流石に落胆してソファに沈む。
盟友も放っておいてくれたが、もう泣きそうだ。
身体のお礼を要求されるなんて、まるで娼婦を抱いたのと同じじゃないか。
だが、盟友が紫煙を吐いて珍しく笑った。
「妖精にそんな感覚はあるまい。だが、愛や恋は存在すると聞く」
「何それ、意味分から・・・・・」
「分からんのか」
あれは好きと告げずに抱いた事を拗ねているのだ。
何とも可愛いものだな。
その言葉に、呆然とする。
ぽかんとしてソファに沈んでいると、ドアがそっと、小さく開いた。
隙間から差し入れられた皿には、山盛のブラウニー。
牛乳はさっきカップに注いだのが最後だったのに、じゃあ、あれは。
慌ててドアに走って覗いても、何もいない。
「余り整理整頓しても、怒りだすぞ。貴様が整頓できるはずもないがな」
無駄な忠告をして出ていく盟友に、セルバンテスは溜息をついて皿を寄せた。
ブラウニーを齧り、考える。
カップを買いに行かないと。
彼専用の、ミルクのカップを。
指輪の代わりの、柔い拘束具を。
久しぶりの睡魔に襲われて眠りこむ魔術師。
小さな手が、そっとタオルケットをかける。
顔は、つねらなかった。
***後書***
イマラチ嘔吐が最近好きなんですけど、ファック嘔吐は昔から好き(死)